不可変更力とは(全体像)
不可変更力とは、行政庁が自ら行った行政行為を、自分の手では取り消したり撤回したりできなくなる効力のこと。いわば「行政庁の自己拘束」だ。
ねらいは、いったん下した判断を覆さないことで紛争を安定させること。同じ争いが何度も蒸し返されないようにする、というイメージ。
ただし、これはどんな行政行為にもある効力ではない。裁決や決定など、争いに決着をつける行政行為(争訟裁断的行政行為)にだけ認められる、限定された効力だ。
詳しく:どの行政行為に認められるか
ここが心臓部。不可変更力が及ぶ範囲と、不可争力との違いを押さえる。
不可変更力が認められる範囲
| 行政行為の種類 | 不可変更力 |
|---|---|
| 裁決・決定(争訟裁断的) | あり(行政庁は自ら取消・撤回できない) |
| 許可・認可など一般の行政行為 | 原則なし(職権で取消・撤回できる) |
不服申立てに対する裁決のように、争いを裁いて決着をつける行政行為には、不可変更力がある。決着をつけた行政庁が、あとから気が変わって覆せてしまっては、紛争が安定しないからだ。一方、ふつうの許可などには不可変更力はなく、行政庁は職権で取り消したり撤回したりできる。
そして、試験でいちばん問われるのが、よく似た不可争力との違い。
不可変更力と不可争力のちがい
| 誰を縛るか | 内容 | |
|---|---|---|
| 不可変更力 | 行政庁 | 行政庁が自ら取消・撤回できない(自己拘束) |
| 不可争力 | 私人 | 出訴期間が過ぎると私人が争えない(時間的制限) |
縛る向きが逆、と覚えるとよい。不可変更力は行政庁を縛り、不可争力は私人を縛る。名前が似ているので、ここを取り違えないことが得点源になる。
わかりやすく言い換えると
つまり不可変更力は「決めた行政庁が、自分ではもう覆せない」というしばり。審判が一度くだした判定を、その審判自身は引っくり返せない、というイメージだ。
要するに、覚えどころは2つ。①対象は裁決・決定など争いを裁く行為だけ、②縛るのは行政庁の側(私人を縛る不可争力とは逆)。
試験のツボ
🔴 一番出る:不可変更力の意味と対象
①行政庁が自ら行った行政行為を、自分では取消・撤回できなくなる(自己拘束)
②認められるのは裁決・決定など争訟を裁断する行政行為だけ
🔴 次に出る:不可争力との区別
不可変更力は行政庁を縛り、不可争力は私人を縛る。向きが逆。
🟡 押さえると安定:一般の行政行為には原則なし
ふつうの許可などには不可変更力はなく、行政庁は職権で取消・撤回できる。
よくある間違い
①「すべての行政行為に不可変更力がある」→ ✗ 認められるのは裁決・決定など争訟裁断的行政行為だけ。一般の行政行為には原則ない。
②「不可変更力と不可争力は同じもの」→ ✗ 不可変更力は行政庁の自己拘束、不可争力は私人の時間的な制限。縛る向きが逆。
③「裁決をした行政庁は、あとから自由に取り消せる」→ ✗ 争訟裁断的行政行為には不可変更力があり、行政庁は自ら取消・撤回できない。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(不可変更力の意味)
不可変更力に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 不可変更力とは、行政庁が自ら行った行政行為を、自分では取消・撤回できなくなる効力をいう
- 不可変更力とは、出訴期間が過ぎると私人の側から行政行為を争えなくなる効力を意味するとされる
- 不可変更力とは、違法な行政行為でも取り消されるまでは有効に扱われる効力を意味するものとされる
- 不可変更力とは、行政庁が強制的に義務の実現を図ることができる効力をいうものとされている
解答は 1 である。
不可変更力とは、行政庁が自ら行った行政行為を、自分では取消・撤回できなくなる効力なのである。いわば行政庁の自己拘束だ。
選択肢2は不可争力、選択肢3は公定力、選択肢4は自力執行力の説明であって、いずれも誤りである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 行政庁が自ら取消・撤回できないで正しい |
| 2 | ✗ | それは不可争力の説明 |
| 3 | ✗ | それは公定力の説明 |
| 4 | ✗ | それは自力執行力の説明 |
オリジナル問題2(認められる対象)
不可変更力が認められる行政行為に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 不可変更力は、許可や認可など一般の行政行為にも当然に認められるものとされている
- 不可変更力は、すべての行政行為について行政庁の職権取消しを一切禁じるものとされる
- 不可変更力は、主として裁決や決定など争訟を裁断する争訟裁断的行政行為に認められる
- 不可変更力は、私人の側が一定の期間を過ぎると争えなくなることを意味するとされている
解答は 3 である。
不可変更力は、裁決や決定など、争いを裁断する行政行為(争訟裁断的行政行為)にだけ認められるのである。決着を安定させるための特別な効力だ。
選択肢1の「一般の行政行為にも当然に」、選択肢2の「すべての行政行為で職権取消し禁止」、選択肢4の「私人が争えなくなる(不可争力)」は、いずれも誤りである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 一般の行政行為には原則ない |
| 2 | ✗ | 一般の行政行為は職権取消しできる |
| 3 | ✓ | 争訟裁断的行政行為に認められるで正しい |
| 4 | ✗ | それは不可争力の説明 |
オリジナル問題3(不可争力との区別)
不可変更力と不可争力に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 不可変更力も不可争力も、ともに私人の側を時間的に制限する点で同じものとされている
- 不可変更力は行政庁が自ら取り消せない自己拘束で、不可争力は私人の時間的な制限である
- 不可変更力は私人の時間的な制限で、不可争力は行政庁の自己拘束を意味するものとされる
- 不可変更力は一般の行政行為すべてに及び、不可争力は裁決だけに及ぶものとされている
解答は 2 である。
不可変更力は行政庁が自ら取り消せない自己拘束、不可争力は私人の時間的な制限なのである。縛る向きが逆、と押さえるとよい。
選択肢1の「どちらも私人を制限」、選択肢3の「向きが逆(取り違え)」、選択肢4の「対象が逆」は、いずれも誤りである。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 不可変更力は行政庁を縛る |
| 2 | ✓ | 行政庁の自己拘束と私人の時間的制限で正しい |
| 3 | ✗ | 縛る向きを取り違えている |
| 4 | ✗ | 対象の説明が逆になっている |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 不可変更力の意味 = 行政庁が自ら行った行政行為を、自分では取消・撤回できない(自己拘束)。
- 🔴 対象 = 裁決・決定など争訟を裁断する行政行為だけ。一般の行政行為には原則なし。
- 🟡 不可争力との区別 = 不可変更力は行政庁を縛り、不可争力は私人を縛る。向きが逆。
次に学ぶ
- 行政行為の効力 ── 不可変更力をふくむ4つの効力の全体像。
- 不可争力 ── 私人の側を時間で縛る、よく似た名前の効力。対比で押さえる。
- 公定力 ── 取り消されるまで有効とされる、もうひとつの代表的な効力。
執筆: SikakuQuest編集部