住宅取得等資金贈与非課税とは?租税特別措置法70条の2の直系尊属からの住宅資金贈与非課税制度

公開: 更新: カテゴリ: 税・統計

30秒で結論

住宅取得等資金贈与非課税の定義と試験での位置付け

法律上の定義(租税特別措置法70条の2)

租税特別措置法70条の2は、平成21年(2009年)に創設された住宅取得促進のための贈与税特例である。直系尊属(父母・祖父母等) から 住宅取得等資金 の贈与を受け、一定の要件のもとに住宅の取得・新築・増改築等を行った場合、一定額まで贈与税を非課税とする特例として位置付けられる。

非課税限度額は 住宅の種類(省エネ等住宅 vs 一般住宅) で異なり、年度ごとに見直されている時限立法の特例である。一般的に省エネ等住宅は1000万円、一般住宅は500万円程度の非課税限度額が適用される構造で、住宅政策の方針に応じて毎年度見直されている。

特例の趣旨は、若年層の住宅取得促進と高齢層から若年層への資産移転促進の両面にある。一般的な贈与は贈与税の対象となるが、住宅取得等資金については特例的に非課税枠を設けることで、住宅取得の経済的負担を軽減し、住宅市場の活性化を図る制度設計となっている。

わかりやすく言い換えると

要するに「親や祖父母から住宅取得用のお金をもらった場合、一定額まで贈与税がかからない」という制度が住宅取得等資金贈与非課税である。通常、年間110万円(暦年贈与の基礎控除)を超える贈与には贈与税がかかるが、住宅取得用の場合は特例で大きな非課税枠が認められる仕組みになっている。

特例の最大の特徴は 直系尊属からの贈与に限定 される点である。父母・祖父母・曾祖父母からの贈与は対象だが、兄弟姉妹・叔父叔母・配偶者の親(義父母)・親戚一般からの贈与は特例の対象外となる構造である。これは特例が「世代を超えた直系の資産移転」を促進する設計だからである。

非課税限度額は住宅の種類により異なり、省エネ等住宅(省エネ・耐震・バリアフリー等の認定基準を満たす住宅) はより大きな非課税枠、一般住宅 はやや小さな非課税枠が適用される構造である。これは住宅性能向上を促進する政策的意図を反映した設計で、省エネ住宅・耐震住宅等の取得にインセンティブを付与する制度となっている。

試験での位置付け

住宅取得等資金贈与非課税は宅建本試験の税・統計ブロックで国税の論点として位置付けられる。問題文では「贈与者の範囲(直系尊属限定)」「非課税限度額の住宅種類別差異」「基礎控除110万円との併用可否」「受贈者の所得制限(合計所得2000万円以下)」「取得・居住の期限(翌年3月15日まで)」がピンポイントで問われる。

特に直系尊属限定の要件は、試験で繰り返し問われる暗記論点である。「兄弟姉妹からの贈与も非課税」「叔父叔母からの贈与も非課税」のような誤りの選択肢が頻出する構造で、直系尊属(父母・祖父母・曾祖父母)のみが対象という基本要件を押さえる必要がある。

過去問の出題パターンとしては、4つの選択肢のうち1つに「兄弟姉妹からの贈与も対象」「基礎控除と併用不可」のような誤りを混在させる形が頻出する。各論点を一表に整理して暗記しておけば、これらの選択肢は即座に切れる。

適用要件の整理

図1: 主要適用要件

図2: 非課税限度額(典型例、年度により変動)

住宅の種類非課税限度額(贈与税)基礎控除110万円併用後
省エネ等住宅(省エネ・耐震・バリアフリー認定)1000万円1110万円
一般住宅500万円610万円

①直系尊属からの贈与

特例の対象となる 贈与者 は、受贈者の 直系尊属 に限定される。具体的には父母・祖父母・曾祖父母等の直系の血縁関係にある者で、兄弟姉妹・叔父叔母・甥姪・配偶者の親(義父母)・いとこ・親戚一般は対象外となる。これは特例が「世代を超えた直系資産移転」を促進する設計だからである。

直系尊属の認定は戸籍上の血縁関係で判定される。実子・実親の関係はもちろん、養親子の関係も直系尊属に含まれる。一方、配偶者の親(義父母)は受贈者にとって直系尊属でないため、義父母からの贈与は本特例の対象外となる構造である。

試験では「兄弟姉妹からの贈与も非課税」「叔父叔母からの贈与も対象」という選択肢は誤り。直系尊属のみ という限定要件を押さえる必要がある。

②受贈者の合計所得2000万円以下

受贈者の合計所得 は、贈与年の合計所得金額が 2000万円以下 であることが要件である。これは特例が中所得層以下の住宅取得促進を目的とする設計の表れで、高所得者(合計所得2000万円超)は本特例の対象外となる構造である。

「合計所得金額」は、給与所得・事業所得・不動産所得・配当所得・譲渡所得等を合計した金額を指す。サラリーマンの給与所得が中心の場合、年収約2200万円程度(給与所得控除後で2000万円)が境界となる目安である。一定の所得階層以下に特例適用を限定する設計となっている。

なお、住宅の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は、合計所得制限が 1000万円以下 に強化される(令和3年度改正)。これは小規模住宅への投機的取引を抑制するための規律で、床面積に応じた所得制限の段階構造が組み込まれている。

③④資金使途と取得・居住の期限

特例適用には、贈与資金が 住宅の取得・新築・増改築等 に充てられる必要がある。具体的には、①新築住宅の取得、②既存住宅(中古住宅)の取得、③居住中の住宅の増改築・大規模修繕等が対象となる。一般的な家計支出・投資・他の資産購入等への充当では特例適用は受けられない。

取得・居住の期限 は、贈与年の翌年3月15日までに住宅の取得・新築完了・増改築完了等を行い、同日までに居住を開始する ことが要件である(やむを得ない事情がある場合は遅くとも12月31日まで延長可)。新築住宅で完成が遅れる場合は、3月15日時点で取得済みであれば居住の遅延も一定許容される運用がある。

試験では「贈与から数年間は取得・居住の猶予あり」のような選択肢は誤りで、原則として翌年3月15日までという期限を押さえる必要がある。

⑤住宅の床面積要件

住宅の 床面積要件 は、40㎡以上240㎡以下 で、床面積の半分以上が居住用であることが必要である。床面積が40㎡未満の極小住宅、240㎡超の超大型住宅は対象外となる構造で、一般的な居住用住宅を対象とする設計となっている。

40㎡未満を対象外とするのは、投機的取引・実際の居住が想定されない小規模物件への適用を排除する目的である。一方、240㎡超を対象外とするのは、超大型住宅への高所得者向け資産移転を排除する目的である。両端を切ることで、適切な範囲の居住用住宅取得に特例を限定する制度設計となっている。

なお、床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は、前述の通り受贈者の合計所得制限が1000万円以下に強化される。これは小規模住宅への投機的取引を更に抑制する追加要件として位置付けられる。

非課税限度額と基礎控除の併用

住宅種類別の非課税限度額

非課税限度額は、贈与時点で取得・新築・増改築する住宅の種類により異なる構造である。一般的に 省エネ等住宅 はより大きな非課税枠、一般住宅 はやや小さな非課税枠が適用される。

省エネ等住宅 の認定基準は、以下のいずれかを満たす住宅である。

これらの認定基準を満たす住宅は、省エネ等住宅として大きな非課税限度額が適用される。一般住宅(認定基準を満たさない住宅)はやや小さな非課税枠での適用となる。

非課税限度額の具体的な金額は、年度ごとに見直されている。直近の運用では省エネ等住宅で1000万円程度、一般住宅で500万円程度が標準的な水準となっているが、実際の金額は申告時点での法令を確認する必要がある運用となっている。

暦年贈与基礎控除110万円との併用

本特例は 暦年贈与の基礎控除110万円(贈与税法21条の5)併用可能 である。これにより、住宅取得等資金贈与非課税の限度額に加えて、暦年贈与の基礎控除110万円も非課税とする運用ができる構造となっている。

具体的には、省エネ等住宅で限度額1000万円の場合、本特例による1000万円 + 基礎控除110万円 = 合計1110万円まで贈与税が非課税 となる仕組みである。一般住宅で限度額500万円の場合、本特例500万円 + 基礎控除110万円 = 合計610万円まで非課税 となる。

試験では「本特例と基礎控除110万円は併用不可」のような選択肢は誤りで、併用可能という整理を押さえる必要がある。

相続時精算課税制度との選択適用

本特例は、相続時精算課税制度(贈与税法21条の9以下) とも一定の関係を持つ。相続時精算課税制度は、60歳以上の直系尊属から18歳以上の直系卑属への贈与で、累計2500万円まで非課税(超過分は20%課税)とし、贈与者の死亡時に相続税で精算する制度である。

本特例は、相続時精算課税制度と 併用可能 である。具体的には、本特例の非課税限度(1000万円等) + 相続時精算課税の特別控除(2500万円) + 暦年贈与基礎控除(110万円)の組合せで、住宅取得等資金贈与の規模に応じた多層的な非課税対応が可能となる構造である。

ただし、相続時精算課税制度を選択すると、その後の贈与は暦年贈与に戻れない(継続適用)という制約があるため、長期的な税務戦略に基づく選択が必要となる。試験では細部までは出題頻度が低いが、両制度の併用可能性は知識として押さえておく価値がある。

試験論点の整理

直系尊属限定の要件

「兄弟姉妹からの贈与も対象」「叔父叔母からの贈与も対象」「義父母からの贈与も対象」のような誤りの選択肢が頻出する。直系尊属(父母・祖父母・曾祖父母)のみが対象 という基本要件を押さえる必要がある。

直系尊属の認定は戸籍上の血縁関係で判定され、養親子関係も直系に含まれる。一方、配偶者の親(義父母)は直系尊属でないため対象外となる。この区別を確実に押さえることが試験対策の核心となる。

受贈者の所得制限

合計所得2000万円以下 の所得制限は、特例が中所得層以下を対象とする設計の表れである。「所得制限なし」「所得制限1億円以下」のような誤り選択肢に注意し、2000万円という数値を押さえる必要がある。

床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は所得制限が1000万円以下に強化される追加要件もある。この段階的な所得制限構造は、応用問題で問われる場合がある。

基礎控除110万円との併用可

基礎控除110万円との併用可能 という関係は、頻出論点である。「特例と基礎控除は併用不可で、特例だけが適用される」という選択肢は誤りで、本特例の限度額 + 110万円までが非課税となる仕組みを押さえる。

これは贈与税全般の制度として、暦年贈与の基礎控除は他の特例と原則として併用可能な設計になっている点を理解しておくと、関連選択肢に対応しやすい。

クイズで腕試し

クイズ1

📝 オリジナル問題

住宅取得等資金贈与非課税の贈与者の範囲に関する記述として、正しいものはどれか。

  1. 受贈者の親族すべてからの贈与が対象である
  2. 直系尊属(父母・祖父母等)からの贈与のみが対象である
  3. 兄弟姉妹からの贈与も対象である
  4. 配偶者の親(義父母)からの贈与も対象である
解説
解説 解答・解説

正解: 2

租税特別措置法70条の2は、直系尊属(父母・祖父母・曾祖父母等)からの贈与のみを対象とする。兄弟姉妹・叔父叔母・甥姪・いとこ等は対象外(1・3は誤り)。配偶者の親(義父母)も受贈者にとって直系尊属でないため対象外(4は誤り)。「世代を超えた直系資産移転」が制度設計の核心。

クイズ2

📝 オリジナル問題

住宅取得等資金贈与非課税と暦年贈与の基礎控除(贈与税法21条の5)の関係に関する記述として、正しいものはどれか。

  1. 両者は併用不可で、本特例のみ適用される
  2. 両者は併用可で、本特例の非課税限度額+基礎控除110万円までが非課税となる
  3. 両者は併用可だが、合計500万円までが上限である
  4. 本特例適用時は基礎控除を別の年度に持ち越せる
解説
解説 解答・解説

正解: 2

本特例は暦年贈与基礎控除110万円と併用可能で、本特例の非課税限度額+110万円が合計の非課税枠となる。例えば省エネ等住宅で本特例1000万円+基礎控除110万円=合計1110万円まで非課税。1は併用可で誤り、3は合計上限はなく誤り、4は基礎控除は当該年度のみで持ち越し不可で誤り。

クイズ3

📝 オリジナル問題

住宅取得等資金贈与非課税の受贈者要件に関する記述として、正しいものはどれか。

  1. 受贈者の所得制限はなく、誰でも適用できる
  2. 受贈者の合計所得が2000万円以下であることが要件である
  3. 受贈者の年齢は60歳以上が必要である
  4. 受贈者は法人でも適用できる
解説
解説 解答・解説

正解: 2

租税特別措置法70条の2は、受贈者の贈与年の合計所得金額が2000万円以下であることを要件と規定。床面積40㎡以上50㎡未満の場合は1000万円以下に強化される追加要件あり。1は所得制限ありで誤り、3は受贈者は18歳以上(2022年4月以降)で60歳以上は誤り、4は受贈者は個人(自然人)で法人は対象外で誤り。

まとめ

  • 住宅取得等資金贈与非課税は 直系尊属(父母・祖父母等)からの住宅取得等資金贈与に対する贈与税非課税特例(租税特別措置法70条の2)
  • 主要要件:①直系尊属からの贈与受贈者の合計所得2000万円以下 ③受贈者の年齢18歳以上(2022年4月以降) ④資金使途は住宅の取得・新築・増改築等 ⑤住宅床面積40㎡以上240㎡以下
  • 非課税限度額:住宅の種類別(省エネ等住宅は大きく、一般住宅は中程度、年度ごとに見直し)
  • 暦年贈与基礎控除110万円との併用可(本特例の限度額+110万円までが非課税)
  • 相続時精算課税制度との併用可
  • 取得・居住の期限:贈与年の 翌年3月15日まで(やむを得ない事情があれば12月31日まで延長可)
  • 床面積40㎡以上50㎡未満の場合は所得制限が1000万円以下に強化(令和3年度改正)

学習メモ: 住宅取得等資金贈与非課税は「直系尊属から住宅資金贈与の特例」。試験対策では「直系尊属限定」「受贈者所得制限2000万円」「住宅種類別非課税限度額」「基礎控除110万円と併用可」「取得・居住期限(翌年3月15日)」の5本柱を押さえる。

最大の論点は「直系尊属限定」。父母・祖父母・曾祖父母のみが対象で、兄弟姉妹・叔父叔母・義父母等は対象外という限定が試験で繰り返し問われる。直系=「縦の血縁」、傍系=「横の血縁」という整理で覚えると区別しやすい。

非課税限度額は住宅の種類で変動する構造。省エネ等住宅(認定基準を満たす)は大きな非課税枠、一般住宅はやや小さな非課税枠で、住宅性能向上のインセンティブとして設計されている。

暦年贈与基礎控除110万円との併用可は頻出論点。本特例の限度額+110万円が合計の非課税枠となる仕組みを押さえる。

最終チェック: 住宅取得等資金贈与非課税は租税特別措置法70条の2の直系尊属からの住宅資金贈与非課税特例。要件=①贈与者は直系尊属(父母・祖父母・曾祖父母等)、兄弟姉妹・叔父叔母・義父母は対象外 ②受贈者の合計所得2000万円以下(40㎡以上50㎡未満は1000万円以下) ③受贈者18歳以上(2022年4月以降) ④資金使途は住宅取得・新築・増改築等 ⑤床面積40㎡以上240㎡以下、半分以上居住用 ⑥贈与年の翌年3月15日までに取得・居住開始。非課税限度額=住宅種類別(省エネ等住宅は大、一般住宅は中)、年度ごとに見直し。暦年贈与基礎控除110万円と併用可、本特例限度+110万円までが非課税。相続時精算課税制度とも併用可。

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