宅建の実務クエスト

【宅建の実務】土地を造成して分譲するのに許可はいる?──開発許可の考え方を説明する

郊外に広い土地を持つお客様から、相談が届く。

「郊外の広い土地を造成して、区画に分けて宅地として分譲したいです。土地を整えて売るだけなら、特に許可はいらないですよね。何か必要な手続きがあれば知りたいです。」

宅建の試験で「開発許可」は都市計画法の中心テーマだ。覚えた知識が力になるのは、こうして「許可はいらないはず」という思い込みに、区域と規模で線を引いて見通しを渡せたときである。この記事では、開発行為の定義、区域ごとの規模、許可が下りた後の制限、そして調査の手順までを通しで整理する。

この記事は、学習アプリ「シカクエ」の実務クエストを読み物として再構成したもの。人物・案件はすべて架空です。実際の判断は、必ず対象地の都市計画担当窓口での確認結果によります。

まず結論:「主として建築物の建築の用に供する目的」が入口

開発行為の定義を、条文どおりに読む。

この法律において「開発行為」とは、主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行なう土地の区画形質の変更をいう。(都市計画法4条12項)

2つの要素で組み立てられている。

要素中身今回の相談
目的主として建築物の建築、または特定工作物の建設の用に供すること宅地として分譲する=家を建てる目的。該当する
行為土地の区画形質の変更造成して区画に分ける。該当する

だから「整えて売るだけ」という受け止めは、条文の側から見ると成り立たない。建物が建つ前提で区画を分けている以上、開発行為に当たる。ここが出発点になる。

そのうえで、都市計画区域または準都市計画区域内で開発行為をしようとする者は、あらかじめ都道府県知事(指定都市・中核市の区域内ではその長)の許可を受けなければならない(29条1項本文)。

なぜ許可制なのか

造成して区画を切り、家が建ち始めると、その土地には道路・排水・給水が必要になる。人が住むのだから、消防車が入れる幅の道が要り、雨水を流す先が要り、汚水の処理が要る。

これを個人の造成に任せると、後から自治体が公共施設を整えることになる。しかも一度家が建った後では、道を広げることも排水を通すこともできない。だから都市計画法は、造成の段階で技術基準に適合しているかを審査する形を取った(33条)。

許可基準には、予定建築物の用途が用途地域等に適合すること、道路・公園・広場の配置、排水施設の能力、給水施設、災害の防止、申請者の資力および信用など、多くの項目が並んでいる。「造成そのものの是非」ではなく「そこに街ができたとき成り立つか」を見ていると理解しておくと、依頼者への説明がぶれない。

許可が要らなくなる規模は、区域で違う

29条1項1号は、一定の規模未満の開発行為を許可の対象から外している。その規模は政令で定められている(都市計画法施行令19条1項)。

区域この規模未満なら許可不要根拠
市街化区域1,000㎡令19条1項
区域区分が定められていない都市計画区域(非線引き都市計画区域)
準都市計画区域
3,000㎡令19条1項
市街化調整区域—(規模による除外がない29条1項1号に列挙されていない
都市計画区域・準都市計画区域の1ヘクタール(10,000㎡)29条2項、令22条の2

表のいちばん重要な行は3行目だ。29条1項1号は「市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域又は準都市計画区域内において行う開発行為」と書いており、市街化調整区域を挙げていない。だから市街化調整区域では、規模がどれだけ小さくても原則として許可が要る。「小さいから大丈夫」という理屈が通らない唯一の区域になる。

数字にはさらに動く余地がある。市街化区域では、市街化の状況により無秩序な市街化を防止するため特に必要と認められる場合、条例で300㎡以上1,000㎡未満の範囲で別に定めることができる(令19条1項ただし書)。また特別区の存する区域など一定の区域では、1,000㎡が500㎡と読み替えられる(同条2項)。

「市街化区域は1,000㎡」と丸暗記していると、現場で外す。条例の有無は市町村ごとに違うので、必ず窓口で確認する。

市街化調整区域は、さらに立地の基準がある

市街化調整区域では、33条の技術基準を満たすだけでは足りない。34条の各号のいずれかに該当すると認める場合でなければ、都道府県知事は開発許可をしてはならない(34条本文)。

34条1号は、周辺の地域で居住している者の利用に供する公益上必要な建築物や、日常生活のため必要な物品の販売・加工・修理などを営む店舗等を挙げている。以降の号も、農林漁業関係、既存集落に関するものなど、その区域に置く必要があるものに限られている

市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域として定められている。一般的な宅地分譲は、この34条の受け皿を見つけにくい。相談の土地が市街化調整区域にある場合、「手続きに時間がかかる」ではなく「その計画は成り立たない可能性が高い」と早い段階で伝えるのが誠実になる。

つまずきやすいのは「許可が下りた後」の制限

開発許可を取れば自由になるわけではない。工事の段階と完了後の両方に制限がある。

時期制限根拠
工事完了の公告があるまで開発区域内の土地では、建築物を建築し、または特定工作物を建設してはならない37条
工事完了の公告があった後予定建築物等以外の建築物・特定工作物を新築・新設してはならない。改築や用途変更で予定以外の建築物にすることもできない42条1項

工事完了の公告は、工事完了の届出を受けた知事が検査し、開発許可の内容に適合していると認めて検査済証を交付した後に行われる(36条1項〜3項)。造成が終わったから公告、ではなく、検査に通ってはじめて公告という順番だ。

42条1項の制限も見落としやすい。「戸建て住宅」として許可を受けた区画に、後から店舗を建てることはできないのが原則になる。ただし知事が支障がないと認めて許可したとき、または用途地域等が定められているときは、この限りでない(同項ただし書)。分譲後の買主から「店舗にしたい」という相談が来る場面があるので、販売時にこの制限を伝えておく

宅建業者としての制限——広告も契約も、許可の後

分譲する側が宅建業者である場合、宅地建物取引業法の側にも制限がかかる。

宅地建物取引業者は、宅地の造成又は建物の建築に関する工事の完了前においては、当該工事に関し必要とされる都市計画法第二十九条第一項又は第二項の許可、建築基準法第六条第一項の確認その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるものがあつた後でなければ、当該工事に係る宅地又は建物の売買その他の業務に関する広告をしてはならない。(宅地建物取引業法33条)

契約についても同じ構造の条文がある。許可等の処分があった後でなければ、自ら当事者として、または当事者を代理して売買・交換の契約を締結し、あるいはその媒介をしてはならない(同法36条)。

広告(33条)契約(36条)
売買できないできない
交換できないできない
貸借できない制限の対象外

この差は条文の書き方から出ている。33条は「売買その他の業務に関する広告」と広く書いているのに対し、36条は「売買若しくは交換の契約」としか書いていない。貸借の契約は36条の対象に入っていない。試験でも実務でも問われる分かれ目なので、条文の語をそのまま覚える。

実務への影響は大きい。許可が下りる前に「〇〇区画分譲、まもなく販売」という広告を出すことはできない。販売計画は、許可の見通しから逆算して組む。

調べ方の手順——この順番で回る

  1. 区域区分を確認する。市街化区域か、市街化調整区域か、非線引きか、区域外か。市町村の都市計画担当窓口または都市計画図で見る。
  2. 面積を測る。登記簿の地積ではなく、開発区域として一体で扱う範囲の実測面積で判断する。
  3. 条例の有無を確認する。市街化区域で1,000㎡未満でも、条例で300㎡以上に引き下げられていることがある(令19条1項ただし書)。
  4. 市街化調整区域なら、34条の受け皿があるかを確認する。ここで計画の成否が決まる。無ければ計画自体を見直す。
  5. 技術基準の当たりをつける。前面道路の幅員、排水の放流先、給水の引き込み。33条の項目に沿って窓口で相談する。
  6. 事前協議の期間を確認する。多くの自治体で、申請前に関係各課との協議が要る。ここに数か月かかることがある。
  7. 販売計画を許可の見通しから逆算する。許可前は広告も契約もできない(宅建業法33条・36条)。

この7ステップを踏むと、依頼者に渡せるものが「許可が要ります」から「この土地はこの区域で、この規模だからこの手続きになり、販売開始はこの時期以降になります」に変わる。

プロならこう説明する

大切な点ですので、順にご説明します。結論から申し上げますと、ご計画には許可が必要になる可能性が高いです。

都市計画法では、家を建てる目的で土地の区画や形を変える行為を「開発行為」と呼んでいます。宅地として区画に分けてお売りになるということは、そこに家が建つ前提ですので、この開発行為にあたります。土地を整えるだけ、という受け止めにはならない仕組みです。

ただ、必ず許可が要るというわけでもありません。土地の区域と面積で変わります。市街化区域でしたら1,000平方メートル未満なら許可は要りません。ただしこれは市町村の条例で300平方メートルまで引き下げられていることがありますので、窓口で確認いたします。

お伝えしておきたいのは、市街化調整区域の場合です。この区域では面積による除外がなく、規模にかかわらず原則として許可が必要になります。しかも、市街化調整区域では許可を出せる場合が法律で限定されておりまして、一般的な宅地分譲は、その限定の中に入れることが難しいのが実情です。もしこの土地が市街化調整区域でしたら、ご計画そのものを見直していただくご相談になる可能性があります。

もう一点、時期のお話をさせてください。許可が下りる前は、宅地建物取引業者は広告も、売買契約も行えません。法律で明確に禁じられています。ですので、販売のご計画は、許可が下りる見通しから逆算して組み立てることになります。事前の協議に数か月かかることも珍しくありませんので、日程には余裕をお持ちください。

まずは市役所で、この土地の区域区分と、条例の有無を確認してまいります。あわせて、前面道路の幅と排水の放流先も見ておきます。結果をご報告したうえで、進める道があるかどうかをご一緒に判断しましょう。

よくある質問と、その答え方

「造成せずに、区画を分けて売るだけならどうですか」
開発行為は「土地の区画形質の変更」と定義されている(4条12項)。造成をせず、分筆して売るだけであれば、区画形質の変更に当たらないと判断される場合がある。ただし道路を新設する、擁壁を築く、盛土や切土をするといった行為が入れば、変更にあたる。「分けるだけ」の中身を具体的に聞いてから答える質問で、図面を見ずに結論を出さない。

「許可を受けた土地に、後から店舗を建てられますか」
原則としてできない。工事完了の公告があった後は、開発許可に係る予定建築物等以外の建築物を新築してはならない(42条1項本文)。改築や用途変更で予定以外の建築物にすることも同様だ。ただし知事が支障がないと認めて許可したとき、または当該開発区域内の土地について用途地域等が定められているときは、この限りでない(同項ただし書)。「絶対に不可」でも「自由」でもないので、用途地域の有無から確認する。

「許可申請中に、購入希望者と契約してもいいですか」
できない。宅地建物取引業法36条は、許可等の処分があった後でなければ、売買・交換の契約を締結し、または媒介してはならないと定めている。予約や申込金の受領も、実質的に契約と評価されれば同じ問題になる。一方で貸借の契約は36条の対象に入っていない。ただし広告は33条で貸借も含めて制限されるので、条文ごとに範囲が違う点を取り違えない。

説明で外したくないポイント

  1. 開発行為は「目的」と「区画形質の変更」の2要素(4条12項)。
  2. 許可権者は都道府県知事等:指定都市・中核市の区域内はその長(29条1項)。
  3. 市街化区域1,000㎡・非線引きと準都市計画区域3,000㎡・区域外1ha(令19条・令22条の2)。
  4. 市街化調整区域には規模の除外がない:小さくても許可が要る。
  5. 市街化調整区域は34条の立地基準も要る:一般的な宅地分譲は入りにくい。
  6. 公告前は建築不可、公告後は予定建築物以外が不可(37条・42条1項)。
  7. 許可前は広告も売買契約もできない:ただし貸借の契約は36条の対象外(宅建業法33条・36条)。

根拠条文のまとめ

条文見出しこの記事で使った内容
都市計画法4条12項定義開発行為とは、主として建築物の建築等の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更
都市計画法29条1項開発行為の許可都市計画区域・準都市計画区域内は知事等の許可。1号で市街化区域・非線引き・準都市計画区域の規模未満を除外
都市計画法29条2項同上都市計画区域・準都市計画区域外は政令で定める規模以上で許可
都市計画法33条開発許可の基準道路・排水・給水・災害防止・資力信用などの技術基準
都市計画法34条(市街化調整区域に係る開発行為の基準)各号のいずれかに該当すると認める場合でなければ許可できない
都市計画法36条工事完了の検査完了の届出→検査→検査済証の交付→工事完了の公告
都市計画法37条建築制限等公告があるまでは開発区域内で建築物を建築できない
都市計画法42条1項開発許可を受けた土地における建築等の制限公告後は予定建築物等以外を新築・新設できない。用途地域等が定められているときを除く
都市計画法施行令19条許可を要しない開発行為の規模市街化区域1,000㎡/非線引き・準都市計画区域3,000㎡。条例で300㎡以上の範囲に引下げ可。特別区の存する区域等は500㎡
都市計画法施行令22条の2法29条2項の政令で定める規模1ヘクタール
宅地建物取引業法33条広告の開始時期の制限許可等の処分の後でなければ広告をしてはならない
宅地建物取引業法36条契約締結等の時期の制限許可等の処分の後でなければ売買・交換の契約締結・媒介をしてはならない
条文の記述は執筆時点のもの。規模の引下げ条例や市街化調整区域の運用基準は市町村ごとに異なるため、実務では必ず対象地の都市計画担当窓口で確認してください。

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