低廉な空家等の特例とは?宅建業者の報酬計算特例

公開: 更新: カテゴリ: 宅建業法

30秒で結論

低廉な空家等の特例の定義と試験での位置付け

この特例は 令和6年(2024年)7月1日施行の報酬告示改正 で内容が拡大された。改正前は「代金400万円以下・上限18万円(税抜)・売主側からの媒介のみ」だったが、改正後は 「代金800万円以下・上限30万円(税抜=税込33万円)・売主買主双方から受ける報酬」 になった。宅建試験は受験年度の4月1日時点で施行されている法令が出題根拠。令和7年度(2025年)以降の受験では改正後の数値が基準だ。

法律上の定義(国土交通省告示)

低廉な空家等の特例は、宅地建物取引業者の受領できる報酬限度額を定める国土交通省告示(第七・第八)の特例規定。800万円以下(税抜)の宅地・建物の売買・交換契約において、依頼者(売主・買主)から受ける媒介・代理報酬の上限を、通常の計算式による額に 当該媒介に要する費用を勘案した額 を加えた額(ただし税込33万円が上限)まで引き上げる規定である。

具体的には、通常の報酬計算式(3%+6万円等の段階計算)で算出される額に、当該媒介に要する費用を勘案した額を加算した合計が、30万円の1.1倍(税込33万円)を超えない範囲で受領できる仕組みとなる。

わかりやすく言い換えると

要するに「安い物件は通常の報酬計算では業者の手間に見合わないので、特例で報酬上限を引き上げる」というルール。空き家の売買仲介は調査・契約手続きの労力が物件価格に比例しないため、業者が積極的に取り扱えるよう報酬規定を調整した制度である。

実務では、地方の空き家流通促進を目的とした制度として位置付けられる。低価格物件の取引コストを業者がカバーできる構造を作り、空き家の市場流通を活性化する政策的意図がある。

試験での位置付け

低廉な空家等の特例は宅建本試験の業法ブロックで頻出論点。問題文では「適用要件(800万円以下)」「上限額(税込33万円)」「適用対象(売主・買主双方)」「当該媒介に要する費用を勘案した額の加算」がピンポイントで問われる。報酬論点の中核派生規定として位置付けられる。

近年の出題頻度は上昇傾向にあり、令和6年7月の改正で対象・上限・適用範囲が拡大されたため、過去問演習だけでなく最新の制度内容を押さえる必要がある。

過去問の出題パターンとしては、4つの選択肢のうち1つに「物件価格1,000万円以下」「改正後も売主側のみ」のような誤りを混在させる形が頻出する。「800万円(税抜)以下+売主買主双方+税込33万円上限」の3点セットを正確に押さえれば、これらの選択肢は即座に切れる。

また、通常報酬計算(3%+6万円等)との対比を問う問題も出題される。物件価格200万円・500万円・800万円のような具体例で、通常計算と特例計算の差額がいくらになるかを問う形である。これにも特例の上限額税込33万円を頭に入れておけば対応できる。

特例の構造

図1: 低廉な空家等の特例の構造

図2: 通常報酬との対比(税抜→上限は税込33万円)

物件価格通常計算(税抜)低廉特例(上限30万円税抜)
200万円10万円30万円
400万円18万円30万円
600万円24万円30万円
800万円30万円30万円(同額)
900万円33万円適用なし

計算例の確認

500万円の宅地売買を依頼者から媒介依頼された場合の計算例を確認する。

このケースでは、通常計算より9万円多い報酬を受領できる。低廉な空家等の特例の経済的メリットは、通常計算と30万円(税抜)上限額の差額分であり、物件価格が低くなるほど特例の効果が大きくなる構造である。

別の計算例として、200万円の宅地売買の場合は以下のような計算となる。

物件価格が低くなるほど通常計算による報酬額は小さくなる(200万円なら10万円)が、特例上限額30万円(税抜)との差額分(20万円)が当該媒介に要する費用を勘案した額として認められる範囲となる。

適用要件の詳細

物件価格800万円以下(税抜)

特例適用の物件価格上限は 800万円(税抜) である。これを超える物件には特例が適用されず、通常の報酬計算式で報酬上限が定まる。

ここで言う「価格」は売買契約の代金額であり、消費税等相当額を含まない額で判定する。試験では、800万円というラインが具体例で問われるため、ライン前後の数値を覚えておく。

物件価格800万円ジャストの場合は、通常計算(800万円×3%+6万円=30万円)と特例上限(30万円税抜)が同額となる。この場合、特例を適用しても通常計算より高額になることはなく、特例の経済的メリットは生じない。試験で「800万円ジャストの物件で特例適用したら通常計算より高額になる」という選択肢は誤り。

売主・買主双方からの依頼が対象

改正後は 売主・買主のいずれの依頼者から受ける報酬 も特例の対象となる。改正前は売主側からの媒介に限られていたが、令和6年7月改正で買主側からの媒介報酬についても対象に拡大された。

両手仲介(売主・買主双方からの依頼)の場合、各依頼者から受ける報酬をそれぞれ税込33万円を上限に計算する。試験では「改正後も売主側のみが対象」という選択肢は誤り。

なお、特例による上限額(税込33万円)はあくまで一方の依頼者から受ける報酬の上限であり、双方から受ける場合は各依頼者ごとに上限を判定する点に注意する。

当該媒介に要する費用についての説明と合意

特例による報酬計算には、当該媒介に要する費用を勘案した額 を加算する構造である。この費用については、業者と依頼者の間で あらかじめ説明し合意 しておく必要がある。事後的に加算することは原則として認められない。

改正前の告示文言は「現地調査等に要する費用に相当する額」だったが、改正後は 「当該媒介に要する費用を勘案して」 に改められた。具体的には、媒介契約・代理契約締結時に費用の見積りを提示し、依頼者の合意を得た上で報酬計算に反映する運用が標準である。合意がない場合は、通常報酬計算のみで報酬を計算する。

この説明・合意要件の趣旨は、依頼者が報酬総額を契約締結前に把握できる構造を作ることにある。低廉な空家等の特例は通常報酬を超える額を受領できる規定であるため、依頼者への透明性確保が制度設計の中核となっている。

報酬計算の限界

税込33万円を超える受領は不可

低廉な空家等の特例による報酬上限は 30万円(税抜)+消費税=税込33万円。これを超える報酬を受領した場合、業者は宅建業法上の報酬規制違反となる。具体的な違反効果は以下の通り。

業者が税込33万円を超える報酬を意図的に請求することは、業法違反として厳格に処分される。試験では「上限を超える額を当事者合意で受領可能」という選択肢は誤り。

報酬規制は強行規定であり、当事者合意によって上限を超える報酬を受領することは認められない。これは依頼者と業者の間の専門性格差・情報格差を踏まえた規制であり、他の業法強行規定(8種制限等)と同じ趣旨で運用される。

当該媒介に要する費用の範囲

「当該媒介に要する費用」とは、物件の現地調査、権利関係調査、近隣調査等に要する実費相当額を指す。広告費・営業費は含まれない。実費に基づく合理的な範囲が要件であり、業者の利益部分を含めることは認められない。

合意した費用については、契約書面・重要事項説明書面等で明示する運用が標準的である。書面化することで、後日の紛争予防と業者・依頼者双方の透明性確保を図る。

売買の低廉な空家等と貸借の長期の空家等の区別

報酬告示には空家等の特例が2系統あり、混同しないよう区別が必要だ。

区分対象告示上限の概要
低廉な空家等売買・交換(代金800万円以下)第七・第八通常報酬+費用を勘案、税込33万円
長期の空家等貸借(賃貸借)第九・第十借賃1か月分の2.2倍(税込)まで

本特例(低廉な空家等)は 売買・交換 が対象で、代金800万円以下で判定する。一方、貸借(賃貸借) については別に「長期の空家等」の特例(告示第九・第十)があり、長期間使用されていない、または将来使用の見込みがない宅地・建物の貸借の媒介・代理について、報酬を借賃1か月分の2.2倍(税込)まで受けられる(いずれも令和6年7月1日新設)。

「低廉な空家等(売買・800万円以下)」と「長期の空家等(貸借)」は 別概念 であり、対象取引も上限の考え方も異なる。試験では「貸借にも低廉な空家等の特例(800万円・税込33万円)を適用」という選択肢は誤り。

報酬規制クラスタにおける位置付けと整理

報酬規制の全体像

宅建業法の報酬規制は、以下の主要論点で構成される。

各論点は数値・計算式・適用範囲が異なるため、論点ごとに整理して暗記する必要がある。試験では複数の論点を横断する複合選択肢が頻出する。

報酬規制の制度趣旨は、業者と一般消費者の専門性格差・情報格差を踏まえ、業者が一方的に高額の報酬を要求できないよう上限を法定する点にある。低廉な空家等の特例は、この制度趣旨を維持しつつ、低価格物件の取引を業者が積極的に取り扱える構造を作る政策的調整規定として位置付けられる。

通常報酬計算との対比

低廉な空家等の特例は、通常の報酬計算(3%+6万円等の段階計算)を引き上げる派生規定。両者の関係は以下の通り。

通常計算の段階構造を整理すると、200万円以下=5%、200万円超400万円以下=4%+2万円、400万円超=3%+6万円となる。低廉な空家等の特例は、800万円以下の段階を実質的に上書きする形で、報酬を税込33万円上限に引き上げる規定として機能する。

試験での横断比較

試験では、低廉特例と通常報酬計算をセットで問う複合選択肢が出題される。「物件価格別の報酬上限」「適用範囲(売主買主双方)」「当該媒介に要する費用の加算」など、各要件をセットで暗記しておく。

加えて、報酬規制違反の効果(監督処分・罰則・返還義務)も他の業法違反と同様に押さえておく。報酬規制は強行規定であり、業者が違反すれば監督処分の対象となる。

クイズで腕試し

クイズ1

📝 オリジナル問題

低廉な空家等の特例(令和6年7月改正後)の適用対象に関する記述として、正しいものはどれか。

  1. 物件価格1,000万円以下の宅地建物の売買が対象とされている
  2. 代金800万円以下(税抜)の宅地建物の売買・交換が対象である
  3. 改正後も売主側からの媒介に限り適用されるとされている
  4. 賃貸借の媒介についても同じ特例が適用されるとされている
解説
解説 解答・解説

正解: 2

低廉な空家等の特例は、令和6年7月改正で代金800万円以下(税抜)の宅地・建物の売買・交換に適用される(告示第七・第八)。1,000万円は対象外、改正後は売主・買主双方が対象、賃貸借は別の「長期の空家等」特例(第九・第十)の対象であり混同は誤り。

クイズ2

📝 オリジナル問題

低廉な空家等の特例(改正後)の報酬上限額に関する記述として、正しいものはどれか。

  1. 上限は18万円(税抜)で改正後も据え置かれている
  2. 上限は30万円(税抜)+消費税で、税込33万円である
  3. 上限は売主側のみ税込33万円で買主側は対象外である
  4. 上限は物件価格の3%+6万円で特例による引上げはない
解説
解説 解答・解説

正解: 2

改正後の上限は30万円(税抜)+消費税=税込33万円。18万円は改正前の上限。改正後は売主・買主双方が対象であり、買主側を対象外とするのは誤り。通常計算(3%+6万円)を税込33万円まで引き上げる派生規定である。

クイズ3

📝 オリジナル問題

低廉な空家等の特例における「当該媒介に要する費用」に関する記述として、正しいものはどれか。

  1. 業者の判断で事後に自由に加算できるとされている
  2. 業者と依頼者のあらかじめの説明と合意が要件である
  3. 当該媒介に要する費用の加算は認められないとされている
  4. 広告費や営業費も加算の対象に含まれるとされている
解説
解説 解答・解説

正解: 2

当該媒介に要する費用を勘案した額の加算には、業者と依頼者のあらかじめの説明と合意が要件。事後的な加算は原則認められない。実費に基づく合理的な範囲が要件で、広告費・営業費や業者の利益部分は含められない。合計で税込33万円を超えない範囲で受領可能となる。

まとめ

  • 低廉な空家等の特例は宅建業者の 報酬計算における特例規定(国土交通省告示第七・第八)
  • 適用要件:代金800万円(税抜)以下、売主・買主双方の依頼者、説明と合意
  • 上限額:30万円(税抜)+消費税=税込33万円。通常報酬計算より高額になる場合のみ意味を持つ
  • 加算可能項目:当該媒介に要する費用を勘案した額(説明・合意要件)
  • 貸借の「長期の空家等」特例(第九・第十)とは別制度。令和6年7月改正で拡充

学習メモ: 低廉な空家等の特例は報酬論点の中核派生規定。「800万円以下」「税込33万円」「売主買主双方」「当該媒介に要する費用」の4点セットで押さえれば、試験では確実な得点源となる。通常報酬計算との対比、報酬規制クラスタ全体での位置付けを併せて確認しておくと、業法ブロック全体での理解が深まる。

特に、令和6年7月改正で対象が400万→800万円、上限が18万→税込33万円、対象が売主側のみ→売主買主双方へと拡大された点は頻出。受験年度の4月1日施行法令が出題根拠であるため、改正後の数値を正確に押さえておく。

売買の「低廉な空家等」(第七・第八)と貸借の「長期の空家等」(第九・第十)は別概念。混同しないよう、対象取引(売買か貸借か)で振り分ける習慣をつけておくと安定する。

最終チェック: 低廉な空家等の特例は報酬計算の特例規定。代金800万円(税抜)以下、売主・買主双方の依頼者、上限税込33万円。当該媒介に要する費用を勘案した額は説明と合意で加算可。業者間取引や賃貸借は対象外(賃貸借は別の長期の空家等特例)。違反は監督処分・罰則対象(100万円以下の罰金)。令和6年7月改正で対象・上限・範囲が拡大。

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