「難しい」の正体は、たいてい三つに分けられる
行政書士が難しいと言われるとき、その中身は、だいたい三つの要素に分かれます。「範囲の広さ」「記述式」「足切り」です。
漠然と「難しい」と思っているうちは、相手の姿が大きく見えます。でも、こうして分解してみると、それぞれは「対策のしようがあるもの」だと分かってきます。
正直なところ、難易度の話で大事なのは「高いか低いか」ではなく、「どこが、どう難しいのか」を知ること。敵の正体さえ見えれば、必要以上に怖がらずにすみます。
ここから、三つの要素を一つずつ、ゆっくりほぐしていきましょう。
数字の印象に、引っぱられすぎない
正体の話に入る前に、もう一つだけ。難易度を語るとき、必ず出てくるのが「合格率」と「勉強時間」という二つの数字です。ここで早合点しないことが、けっこう大事なんです。
合格率は、年によって幅はあるものの、おおむね10〜15%のあたり。数字だけ見れば、たしかに「狭き門」に見えます。でも、この母数には「申し込んだけれど準備が間に合わなかった人」もそのまま含まれています。最後までしっかり仕上げた人だけで考えれば、体感はもう少しやさしくなる、というのが正直なところです。
勉強時間の目安は、よく800〜1,000時間と言われます。ぱっと見は大きな数字ですが、落ち着いて割り算してみてください。1日2時間を1年続ければ、それだけで700時間を超えます。社会人でも、通勤や昼休みを足していけば、十分に届く範囲なんです。
つまり、数字は「印象」を作りますが、「実態」とはずれることがあります。だからこそ、数字に怯えるより、中身を分解して見たほうがいい。そこで効いてくるのが、これから話す三つの正体です。
なお、合格率や基準は年度によって調整されることがあります。受験年度の正確な情報は、試験を実施している行政書士試験研究センターの発表で確かめておくと心強いはずです。
範囲は広い——でも「出るところ」は偏っている
まず、いちばんよく言われるのが、範囲の広さです。
たしかに、憲法・行政法・民法・商法・基礎法学、さらに基礎知識まで。並べると、たじろぐ気持ちは分かります。聞き慣れない言葉も多いですから。
でも、ここで大事なのは、出題が「均等にばらまかれているわけではない」ということ。点の多くは、行政法と民法という二つの科目から生まれます。つまり、範囲は広く見えても、力を入れるべき場所はかなり絞られているんです。
たとえば、行政の活動には法律の根拠が要る、という法律の留保のような論点は、行政法の定番。こうした「よく出るところ」を中心に固めていけば、範囲の広さは思ったほどの脅威ではなくなります。
わかりやすく言い換えると、広い庭をぜんぶ耕すのではなく、実りの多い畝(うね)から手をつける。それだけで、範囲という壁はぐっと低くなります。
正直、ここを「全部やらなきゃ」と思い込むと、しんどくなります。むしろ「どこを厚く、どこを軽く」を最初に決めるほうが、ずっと前に進みやすいんです。
それに、範囲が広いことには、見落とされがちな利点もあります。一つの科目でつまずいても、別の科目で取り返せる。出題が分散しているぶん、苦手が一つあっても大きな痛手になりにくいんです。範囲の広さは、怖さだけでなく「逃げ道の多さ」でもある——そう捉えると、印象がずいぶん変わります。
記述式——名物だけど、攻略法はある
二つ目が、行政書士試験の名物、記述式です。
40字程度で答えを書かせる問題が出て、配点も大きい。だから「記述式が怖くて受けられない」という声もよく聞きます。
でも、ここにも誤解があります。記述式は、択一とまったく別の力を要求しているわけではないんです。問われているのは、択一でためた知識を「自分の言葉で再現できるか」。土台は同じなんですね。
たとえば、民法の権利能力のような基本概念を、ただ選ぶだけでなく「説明できる」ところまで持っていく。最初は難しく感じても、択一の勉強と地続きで鍛えられます。
むしろ、記述式があることは、ある意味で味方にもなります。択一だけの試験だと、まぐれ当たりや勘で点が動くこともありますが、記述式は「本当に分かっているか」を素直に映します。つまり、きちんと積み上げた人ほど、記述式で差をつけやすい。ごまかしの利きにくさが、努力した人を後押ししてくれるんです。
具体的な進め方も、特別なものは要りません。択一でよく出るテーマを、頭の中だけでなく、一度自分の手で40字くらいにまとめてみる。最初はうまく書けなくても、それでいいんです。書こうとして初めて「あれ、ここが曖昧だ」と気づける。その気づきこそが、記述式の練習の本体なんです。
つまり、記述式は「追加の山」ではなく「同じ山の、もう一段上」。択一を固めながら、少しずつ書く練習を足していけば、自然と手が届きます。
足切り——「穴をつくらない」だけのこと
三つ目が、足切りです。
行政書士試験には、総合点とは別に、分野ごとの最低ラインがあります。とくに基礎知識のブロックで一定の点を取れないと、ほかが良くても不合格になる。これを「足切り」と呼びます。
字面だけ見ると、なんだか冷たくて怖い仕組みに思えます。でも、その正体は「苦手分野に大きな穴をつくらないでね」というだけのこと。要するに、極端な偏りを防ぐためのルールなんです。
たとえば憲法で問われる違憲審査権のような基本も、足切り対策の文脈では「捨てずに、最低限は押さえておく」対象になります。満点を取る必要はありません。最低ラインを越えればいい、と考えると、ぐっと気が楽になります。
ちなみに、足切りは「敵」というより「ペース配分の道しるべ」。どこか一科目を完全に捨てるのは危ない、と教えてくれているわけです。そう捉えれば、むしろ親切な仕組みかもしれません。
そして、足切りで問われる基礎知識の分野は、特別な専門知識というより、ふだんのニュースや読解力で半分くらいは戦えます。文章理解のように、勉強というより「落ち着いて読めば解ける」問題も含まれている。だから、ここを過度に恐れる必要はありません。直前期に少し意識を向けるだけでも、ラインは十分に越えられます。
だからこそ、行政書士は「努力が報われる試験」
ここまで三つの要素をほぐしてきました。最後に、いちばん伝えたいことを。
行政書士試験は、よく「努力が裏切らない試験」と言われます。範囲は広いけれど、出るところは安定しているし、過去問の傾向もはっきりしている。
つまり、地頭やひらめきで決まるのではなく、「やった人から順に受かる」構造になっているんです。これは、これから始める人にとって、とても心強い性質だと思います。
範囲は「出るところが偏っている」。記述式は「択一の延長」。足切りは「穴をつくらないだけ」。三つとも、正体さえ見えれば準備できる。怖がる難しさではなく、準備できる難しさなのである。
もちろん、簡単だとは言いません。一定の時間と、続ける覚悟は要ります。でも、それは「越えられない壁」ではなく、「積み上げれば届く段差」。難しさの正体が見えた今なら、その違いが実感できるはずです。
それに、難易度は「動かないもの」ではなく、「準備の量で動くもの」でもあります。同じ試験でも、何も知らずに当日を迎える人にとっては最難関ですが、傾向をつかんで積み上げた人にとっては「越えられる段差」になる。難易度は、相手の都合ではなく、自分の準備しだいで姿を変えるんです。
だから、ネットで「難しい」「やめとけ」という言葉を見ても、そのまま自分に当てはめる必要はありません。その人がどれだけ準備したか、どんな状況だったかは、書かれていないことのほうが多いからです。大事なのは、他人の難易度ではなく、自分にとっての難易度を、これから準備で下げていくこと。
個人的には、行政書士の難しさは「怖がる難しさ」ではなく「準備できる難しさ」だと思っています。準備できるなら、あとは一歩ずつ進むだけ。それができる試験だ、ということです。
理解度チェック
ここまでの内容、どれくらい身についたかチェックしてみよう。
行政書士試験が「難しい」と言われる理由として、正しいものはどれか。
- 出題範囲がごく狭く一夜漬けで足りる
- 範囲が広く記述式もあり総合力が要る
- 計算問題ばかりで暗記は要らない
- 受験できる人が限られ競争が激しい
解答は 2 である。
難しさの正体は、範囲の広さ・記述式・足切りといった「総合力が要る」点にある。つまり、一夜漬けや一点突破では届きにくいのだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ 誤り | 範囲は広く一夜漬けは難しい |
| 2 | ✓ 正解 | 範囲の広さと記述式が要点 |
| 3 | ✗ 誤り | 暗記と理解が中心の試験 |
| 4 | ✗ 誤り | 受験資格はなく誰でも受けられる |
要するに、難しさは「正体を分解すれば対策できるもの」なのである。
行政書士試験の難易度との向き合い方として、正しいものはどれか。
- 範囲が定まっていて努力が報われやすい
- 才能のある人だけが受かる狭き門である
- 運に大きく左右され対策を立てにくい
- 一度落ちると二度と合格できなくなる
解答は 1 である。
行政書士試験は「やった人から順に受かる」と言われる。わかりやすく言い換えると、範囲が定まり過去問の傾向も安定しているため、努力が結果に結びつきやすいのだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ 正解 | 努力が点に結びつきやすい |
| 2 | ✗ 誤り | 才能だけで決まる試験ではない |
| 3 | ✗ 誤り | 傾向が安定し対策しやすい |
| 4 | ✗ 誤り | 何度でも再挑戦できる |
つまり、地頭やひらめきより、積み上げが効く試験なのである。
行政書士の難易度の位置づけとして、もっとも適切なものはどれか。
- 国家資格のなかで最も簡単な部類に入る
- 司法試験と同じほどの最難関とされる
- 簡単ではないが対策の立てやすい資格だ
- 誰でも無勉強で受かる気軽な試験である
解答は 3 である。
行政書士は、軽い試験ではない。されど、範囲が安定し過去問の傾向も読めるため、対策の立てやすい資格でもある。つまり、準備できる難しさなのだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ 誤り | 最も簡単とは言えない |
| 2 | ✗ 誤り | 最難関と同列ではない |
| 3 | ✓ 正解 | 簡単ではないが対策しやすい |
| 4 | ✗ 誤り | 無勉強で受かる試験ではない |
要するに、怖がる難しさではなく、準備できる難しさなのである。
「難易度、思っていたより冷静に見られそう」と感じてもらえたなら、編集部としてはとても嬉しいです。
「難しい」のひとことに怯えるより、正体を三つに分けて、一つずつ準備していく。それができれば、合格はちゃんと手の届く段差になります。
そして、難易度をいちばん下げてくれるのは、結局のところ「続けること」です。一日にできる量は小さくても、積み重ねれば、いつのまにか壁は段差に変わっています。最初から完璧を目指さず、まずは今日の一問から。それで十分です。
行政書士は、受験資格もなく、努力がそのまま点に返ってくる、フェアな試験です。スタートラインは、思い立った日に自分で引ける。あとは、その一歩を踏み出すかどうか——ただ、それだけなのだと思います。
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もちろん、市販のテキストでじっくり独学するのも、まったく問題ありません。
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