裁判の公開とは(全体像)
裁判の公開とは、裁判を密室で行わず、だれでも傍聴できる公開の法廷で行うという原則のこと。公正な裁判を、外から見えるようにするための仕組みだ。
ここで2つの言葉を区別する。
- 対審 … 訴訟の当事者が、法廷で主張や証拠を戦わせる手続。
- 判決 … 裁判所が結論を言いわたすこと。
原則として、対審も判決も公開される。ただし、例外として対審を非公開にできる場合がある。これが次の論点だ。なお、判決はどんな場合でも公開で、非公開にはできない。
詳しく:3層構造をこの表で押さえる
ここが記事の心臓部。裁判の公開は、「対審と判決の区別」と「絶対公開事件」が問われやすい。
裁判の公開の3層構造
| 層 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 原則 | 対審も判決も公開 | 公開がたてまえ |
| 対審の非公開 | 裁判官全員一致で公序良俗を害するおそれありと決した場合 | 非公開にできるのは対審だけ |
| 絶対公開 | 政治犯罪・出版に関する犯罪・人権が問題の事件の対審 | 常に公開(非公開にできない) |
| 判決 | どんな場合も公開 | 非公開にできない |
まず対審の非公開。裁判官が全員一致で、「公開すると公序良俗を害するおそれがある」と決めた場合にかぎり、対審を非公開にできる。ただし、判決は別で、どんな場合でも公開される。「判決も非公開にできる」と読むのは誤りだ。
次に絶対公開事件。たとえ非公開にできそうな場合でも、政治犯罪・出版に関する犯罪・憲法が保障する人権が問題となる事件の対審は、必ず公開しなければならない。これらは、密室で裁かれると危険が大きいため、例外として非公開を認めない。
わかりやすく言い換えると
つまり、裁判の公開は「裁判をガラス張りにするルール」とイメージするとつかみやすい。原則として、審理(対審)も結論(判決)もガラス越しに見える。
要するに、カーテンを閉められる(非公開にできる)のは「対審」だけで、しかも裁判官全員一致という重い条件がいる。結論である「判決」のカーテンは、どんなときも閉められない(常に公開)。
そして、政治犯罪など特に大事な事件は、対審のカーテンも閉められない(絶対公開)。権力が都合の悪い裁判を密室に隠せないようにするためだ——ここが試験のキモになる。
試験のツボ
🔴 一番出る:判決は常に公開(対審だけ非公開にできる)
①非公開にできるのは対審だけ
②判決はどんな場合でも公開(非公開にできない)
🔴 次に出る:絶対公開事件
①政治犯罪・出版に関する犯罪・人権が問題となる事件の対審
②これらは必ず公開(非公開にできない)
🟡 押さえると安定:対審を非公開にする要件
①裁判官の全員一致が必要
②「公序良俗を害するおそれがある」と決した場合
よくある間違い
①「判決も非公開にできる」→ ✗ 非公開にできるのは対審だけ。判決は常に公開。
②「政治犯罪も、公序良俗を害するなら対審を非公開にできる」→ ✗ 政治犯罪などの事件の対審は絶対公開。非公開にできない。
③「対審は、裁判長一人の判断で非公開にできる」→ ✗ 裁判官の全員一致が必要。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(公開の原則)
裁判の公開の原則について、正しいものはどれか。
- 裁判は、対審も判決もすべて非公開で行うのが原則だとされているのである
- 裁判は、判決だけを公開し、対審はつねに非公開とするのが原則だとされている
- 裁判の公開は、当事者が希望したときにのみ認められるものとされているのである
- 裁判は、対審も判決もともに公開の法廷で行うのが原則だとされているのである
解答は 4 である。
裁判は、対審も判決も公開の法廷で行うのが原則なり。
選択肢1「すべて非公開が原則」、選択肢2「対審はつねに非公開」、選択肢3「当事者が希望したときのみ公開」は、いずれも公開原則を取り違えた誤りである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 公開が原則 |
| 2 | ✗ | 対審も原則は公開 |
| 3 | ✗ | 希望の有無にかかわらず公開が原則 |
| 4 | ✓ | 対審も判決も公開が原則で正しい |
オリジナル問題2(判決の公開)
対審と判決の公開について、正しいものはどれか。
- 判決は常に公開で、非公開にできるのは対審だけだとされているのである
- 判決も対審も、裁判官の判断で自由に非公開にできるとされているのである
- 判決は非公開にできるが、対審は常に公開しなければならないとされているのである
- 判決は、当事者が同意すれば非公開にできるものとされているのである
解答は 1 である。
判決は常に公開で、非公開にできるのは対審だけなり。判決を非公開にすることはできない。
選択肢2「判決も対審も非公開にできる」、選択肢3「判決は非公開にできる」、選択肢4「判決は当事者の同意で非公開にできる」は、いずれも判決が常に公開である点に反し誤りである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 判決は常に公開・対審だけ非公開で正しい |
| 2 | ✗ | 判決は非公開にできない |
| 3 | ✗ | 非公開にできるのは対審 |
| 4 | ✗ | 判決は同意があっても非公開にできない |
オリジナル問題3(絶対公開事件)
対審を非公開にできない事件について、正しいものはどれか。
- どのような事件でも、裁判官の全員一致があれば対審を非公開にできるとされている
- 政治犯罪・出版に関する犯罪・人権が問題となる事件の対審は、常に公開される
- 政治犯罪の対審は、公序良俗を害するおそれがあれば非公開にできるとされている
- 人権が問題となる事件の対審は、当事者が望めば非公開にできるとされている
解答は 2 である。
政治犯罪・出版に関する犯罪・憲法が保障する人権が問題となる事件の対審は、常に公開される(絶対公開)。非公開にできない。
選択肢1「どのような事件でも全員一致なら非公開にできる」は絶対公開事件を見落とした誤り。選択肢3・4も、絶対公開事件を非公開にできるとする点で誤りなり。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 絶対公開事件は非公開にできない |
| 2 | ✓ | 政治犯罪などの対審は常に公開で正しい |
| 3 | ✗ | 政治犯罪の対審は非公開にできない |
| 4 | ✗ | 人権が問題の対審は望んでも非公開にできない |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 判決は常に公開 = 非公開にできるのは対審だけ。判決は非公開にできない。
- 🔴 絶対公開事件 = 政治犯罪・出版に関する犯罪・人権が問題となる事件の対審は、必ず公開。
- 🟡 対審の非公開の要件 = 裁判官の全員一致で、公序良俗を害するおそれありと決した場合。
次に学ぶ
- 司法権の独立 ── 公正な裁判を支える独立。裁判の公開とあわせて司法の土台が見える。
- 違憲審査制 ── 裁判所が憲法適合性を審査する制度。司法の役割の理解が深まる。
- 国民主権 ── 裁判を国民に見えるようにする公開原則の背景にある考え方。
執筆: SikakuQuest編集部