幸福追求権とは(全体像)
幸福追求権とは、憲法が一つひとつ書ききれなかった大切な権利を受け止める、いわば「受け皿」の権利のこと。
憲法が作られた当時には想定されていなかったけれど、社会の変化で「これも守られるべきだ」と考えられるようになった権利がある。たとえば、自分の情報をむやみに公開されないプライバシー権や、自分の生き方を自分で決める自己決定権。こうした権利は条文に明文がない。
そこで登場するのが幸福追求権だ。明文のない「新しい人権」を、この包括的な権利を根拠にして導く。だから幸福追求権は、人権規定全体の総則のような位置づけをもつ。
ポイントは、「幸福追求」という言葉が広いからといって、何でも保障されるわけではないこと。ここに通説の考え方がからむ。
詳しく:保障の範囲と新しい人権をこの表で押さえる
ここが記事の心臓部。幸福追求権は、「どこまで保障するか(学説)」と「新しい人権との関係」が問われやすい。
幸福追求権をめぐる2つの考え方と具体例
| 論点 | 内容 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 人格的利益説 | 人格的自律に不可欠な権利だけを保障 | 通説 |
| 一般的自由説 | あらゆる生活行為の自由を広く保障 | 少数説 |
| 新しい人権 | プライバシー権・自己決定権など | 明文なし・幸福追求権が根拠 |
通説(人格的利益説)は、幸福追求権が保障するのを「人格的自律に不可欠な権利」に絞る。つまり、生き方の根幹にかかわる重要な利益を守る、という考え方だ。これに対し、あらゆる行為の自由を広く認める一般的自由説は少数説にとどまる。
そして、プライバシー権などの新しい人権は、条文に明文があるわけではない。幸福追求権を根拠に、判例の積み重ねで認められてきた。「条文に書いてあるはず」と思い込むと間違える定番ポイントだ。
わかりやすく言い換えると
つまり、幸福追求権は「個別の引き出しに入りきらない権利を受け止める、大きな箱」とイメージするとつかみやすい。
表現の自由や財産権のように、専用の引き出し(個別の条文)がある権利は、そこに入れる。だが、プライバシー権のように専用の引き出しがない権利は、この大きな箱(幸福追求権)が受け止める。
要するに、この箱は何でも放り込めるわけではない。通説は「人格的自律に不可欠な、本当に大事な権利」だけを入れると考える。そして、箱から取り出された新しい人権は、もともと条文に書いてあったのではなく、判例が箱を根拠に認めてきたものだ。
試験のツボ
🔴 一番出る:新しい人権の根拠
①幸福追求権は、明文のない新しい人権(プライバシー権・自己決定権など)を導く根拠
②これらは条文に明文がなく、判例で認められてきた
🔴 次に出る:保障の範囲(通説)
①通説(人格的利益説)は「人格的自律に不可欠な権利」だけを保障すると考える
②あらゆる行為の自由を広く認める一般的自由説は少数説
🟡 押さえると安定:条文上の位置づけ
①根拠は「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」(13条後段)
②人権規定全体の総則のような包括的な権利
よくある間違い
①「新しい人権なら何でも幸福追求権で保障される」→ ✗ 通説は「人格的自律に不可欠な権利」に絞る(人格的利益説)。
②「プライバシー権は条文に明文で書かれている」→ ✗ 明文はない。幸福追求権を根拠に判例で認められた新しい人権。
③「幸福追求権は個別に列挙された権利だけを指す」→ ✗ 個別の権利に限らず、明文のない権利も受け止める包括的な権利。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(幸福追求権の意味)
幸福追求権の意味について、正しいものはどれか。
- 幸福追求権は、憲法に明文で個別に列挙された権利だけを指すものとされているのである
- 幸福追求権は、国家が国民に幸福を保障する義務を負うことを定めた規定であるとされる
- 幸福追求権は、経済的に豊かになる権利だけを保障する規定だとされているのである
- 幸福追求権は、憲法に明文のない新しい人権を導く根拠となる包括的権利であるとされる
解答は 4 である。
幸福追求権は、憲法に明文のない新しい人権を導く根拠となる包括的な権利なり。人権規定全体の総則のような位置づけをもつ。
選択肢1「個別に列挙された権利だけ」は逆で誤り。選択肢2「国家が幸福を保障する義務」、選択肢3「経済的に豊かになる権利だけ」も誤りなり。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 明文のない権利も受け止める包括的権利 |
| 2 | ✗ | 国家の幸福保障義務を定めたものではない |
| 3 | ✗ | 経済的な権利だけを保障するものではない |
| 4 | ✓ | 新しい人権を導く包括的権利で正しい |
オリジナル問題2(保障の範囲)
幸福追求権が保障する範囲について、通説の立場から正しいものはどれか。
- 通説は、幸福追求権が人格的自律にとって不可欠な権利を保障するものと解している
- 通説は、幸福追求権があらゆる生活行為の自由をすべて保障すると解しているのである
- 通説は、幸福追求権は具体的な権利を一切導かない理念にすぎないと解しているのである
- 通説は、幸福追求権が経済活動の自由だけを特別に保障すると解しているのである
解答は 1 である。
通説(人格的利益説)は、幸福追求権が人格的自律に不可欠な権利を保障すると解するなり。生き方の根幹にかかわる重要な利益を守る、という考え方である。
選択肢2「あらゆる生活行為の自由をすべて」は一般的自由説で、少数説にとどまり誤り。選択肢3「理念にすぎない」、選択肢4「経済活動の自由だけ」も誤りなり。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 人格的自律に不可欠な権利を保障で正しい |
| 2 | ✗ | あらゆる自由を保障するのは少数説 |
| 3 | ✗ | 具体的な権利を導く根拠になる |
| 4 | ✗ | 経済活動の自由だけを保障するのではない |
オリジナル問題3(プライバシー権の根拠)
プライバシー権の憲法上の根拠について、正しいものはどれか。
- プライバシー権は憲法に明文で規定された権利で、条文にそのまま書かれているものである
- プライバシー権は憲法に明文がなく、幸福追求権を根拠に判例で認められた新しい人権である
- プライバシー権は法律にも憲法にも根拠がなく、判例も認めていない権利であるとされている
- プライバシー権は経済的自由の一つで、財産権の規定を根拠に保障されるものとされている
解答は 2 である。
プライバシー権は憲法に明文がなく、幸福追求権を根拠に、判例で認められてきた新しい人権なり。
選択肢1「明文で規定」は誤り。選択肢3「判例も認めていない」も誤りで、判例で確立されている。選択肢4「経済的自由・財産権が根拠」も誤りなり。根拠は幸福追求権である。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 条文に明文はない |
| 2 | ✓ | 幸福追求権を根拠に判例で認められた |
| 3 | ✗ | 判例で認められている |
| 4 | ✗ | 根拠は財産権ではなく幸福追求権 |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 新しい人権の根拠 = プライバシー権・自己決定権などは明文がなく、幸福追求権を根拠に判例で認められた。
- 🔴 保障の範囲 = 通説(人格的利益説)は「人格的自律に不可欠な権利」に絞る。一般的自由説は少数説。
- 🟡 位置づけ = 「生命、自由及び幸福追求に対する権利」(13条後段)を根拠とする包括的な権利。
次に学ぶ
- 個人の尊重 ── 13条前段の原理。幸福追求権(後段)と一対で、13条の構造を押さえられる。
- 基本的人権の尊重 ── 人権保障全体の出発点。新しい人権もこの流れの中にある。
- プライバシー権 ── 幸福追求権から導かれる代表的な新しい人権。具体例として理解を深められる。
執筆: SikakuQuest編集部