宅建の実務クエスト

【宅建の実務】家の前の道が「私道」だと言われた──私道負担の説明をする

中古戸建を検討している買主から、こんな質問が届く。

「資料に『私道負担あり 15㎡』と書いてありました。土地が80㎡と聞いていたのですが、これは何が違うのでしょうか。負担というのは、お金がかかるという意味ですか。」

私道の説明でつまずく買主は多い。力になるのは、こうして「持っている面積」と「建てられる面積」の違いを、その場で渡せたときである。この記事では、私道負担が重要事項説明の項目になっている理由、面積の扱い、負担の中身、そして調べ方までを通しで整理する。

この記事は、学習アプリ「シカクエ」の実務クエストを読み物として再構成したもの。人物・案件はすべて架空です。実際の判断は、必ず現地の調査結果と役所での確認によります。

まず結論:私道負担は重要事項説明の必須項目

宅地建物取引業法35条1項3号は、説明事項をこう定めている。

当該契約が建物の貸借の契約以外のものであるときは、私道に関する負担に関する事項(宅地建物取引業法35条1項3号)

読み方に2つの要点がある。1つは「建物の貸借の契約以外」という限定で、売買・交換のほか、宅地の貸借も対象に入る。もう1つは、負担が「ない」場合もその旨を説明することだ。「私道に関する負担に関する事項」という書き方は、有無を含めて説明せよという意味になる。

そして「負担」という言葉は、お金のことだけを指していない。面積の負担・費用の負担・利用の制約の3つが含まれる。買主の質問はここに直結している。

「土地80㎡・私道負担15㎡」の意味

この表示は、買う面積が80㎡で、そのうち15㎡が私道の部分という意味になる。80㎡から15㎡が引かれるのではなく、80㎡の中に含まれている。

面積扱い
取得する土地の全体80㎡登記上の所有権はここまで及ぶ
うち私道の部分15㎡道路として使う。建物は建てられない
建物を建てられる部分65㎡実際に使える面積

買主に効くのは、この最後の行だ。「80㎡の土地」と聞いて思い描く家と、65㎡で建てられる家は違う。しかも私道部分の固定資産税は、非課税になる場合もあれば課税される場合もあり、市町村の判断による。持っているのに使えず、税だけかかることがある部分だと分かる形で渡す。

建蔽率・容積率の計算はどうなるか

ここは条文の当て方に注意が要る。

建蔽率は建築面積の敷地面積に対する割合、容積率は延べ面積の敷地面積に対する割合で決まる(建築基準法53条1項、52条1項)。そして敷地面積の算定方法は施行令に置かれている。

敷地面積 敷地の水平投影面積による。ただし、建築基準法第四十二条第二項、第三項又は第五項の規定によつて道路の境界線とみなされる線と道との間の部分の敷地は、算入しない。(建築基準法施行令2条1項1号)

除かれるのは2項道路等のセットバック部分だ。「私道だから当然に敷地面積から外れる」と書かれているわけではない

私道の種類敷地面積への算入
2項道路のセットバック部分令2条1項1号ただし書により算入しない
位置指定道路(建築基準法42条1項5号)その部分は建築物の敷地として使えないため、実務上は敷地面積に含めない

位置指定道路は「土地を建築物の敷地として利用するため」に築造され、特定行政庁から位置の指定を受けた道だ(42条1項5号)。道路として指定されている以上、そこに建物は建てられない。結果として建蔽率・容積率の計算の基礎から外れることになるが、根拠の条文がセットバックとは違う。説明で混ぜないよう分けて押さえる。

買主に渡すときは条文の話ではなく、数字にする。「65㎡に建蔽率をかけた面積が、建てられる1階の広さです」という形にすると伝わる。

私道は勝手に廃止できない

「自分の土地なので、囲ってしまえばよいのでは」という発想が出ることがある。ここには制限がある。

私道の変更又は廃止によつて、その道路に接する敷地が第四十三条第一項の規定又は同条第三項の規定に基づく条例の規定に抵触することとなる場合においては、特定行政庁は、その私道の変更又は廃止を禁止し、又は制限することができる。(建築基準法45条1項)

43条1項は接道義務の規定だ。私道を廃止すると、その道に接している他の家が接道義務を満たさなくなる。そうなる場合、特定行政庁は変更・廃止を禁止または制限できる。

これは買主にとって、守りの側にも働く条文になる。「他の共有者が勝手に道をやめてしまったら」という不安に対して、そう簡単には廃止できない仕組みがあると答えられる。

掘削の承諾——民法が変わった部分

私道でいちばん揉めるのが、水道管やガス管の引き込みだ。従来は私道所有者の承諾(掘削承諾)が取れるかどうかが実務上の分かれ目とされてきた。ここに、令和5年4月1日施行の改正民法で条文が置かれた。

土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。(民法213条の2第1項)

条文には、行使の条件もあわせて定められている。

内容
2項設備の設置・使用の場所および方法は、他の土地等のために損害が最も少ないものを選ぶ
3項あらかじめ、その目的・場所・方法を、他の土地等の所有者および現に使用している者に通知する
5項他の土地に設備を設置する者は、その土地の損害に対して償金を支払う。1年ごとに支払うこともできる
6項他人の設備を使用する者は、使用を開始するために生じた損害に対して償金を支払う
7項他人の設備を使用する者は、利益を受ける割合に応じて設置・改築・修繕・維持の費用を負担する

実務での意味は大きい。「承諾がもらえなければ何もできない」という前提が変わった。ただし条文は「通知」を求めており(3項)、償金と費用負担も定めている(5項〜7項)。無断で工事を始めてよいという条文ではない

買主への説明では、「制度としては道がありますが、実際には話し合いで進めるのが早い」という形にする。条文を盾に近隣と対立させることが、買主の利益にならない場面は多い。

公道に出られない土地の場合

私道の話と隣り合わせで出てくるのが、通行権だ。

他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる(民法210条1項)。池沼・河川・水路・海を通らなければ公道に至れないとき、崖があって著しい高低差があるときも同様だ(同条2項)。

ただし条件がつく。通行の場所および方法は、通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない(211条1項)。必要があるときは通路を開設できる(同条2項)。そして通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない(212条本文)。通路の開設のために生じた損害に対するものを除き、1年ごとに支払うこともできる(同条ただし書)。

分割で生じた袋地には特則がある。分割によって公道に通じない土地が生じたときは、他の分割者の所有地のみを通行することができ、償金を支払うことを要しない(213条1項)。土地の一部を譲り渡した場合も準用される(同条2項)。「もともと一体だった土地なら、外に迷惑をかけない」という考え方だ。

調べ方の手順——この順番で回る

  1. 公図と測量図で私道の形を確認する。どこからどこまでが私道か、幅はいくつか。
  2. 登記事項証明書で所有形態を確認する。単独所有か、共有か、分筆して各戸が1筆ずつ持つ形か。この形の違いが、後の同意の取りやすさを左右する
  3. 建築指導課で道路種別を確認する。位置指定道路(42条1項5号)か、2項道路か。セットバックの有無がここで決まる。
  4. セットバック部分の面積を出す。2項道路なら、令2条1項1号ただし書により敷地面積から外れる。
  5. 建てられる面積を計算する。敷地面積に建蔽率・容積率をかけて、数字で渡す。
  6. 上下水道の引き込み状況を確認する。既に引き込み済みか、新たに掘削が要るか。
  7. 私道の維持管理の取り決めを確認する。舗装の補修費用を誰がどう負担してきたか。過去の実績を売主に聞く。
  8. 固定資産税の課税状況を確認する。私道部分が非課税かどうかは市町村の判断による。

この8ステップを踏むと、渡せるものが「私道負担があります」から「建てられるのは65㎡で、水道は引き込み済み、補修は5年前に4軒で分担しています」に変わる。

プロならこう説明する

大事なところですので、順にご説明します。

まず面積のお話です。ご購入いただく土地は80平方メートルで間違いありません。そのうち15平方メートルが、道路として使われている部分です。80から15を引かれるのではなく、80の中に含まれている、とお考えください。

ただ、その15平方メートルには建物を建てることができません。ですので、実際に建物をお建てになる部分は65平方メートルになります。この土地の建蔽率は◯パーセントですので、1階の広さは最大で◯平方メートルまで、ということになります。図面でご覧いただくと分かりやすいかと思います。

次に「負担」という言葉についてです。これはお金だけを指すものではなく、3つの意味があります。面積の負担が、いまお話しした15平方メートルです。費用の負担は、道路の舗装が傷んだときの補修費用で、この道に面している方々で分担するのが通例です。使い方の制約は、道路として空けておく必要があるということで、駐車や物置には使えません。

ご心配な点を先回りしてお伝えします。この道は◯軒の共有になっており、勝手に一人が道をやめてしまうことはできません。建築基準法に、私道をやめることでほかのお宅が接道の条件を満たさなくなる場合には、行政がこれを禁止または制限できるという定めがあります。

水道管については、既に引き込みが済んでいるかを確認しております。もし新たに道を掘る工事が必要でしたら、他の所有者の方への事前のご連絡と、損害に応じたお支払いが必要になります。この点は民法に定めがありますので、進め方をご説明できます。

最後に、補修費用の実績を売主さまにうかがっております。過去に何年ごとに、いくらぐらいを何軒で分担してきたか。数字が出ましたら、あわせてご報告します。

この案内には、宅地建物取引業法35条1項3号の説明事項がそのまま入っている。試験で覚えた「私道に関する負担に関する事項」が、現場では面積・費用・制約の3つに分かれると押さえておくと、説明が組み立てやすい。

よくある質問と、その答え方

「私道の部分にも固定資産税はかかりますか」
市町村の判断による。一定の要件を満たす私道は非課税として扱われることがあるが、要件も運用も市町村ごとに異なる。「かかりません」と断定せず、売主から今年の課税明細を取り寄せて、実際に課税されているかを確認するのが正確な進め方になる。明細に私道部分の記載があるかどうかで判断できる。

「賃貸でも説明されるのですか」
条文は「建物の貸借の契約以外」と書いている(35条1項3号)。建物の賃貸では説明事項に入らないが、宅地の賃貸では入る。売買・交換はもちろん対象だ。「賃貸だから関係ない」という覚え方をすると、宅地の賃貸で外す。

「隣が道をふさいだら、通れなくなりますか」
私道の共有者であれば、その持分に基づいて通行できる。共有者でない場合も、公道に通じない土地の所有者には民法210条の通行権がある。分割によって袋地が生じた場合には、他の分割者の所有地のみを通行でき、償金も要らない(213条1項)。ただし「通れる」ことと「車で通れる」ことは別で、通行の方法は他の土地のために損害が最も少ないものを選ぶことになる(211条1項)。車両通行の可否は、個別に確認する事項になる。

説明で外したくないポイント

  1. 私道負担は必須の説明事項:負担がないこともその旨を説明する(35条1項3号)。
  2. 建物の貸借は対象外、宅地の貸借は対象
  3. 「負担」は面積・費用・制約の3つ
  4. 建てられる面積を数字で渡す:敷地面積×建蔽率で示す。
  5. 敷地面積から外れるのはセットバック部分(建築基準法施行令2条1項1号ただし書)。
  6. 私道の廃止は制限できる(建築基準法45条1項)。
  7. 設備の設置は民法213条の2に定めがある:ただし事前の通知と償金が要る。

根拠条文のまとめ

条文見出しこの記事で使った内容
宅地建物取引業法35条1項3号重要事項の説明等建物の貸借以外のときは、私道に関する負担に関する事項を説明する
建築基準法42条1項5号道路の定義位置指定道路。建築物の敷地として利用するため築造し、特定行政庁の位置の指定を受けた道
建築基準法45条1項私道の変更又は廃止の制限接道義務に抵触することとなる場合、特定行政庁は変更・廃止を禁止し、または制限できる
建築基準法52条1項・53条1項容積率/建蔽率いずれも敷地面積に対する割合で定まる
建築基準法施行令2条1項1号面積、高さ等の算定方法敷地面積は水平投影面積による。42条2項等でみなし道路境界線と道との間の部分は算入しない
民法210条・211条・212条公道に至るための他の土地の通行権袋地の通行権、損害が最も少ない場所と方法、償金の支払い
民法213条同上分割によって生じた袋地は他の分割者の土地のみを通行。償金不要
民法213条の2継続的給付を受けるための設備の設置権等電気・ガス・水道の供給のための設備設置権。事前の通知、償金、費用の分担
条文の記述は執筆時点のもの。私道の所有形態・道路種別・課税の扱いは物件ごとに異なるため、実務では必ず公図・登記事項証明書と役所での確認結果によってください。

勉強は、クエストになった。

資格の勉強を、冒険に変えるRPG学習アプリ

App Storeで見る
架空の実務場面をもとにした学習用の解説記事です。実在の会社・物件・取引ではありません。制度は改正されることがあるため、受験年度の最新情報もあわせてご確認ください。