権力留保説とは(全体像)
権力留保説とは、法律の留保(行政には法律の根拠がいる)の範囲をめぐる学説の一つ。ポイントは、「公権力の行使」かどうかで根拠の要否を決めるところ。
公権力の行使とは、行政が一方的に決めて、強制力をもって行うような行為のこと。権力留保説は、それが国民に不利益(侵害)でも、利益(授益)でも関係なく、公権力の行使である以上は法律の根拠が必要だとする。
- 公権力の行使にあたる … 法律の根拠が必要(侵害でも授益でも)
- 公権力の行使にあたらない(契約・行政指導など) … 法律の根拠は不要
「侵害かどうか」ではなく「公権力かどうか」で線を引くのが、この説の特徴。
詳しく:他の学説との位置関係
ここが心臓部。権力留保説が、侵害留保説と全部留保説の「中間」にあることを押さえる。
3つの学説の範囲の広さ
| 学説 | 法律の根拠が必要な範囲 |
|---|---|
| 侵害留保説(通説) | 侵害的な行政だけ(狭い) |
| 権力留保説 | 公権力の行使全般(侵害+授益、ただし非権力的は除く) |
| 全部留保説 | すべての行政(広い) |
範囲の広さは「侵害留保説 < 権力留保説 < 全部留保説」。
- 侵害留保説との違い … 権力留保説は、許認可や補助金の決定のような授益的な処分も含む(侵害留保説は侵害的な行政だけ)。
- 全部留保説との違い … 権力留保説は、行政契約や行政指導のような非権力的な行政を含まない(全部留保説はすべて含む)。
つまり権力留保説は、両者のちょうど真ん中にある中間的な学説。
わかりやすく言い換えると
つまり、権力留保説は「役所が一方的・強制的に行う行為(公権力の行使)には、得か損かを問わず法律の根拠がいる」という考え方。
線引きの基準は「侵害かどうか」ではなく「公権力かどうか」。要するに、侵害留保説より一歩広く(授益も入る)、全部留保説より一歩狭い(契約は入らない)中間、と覚えるとよい。
試験のツボ
🔴 一番出る:公権力の行使に着目
侵害か授益かを問わず、公権力の行使(一方的・権力的な行政)に法律の根拠を求める。
🔴 次に出る:侵害留保説・全部留保説との違い
①侵害留保説より広い = 授益的な処分も含む
②全部留保説より狭い = 非権力的な行政(契約など)は含まない
🟡 押さえると安定:中間的な学説
範囲は「侵害留保説 < 権力留保説 < 全部留保説」。
よくある間違い
①「権力留保説は侵害留保説と同じ」→ ✗ 権力留保説は授益的な処分も含む。侵害留保説より広い。
②「権力留保説は全部留保説と同じ」→ ✗ 権力留保説は非権力的な行政を含まない。全部留保説より狭い。
③「権力留保説では、行政契約にも法律の根拠が必要」→ ✗ 契約は非権力的なので、権力留保説では法律の根拠は不要。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(権力留保説の内容)
権力留保説に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 権力留保説は、侵害か授益かを問わず公権力の行使に法律の根拠を求める学説である
- 権力留保説は、侵害的な行政にだけ法律の根拠を求める学説であるものとされている
- 権力留保説は、契約など非権力的な行政にも法律の根拠を求める学説であるとされる
- 権力留保説は、すべての行政活動に法律の根拠を求める学説であるものとされている
解答は 1 である。
権力留保説は、侵害か授益かを問わず、公権力の行使に法律の根拠を求める学説なのである。線引きの基準が「公権力かどうか」にある点が要だ。
選択肢2は侵害留保説の説明であり誤りである。選択肢3は非権力的行政を含めており誤り、選択肢4は全部留保説の説明である。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 公権力の行使に根拠を求める学説で正しい |
| 2 | ✗ | それは侵害留保説 |
| 3 | ✗ | 非権力的行政は含まない |
| 4 | ✗ | それは全部留保説 |
オリジナル問題2(侵害留保説との違い)
権力留保説と侵害留保説の違いに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 権力留保説は、侵害留保説よりも狭い範囲に法律の根拠を求める学説であるとされる
- 権力留保説も侵害留保説も、その範囲はまったく同じであるものとされている
- 権力留保説は、許認可などの授益的な処分も対象に含む点で侵害留保説より広い
- 権力留保説は、侵害的な行政を範囲から除く点で侵害留保説と異なるものとされる
解答は 3 である。
権力留保説は、許認可など授益的な処分も含む点で、侵害留保説より広いのである。侵害留保説は侵害的な行政だけを対象とするからだ。
選択肢1の「より狭い」、選択肢2の「まったく同じ」、選択肢4の「侵害的な行政を除く」は、いずれも誤りである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 権力留保説のほうが広い |
| 2 | ✗ | 範囲は異なる |
| 3 | ✓ | 授益的な処分も含み広いで正しい |
| 4 | ✗ | 侵害的な行政も範囲に含む |
オリジナル問題3(全部留保説との違い)
権力留保説と全部留保説の違いに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 権力留保説も全部留保説も、すべての行政活動を対象とする点で同じであるとされる
- 権力留保説は、行政契約などの非権力的な行政を含まない点で全部留保説よりも狭い
- 権力留保説は、全部留保説よりも広い範囲に法律の根拠を求める学説であるとされる
- 権力留保説は、非権力的な行政にも法律の根拠を求める点で全部留保説と同じである
解答は 2 である。
権力留保説は、行政契約など非権力的な行政を含まない点で、全部留保説より狭いのである。全部留保説はすべての行政を対象とするからだ。
選択肢1の「すべての行政で同じ」、選択肢3の「全部留保説より広い」、選択肢4の「非権力的行政も含む」は、いずれも誤りである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 権力留保説は非権力的行政を含まない |
| 2 | ✓ | 非権力的行政を含まず狭いで正しい |
| 3 | ✗ | 全部留保説のほうが広い |
| 4 | ✗ | 非権力的行政は含まない |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 公権力の行使に着目 = 侵害か授益かを問わず、公権力の行使に法律の根拠を求める。
- 🔴 他の学説との違い = 侵害留保説より広い(授益も含む)、全部留保説より狭い(非権力的は除く)。
- 🟡 中間的な学説 = 範囲は「侵害留保説 < 権力留保説 < 全部留保説」。
次に学ぶ
- 法律の留保 ── 権力留保説が位置づけられる、留保の範囲をめぐる議論の全体像。
- 法律による行政の原理 ── 法律の留保を含む、より大きな原則。
- 法律の優位 ── 留保とよく対比される、行政が法律に違反できない原則。
執筆: SikakuQuest編集部