規制区域(盛土規制法)とは?盛土規制法の規制区域は宅地造成等工事規制区域と特定盛土等規制区域の2種類

公開: 更新: カテゴリ: 法令上の制限

30秒で結論

規制区域の定義と試験での位置付け

法律上の定義(盛土規制法10条・26条)

盛土規制法(正式名称:宅地造成及び特定盛土等規制法、令和4年法律第55号、2023年5月施行)は、宅地造成・特定盛土等・土石の堆積に伴う災害から国民の生命・身体を守るため、これらの行為に対する規制を定める法律である。同法10条は「宅地造成等工事規制区域」、26条は「特定盛土等規制区域」をそれぞれ定め、規制区域の指定に基づき具体的な行為規制を発動する構造となっている。

①宅地造成等工事規制区域(10条1項)は、宅地造成・特定盛土等・土石の堆積(以下「宅地造成等」)に伴う災害により市街地等の区域における人家・公共施設等に被害を生じるおそれが特に大きいと認められる区域として、都道府県知事(指定都市・中核市では当該市長)が指定する。市街地・市街地周辺・集落等を中心に指定される従来型の規制区域である。

②特定盛土等規制区域(26条1項)は、宅地造成等工事規制区域以外の土地で、特定盛土等または土石の堆積が行われた場合、これらに伴う災害により市街地等の区域・集落の区域・これらに隣接する地域における人家・公共施設等に被害を生じるおそれが特に大きいと認められる区域として、同様に都道府県知事等が指定する。市街地外でも広域指定が可能な区域として2023年改正で新設された。

わかりやすく言い換えると

要するに「盛土による土砂崩壊リスクを抑制するために、都道府県が指定する区域」が盛土規制法上の規制区域である。区域指定により、その内部での盛土・宅地造成等は許可制となり、土砂災害につながる無秩序な工事を抑制する制度設計となっている。

2種類の区域の使い分けは、指定対象範囲の広狭 で整理される。宅地造成等工事規制区域は 市街地等中心 で、住宅地・周辺集落・公共施設立地地域等の人家への影響が大きい区域を対象とする。特定盛土等規制区域は 市街地外でも指定可能 で、山間部・農地・林地等の広域での盛土規制を可能にする。両区域は重複指定も可能で、地域の特性に応じた使い分けが運用される。

2023年改正の最大のポイントは、特定盛土等規制区域の新設である。2021年熱海市土石流災害(山間部の不適切な盛土が土石流となり下流の市街地に被害を及ぼした事故)を契機に、市街地外の盛土も法的規制対象とする制度設計が必要となり、特定盛土等規制区域の新設に至った経緯がある。

試験での位置付け

規制区域は宅建本試験の法令上の制限ブロックで盛土規制法の論点として位置付けられる。問題文では「2種類の規制区域(宅地造成等工事規制区域・特定盛土等規制区域)の違い」「指定権者(都道府県知事・指定都市等の市長)」「2023年改正で新設された特定盛土等規制区域の位置付け」「市街地外指定の可否」がピンポイントで問われる。

特に2023年改正で新設された特定盛土等規制区域は、改正論点として近年の試験で出題頻度が増している。市街地外でも指定可能(山間部等の広域指定が想定される)という基本構造を押さえる必要がある。

過去問の出題パターンとしては、4つの選択肢のうち1つに「規制区域は1種類のみ」「指定権者は国土交通大臣」のような誤りを混在させる形が頻出する。各論点を一表に整理して暗記しておけば、これらの選択肢は即座に切れる。

2種類の規制区域の整理

図1: 2種類の規制区域

図2: 2種類の規制区域の対比

観点宅地造成等工事規制区域(10条)特定盛土等規制区域(26条)
対象範囲市街地等中心市街地外も指定可
規制対象宅地造成・特定盛土等・土石堆積特定盛土等・土石堆積
規制趣旨市街地等の人家・公共施設保護山間部等での災害防止+市街地等への影響防止
指定権者都道府県知事(指定都市等は市長)都道府県知事(指定都市等は市長)
制度起源旧宅地造成等規制法から継承2023年改正で新設

宅地造成等工事規制区域(10条)

宅地造成等工事規制区域 は、盛土規制法10条1項に基づき、宅地造成等(宅地造成・特定盛土等・土石の堆積)に伴う災害により市街地等の区域における人家・公共施設等に被害を生じるおそれが特に大きいと認められる区域として、都道府県知事(指定都市・中核市では当該市長)が指定する区域である。

宅地造成等工事規制区域の特徴は、「市街地等」を中心とした指定 にある。具体的には、住宅地・住宅地周辺・集落・公共施設立地地域等で、宅地造成等の工事による土砂崩壊・がけ崩れ等のリスクが住民・施設に直接影響する区域が想定される。これは旧宅地造成等規制法以来の伝統的な規制区域類型として位置付けられる。

宅地造成等工事規制区域内では、宅地造成等の工事に対して 許可制(盛土規制法12条)が適用される。一定規模以上の盛土・切土・土石堆積等を行う場合、工事主は都道府県知事(指定都市等は市長)の許可を受けなければならない構造である。許可基準は、技術的基準(盛土の構造・排水施設等)・工事主の資力信用・工事施行者の能力等を含む多面的な審査となる。

特定盛土等規制区域(26条、2023年新設)

特定盛土等規制区域 は、盛土規制法26条1項に基づき、宅地造成等工事規制区域以外の土地で、特定盛土等または土石の堆積が行われた場合、これらに伴う災害により市街地等の区域・集落の区域・これらに隣接する地域における人家・公共施設等に被害を生じるおそれが特に大きいと認められる区域として、都道府県知事等が指定する区域である。

特定盛土等規制区域の最大の特徴は、「市街地外でも指定可能」 という適用範囲の拡大にある。山間部・農地・林地等の市街地外で、不適切な盛土により下流の市街地・集落に災害リスクをもたらす区域として指定される構造である。これは2021年熱海市土石流災害の教訓を踏まえ、市街地外の盛土も法的規制対象とする制度設計を実現したものである。

特定盛土等規制区域内では、特定盛土等・土石堆積に対する 許可制または届出制 が適用される(規模により異なる)。市街地外の広域指定であるため、すべての盛土を許可対象とすると過大な規制負担となる懸念から、規模・態様に応じた段階的規制が設計されている構造である。

両区域の重複指定と隣接配置

宅地造成等工事規制区域と特定盛土等規制区域は、別々の区域として並列指定 される構造である。両区域は対象範囲・規制内容が異なるため、論理的に重複指定はないが、地理的に隣接して配置される運用が想定される。

実務上は、市街地中心部・住宅地等を宅地造成等工事規制区域として指定し、その外周の山間部・林地等を特定盛土等規制区域として指定するパターンが標準的な設計と考えられる。これによって、市街地等への災害影響の潜在的経路全体に法的規制が及ぶ構造を確保する仕組みである。

試験では「規制区域は1種類のみ」「特定盛土等規制区域は都市部のみ指定」のような選択肢は誤り。2種類の並列構造と適用範囲の違いを一表で押さえる必要がある。

指定権者と指定手続

指定権者の整理

両規制区域の指定権者は 都道府県知事 が原則である(盛土規制法10条1項・26条1項)。ただし、指定都市・中核市の区域内については当該市長 が指定権者となる(地方自治法等の特例)。これは指定都市・中核市が都道府県と同等の事務処理能力を持つ大都市自治体として、独自に規制区域指定権限を持つ構造である。

国土交通大臣は規制区域の指定権者ではない。盛土規制法は国土交通省所管の法律ではあるが、規制区域の指定は地方自治体(都道府県・指定都市・中核市)レベルで行われる構造で、国は法律全体の制度設計・基本的な運用基準の策定を担う関係となっている。

試験では「規制区域は国土交通大臣が指定する」「市町村が指定する」のような選択肢は誤り。都道府県知事(指定都市・中核市では当該市長) という指定権者の整理を押さえる必要がある。

指定の手続と公示

規制区域の指定は、都道府県知事等が地域の地形・地質・既存盛土の状況・想定される災害リスク等を調査した上で、都道府県等の判断で行う。指定にあたっては、市町村長の意見聴取 が義務付けられる(盛土規制法10条2項・26条2項)。これは地域の実情に詳しい市町村の意見を反映するための手続的保障である。

指定の効力発生時期は、公示 により決定される(同条3項)。指定区域の境界・指定内容を公示することで、第三者にも区域指定が周知される構造で、不動産取引・建築計画における規制区域の確認が可能となる仕組みである。

実務上は、都道府県のホームページ・公報等で指定区域の地図・境界詳細が公表される。宅建実務では、取引対象不動産が規制区域に指定されているかの確認が重要事項説明の対象となる場合がある。

解除と区域変更

規制区域の指定は、災害リスクの状況変化に応じて 解除・変更 される場合がある。区域の地形・地質改善・盛土の安全化等により災害リスクが低減した場合、都道府県知事等は区域指定を解除または範囲変更できる構造である。

解除・変更も指定と同様の手続(市町村長の意見聴取・公示)で行われる。指定が永続的でないこと、災害リスクの実態に応じた弾力的な区域管理が行われる仕組みを押さえる。試験では指定の永続性に関する選択肢が問われることはまれだが、概念として知識として保持しておく価値がある。

2023年改正の経緯と影響

2021年熱海市土石流災害と新法整備

盛土規制法は、2021年7月に発生した熱海市土石流災害を契機として整備された法律である。この災害は、山間部の盛土(法的規制が及ばない場所での不適切な盛土工事)が大雨により崩落し、土石流となって下流の市街地に到達、多数の人命・住宅被害を生じた事案である。

この災害以前の規制体系は、旧 宅地造成等規制法(昭和36年法律第191号)を中心としていたが、同法は 宅地造成のための盛土・切土を市街地中心に規制 する構造で、市街地外の山間部等の盛土は規制対象外であった。熱海災害は、この規制の隙間を突いた不適切盛土が大規模災害に発展した事案として、法整備の必要性を強く示すこととなった。

これを受け、政府は包括的な盛土規制の新法整備に着手し、2022年に盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)を制定、2023年5月に施行した。同時に旧宅地造成等規制法は廃止され、規制体系は新法に一本化された経緯となっている。

旧法から新法への変更点

旧宅地造成等規制法から盛土規制法への変更点は多岐にわたる。主要な変更点を整理すると以下の通りである。

これらの変更により、盛土規制は市街地中心の限定規制から、全国規模の包括的災害防止規制へと大きく転換した。

試験での出題傾向

盛土規制法は2023年5月施行の新法であり、宅建試験では2024年以降の出題対応が想定される論点として位置付けられる。改正論点として、以下のポイントが特に試験で問われやすい。

これらのポイントを一表で押さえ、特に「特定盛土等規制区域=市街地外も指定可」という改正の核心を理解しておくことが試験対策となる。

クイズで腕試し

クイズ1

📝 オリジナル問題

盛土規制法上の規制区域に関する記述として、正しいものはどれか。

  1. 規制区域は宅地造成等工事規制区域の1種類のみである
  2. 規制区域は宅地造成等工事規制区域(10条)と特定盛土等規制区域(26条)の2種類である
  3. 規制区域はすべて市街地内のみに指定される
  4. 規制区域の指定権者は国土交通大臣である
解説
解説 解答・解説

正解: 2

盛土規制法10条は宅地造成等工事規制区域、26条は特定盛土等規制区域を定めており、規制区域は2種類。1は1種類のみで誤り(改正前知識の残存)、3は特定盛土等規制区域は市街地外も指定可で誤り、4は指定権者は都道府県知事(指定都市・中核市は当該市長)で国土交通大臣ではないため誤り。

クイズ2

📝 オリジナル問題

特定盛土等規制区域(盛土規制法26条)に関する記述として、正しいものはどれか。

  1. 市街地内のみに指定される
  2. 市町村長が指定する
  3. 市街地外でも指定可能で、2023年改正で新設された
  4. 旧宅地造成等規制法から継承された区域である
解説
解説 解答・解説

正解: 3

特定盛土等規制区域は2023年5月施行の盛土規制法で新設された区域類型で、市街地外でも指定可能(山間部等の広域指定が想定)。1は市街地外も指定可で誤り、2は指定権者は都道府県知事(指定都市・中核市は当該市長)で誤り、4は2023年新設で旧法には存在しなかったため誤り。2021年熱海土石流災害を契機に新設された改正論点。

クイズ3

📝 オリジナル問題

盛土規制法の制度沿革に関する記述として、正しいものはどれか。

  1. 盛土規制法は1961年制定の宅地造成等規制法の名称変更に過ぎず、内容に大きな変更はない
  2. 盛土規制法は2023年5月施行で、旧宅地造成等規制法を廃止して新設された包括的規制法である
  3. 盛土規制法は市街地のみを規制対象とし、市街地外の盛土は規制対象外である
  4. 盛土規制法の規制対象は宅地造成のみで、土石堆積は規制対象外である
解説
解説 解答・解説

正解: 2

盛土規制法(令和4年法律第55号)は2023年5月施行で、2021年熱海市土石流災害を契機に旧宅地造成等規制法を廃止して新設された包括的災害防止法。1は包括的拡大で内容変更ありで誤り、3は特定盛土等規制区域で市街地外も規制対象で誤り、4は規制対象は宅地造成・特定盛土等・土石堆積の3類型で誤り。

まとめ

  • 盛土規制法上の規制区域は 2種類:①宅地造成等工事規制区域(10条、市街地等中心)・②特定盛土等規制区域(26条、2023年新設、市街地外も指定可)
  • 指定権者:両区域とも都道府県知事(指定都市・中核市では当該市長)。国土交通大臣ではない
  • 2023年5月施行の盛土規制法は、2021年熱海市土石流災害を契機に旧宅地造成等規制法を廃止して新設された包括的災害防止法
  • 規制対象の3類型:宅地造成・特定盛土等・土石堆積
  • 旧法からの変更:規制対象拡大・規制区域2種類化・市街地外への拡大・罰則強化・既存盛土への対応
  • 区域指定の手続:市町村長の意見聴取+公示で効力発生、解除・変更も同様の手続

学習メモ: 盛土規制法は「2021年熱海土石流災害を契機に整備された新法」。試験対策では「2種類の規制区域(10条と26条)の違い」「指定権者(都道府県知事・指定都市等の市長、国土交通大臣ではない)」「2023年5月施行・旧法廃止」「規制対象の3類型(宅地造成・特定盛土等・土石堆積)」の4本柱を押さえる。

特に特定盛土等規制区域(26条、市街地外も指定可)は2023年新設の改正論点で、近年の試験で出題頻度が増している。「市街地外でも指定可能」という適用範囲の拡大が、熱海災害教訓を踏まえた制度設計の核心である。

旧宅地造成等規制法(昭和36年法律第191号)は廃止され、規制体系は新法に一本化された点も重要な変更。「旧法は市街地中心」「新法は全国規模の包括的災害防止」という規制範囲の拡大を理解しておくことが対策となる。

最終チェック: 盛土規制法の規制区域は2種類=①宅地造成等工事規制区域(10条、市街地等中心、宅地造成・特定盛土等・土石堆積を規制) ②特定盛土等規制区域(26条、2023年改正で新設、市街地外も指定可、特定盛土等・土石堆積を規制)。指定権者=両区域とも都道府県知事(指定都市・中核市は当該市長)、国土交通大臣ではない。指定手続=市町村長の意見聴取+公示で効力発生。盛土規制法(令和4年法律第55号)は2023年5月施行で、2021年熱海市土石流災害を契機に旧宅地造成等規制法を廃止して新設された包括的災害防止法。規制対象の3類型=宅地造成・特定盛土等・土石堆積。市街地外への拡大が改正の核心。

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