結論——足切りは「基準を越えれば」越えられる壁
まず、いちばん気になるところから。行政書士試験の足切りは、たしかに気をつけるべき仕組みです。でも、正しく対策すれば、過度に恐れる必要はありません。
足切りとは、基礎知識(かつての「一般知識等」)という科目で、一定の点数を取れないと、たとえ法律科目が高得点でも、不合格になる仕組みのこと。つまり、この基準だけは、何があっても越えておく必要があります。
ただ、求められるのは満点ではありません。基準となる点を確保すればよく、それは決して高いハードルではないんです。だから、やるべきことは「満点を狙う」ことではなく、「確実に基準を越える」こと。この発想の切り替えが、足切り対策の出発点になります。
正直なところ、足切りを過剰に怖がって、基礎知識ばかりに時間を使い、肝心の法律科目がおろそかになる――これがいちばんの落とし穴です。バランスよく、必要なだけ備える。その地図を、これから描いていきます。
足切りとは、どういう仕組みか
まず、足切りの仕組みを、正確につかんでおきます。
行政書士試験は、大きく「法令等」科目と「基礎知識」科目に分かれています。このうち基礎知識の科目で、一定の点数に届かないと、その時点で不合格が確定します。法令科目がどれだけ高得点でも、です。これが「足切り(基準点)」と呼ばれるものです。
基礎知識の科目は、14問が出題され、1問4点。つまり満点は56点です。そして、足切りの基準は、おおむね6問(24点)。ここを下回ると、合計点が合格ラインに届いていても、不合格になります。
逆に言えば、14問のうち6問取れれば、足切りはクリアできます。8問落としても大丈夫、という見方もできるわけです。こう考えると、ぐっと気が楽になりませんか。
基礎知識は14問・各4点・満点56点。足切りの基準は、おおむね6問(24点)。これを下回れば、法令科目が満点でも不合格となる。されど、裏を返せば――6問取れば、この壁は越えられるのである。
要するに、足切りは「満点を防ぐ壁」ではなく、「最低限を確かめる壁」。基準を知り、そこを確実に越える準備をすれば、必要以上に恐れることはありません。
何が出るのか——範囲を知る
次に、基礎知識では何が出るのかを見ていきます。範囲を知れば、どこで点を取るかの作戦が立てられます。
基礎知識の科目では、政治・経済・社会といった一般的なテーマ、情報通信や個人情報保護に関する知識、そして文章を正しく読み取る「文章理解」などが出題されます。近年は、行政書士の業務に関わる諸法令が問われる形も加わっています。分野ごとの性格を、ざっくり整理してみます。
| 分野 | 性格 |
|---|---|
| 政治・経済・社会 | 範囲が広く、対策が立てにくい |
| 諸法令(行政書士法など) | 近年加わった、業務に関わる分野 |
| 情報通信・個人情報保護 | 範囲が限られ、得点しやすい |
| 文章理解 | 読解力で、安定して取りやすい |
範囲はたしかに広く、「全部を完璧に」と考えると、途方に暮れてしまいます。でも、思い出してください。必要なのは6問。だからこそ、「取りやすいところ」を見極め、そこを確実に固める発想が効きます。
政治・経済・社会の分野は、範囲が広く、対策が立てにくいと言われます。一方で、後で見るように、文章理解や個人情報保護などは、準備しだいで安定して得点しやすい分野です。やみくもに広げるより、得点源を絞る。これが、効率のよい備え方です。
なお、出題の範囲や科目の構成は、制度の見直しで変わることがあります。基礎知識という名称も、かつては「一般知識等」と呼ばれていました。最新の出題内容や基準点は、受験する年度の公式案内で必ず確認しておきましょう。
確実に取りにいく——文章理解
足切り対策の主役になりやすいのが、「文章理解」です。ここを得点源にできると、足切りはぐっと越えやすくなります。
文章理解は、長めの文章を読んで、内容に合うものを選んだり、文の並べ替えをしたりする問題です。法律の知識というより、文章を正確に読み取る力が問われます。出題数は、年度によりますが、数問が安定して出る傾向があります。
出題のタイプは、おおむね決まっています。文章の趣旨に合うものを選ぶ問題、空欄に入る言葉を選ぶ問題、ばらばらの文を正しい順に並べ替える問題など。どれも、慣れれば「こう来たらこう解く」という型が身につきます。だからこそ、過去問でくり返し形式に触れることが、いちばんの近道になります。
この分野の良いところは、対策の効果が出やすいことです。問題のパターンが比較的決まっているので、過去問で形式に慣れ、解き方のコツをつかめば、安定して正解できるようになります。法律知識のように膨大な暗記を必要としないのも、心強い点です。
わかりやすく言い換えると、文章理解は「努力が点数に直結しやすい分野」。ここで数問を固めておけば、足切りの6問に、大きく近づきます。だから、足切りが不安な人ほど、まず文章理解の対策から始めるのがおすすめです。
文章理解は、法律の暗記を要さず、読み解く力で勝負できる。形式に慣れれば、安定して点を取りやすい。足切りを恐れる者は、まずここを得点源とせよ。土台が一つ定まれば、心は驚くほど軽くなるのである。
個人的には、文章理解は「足切りの安全網」だと思います。ここが固まっているだけで、本番の精神的な余裕が、まるで違ってきます。
上乗せを狙う——個人情報保護・情報通信
文章理解に加えて、もう一つの得点源になりやすいのが、個人情報保護や情報通信の分野です。
個人情報保護については、関連する法律から、基本的な仕組みやルールが問われます。範囲がある程度限られているため、要点を押さえれば、得点しやすい分野です。日常でも耳にするテーマなので、とっつきやすさもあります。たとえば、個人情報とは何を指すのか、事業者にはどんな義務があるのか、本人にはどんな権利があるのか。こうした基本の枠組みを押さえておくと、多くの問題に対応できます。
情報通信も、基本的な用語や仕組みが問われることがあります。深入りしすぎる必要はありませんが、よく出るところを押さえておけば、1問、2問の上乗せが期待できます。
文章理解で土台を築き、個人情報保護で上乗せする。範囲の限られた分野を堅実に押さえれば、6問という基準は、ぐっと手の届くものになる。広く薄くではなく、狭く確かに――それが、足切りを越える賢き構えなのである。
つまり、文章理解で土台を作り、個人情報保護や情報通信で上乗せする。この組み合わせで、足切りの6問は、現実的に見えてきます。政治・経済・社会で運よく取れた分は、ボーナスと考えるくらいで十分です。
足切りを、恐れすぎない
最後に、いちばん大切な心構えを。それは、「足切りを恐れすぎない」ということです。
足切りがあると聞くと、つい基礎知識ばかりに時間をかけたくなります。でも、合格点の大半は、法令科目で占められています。基礎知識に時間を使いすぎて、法令科目がおろそかになっては、本末転倒です。
基礎知識の役割は、あくまで「足切りを越える」こと。満点を取る科目ではありません。だから、必要な得点源だけを押さえたら、あとは法令科目に、しっかり時間を割く。このメリハリが、合格への近道です。
政治・経済・社会の分野は、範囲が広く、努力が点に結びつきにくい面もあります。ここに深入りして消耗するより、文章理解と個人情報保護で堅実に取り、残りは知っていることで対応する。そんな割り切りが、効率を生みます。
基礎知識は越える壁であって、制覇する科目ではない。得点源を絞ったら、残る時間は法令科目に注ぐがよい。合否を大きく分けるのは、結局そちらなのだ。足元を固め、本丸へ向かう――その順序を見失わぬことである。
要するに、足切りは「確実に越える」もので、「制覇する」ものではありません。仕組みを知り、得点源を絞り、必要なだけ備える。そうすれば、足切りはあなたの行く手を阻む壁ではなく、淡々と越えていける一段になります。多くの合格者が、この一段を当たり前のように越えていきます。正しく構えれば、あなたにとっても、それは特別な難所ではなくなります。
理解度チェック
ここまでの内容、どれくらい身についたかチェックしてみよう。
行政書士試験の足切りについて、正しいものはどれか。
- 法令科目が高得点なら基礎知識は関係ない
- 基礎知識で基準点を下回ると不合格になる
- 足切りは合計点さえ届けば問題にならない
- 足切りは全科目で満点が必要だ
解答は 2 である。
足切りは、基礎知識の科目で一定の点に届かないと不合格になる仕組みだ。つまり、法令科目がどれだけ高得点でも、この基準だけは越えなければならないのである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ 誤り | 基礎知識の基準は必須 |
| 2 | ✓ 正解 | 基準割れで不合格 |
| 3 | ✗ 誤り | 合計点では救われない |
| 4 | ✗ 誤り | 満点は不要 |
要するに、足切りだけは、何があっても越える必要があるのである。
基礎知識の足切りを越えるために必要な得点の目安は、次のどれか。
- 14問のうち6問ほど取れれば越えられる
- 14問すべてを正解しなければ越えられない
- 1問でも取れば自動で越えられる
- 法令科目の点数で代わりに埋め合わせできる
解答は 1 である。
足切りの基準は、おおむね14問中6問(24点)。わかりやすく言い換えると、8問落としても、6問取れれば壁は越えられるのだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ 正解 | 6問で基準を越える |
| 2 | ✗ 誤り | 満点は要らない |
| 3 | ✗ 誤り | 1問では足りない |
| 4 | ✗ 誤り | 法令で代替できない |
つまり、満点でなく「6問」を狙えばよいと知れば、気が楽になるのである。
足切り対策の進め方として、最も適切なものはどれか。
- 政治・経済・社会を完璧にするまで他はやらない
- 基礎知識に大半の時間を注ぎ法令は後回しにする
- 文章理解や個人情報保護を得点源として固める
- 足切りは運任せにして対策はしないことにする
解答は 3 である。
対策の効果が出やすい文章理解や、範囲の限られた個人情報保護を得点源にする。つまり、取りやすいところを固めて、確実に基準を越えるのが賢い進め方なのだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ 誤り | 範囲が広く非効率 |
| 2 | ✗ 誤り | 法令を軽視できない |
| 3 | ✓ 正解 | 取りやすい所を固める |
| 4 | ✗ 誤り | 対策で越えられる |
要するに、得点源を絞って、確実に越えるのが近道なのである。
「足切りは、得点源を絞れば確実に越えられる」と感じてもらえたなら、編集部としてはとても嬉しいです。
足切りは、たしかに気をつけるべき仕組みですが、必要なのは満点ではなく、基準を越えること。文章理解や個人情報保護で得点源を固め、残る力は法令科目に注ぐ。その配分さえ意識すれば、足切りは恐れる壁ではなくなります。なお、科目の構成や基準点は見直されることがあるので、受験する年度の公式案内で確認しておくと安心です。
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もちろん、市販の過去問題集で、自分のペースで進めるのも、まったく問題ありません。
次に読むなら、こんな記事もどうぞ。
→ 基本的人権の尊重 — 政治・社会分野の土台になる、憲法の根本原理 → 行政行為 — 足切りを越えた先で得点源になる、行政法の中心概念 → 権利能力 — 法令科目で点を伸ばすための、民法の入り口