行政書士は食えない・意味ない?データで見る実態

公開: 更新: カテゴリ: 学習法・キャリア

結論——「食えない」と「意味ない」は、別の話

まず、いちばん大事なことを。「食えない」と「意味ない」は、よく一緒に語られますが、実はまったく別の問題です。

「食えない」は、収入の話。つまり、行政書士として開業して、生活できるだけ稼げるか、という問いです。

一方、「意味ない」は、価値の話。資格を取ること自体に意味があるのか、という問いです。

この二つを混ぜてしまうと、「稼げないなら、取る意味もない」という、乱暴な結論に飛びつきがちです。でも、収入と価値は、分けて考えるべきもの。だからここでも、まず「食えるのか」を、次に「意味があるのか」を、順番に見ていきます。

正直なところ、どちらの問いにも、「人による」というのが誠実な答えです。でも、それでは何も言っていないのと同じ。だから、「どういう人なら食えて、どういう人なら苦しむのか」まで、踏み込んで見ていきましょう。


なぜ「食えない」と言われるのか

「食えない」と言われる背景には、データで説明できる理由があります。目をそらさず、見ていきます。

最大の理由は、行政書士が「独立開業型」の資格だということ。会社員のように、合格すれば毎月決まった給料が入る、という働き方ではありません。自分で事務所を構え、お客さんを見つけて、はじめて収入になります。つまり、収入は「自分しだい」で、大きく上にも下にも振れるんです。

実際、収入の分布はとても幅広いと言われます。年収数百万円ほどの人もいれば、千万円を超える人もいる。平均だけを見ると、その幅が見えにくくなります。「平均年収は〇〇万円」という数字を見ても、それは中央のひとつの目安にすぎず、実態はばらついている、ということを知っておいてください。

そして、開業したものの、軌道に乗らず廃業する人がいるのも事実です。これは、行政書士に限らず、独立という働き方につきまとう現実です。

「食えない」の多くは、資格の価値そのものではなく、独立という働き方の厳しさを指している。収入が自分しだいだからこそ、振れ幅が大きいのである。それは、裏を返せば伸びしろでもある。

つまり、「食えない」という言葉は、資格が無力だという意味ではなく、「独立は、準備と工夫がないと厳しい」という現実を映したものなんです。


廃業率の数字を、冷静に読む

「廃業率」という言葉も、よく不安をあおる材料に使われます。だからこそ、冷静に読みたいところです。

行政書士の廃業率は、一年あたりで見ると、数パーセント程度と言われることがあります(具体的な数値は年度によって変わるため、最新の公表値を確認してください)。この数字だけを見ると、「たくさん辞めている」と感じるかもしれません。

でも、ここで大切なのは、比較の視点です。一般に、独立して始めた事業が、何年も続くこと自体、簡単ではありません。多くの業種で、開業から数年で一定割合が廃業していくのが現実です。そう考えると、行政書士の廃業率が、ほかと比べて飛び抜けて高い、とは言いきれないんです。

わかりやすく言い換えると、「廃業する人がいる=食えない資格」ではない、ということ。続けている人のほうが、ずっと多い。数字は、片側だけを切り取ると、実態より怖く見えてしまうんです。

大事なのは、「辞めた人」ではなく、「続けている人が何をしているか」に目を向けること。そこにこそ、食えるかどうかのヒントがあります。


「食える人」と「そうでない人」を分けるもの

では、同じ資格を持ちながら、なぜ結果が分かれるのか。その差を見ていきましょう。

ひとつは、業務選びです。行政法の行政行為に関わる許認可など、企業からの需要が安定している分野もあれば、競争が激しい分野もあります。どこに身を置くかで、仕事の入り方は大きく変わります。

ふたつ目は、営業や発信の工夫です。どんなに知識があっても、存在を知ってもらえなければ、依頼は来ません。逆に、地道に信頼を積み、紹介が紹介を呼ぶようになると、収入は安定していきます。

そして三つ目は、続ける力です。開業してすぐに軌道に乗ることは、まれです。多くの人は、最初の数年を耐え、少しずつ顧客を増やしていきます。要するに、「食える人」は、特別な才能を持っていたというより、選び・動き・続けた人なんです。

逆に言えば、「食えなかった人」の多くは、才能が足りなかったわけではありません。準備のないまま飛び込んだり、得意でない分野で消耗したり、軌道に乗る前に力尽きたり。つまり、避けられたかもしれない理由が、そこにはあるんです。だからこそ、先に知っておくことには、大きな意味があります。


では「意味ない」は正しいのか

ここからは、もうひとつの問い、「意味ない」について考えます。これは、多くの場合、誤解です。

まず、行政書士には「独占業務」があります。官公署に提出する書類の作成など、行政書士だけが報酬を得て行える仕事が、法律で定められています。つまり、資格がなければできない仕事がある。これは、資格に明確な価値がある、ということです。

次に、たとえ独立しなくても、法律の知識は腐りません。行政の仕組みを支える法律の留保のような考え方を理解していることは、企業の法務や許認可の部署など、さまざまな場面で生きてきます。

さらに、行政書士は、ほかの法律系資格への入口にもなります。ここで身につけた基礎は、次の挑戦の足場になる。だから、「意味ない」と切り捨てるのは、もったいないんです。

もちろん、「取っただけで自動的に何かが手に入る」わけではありません。意味を持たせるのは、取った後の動き方です。要するに、「意味ない」のではなく、「意味を持たせられるかは自分しだい」というのが、正確な言い方なんです。


生かす道は、独立だけではない

「食えない」論が見落としがちなのが、行政書士の生かし方は、独立開業だけではない、という点です。

たとえば、行政書士の事務所に勤めて、給料をもらいながら経験を積むという働き方があります。この場合、収入は独立より安定しやすく、「いきなり食えない」というリスクは小さくなります。実務を学んでから、いずれ独立を考える、という段階的な道も描けます。

また、企業の総務や法務の部署で、許認可や契約に関わる知識を生かす人もいます。資格を直接「商売」にしなくても、その知識が仕事の評価につながる、という形です。

つまり、「行政書士=すぐ独立開業」と決めつける必要はありません。独立は数ある選び方のひとつ。自分の性格やリスク許容度に合わせて、無理のない生かし方を選べばいいんです。そう考えると、「食えない」という言葉の重さは、ずいぶん変わってきます。


「食える側」に近づくために

最後に、もし行政書士を目指すなら、「食える側」に近づくために、心に留めておきたいことを。

ひとつは、「資格はゴールではなく、スタート」だと理解すること。合格してからが本番です。どんな分野で、どう動くかを、早いうちからイメージしておくと、開業後の立ち上がりが違ってきます。

ふたつ目は、いきなり大きく構えず、小さく始めること。たとえば、最初は副業的に、あるいは事務所に勤めて経験を積んでから独立する、という道もあります。リスクを抑えながら、現実を知っていく。それも、賢い進み方です。

そして、行政の判断のしくみ、たとえば公定力のような考え方まで、しっかり理解しておくこと。表面的な暗記でなく、「なぜそうなるのか」を腹に落としておくと、実務でお客さんの信頼を得やすくなります。

個人的には、「食えない・意味ない」という言葉を、挑戦をやめる理由にするのは、もったいないと思っています。その言葉は、「準備して動けば避けられる落とし穴」を教えてくれる、地図でもあるからです。落とし穴の場所を知ったうえで歩けば、転ぶ確率は、ぐっと下がります。

データは、行政書士という資格が「全員にとって食えない」わけでも、「誰にとっても意味ない」わけでもないことを示しています。あとは、その事実を踏まえて、自分はどう動くか。それを考えることが、いちばん建設的な一歩です。



理解度チェック

ここまでの内容、どれくらい身についたかチェックしてみよう。

📝 オリジナル問題 1 「食えない」の意味

「行政書士は食えない」という言葉の読み方として、正しいものはどれか。

  1. 行政書士になった人は全員が生活に困っている
  2. 資格そのものにまったく価値がないという意味だ
  3. 独立は準備と工夫がないと厳しいという現実だ
  4. 努力しても収入は誰でも同じ低さになる
ロアマスター
ロアマスター 解答・解説

解答は 3 である。

「食えない」は、資格の無力さではなく、独立という働き方の厳しさを指す。つまり、準備と工夫があれば、避けられる落とし穴なのだ。

選択肢判定理由
1✗ 誤り続けている人も多い
2✗ 誤り独占業務など価値はある
3✓ 正解独立の厳しさを指す
4✗ 誤り収入には大きな個人差

要するに、「食えない」は資格でなく、働き方の側の話なのである。

📝 オリジナル問題 2 廃業率の読み方

行政書士の廃業率の見方として、正しいものはどれか。

  1. 数字を比較の視点で冷静に読むことが大切だ
  2. 廃業する人がいるなら食えない資格だといえる
  3. 廃業率の数字は毎年変わらず固定だ
  4. 辞めた人の数だけ見れば実態が正しく分かる
ロアマスター
ロアマスター 解答・解説

解答は 1 である。

廃業率は、片側だけ切り取ると実態より怖く見える。わかりやすく言い換えると、他業種との比較や、続けている人の多さも合わせて読むことが肝心なのだ。

選択肢判定理由
1✓ 正解比較の視点で読む
2✗ 誤り続ける人のほうが多い
3✗ 誤り数値は年度で変わる
4✗ 誤り片側だけでは歪む

つまり、数字は文脈とともに読むことが大切なのである。

📝 オリジナル問題 3 「意味ない」への答え

「行政書士は意味ない」への考え方として、正しいものはどれか。

  1. 資格は取った瞬間に価値がすべて完成する
  2. 独占業務があり知識も生きるので意味はある
  3. 独立しない人にとっては一切の価値がない
  4. ほかの資格への入口には決してならないものだ
ロアマスター
ロアマスター 解答・解説

解答は 2 である。

行政書士には独占業務があり、法律の知識も多くの場面で生きる。つまり、「意味ない」のではなく、意味を持たせられるかは動き方しだいなのだ。

選択肢判定理由
1✗ 誤り価値は使い方で決まる
2✓ 正解独占業務と知識が生きる
3✗ 誤り法務など活用先は広い
4✗ 誤り次の資格の足場になる

要するに、意味は取った後の動きで生まれるのである。


「食えない・意味ないは、全員に当てはまるわけではない」と感じてもらえたなら、編集部としてはとても嬉しいです。

「食えない」は独立の厳しさの話、「意味ない」は誤解。どちらも、選び・動き・続けることで、景色は変わります。数字に怯えるより、その数字が何を映しているかを見る。完璧な答えを待つより、まずは今日、一問解いて、自分の足場を作ってみる。その小さな一歩が、いちばん確かなスタートになります。

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