賃金総額とは?徴収法11条2項

公開: 更新: カテゴリ: 労働保険の保険料の徴収等に関する法律

30秒で結論

賃金総額とは何か(本質)

条文の趣旨

労働保険の一般保険料は、いくらの賃金にどの率を掛けるかで決まる。徴収法は、その算定基礎となる賃金総額と、何が賃金に当たるかを定めている。

一般保険料の額は賃金総額に一般保険料率を乗じて算定し(徴収法11条1項)、賃金総額とは事業主がその事業に使用するすべての労働者に支払う賃金の総額をいう(11条2項)(賃金総額の要旨)。

核心は 「一般保険料=賃金総額×率/賃金は労働の対償/算定困難な事業は特例」 という枠組み。賃金の範囲と特例をセットで押さえる。

わかりやすく言い換えると

要するに「労働保険料は、その会社が労働者に払う賃金の合計(賃金総額)に、決められた率を掛けて出す。賃金かどうかは名前ではなく『働いたことへの対価か』で決まる。建設の下請工事のように賃金の合計を出しにくい事業は、請負金額に決まった割合を掛けるなどの特別な計算でよい」ということ。

試験での位置付け

賃金総額は、徴収法で頻出の論点。一般保険料が賃金総額に率を乗じて算定される点、賃金が労働の対償か否かで判断される点、請負による建設の事業等に労務費率による特例がある点が、横断的に問われる。


なぜ重要か

出題の傾向

賃金総額をめぐる出題は、おおむね三つの形に整理できる。

押さえるとどう効くか

ここをつかんでおくと、徴収法の保険料計算がつながる。保険関係の成立 で生じた保険関係をもとに、賃金総額に 雇用保険料率 等を乗じて保険料を求め、労働保険の年度更新 で申告納付する、という形で押さえると、保険料計算の全体像が定着する。

関連論点との接続

賃金総額は、複数の論点と接続している。

「保険料をいくらの賃金から計算するか」という枠の中で、賃金総額は徴収法の保険料計算の出発点を担っている。


詳細解説

賃金総額は、三つの軸 で分解すると整理しやすい。第1軸「意義と算定基礎」、第2軸「賃金の範囲」、第3軸「算定困難な場合の特例」。順に押さえれば、算定型も範囲型も落ち着いて解ける。

ポイント1: 賃金総額はどう保険料に使うか ── 一般保険料=賃金総額×料率

意義と算定基礎を押さえる。

意義と算定基礎(徴収法11条)

論点整理
一般保険料の額賃金総額に一般保険料率を乗じて算定(11条1項)
賃金総額事業主がその事業に使用するすべての労働者に支払う賃金の総額(11条2項)
労災保険率・雇用保険率又はその合計(12条1項)
対象労働者雇用保険分は被保険者でない者の賃金を除く点に注意
位置保険料計算の出発点

ポイントは、一般保険料の額は賃金総額に一般保険料率を乗じて算定し、賃金総額とは事業主がその事業に使用するすべての労働者に支払う賃金の総額をいう こと(徴収法11条1項・2項)。賃金総額にどの率を乗じるかは保険関係の区分による。なお、労働保険料には一般保険料のほかに印紙保険料があるが(徴収法10条2項)、印紙保険料は日雇労働被保険者について賃金日額の区分ごとの定額で課されるもので(徴収法22条)、賃金総額に率を乗じて計算する一般保険料とは算定の仕組みが異なる。

ポイント2: 何が賃金に含まれるか ── 労働の対償なら名称を問わず賃金

賃金の範囲を押さえる。

賃金の範囲(徴収法2条2項・通達整理)

定義名称のいかんを問わず労働の対償として事業主が労働者に支払うもの(2条2項)
判断軸名称ではなく労働の対償性があるか
含まれる例基本給・時間外手当・家族手当・通勤手当・賞与・休業手当等
含まれない例退職金・結婚祝金等の任意恩恵的給付・解雇予告手当・実費弁償
福利厚生制服・福利厚生的な住宅貸与の利益等は原則として含まれない

ポイントは、徴収法上の賃金は、賃金・給料・手当・賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うものであり、任意恩恵的給付・実費弁償・福利厚生的給付は原則として賃金総額に算入されない こと(徴収法2条2項)。判断は名称ではなく労働の対償性で行う。通貨以外のもので支払われる賃金(現物給与)も、厚生労働省令で定める範囲のものは賃金に含まれ、その評価額を賃金総額に算入する(徴収法2条2項かっこ書)。食事や住居の供与など現物給与の評価額は告示で定められ年度で改定され得るため、受験年度の資料で確認する。

ポイント3: 算定が困難なときどうするか ── 請負建設は請負金額×労務費率

算定困難な場合の特例を押さえる。

算定困難な場合の特例(徴収法11条3項・徴収則)

論点整理
原則算定困難な省令指定事業は省令所定の方法で算定(11条3項)
請負建設請負金額に労務費率を乗じて算定(徴収則12条1号・13条)
立木伐採素材1立方メートル当たりの労務費に生産素材の材積を乗じる(則14条)
林業・水産等平均賃金相当額に使用期間総日数を乗じる等(則12条3号4号・15条)
注意労務費率等は告示・年度改定で動くため受験年度で確認

ポイントは、賃金総額の算定が困難な厚生労働省令で定める事業については、請負による建設の事業は請負金額に労務費率を乗じ、立木の伐採の事業は素材1立方メートル当たりの労務費に材積を乗じる等の特例により賃金総額を算定する こと(徴収法11条3項・徴収則12条以下)。労務費率等の具体的数値は受験年度の資料で確認する。

ポイント4: 哲学コラム ── 賃金総額が映す「実態に即して保険料を測る設計」

賃金総額という仕組みは、単なる計算基礎ではなく、「働いたことへの対価を、実態に即して保険料に反映する」という設計思想 を映している。法は、名称に惑わされず労働の対償だけを賃金として束ね、賃金の集計が現実に難しい建設や林業には請負金額や材積を手がかりにした特例を用意した。対価は対価として正確に、測りにくいものは実態に近い方法で ── どれも「保険料が、その事業で実際に働いた価値に見合った形で公平に算定される」ことを実現するための仕組みだ。シカクエが「仕組みで攻略する」と伝えているのは、こうした趣旨ごと理解すると、暗記が記憶として根づき、応用が利くようになるからだ。

賃金総額の総整理

ここまでを整理する。第1に意義と算定基礎(一般保険料=賃金総額×一般保険料率/賃金総額=全労働者に支払う賃金の総額・徴収法11条)、第2に賃金の範囲(労働の対償なら名称を問わず賃金・任意恩恵等は不算入・2条2項)、第3に特例(請負建設は請負金額×労務費率/立木伐採は素材材積等・11条3項則12条以下)。この軸を順に当てはめれば安定して解ける。


よくある間違い・注意点

間違いパターン1: 「一般保険料は労働者数に定額を乗じて算定する」

これは誤り。一般保険料の額は賃金総額に一般保険料率を乗じて算定する。労働者数による定額計算と取り違えない。

間違いパターン2: 「○○手当という名称の給付はすべて賃金総額に算入される」

これも誤り。賃金は名称ではなく労働の対償性で判断し、任意恩恵的給付・実費弁償・福利厚生的給付は原則として算入されない。名称で一律に判断しない。

一般保険料=賃金総額×一般保険料率(徴収法11条1項)。賃金総額=全労働者に支払う賃金の総額(11条2項)。賃金は労働の対償で判断(2条2項)。算定困難な請負建設等は労務費率等の特例(11条3項)。「定額計算」「名称で一律算入」「特例はない」はいずれも誤り。

間違いパターン3: 「請負による建設の事業も通常どおり賃金を集計して賃金総額とする」

これも誤り。請負による建設の事業は賃金総額の算定が困難なため、請負金額に労務費率を乗じる特例で賃金総額を算定する。通常の集計と取り違えない。

似た用語との違い

雇用保険料率 は賃金総額に乗じる率の一つ、賃金総額はその率を乗じる算定基礎そのもの ── 乗じる率か率を乗じる基礎かが違う、と並べて押さえると混ざらない。


試験での出題パターン

完全自作のオリジナル問題で確認する。過去問そのままではない。

オリジナル問題1(基本論点)

📝 オリジナル問題 1 基本論点

徴収法の賃金総額に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 一般保険料は労働者の人数に定額を乗じて算定するものとされる
  2. 一般保険料は事業主の資本金の額を基礎に算定するものとされる
  3. 一般保険料は賃金総額に一般保険料率を乗じて算定する額である
  4. 一般保険料は事業の売上高に一定率を乗じて算定するものである
セーフビーバ
セーフビーバ 解答・解説

解答は 3 だよ。

算定基礎を問う基本論点なんだ。

選択肢判定理由
1賃金総額×率
2資本金でない
3賃金総額×率
4売上でない

賃金総額に率を乗じて算定——ここを固めるのが第一歩だよ。

オリジナル問題2(応用論点)

📝 オリジナル問題 2 応用論点

徴収法上の賃金の範囲に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 賃金は手当という名称があれば一律に賃金総額に算入するものだ
  2. 退職金や任意恩恵的な祝金は原則として賃金総額に算入される
  3. 実費弁償的な出張旅費も労働の対償として賃金に当たるものだ
  4. 賃金は名称を問わず労働の対償として支払うものをいうものだ
ロウミーア
ロウミーア 解答・解説

解答は 4 だっ。

賃金の範囲を問う応用論点だっ。

選択肢判定理由
1対償性で判断
2原則不算入
3実費弁償
4労働の対償

名称でなく労働の対償性で判断——区別で見るのが要だっ!

オリジナル問題3(特殊論点:算定の特例)

📝 オリジナル問題 3 特殊論点:算定の特例

賃金総額の算定の特例に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 請負による建設の事業も通常どおり賃金を集計するものとされる
  2. 請負による建設の事業は請負金額に労務費率を乗じて算定する
  3. 立木の伐採の事業に賃金総額の特例は設けられていないものだ
  4. 算定が困難でも特例はなく必ず実際の賃金を用いるものとされる
ロウタイテイ
ロウタイテイ 解答・解説

解答は 2 である。

算定の特例を問うものである。

選択肢判定理由
1特例で算定
2請負金額×率
3特例がある
4特例がある

請負建設は請負金額に労務費率を乗じると押さえるのが肝要である。


まとめ

賃金総額は、保険料を実態に即して測るための、徴収法11条・2条2項の算定基礎。意義と算定基礎/賃金の範囲/算定困難な場合の特例 ── この三軸を押さえれば、算定型も範囲型も安定して解ける。

押さえどころ3つ

  1. 意義と算定基礎: 一般保険料の額=賃金総額×一般保険料率(徴収法11条1項)/賃金総額=事業主がその事業に使用するすべての労働者に支払う賃金の総額(11条2項)
  2. 賃金の範囲: 名称のいかんを問わず労働の対償として支払うもの(徴収法2条2項)/含まれる例は基本給・各種手当・賞与・通勤手当・休業手当等/退職金・任意恩恵的給付・解雇予告手当・実費弁償・福利厚生的給付は原則不算入
  3. 算定困難な場合の特例: 省令指定事業は省令所定の方法で算定(11条3項)/請負による建設の事業は請負金額×労務費率(徴収則12条1号・13条)/立木の伐採は素材材積等/労務費率等は受験年度で確認

次に学ぶべき関連用語

賃金総額をつかんだら、率を乗じる前提の 保険関係の成立 を読み返し、賃金総額に乗じる 雇用保険料率 と、賃金総額を基礎に申告納付する 労働保険の年度更新 を確かめると、保険料計算の全体像が立体的になる。

論点を一つずつ積み上げれば、見える景色は確かに変わっていく。賃金総額は徴収法の保険料計算の出発点。ここを越えれば、保険料率や年度更新の各論点が順につながって見えてくる。

学習の進め方の目安

賃金総額を自分のものにできたかは、次の三つの問いで確かめられる。「一般保険料が賃金総額に一般保険料率を乗じて算定されることを述べられるか」「賃金が名称ではなく労働の対償性で判断され任意恩恵的給付等が原則不算入であることを説明できるか」「請負による建設の事業等に労務費率等による特例がある点を区別できるか」。即答できなければ、該当のセクションに戻ればいい。戻ることは後退ではなく、定着への近道になる。


執筆: SikakuQuest編集部

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