宅建の実務クエスト

【宅建の実務】期間が来たら確実に返してほしい──定期借家契約を貸主に説明する

転勤の間だけ自宅を貸したい貸主から、相談が届く。

「数年後に戻ってくる予定なので、その間だけ自宅を貸したいです。期間が来たら確実に返してもらいたいのですが、ふつうの賃貸だと更新されて出て行ってもらえないと聞きました。更新のない契約にはできますか?」

宅建の試験では「定期借家」は普通借家との対比で頻出。覚えた違いが力になるのは、こうして貸主の希望にぴったりの仕組みを示せたときだ。この記事では、定期借家契約の仕組みと、手続きの落とし穴までを整理する。

この記事は、学習アプリ「シカクエ」の実務クエスト「定期借家契約を貸主に説明する」を読み物として再構成したもの。人物・案件はすべて架空です。

まず結論:更新のない「定期借家契約」が向いている

ふつうの賃貸(普通借家契約)と、定期借家契約の違いはここにある。

普通借家契約定期借家契約
更新原則として更新される更新がない
期間満了時貸主から断るには正当事由が必要期間満了で契約が終了する
期間の下限1年未満の定めは「期間の定めなし」になる1年未満の契約も有効
向いている場面長く貸したいとき期間を区切って貸したいとき

「数年後に戻るまでの間だけ」という貸主の希望には、期間満了で確実に終わる定期借家契約が合う。普通借家の「正当事由」は、貸主の自己使用の必要だけでは認められないことも多い、かなり高い壁だ。戻る前提で貸すなら、入口で契約の型を選ぶことがすべてと言っていい。

手続きの決まり——ここで失敗すると普通借家になる

更新がない分、借主が不利にならないよう手続きが定められている。そして、この手続きの不備は「定期借家のつもりが普通借家だった」という最悪の結果に直結する。

いちばんの落とし穴はここだ。判例は、この事前説明の書面を契約書とは別の独立した書面にすることを求めている。契約書の中に「更新はない」と書いてあるだけでは足りない。説明を欠くと「更新がない」という定めが無効になり、普通借家として扱われる——つまり戻ってきたのに家が返らない、という相談の出発点そのものが崩れる。書面を2つ用意する、と覚えておく。

期間中と満了時の運用——通知を忘れない

契約すれば終わりではなく、満了に向けた運用がある。

  1. 終了通知:期間が1年以上の契約では、期間満了の1年前から6か月前までの間に、借主へ「期間満了で終了する」旨を通知する必要がある。忘れると、通知の時から6か月間は終了を借主に対抗できない。
  2. 借主側の中途解約:床面積200㎡未満の居住用建物では、転勤・療養などやむを得ない事情があれば、借主から申し入れて1か月後に解約できる。貸主側からの中途解約は原則できない。
  3. 再契約という選択肢:期間満了後も両者が望めば、更新ではなく新しい契約を結び直す形で継続できる。戻る時期が延びた場合にも対応できる。

家賃への影響も、正直に伝える

定期借家は借主から見ると「更新できない部屋」なので、同条件の普通借家より家賃がやや低めになる傾向がある。期間の短さによっては借り手探しにも時間がかかる。

それでも、転勤の数年間だけ空き家にしておけば家賃収入はゼロで、建物は傷む。「相場よりやや低くても、戻る日が守られて、収入と管理が付いてくる」——この比較で考えると、定期借家の価値が正しく伝わる。良い面だけでなく、この取引条件まで話すのが誠実な提案になる。

プロならこう説明する

ご希望にぴったりの仕組みがあります。「定期借家契約」といって、更新がなく、決めた期間の満了で確実に終了する契約です。ふつうの賃貸は原則更新され、貸主側から断るには「正当事由」という高い壁がありますので、戻られる前提なら最初の契約の型がいちばん大事です。

手続きには決まりがあります。契約は書面で行い、さらに契約の前に「更新がなく期間満了で終了します」という内容の別の書面をお渡しして説明します。この説明を欠くと普通借家扱いになってしまうため、書類は当社で正しく整えます。

期間が1年以上の場合は、満了の1年前から6か月前までの間に終了のご通知が必要です。この管理も当社で行います。あわせて、定期借家は家賃が相場よりやや低めになる傾向があることと、もし戻りが延びた場合は「再契約」で続けられることも、先にお伝えしておきますね。

よくある質問と、その答え方

「途中で家賃を上げ下げできますか」
定期借家では、家賃を改定しない(増減額請求をしない)という特約が有効とされている。普通借家では借地借家法の増減額請求権を排除できないのと対照的だ。数年間の収支を固定したい貸主には、この特約も選択肢になる。

「いま普通借家で貸している部屋を、定期借家に切り替えられますか」
居住用建物では、同じ借主との間で普通借家から定期借家への切り替えが制限されている。事実上、いまの借主が退去してからの話になる。切り替え前提の相談には、この制限を最初に伝える。

「借主が期間満了後も居座ったら?」
定期借家は満了で契約が終了しているので、正当事由の議論にはならない。明渡しを求める法的手続きに進める。ここが普通借家と決定的に違う点で、「戻る日」の裏付けになる。

「自宅の住宅ローンが残ったまま貸せますか」
住宅ローンは自己居住が前提なので、貸す前に金融機関へ相談が要る。転勤による賃貸は認められる例が多いが、無断で貸すと契約違反になりうる。定期借家の相談を受けたら、ローンの確認を最初のチェック項目に入れる。

説明で外したくないポイント

  1. 事前説明は契約書と別の書面で:ここを欠くと普通借家になる。最大の落とし穴。
  2. 1年以上なら終了通知:満了1年前〜6か月前。通知管理を業者が引き受ける。
  3. 借主の中途解約権がある:200㎡未満の居住用・やむを得ない事情。貸主からは原則できない。
  4. 家賃の傾向まで正直に:やや低め。それでも空き家より合理的という比較で示す。
  5. 再契約で柔軟に:戻りが延びても、新契約の形で続けられる。

この場面で効いている宅建の知識

「定期借家は更新なし・書面・事前説明」という試験知識が、そのまま貸主への提案になっている。

個別の契約条件・書式は、最新の法令と判例をふまえて整えてください。

勉強は、クエストになった。

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架空の実務場面をもとにした学習用の解説記事です。実在の会社・物件・取引ではありません。制度は改正されることがあるため、受験年度の最新情報もあわせてご確認ください。