【宅建の実務】家を買うとどんな税金がかかる?──取得時と毎年の税金を案内する
はじめて家を買うお客様から、相談が届く。
「家を買うと、代金や仲介手数料のほかに税金もかかると聞きました。どんな税金が、いつごろかかるのでしょうか。心の準備をしておきたいので、主なものを教えてください。」
不動産の税金は、宅建の学習範囲であると同時に、買主の資金計画そのものだ。覚えた知識が力になるのは、こうして「何が・いつ・どのくらい」の見取り図を渡せたときである。この記事では、税の一覧と根拠、軽減の仕組み、そして案内の順番までを通しで整理する。
まず結論:4つが「買うとき」、2つが「毎年」
住宅の購入でかかる主な税金は6つ。一度きりのものと、持ち続ける限り毎年かかるものに分けると、買主の頭に入りやすい。
| いつ | 税目 | 誰に納めるか | 何にかかるか |
|---|---|---|---|
| 買うとき (一度) | 印紙税 | 国 | 売買契約書・金銭消費貸借契約書 |
| 登録免許税 | 国 | 所有権の登記・抵当権の設定登記 | |
| 不動産取得税 | 都道府県 | 不動産を取得したこと | |
| 毎年 | 固定資産税 | 市町村 | 1月1日時点で持っている土地・家屋 |
| 都市計画税 | 市町村 | 同上(市街化区域内などに限る) |
もう1つ、住宅ローンを組むと抵当権の設定登記にも登録免許税がかかる。「建物と土地の登記」だけを見込んで、抵当権の分を落としてしまう見積りが起きやすいので、最初から6つ目として数えておく。
なぜ税の話を先にするのか
これらの税金は、代金や仲介手数料と違って支払う時期がばらばらだ。印紙税は契約のとき、登録免許税は決済のとき、不動産取得税は取得から数か月後に納税通知が届く。固定資産税はその翌年からずっと続く。
買主が資金を用意する順番と、請求が来る順番が一致しない。だから「総額でいくら」ではなく、時系列で並べて渡すほうが役に立つ。とくに不動産取得税は、引っ越しが落ち着いたころに通知が届くため、備えが抜けやすい。ここを先に言っておくことが、この案内でいちばん効く。
買うときの3つ——税率を条文で押さえる
印紙税
不動産の譲渡に関する契約書には、契約金額に応じた印紙税がかかる。令和9年3月31日までに作成されるものについては軽減の特例が置かれており、契約金額が10万円を超える不動産譲渡契約書の税率は次のとおり(租税特別措置法91条1項)。
| 契約金額 | 1通につき |
|---|---|
| 100万円超 500万円以下 | 1,000円 |
| 500万円超 1,000万円以下 | 5,000円 |
| 1,000万円超 5,000万円以下 | 1万円 |
| 5,000万円超 1億円以下 | 3万円 |
| 1億円超 5億円以下 | 6万円 |
住宅の売買はこの表の中ほどに収まることが多い。この特例は不動産譲渡契約書に対するもので、住宅ローンの金銭消費貸借契約書には及ばない。契約書を2通作って売主・買主が1通ずつ持つ場合、印紙は2通分になる。
登録免許税
登記の種類ごとに税率が決まっている(登録免許税法別表第一第一号)。住宅用家屋については、要件を満たすと大きく下がる。
| 登記 | 本則 | 住宅用家屋の軽減 | 軽減の根拠 |
|---|---|---|---|
| 所有権の保存(新築) | 1000分の4 | 1000分の1.5 | 措置法72条の2 |
| 所有権の移転(売買) | 1000分の20 | 1000分の3 | 措置法73条 |
| 抵当権の設定 | 1000分の4 | 1000分の1 | 措置法75条 |
| 土地の所有権の移転(売買) | 1000分の20 | 1000分の15 | 措置法72条1項1号 |
住宅用家屋の3つの軽減(措置法72条の2・73条・75条)には共通の条件がある。新築または取得後1年以内に登記を受けるものに限られる。決済と同時に登記するのが通例なので実務では問題になりにくいが、相続や住み替えの都合で登記を後回しにすると、この1年が効いてくる。
期限も押さえておく。住宅用家屋の3つは令和9年3月31日まで、土地の売買による移転登記の軽減は令和8年3月31日までと、条文上の適用期間が異なる。
不動産取得税
標準税率は100分の4(地方税法73条の15)。ただし平成18年4月1日から令和9年3月31日までの間に住宅または土地の取得が行われた場合の標準税率は100分の3とされている(同法附則11条の2第1項)。
土地についてはもう1つ、課税標準そのものを下げる特例がある。宅地評価土地の取得が平成18年1月1日から令和9年3月31日までに行われた場合、課税標準は価格の2分の1になる(同法附則11条の5第1項)。
新築住宅には課税標準からの控除がある。住宅の建築(新築で未使用のものの購入を含む)をした場合、一戸につき1,200万円を価格から控除する(同法73条の14第1項)。中古住宅でも、個人が自己の居住用に耐震基準適合既存住宅を取得した場合、その住宅が新築された時点で適用されていた控除額を差し引く(同条3項)。中古は建築年によって控除額が変わるということなので、年度を確認せずに金額を言わない。
免税点も条文にある。課税標準となるべき額が、土地は16万円、家屋の取得のうち建築によるものは一戸につき66万円、それ以外は一戸につき34万円に満たない場合、不動産取得税は課されない(73条の15の2第1項)。小さな土地の追加取得などで効く。
毎年の2つ——1月1日で決まる
固定資産税は、固定資産の所有者に課される(地方税法343条1項)。ここでいう所有者は、土地・家屋については登記簿に所有者として登記されている者だ(同条2項)。そして賦課期日はその年度の初日の属する年の1月1日と定められている(359条)。
| 固定資産税 | 都市計画税 | |
|---|---|---|
| 税率 | 標準税率 100分の1.4(350条1項) | 100分の0.3を超えることができない(702条の4) |
| 対象 | 土地・家屋・償却資産 | 原則として市街化区域内の土地・家屋(702条1項) |
| 住宅用地の特例 (200㎡以下の部分) | 価格の6分の1(349条の3の2第2項) | 価格の3分の1(702条の3第2項) |
| 住宅用地の特例 (200㎡を超える部分) | 価格の3分の1(349条の3の2第1項) | 価格の3分の2(702条の3第1項) |
都市計画税の税率が「標準税率」ではなく「超えることができない」と書かれている点に注意する。これは制限税率で、市町村はこれより低い税率にすることも、課さないこともできる。「必ず0.3%かかる」という案内にはならない。
固定資産税には免税点もある。同一の市町村内で、同じ人が所有する土地の課税標準の合計が30万円、家屋が20万円、償却資産が150万円に満たない場合は課されない(351条1項)。
つまずきやすいのは「日割り精算は法律の話ではない」
年の途中で家を買うと、決済のときに固定資産税・都市計画税を日割りで精算するのが慣行になっている。ただし条文上、その年度の納税義務者は1月1日時点の所有者だ(343条1項・359条)。買主が市町村に払う義務を負うわけではなく、売主と買主の間の取り決めとして代金に上乗せしているにすぎない。
だから精算の起算日をいつにするか(1月1日か、4月1日か)は当事者の合意で決まる。地域慣行が分かれる部分なので、契約書に明記されているかを必ず確認する。ここが曖昧なまま決済に進むと、金額の食い違いが当日に出る。
あわせて、買主が翌年から自分の名前で納税通知を受け取ることも伝えておく。買った年に精算した分は、翌年分の前払いではない。ここを混同したまま翌年の通知を受け取ると、「二重に払わされた」という受け取り方になってしまう。
案内の手順——この順番で渡す
- 時系列の表を先に見せる。契約時(印紙税)、決済時(登録免許税)、取得後数か月(不動産取得税)、翌年から毎年(固定資産税・都市計画税)。
- 物件の条件を確認する。新築か中古か、床面積、築年、市街化区域内かどうか。軽減が使えるかはここで分かれる。
- 登記費用の見積りを司法書士から取る。登録免許税と報酬を分けて出してもらうと、税と手数料の区別が買主に伝わる。
- 固定資産税の課税明細を売主から取り寄せる。現在の評価額と税額が分かり、翌年以降の目安になる。
- 精算の起算日を契約前に決める。契約書の条項を買主と一緒に読む。
- 不動産取得税の通知が後から届くことを、口頭と書面の両方で伝える。ここだけは念を押す。
この6ステップを踏むと、渡せる情報が「税金もかかります」から「この時期にこれが来て、この軽減が使えて、ここは後から届きます」に変わる。
プロならこう案内する
心の準備は大切ですね。順番にご説明します。まず、税金は「お買いになるとき一度だけのもの」と「お持ちの間ずっと毎年のもの」に分かれます。
一度だけのものは3つです。ご契約のときに、契約書に貼る印紙税。お引渡しのときに、登記のためにお納めいただく登録免許税。そして不動産取得税です。
この不動産取得税だけ、少し性格が違います。お引渡しから数か月経ってから、都道府県から納税通知書が届きます。お引っ越しが落ち着いたころですので、あらかじめ知っておいていただきたい一つです。ただ、住宅と土地については税率が軽くなる扱いがあり、新築の住宅ですと課税の基になる額から1,200万円が差し引かれます。実際にはお納めいただかずに済むことも多い税金です。
毎年のものは固定資産税と、市街化区域の物件であれば都市計画税です。こちらは1月1日時点で登記簿に所有者として載っている方に課される決まりです。住宅の敷地には課税の基になる額を下げる仕組みがあり、200㎡までの部分は固定資産税で6分の1になります。
年の途中でお引渡しをする場合、その年の分は日割りで精算するのが取引の慣行です。ただ、これは法律で決まった納税義務ではなく、売主さまと買主さまの間の取り決めです。起算日を1月1日にするか4月1日にするかで金額が変わりますので、ご契約書のその条項を一緒に確認させてください。
金額の目安は、物件の条件によって変わります。売主さまから今年の課税明細をお取り寄せしますので、それを見ながら具体的な数字をお出しします。登記の費用も、司法書士に見積りを依頼いたします。
この案内には、宅地建物取引業法35条の重要事項説明につながる部分がある。代金・交換差金・借賃以外に授受される金銭の額と授受の目的は35条1項7号の説明事項で、固定資産税等の精算金はここに関わってくる。試験で覚えた条文が、そのまま現場の台本になる。
よくある質問と、その答え方
「軽減はいつまで使えますか」
条文に適用期間が書かれている。住宅用家屋の登録免許税の軽減は令和9年3月31日まで(措置法72条の2・73条・75条)、土地の売買による所有権移転登記の軽減は令和8年3月31日まで(同法72条1項)、印紙税の特例は令和9年3月31日まで(同法91条1項)、不動産取得税の税率の特例と宅地評価土地の課税標準の特例は令和9年3月31日まで(地方税法附則11条の2第1項・11条の5第1項)。これらは延長されてきた経緯があり、期限は改正のたびに動く。案内するときは「現在の期限はここまで」と時点を添えて渡す。
「都市計画税がかからない物件もありますか」
ある。都市計画税は市街化区域内の土地・家屋に課すのが原則で(702条1項)、しかも市町村が「課することができる」と定められた税だ。税率も制限税率にとどまり(702条の4)、実際に何%にするか、そもそも課すかどうかは市町村が決める。市街化調整区域の物件では課されないのが通例だが、条例で定める区域では課される場合もある(702条1項後段)。物件所在地の市町村で確認してから答える。
「中古住宅でも不動産取得税の控除はありますか」
個人が自己の居住の用に供する耐震基準適合既存住宅を取得した場合、控除がある(73条の14第3項)。ただし控除額は一律ではなく、その住宅が新築された時点で適用されていた控除額になる。つまり築年によって金額が変わる。新築の1,200万円をそのまま当てはめると外すので、登記事項証明書で新築年月日を確認してから都道府県税事務所に照会する。この控除は原則として申告が要る点も伝えておく(同条4項)。
案内で外したくないポイント
- 一度きりと毎年を分ける:印紙税・登録免許税・不動産取得税/固定資産税・都市計画税。
- 抵当権の設定登記を忘れない:ローンを組むなら6つ目の税がある(措置法75条)。
- 不動産取得税は後から届く:ここだけは念を押す。
- 毎年の税は1月1日で決まる:登記簿上の所有者に課される(343条・359条)。
- 日割り精算は当事者の取り決め:起算日を契約書で確認する。
- 軽減には期限がある:条文の適用期間を時点付きで伝える。
根拠条文のまとめ
| 条文 | 見出し | この記事で使った内容 |
|---|---|---|
| 租税特別措置法91条1項 | 不動産の譲渡に関する契約書等に係る印紙税の税率の特例 | 令和9年3月31日までの不動産譲渡契約書の軽減税率 |
| 登録免許税法別表第一第一号 | 課税範囲、課税標準及び税率の表 | 保存1000分の4/売買移転1000分の20/抵当権設定1000分の4 |
| 租税特別措置法72条1項 | 土地の売買による所有権の移転登記等の税率の軽減 | 令和8年3月31日まで1000分の15 |
| 租税特別措置法72条の2・73条・75条 | 住宅用家屋の登記の税率の軽減 | 令和9年3月31日まで、保存1000分の1.5/移転1000分の3/抵当権1000分の1。取得後1年以内の登記に限る |
| 地方税法73条の14第1項・3項 | 不動産取得税の課税標準の特例 | 新築住宅は一戸1,200万円控除/既存住宅は新築時の控除額 |
| 地方税法73条の15 | 不動産取得税の税率 | 標準税率100分の4 |
| 地方税法73条の15の2第1項 | 不動産取得税の免税点 | 土地16万円/建築による家屋66万円/その他34万円 |
| 地方税法附則11条の2第1項 | 住宅・土地の取得に対する税率の特例 | 令和9年3月31日まで100分の3 |
| 地方税法附則11条の5第1項 | 宅地評価土地の課税標準の特例 | 令和9年3月31日まで価格の2分の1 |
| 地方税法343条・359条 | 固定資産税の納税義務者等/賦課期日 | 登記簿上の所有者に課す。賦課期日は1月1日 |
| 地方税法349条の3の2 | 住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例 | 200㎡以下の部分は6分の1、それ以外は3分の1 |
| 地方税法350条1項・351条1項 | 固定資産税の税率/免税点 | 標準税率100分の1.4。免税点は土地30万円・家屋20万円・償却資産150万円 |
| 地方税法702条・702条の3・702条の4 | 都市計画税 | 市街化区域内が原則。住宅用地は3分の1・3分の2。制限税率100分の0.3 |
| 宅地建物取引業法35条1項7号 | 重要事項の説明等 | 代金等以外に授受される金銭の額と授受の目的 |