まず手をつけるのは、行政法と民法
行政書士の勉強で「何から始めるか」と問われたら、答えはほぼ決まっています。配点の大きい、行政法と民法。この二つからです。
理由はシンプルで、点の多くがこの二科目から生まれるから。試験の得点配分を見ると、行政法と民法だけで、法令等の大部分を占めます。つまり、ここを固めることが、合格点にいちばん近づく道なんです。
逆に言えば、配点の小さい科目から手をつけると、時間をかけたわりに点が伸びにくい。最初に大きな的を狙うほうが、努力が結果につながりやすいんです。
正直なところ、勉強の順番でつまずく人の多くは、「全部を同時に、均等に」と考えすぎています。でも、それだと、いつまでも芯が定まらない。まずは二本の柱に的を絞る。それだけで、迷いはぐっと減ります。
なお、ここでいう「行政法から」は、あくまで力点の置き方の話。最初の数日でほかの科目をのぞいてみるのは、もちろんかまいません。大事なのは、軸足をどこに置くか、です。
なぜ「行政法から」なのか
二つの柱のなかでも、最初の軸足は行政法に置くのがおすすめです。これには、いくつかの理由があります。
ひとつは、繰り返しになりますが、配点がいちばん大きいこと。行政書士という資格の名前そのものが示すとおり、役所のしくみやルールを扱う行政法は、試験の主役です。たとえば、役所が国民に対して行う行政行為は、行政法の中心テーマ。ここを理解すると、試験全体の骨格が見えてきます。
もうひとつは、行政法が「比較的とっつきやすい」と言われること。民法に比べると、論点の数が絞られていて、ルールも明快なものが多い。最初の科目として、達成感を得やすいんです。
最初に手ごたえを感じられると、勉強そのものが続けやすくなります。逆に、いきなり難しい科目から入って、つまずいてしまうと、足が止まりがち。だから、軸足を行政法に置くのは、心理的にも理にかなっています。
つまり、行政法は「配点が大きく、かつ入りやすい」という、最初の一歩にぴったりの科目。ここから始めるのが、王道とされる理由です。
次に厚くするのは、民法
行政法で土台ができたら、次に厚く取り組みたいのが民法です。
民法は、契約や財産、家族など、暮らしのルールを幅広く扱う科目。範囲が広く、最初はとっつきにくく感じるかもしれません。でも、行政書士の得点源としても、記述式の出題先としても、避けて通れない重要科目です。
民法を学ぶときの出発点になるのが、人は誰もが権利の主体になれる、という権利能力のような基本概念。こうした土台をていねいに押さえてから、契約や物権といった具体的なルールへ進むと、理解がぐっとスムーズになります。
民法は量が多いぶん、一度で完璧にしようとせず、何度も繰り返し戻ってくるのがコツ。行政法と並行して、少しずつ進めていくのが現実的です。
民法は、はじめは「量が多くて終わりが見えない」と感じやすい科目でもあります。でも、心配はいりません。民法のルールの多くは、私たちの暮らしのなかで実際に起きることを扱っています。お金の貸し借り、物の売り買い、家族や相続。だから、難しい言葉の裏にある「ふつうの場面」を思い浮かべると、ぐっと身近になります。条文を丸暗記するより、「なぜそう決まっているのか」を腹落ちさせるほうが、結局は早く、忘れにくいんです。
要するに、行政法で勢いをつけ、民法でじっくり積み上げる。この二本柱を軸に据えることが、得点を安定させる近道なんです。
憲法・商法・基礎法学は、どう扱う?
「では、残りの科目は?」と気になりますよね。憲法・商法・基礎法学、そして基礎知識。これらは、二本柱とは少し違う扱いになります。
結論から言えば、これらは「深入りしすぎず、出るところを押さえる」のが基本方針です。配点でいえば脇役なので、行政法や民法ほどの時間はかけません。
たとえば憲法は、国の最高ルール。国民主権・基本的人権の尊重・平和主義といった三大原理など、基本的な考え方を押さえておけば、十分に戦えます。条文の細かい隅々まで、と気負う必要はありません。
商法や基礎法学も同じです。出題の傾向がはっきりしているので、「よく出るところ」に絞って対策する。すべてを完璧にしようとすると、二本柱に使うべき時間まで削られてしまいます。
全科目を均等に追ってはならぬ。行政法・民法に厚く、残りは「出るところ」に絞る。この強弱こそ、限られた時間で合格へ届く者の構えなのである。
ちなみに、各科目の細かい攻略法は、それぞれ別の話。ここでは「どの順で、どこに力点を置くか」という、全体の地図だけをつかんでおけば十分です。細部は、走り始めてから一つずつ詰めていけばいいんです。
順番より大事な、「続ける」という土台
ここまで順番の話をしてきましたが、実は、それ以上に大切なことがあります。それは、「続けられる仕組み」を作ることです。
どんなに完璧な順番を組んでも、続かなければ意味がありません。逆に、順番が多少ぶれても、毎日触れ続けた人は、ちゃんとゴールに近づいていきます。
ここで役に立つのが、「習慣化」の考え方です。心理学では「if-thenプランニング」と呼ばれるテクニックがあって、「もし○○したら、××する」と、行動をあらかじめ決めておく方法です。
たとえば、「朝、コーヒーを淹れたら、4択を5問解く」。「夜、歯をみがいたら、テキストを1ページ読む」。こんなふうに、すでにある習慣に勉強をくっつけると、意志の力に頼らなくても、自然と机に向かえるようになります。
シカクエが「1日に少しずつ」という設計になっているのも、この習慣化の考え方を応用したもの。大きなまとまりを構えるより、毎日の小さな一歩のほうが、長い目で見て続きやすいんです。
だから、勉強を始めるときは、立派な計画書よりも、「いつ、何にくっつけて勉強するか」を一つ決める。それが、順番と同じくらい、合否を支える土台になります。
順番がぶれても、戻ってくればいい
ここまで「行政法から、民法を厚く」とお伝えしてきましたが、ひとつ、肩の力を抜いてほしいことがあります。それは、この順番は「必ず守らなければならない掟」ではない、ということです。あくまで、迷ったときに立ち返るための、ゆるやかな目安として持っておけば十分なんです。
勉強を進めていると、いろいろなことが起きます。行政法に少し飽きてきたり、民法の面白さに引き込まれたり、模試で憲法の穴に気づいたり。そんなとき、軸を一時的に動かすのは、まったく問題ありません。
大事なのは、「ぶれたら終わり」ではなく、「ぶれても、また戻ってくればいい」と考えること。一日や二日、別の科目に寄り道しても、全体として行政法と民法に厚く時間を配れていれば、それで十分なんです。
むしろ、順番をきっちり守ることに気を取られて、勉強そのものが苦しくなるほうが、よっぽどもったいない。順番は、あなたを縛る鎖ではなく、迷ったときに立ち返る目印。それくらいの距離感で付き合うのが、長く続けるコツです。
それに、科目どうしは、意外とつながっています。行政法を学ぶうちに民法の知識が役立ったり、その逆もあったり。だから、多少行き来しても、学びは無駄になりません。地図を手に、自分のペースで歩けば大丈夫です。
最初の一歩を、軽くするために
最後に、いちばん伝えたいことを。
勉強の順番は、たしかに大事です。でも、それは「正解を一つに決めて、その通りに動く」ためのものではありません。むしろ、「どこから手をつければいいか分からない」という、最初の重さを取り除くための地図です。
行政法から始めて、民法を厚く、残りは出るところを押さえる。そして、毎日の習慣に勉強を一粒くっつける。この大きな方針さえ持っておけば、あとは走りながら微調整していけば大丈夫です。
そしてもう一つ。順番は「最初に決めて終わり」ではなく、進みながら見直していいものです。やってみて、自分には民法のほうが合うと感じたら、軸を寄せてもいい。大切なのは、計画どおりに動くことではなく、手を止めずに前へ進み続けること。地図はあくまで道具で、主役はいつもあなた自身です。
個人的には、勉強の順番でいちばんもったいないのは、「完璧な順番を考えすぎて、いつまでも始められないこと」だと思っています。地図はもう手に入りました。あとは、今日の小さな一歩を踏み出すだけです。
理解度チェック
ここまでの内容、どれくらい身についたかチェックしてみよう。
行政書士の勉強で、まず手をつけるべき科目はどれか。
- 配点の小さい商法から先に固めていく
- 暗記中心の基礎知識を最優先に進める
- 配点の大きい行政法と民法から始める
- 苦手な科目をいちばん最後に回しておく
解答は 3 である。
点の多くを生むのは行政法と民法。つまり、配点の大きいこの二本柱から始めるのが、合格点にいちばん近づく道なのだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ 誤り | 商法は配点が小さく後でよい |
| 2 | ✗ 誤り | 基礎知識を最優先にはしない |
| 3 | ✓ 正解 | 配点の大きい二科目から |
| 4 | ✗ 誤り | 順番の方針として不適切 |
要するに、最初に大きな的を狙うのが、努力を結果に変える近道なのである。
行政法と民法から始めるのが王道とされる理由はどれか。
- 配点が小さいので後回しでよいから
- 配点が大きく学習の土台になるから
- 暗記だけで短期間に終えられるから
- 試験にほとんど出ない科目だから
解答は 2 である。
行政法と民法は、配点が大きく、試験全体の土台になる科目。わかりやすく言い換えると、ここを固めることが得点の柱になるのだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ 誤り | 配点はむしろ大きい |
| 2 | ✓ 正解 | 配点が大きく土台になる |
| 3 | ✗ 誤り | 暗記だけでは終わらない |
| 4 | ✗ 誤り | 中心的に出題される |
つまり、二本柱を軸に据えることが、得点を安定させる近道なのである。
勉強を続けるための工夫として、正しいものはどれか。
- 既にある習慣に勉強をくっつけると続く
- 強い意志がなければとても続けられない
- 気が向いたときだけやれば身につく
- まとまった時間がないと始められない
解答は 1 である。
「コーヒーを淹れたら5問」のように、既にある習慣に勉強をくっつける。つまり、意志の力に頼らず続けられる仕組みを作るのが効くのだ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ 正解 | 習慣に紐づけると続けやすい |
| 2 | ✗ 誤り | 意志より仕組みが効く |
| 3 | ✗ 誤り | 気分任せでは定着しにくい |
| 4 | ✗ 誤り | 細切れの時間でも始められる |
要するに、やる気を待つより、先に仕組みを置くのが続けるコツなのである。
「何から始めればいいか、見えてきた」と感じてもらえたなら、編集部としてはとても嬉しいです。
行政法から、民法を厚く、残りは出るところを。そして、毎日の習慣に勉強を一粒くっつける。この地図さえあれば、もう最初の一歩で立ちすくむことはありません。
順番という地図と、習慣という足取り。この二つが揃えば、あとは歩き出すだけです。
その「毎日の一粒」に、すきま時間で解けるシカクエのアプリも選択肢の一つです。通勤の途中でも寝る前でも、5分から触れられます。
もちろん、市販のテキストでじっくり独学するのも、まったく問題ありません。
次に読むなら、こんな記事もどうぞ。
→ 行政行為 — まず軸足を置きたい、行政法の中心となる考え方 → 権利能力 — 民法を学ぶ出発点、人が権利の主体になるという基本 → 国民主権 — 憲法は深入りせず押さえたい、三大原理のひとつ