居住用財産の譲渡損失の通算とは(全体像)
ふつう、不動産を売って出た損失は、給与など他の所得とは相殺できない。でもマイホームの売却で損失が出た場合は、特例として他の所得と損益通算でき、税の負担を軽くできる。
押さえるのは2点。対象は所有期間5年超のマイホームであること。そして、その年に引ききれなかった損失は翌年以降3年間繰り越して使えること。ここがFP2級でよく問われる。
詳しく:損益通算・繰越と2つのタイプ
ここが記事の心臓部。まず、しくみを表で押さえる。
譲渡損失の損益通算・繰越控除
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 所有期間5年超のマイホーム |
| 損益通算 | 売却の損失を給与など他の所得と相殺できる |
| 繰越控除 | 引ききれない損失は翌年以降3年間繰り越せる |
ポイントは、まず売却した年に他の所得と損益通算し、それでも残った損失を3年間繰り越すこと。所得が大きい人ほど、相殺できる効果が大きい。
次に、2つのタイプ。
2つのタイプの違い
| タイプ | 買換え | 主な条件 |
|---|---|---|
| 買換え型 | 必要(新しいマイホームを買う) | 新居に住宅ローンがあること |
| 特定居住用財産型 | 不要(売るだけ) | 売った家に住宅ローンが残っていること |
買い換える場合は買換え型、買い換えずに売るだけなら特定居住用財産型。どちらも損益通算と3年繰越が使える。要件は改正で変わることがあるので、受験する年度の最新の内容もあわせて確認しておこう。
わかりやすく言い換えると
つまり、「5年超持ったマイホームを売って損失が出たら、給与などと相殺できて、引ききれない分は3年繰り越せる」とイメージするとラク。
要するに、売って出た損失をムダにせず税の計算で活かせる特例で、買い換える型と買い換えない型の2つがある、と押さえておこう。
試験のツボ
🔴 一番出る:制度の中身
①所有期間5年超のマイホームの売却損失が対象
②損失を給与など他の所得と損益通算できる
🔴 次に出る:繰越控除
①引ききれない損失は翌年以降3年間繰り越せる
②所得が多い人ほど相殺の効果が大きい
🟡 押さえると安定:2つのタイプ
①買換え型(新しいマイホームを買う)
②特定居住用財産型(買い換えずに売るだけ)
よくある間違い
①「マイホームの売却損失は他の所得と相殺できない」→ ✗ 原則は相殺できないが、この特例なら他の所得と損益通算できる。
②「引ききれない損失はその年で終わり」→ ✗ 翌年以降3年間繰り越して使える。
③「買い換えないと特例は使えない」→ ✗ 買い換えない特定居住用財産型もある。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(制度の中身)
居住用財産の譲渡損失の損益通算に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- マイホームの売却で出た損失は、どんな場合でも他の所得とは相殺できないものとされる
- この特例は、所有期間が1年以下のマイホームの損失にだけ使えるものと決められている
- 所有期間5年超のマイホームの売却損失を、給与など他の所得と損益通算できる特例である
- この特例は、損失ではなく利益が出たときにだけ使えるものと決められているものとされる
解答は 3 だ。
所有期間が5年超のマイホームの売却損失を、給与など他の所得と損益通算できる特例だ。ふつうは相殺できない損失を活かせるのが強みだぞ。
選択肢1の「相殺できない」、選択肢2の「1年以下だけ」、選択肢4の「利益のときだけ」は、いずれも誤りだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 特例なら他の所得と相殺できる |
| 2 | ✗ | 対象は所有期間5年超 |
| 3 | ✓ | 5年超・他の所得と損益通算で正しい |
| 4 | ✗ | 損失が出たときの特例 |
オリジナル問題2(繰越控除)
居住用財産の譲渡損失の繰越控除に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 損益通算で引ききれない損失は、翌年以降3年間にわたって繰り越して使うことができる
- 損益通算で引ききれなかった損失は、その年かぎりで切り捨てられるものと決められている
- 損益通算で引ききれない損失は、翌年以降10年間繰り越せるものと決められている
- 損益通算で引ききれない損失は、前の年にさかのぼって使うものと決められている
解答は 1 だ。
損益通算で引ききれなかった損失は、翌年以降3年間繰り越して使えるぞ。譲渡所得が長期になる「5年超」と同じく、数字をセットで覚えておけ。
選択肢2の「その年かぎり」、選択肢3の「10年間」、選択肢4の「前の年にさかのぼる」は、いずれも誤りだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 翌年以降3年間の繰越で正しい |
| 2 | ✗ | 3年間繰り越せる |
| 3 | ✗ | 繰越は3年間 |
| 4 | ✗ | さかのぼりではなく翌年以降 |
オリジナル問題3(2つのタイプ)
居住用財産の譲渡損失の特例のタイプに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- この特例は、新しいマイホームに買い換える場合にだけ使えるものと決められている
- 買い換える買換え型と、買い換えずに売るだけの特定居住用財産型の2タイプがある
- この特例は、買い換えても買い換えなくても、まったく同じ名前のひとつだけとされる
- この特例は、事業用の建物を売って買い換えるときにだけ使えるものと決められている
解答は 2 だ。
新しいマイホームに買い換える買換え型と、買い換えずに売るだけの特定居住用財産型の2タイプがあるぞ。どちらも損益通算と3年繰越が使える。
選択肢1の「買換えのときだけ」、選択肢3の「ひとつだけ」、選択肢4の「事業用だけ」は、いずれも誤りだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 買い換えない型もある |
| 2 | ✓ | 買換え型・特定居住用財産型の2つで正しい |
| 3 | ✗ | タイプは2つに分かれる |
| 4 | ✗ | マイホームの特例 |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 所有期間5年超のマイホームの売却損失を、給与など他の所得と損益通算できる。
- 🔴 引ききれない損失は翌年以降3年間繰り越せる。
- 🟡 買換え型(新居を買う)と特定居住用財産型(買い換えない)の2タイプがある。
次に学ぶ
- 不動産譲渡所得 ── 利益が出たときの税の基本。損失が出たときのこの特例と対で押さえられる。
- 3000万円特別控除 ── 利益が出たマイホーム売却で使う控除。損失のときの特例と整理できる。
執筆: SikakuQuest編集部