解雇予告とは何か?理解する3つの軸
解雇予告の話は、3つの軸で整理できます。
- 30日前予告 OR 30日分予告手当: 二者択一で使用者が選択(労基法20条1項本文)
- 適用除外3類型: 天災等/労働者の責に帰すべき事由/試用期間14日以内 等(労基法20条但書・21条)
- 違反時の罰則: 6月以下の懲役または30万円以下の罰金(労基法119条1項1号)
ここがポイント。使用者は予告日数と手当を組み合わせて短縮できるということ。たとえば10日後に解雇したいなら、20日分の予告手当を支払えば足ります(20条2項)。
それから、適用除外には行政官庁の認定が必要という事実。天災等や労働者の責に帰すべき事由でも、労働基準監督署長の認定なく即日解雇すると違法解雇になります。
なぜそう言えるのか、3つの軸を順番に見ていきます。
なぜ30日前の予告が必要?——労基法20条1項本文
条文の規定
「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日以上の平均賃金を支払わなければならない。」(労基法20条1項本文)
シンプルですが、労働者保護の二択を法律が明確に定めている重要規定です。
トリビア:労基法20条「30日前」は1947年制定以来79年間不変
労働基準法は 1947年(昭和22年)4月施行。その20条1項の「30日前」という日数は、現在に至るまで 79年間一度も改正されていません。世界的に見ても日本の30日は 比較的長め で、たとえば米国の at-will employment(随意雇用)原則では予告期間そのものが州や契約による任意設定です(*WARN法*等の集団解雇規制を除く)。
30日と予告手当の組み合わせ計算
労基法20条2項により、予告日数と手当は1日単位で組み合わせ可能です。
予告日数と手当の組み合わせ例
平均賃金とは
予告手当の計算基礎となる 平均賃金 は、労基法12条1項で次のとおり定義されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 算定期間 | 解雇日直前3ヶ月間 |
| 分母 | 当該期間の暦日数(90日前後) |
| 分子 | 当該期間の賃金総額(賞与等は除外) |
| 例外 | 計算結果が「日給×60%」を下回る場合は最低保障 |
私たちが取材した労働法専門の弁護士の話では、「予告手当の計算は平均賃金の確定がカギ。賃金台帳を必ず確認」とのこと。月給制の場合は月給を月の暦日数で割るのが基本です。
予告なしで解雇できる場合は?——適用除外3類型(労基法20条但書・21条)
但書: 天災等と労働者の責に帰すべき事由
労基法20条1項但書により、以下2つの事由では予告義務が 免除 されます。
20条但書 適用除外2類型
但書適用には行政官庁の認定が必須
労基法20条3項により、労働基準監督署長の認定 がなければ但書を援用できません。
- 使用者の独断で「天災だ」「労働者の責任だ」と判断することを禁止
- 認定申請から認定までは数日〜数週間かかるのが通例
- 認定なしで即日解雇すると、たとえ事由が真実でも労基法20条違反
21条: 短期労働者等への適用除外
労基法21条により、以下4類型は 予告義務そのものが適用されません。
| 類型 | 内容 | 例外条件 |
|---|---|---|
| 日雇い労働者 | 日々雇われる者 | 1ヶ月超継続使用で適用 |
| 2ヶ月以内契約 | 期間2ヶ月以内 | 契約期間超過で適用 |
| 4ヶ月以内季節労働 | 季節的業務4ヶ月以内 | 契約期間超過で適用 |
| 試用期間中 | 試用期間中の者 | 14日超継続使用で適用 |
実務家の視点から言えば、試用期間中の14日が事実上の「お試し期間」 として機能します。試用開始から14日以内なら予告なし解雇が可能ですが、15日目以降は通常の解雇予告ルールが適用されます。
予告なし解雇は無効?——違反時の効果(労基法119条と民事的有効性)
刑事罰: 6月以下の懲役または30万円以下の罰金
労基法20条違反は 労基法119条1項1号 に基づき、6月以下の懲役または30万円以下の罰金 が科されます。両罰規定(121条)により法人にも罰金が科される点も重要です。
解雇の民事的効力
刑事罰とは別の論点として、予告手続違反の解雇は民事的に有効か が問われます。判例の立場は次のとおり。
- 原則無効説(最判昭和35年3月11日 細谷服装事件): 予告手続違反の解雇は当然に無効
- 相対的無効説(同判例): ただし、使用者が予告手当を後から支払う、または30日経過まで効力発生を遅らせる場合は有効化可
- 実務帰結: 解雇通知時点では無効だが、後の手当支払いで治癒される
解雇予告手当の支払時期
労基法施行規則8条により、解雇予告手当は解雇通知と同時 or 解雇日までに支払い が必要です。後払いは違法ですが、紛争予防の観点で実務では銀行振込や手渡しで証拠を残すのが一般的です。
私たちが取材した労働法専門の弁護士の話では、「予告手当の未払いは即時に労基署相談・労働審判の対象。証拠(賃金台帳・解雇通知書・振込明細)が揃えば回収可能性は高い」とのこと。
- 解雇予告制度の核心は 20条本文・但書・21条・119条 の4条文
- 30日前予告 OR 30日分予告手当(労基法20条1項本文)の二者択一、組み合わせ短縮可
- 平均賃金(労基法12条1項)= 直前3ヶ月の賃金総額 ÷ 期間の暦日数
- 適用除外は 天災等・労働者の責に帰すべき事由(20条但書) の2類型、いずれも 労基署長の認定が必須(20条3項)
- 21条で 日雇い/2ヶ月以内/4ヶ月以内季節労働/試用14日以内 は予告義務の対象外
- 違反は 6月以下の懲役または30万円以下の罰金(労基法119条1項1号)
- 民事的には 相対的無効説(最判昭和35年3月11日 細谷服装事件)が判例規範
- 1947年制定以来 79年間「30日」は不変——労働者保護の最低限ライン
理解度チェック
ここまでの内容、どれくらい身についたかチェックしてみよう。
解雇予告に関する労基法20条1項本文のルールについて、正しい説明はどれか。
- 使用者は解雇日の14日前までに予告すれば足りるという扱い
- 解雇予告は不要、即日解雇が原則認められるという原則
- 30日前の予告または30日分の予告手当が必要となる仕組み
- 解雇予告は労働者の同意があれば省略できる規定がある
解答は 3 である。
労基法20条1項本文は、①30日前の予告 または ②30日分以上の平均賃金(予告手当)の支払い の二者択一を定める。両者は組み合わせ可能で、たとえば10日前予告なら20日分の手当で適法となる。労働者の生活基盤を守る最低ラインで、1947年の制定以来79年間「30日」は不変。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ 誤り | 14日ではなく30日前 |
| 2 | ✗ 誤り | 即日解雇は予告手当があれば可、原則ではない |
| 3 | ✓ 正解 | 労基法20条1項本文の正しい二択 |
| 4 | ✗ 誤り | 同意による省略の規定はない |
30日前予告と予告手当の二者択一——これが解雇予告制度の核心なのである。
労基法20条の適用除外について、正しい説明はどれか。
- 天災等のやむを得ない事由で行政官庁の認定があれば不要
- 使用者が30日分の手当を社内預金から控除すれば不要となる扱い
- 労働者が不満を述べた場合は予告義務が消滅するという仕組み
- 解雇通知書を口頭で行えば書面交付なく予告完了する原則
解答は 1 である。
労基法20条1項但書により、①天災事変その他やむを得ない事由 ②労働者の責に帰すべき事由 の2類型は予告義務が免除される。ただし同条3項により 労働基準監督署長の認定が必須 で、認定なしの即日解雇は事由が真実でも違法。21条で日雇い等の短期労働者は適用除外、特に 試用期間14日以内 が実務では重要。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ 正解 | 20条但書+3項の正しい仕組み |
| 2 | ✗ 誤り | 社内預金控除で免除される規定はない |
| 3 | ✗ 誤り | 労働者の不満で消滅する規定はない |
| 4 | ✗ 誤り | 口頭通知でも予告は成立、書面義務は別論点 |
天災等+労働者の責に帰すべき事由+行政認定——これが但書の核心なのである。
解雇予告義務違反の効果について、正しい説明はどれか。
- 解雇予告違反は労使間の任意問題で罰則はないという原則
- 違反は刑事罰のみで民事的には有効解雇となる仕組み扱い
- 違反は民事的にも刑事的にも問題なく解雇有効となる扱い
- 6月以下の懲役または30万円以下の罰金が定められている
解答は 4 である。
労基法119条1項1号により、20条違反は 6月以下の懲役または30万円以下の罰金。両罰規定(121条)で法人にも罰金が科される。民事的には 相対的無効説(最判昭和35年3月11日 細谷服装事件) が判例規範で、解雇通知時は無効だが後の手当支払いで治癒される構造。労基署相談・労働審判で予告手当の回収が可能。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ 誤り | 119条で罰則あり |
| 2 | ✗ 誤り | 民事的にも相対的無効、有効ではない |
| 3 | ✗ 誤り | 民事・刑事両方で違法問題あり |
| 4 | ✓ 正解 | 労基法119条1項1号の正しい罰則 |
刑事罰+民事的相対的無効——これが違反時の効果の核心なのである。
おわりに
解雇予告制度は、知っているか知らないかで動き方が大きく変わる典型例です。今日見た3つの基本——30日二択・除外3類型・119条罰則——を覚えておけば、解雇通知を受けた時の地図が手に入ります。
自分の権利を知るというのは、誰かに任せきりにするのではなく、自分で判断できる材料を持つこと。法律はそのための道具です。
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