共通フレーム(SLCP)とは(全体像)
システム開発では、頼む側(発注者)と作る側(受注者)がいる。ところが、同じ「要件定義」という言葉でも、両者で思い浮かべる中身がずれていると、「言った・言わない」のトラブルになりやすい。
そこで、共通フレーム(SLCP)は、開発の流れや作業を、共通の言葉でそろえて示す決まりとして用意された。これを土台にすれば、発注者と受注者が同じ言葉・同じ区切りで話せるようになる。
「SLCP」は「Software Life Cycle Process」の略で、ソフトウェアの一生(企画 → 要件定義 → 開発 → 運用 → 保守)全体を意味する。作ったのは、IPA(情報処理推進機構)という国の機関だ。
詳しく:目的と「推奨」という性格
ここが心臓部。共通フレームの中身を、目的と性格の面から押さえよう。
共通フレーム(SLCP)の要点
| 観点 | 中身 |
|---|---|
| 目的 | 発注者と受注者が、同じ言葉・同じ理解で開発を進められるようにする |
| 対象 | 企画・要件定義・開発・運用・保守という、開発の流れ全体 |
| 作った主体 | IPA(情報処理推進機構)という国の機関 |
| 性格 | 強制ではなく「推奨の標準」(契約で取り入れるかを決める) |
とくに大事なのが、「推奨の標準」であること。共通フレームは、必ず従わなければならない強制のルールではない。使うかどうかは、発注者と受注者の契約で決める。共通の物差しとして「使うと便利だから推奨されている」もの、と押さえておきたい。
もうひとつ。共通フレームは、役割と責任をはっきりさせるのにも役立つ。「どの作業を、どちらが担当するか」を共通の言葉で確認できるので、あいまいさが減る。
わかりやすく言い換えると
身近なたとえで整理しよう。
共通フレームは、家を建てるときの「施主と工務店が使う共通の用語集」のイメージ。「基礎」「上棟」などの言葉の意味をそろえておけば、打ち合わせで話がかみ合う。要するに、頼む側と作る側の言葉のずれをなくす道具だ。
「推奨の標準」というのは、おすすめのテンプレートだが、使うかは自由ということ。つまり、法律のように必ず守るものではなく、契約で「これに沿って進めよう」と決めて使うものだ。
IPAが作った、というのは、国の機関がまとめた信頼できる共通ルールという意味。みんなが共通の土台にできるよう用意されている、と考えると分かりやすい。
試験のツボ
🔴 一番出る:共通フレームの目的
①頼む側(発注者)と作る側(受注者)の共通の言葉
②同じ言葉・同じ理解で開発を進められるようにする
🔴 次に出る:作った主体と対象
①作ったのはIPA(情報処理推進機構)という国の機関
②企画から運用・保守まで、開発の流れ全体が対象
🟡 押さえると安定:推奨の標準
①必ず従う強制ルールではない
②契約で取り入れるかを決める「推奨の標準」
よくある間違い
①「共通フレームは、必ず従わなければならない強制のルールだ」→ ✗ 共通フレームは推奨の標準。使うかどうかは、契約で決める。
②「共通フレームは、作る側(受注者)だけが使う社内ルールだ」→ ✗ 頼む側(発注者)と作る側(受注者)が、共通の言葉として使うもの。
③「共通フレームを作ったのは、特定の1つの民間企業だ」→ ✗ 作ったのは、IPA(情報処理推進機構)という国の機関。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(共通フレームとは)
共通フレーム(SLCP)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 頼む側と作る側が、同じ言葉・同じ理解で開発を進めるための共通の決まりである
- 完成したシステムの不具合を、運用を続けながら直していく日々の作業のことである
- 社員の出退勤の時刻を記録して、毎月の給与を計算するためのしくみである
- 取引先へ毎月の請求書を郵送する、決まった事務作業のことだけを指している
解答は 1 だよ。
共通フレームは、頼む側(発注者)と作る側(受注者)が、同じ言葉・同じ理解で開発を進めるための共通の決まりだよ。言葉のずれをなくす道具なんだ。
選択肢2は運用中の修正、選択肢3は勤怠と給与、選択肢4は請求書の事務で、どれも違うよ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 発注者と受注者の共通の決まりで正しい |
| 2 | ✗ | 運用中の不具合修正の話 |
| 3 | ✗ | 勤怠・給与のしくみの話 |
| 4 | ✗ | 請求書の事務の話 |
オリジナル問題2(作った主体)
共通フレーム(SLCP)を作った主体として、最も適切なものはどれか。
- システム開発を行う、特定の1つの民間企業が、あくまで社内向けに作ったものである
- 開発を頼む発注者が、自分の会社だけのために独自に作ったものである
- IPA(情報処理推進機構)という国の機関が、共通の標準として作ったものである
- 海外の旅行会社が、観光客向けの案内のために作ったものを指している
解答は 3 だよ。
共通フレームを作ったのは、IPA(情報処理推進機構)という国の機関だよ。みんなが土台にできる共通の標準として用意されたんだ。
選択肢1や2の「特定の会社だけ」、選択肢4の「旅行会社」は、いずれも誤りだよ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 特定の1社が作ったものではない |
| 2 | ✗ | 発注者が独自に作ったものではない |
| 3 | ✓ | IPA(国の機関)が作った標準で正しい |
| 4 | ✗ | 旅行会社が作ったものではない |
オリジナル問題3(推奨の標準)
共通フレーム(SLCP)の性格に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 必ず従わなければならず、従わないと罰せられる強制のルールである
- 強制ではなく推奨の標準で、契約で取り入れるかを決めるものである
- 一度使い始めたら、二度と内容を見直してはいけない決まりである
- 開発とは関係がなく、社員旅行の日程を決めるためのものである
解答は 2 だよ。
共通フレームは、強制ではなく推奨の標準で、契約で取り入れるかを決めるものだよ。法律のように必ず守るものではないんだ。
選択肢1の「強制で罰せられる」、選択肢3の「見直し禁止」、選択肢4の「社員旅行」は、いずれも誤りだよ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 強制のルールではない |
| 2 | ✓ | 推奨の標準で契約で決めるで正しい |
| 3 | ✗ | 見直してはいけない決まりではない |
| 4 | ✗ | 社員旅行とは関係がない |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 目的 = 頼む側(発注者)と作る側(受注者)が、同じ言葉・同じ理解で開発を進めるための共通の決まり。
- 🔴 作った主体 = IPA(情報処理推進機構)という国の機関。企画から運用・保守まで全体が対象。
- 🟡 性格 = 強制ではなく推奨の標準。契約で取り入れるかを決める。
次に学ぶ
- 情報システム化計画 ── システムを作る前の計画。共通フレームは、その進め方の言葉をそろえる土台になる。
執筆: SikakuQuest編集部