【宅建の実務】管理費と修繕積立金は何のお金?──分譲マンションの費用を説明する
はじめて分譲マンションを買うお客様から、相談が届く。
「一戸建てではなく、分譲マンションを買おうと思っています。毎月『管理費』と『修繕積立金』がかかると聞きました。これは何のお金ですか。『管理規約』というものもあるそうですが、購入前に見ておくべきでしょうか。」
宅建の試験では「区分所有」はマンション取引の土台になるテーマだ。覚えた知識が力になるのは、こうしてはじめての人に、暮らしに直結する費用の意味を渡せたときである。この記事では、費用の正体と、購入前に何をどう確認するかまでを通しで整理する。
まず結論:買っているのは「住戸の中」だけではない
分譲マンションを買うとき、手に入るのは自分の住戸の内部だけではない。建物全体の共用部分の持分も一緒に持つことになる。毎月の費用は、この持分に対応する負担だ。
区分所有法は、建物を次のように分けている。
| 区分 | 中身 | 根拠 |
|---|---|---|
| 専有部分 | 区分所有権の目的となる建物の部分。自分の住戸の内部 | 区分所有法2条3項 |
| 共用部分 | 専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物など | 区分所有法2条4項 |
共用部分には2つの種類がある。数個の専有部分に通ずる廊下や階段室など、構造上どうしても共用になる部分は、はじめから区分所有権の目的にならない(4条1項)。これに対して集会室や管理人室のように、規約で共用部分と定めた部分もある(4条2項)。後者はその旨を登記しなければ第三者に対抗できない(同項後段)。
なぜ毎月お金を集めるのか
共用部分は、区分所有者全員の共有になっている。共有物は、放っておくと誰も手を入れない。廊下の電球が切れ、外壁が傷み、エレベーターが止まる。そうなって困るのは全員だ。
そこで区分所有法は、各共有者は規約に別段の定めがない限り、その持分に応じて共用部分の負担に任じると定めた(19条)。「みんなのものは、みんなで持分どおりに負担する」という原則を、条文で先に決めておく形になっている。
その持分は、原則として専有部分の床面積の割合による(14条1項)。床面積は壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積で測る(14条3項)。ただしこれらは規約で別段の定めができる(14条4項)。だから広い住戸ほど負担が大きいのが原則で、実際の配分は規約を読まないと確定しない。
管理費と修繕積立金は、時間軸が違う
2つの費用は「今のため」か「先のため」かで分かれる。
| 管理費 | 修繕積立金 | |
|---|---|---|
| 時間軸 | 今月使う | 十数年先に使う |
| 使いみち | 共用部分の清掃、設備の保守点検、管理員の人件費、共用部分の電気代など日常の管理 | 外壁の塗り替え、屋上防水、給排水管の更新、エレベーターの入替えなど大規模な修繕 |
| 足りないと | その月の管理の質が落ちる | 修繕の時期に一時金の徴収や借入れが必要になる |
| 買うときに見る数字 | 毎月いくらか | 毎月いくらか+今いくら貯まっているか |
買主が見落としやすいのは、右下の「今いくら貯まっているか」だ。月々の積立額が低いマンションは、その分だけ将来の一時金の可能性が高い。毎月の支払いが安いことと、生涯の負担が軽いことは別の話になる。ここを最初に分けて伝えておくと、後で驚かせずに済む。
つまずきやすいのは「前の所有者の滞納」
区分所有法には、買主にとって重い条文がある。
管理組合などが区分所有者に対して持つ債権は、債務者である区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる(区分所有法8条)。特定承継人とは、売買などでその住戸を取得した人のこと。前の所有者が滞納していた管理費・修繕積立金は、買った人が請求されるという意味になる。
この債権はもともと、共用部分などに関して他の区分所有者に対して持つ債権として先取特権の対象とされており(7条1項)、その順位と効力は共益費用の先取特権とみなされる(7条2項)。8条はその債権を、承継人にも及ぼしている。
だから購入前の調査で、滞納の有無と金額を必ず確認する。管理組合または管理会社が発行する重要事項調査報告書で分かる。ここを確認せずに引き渡すと、買主は入居した月にいきなり前の所有者の未払い分を請求されることになる。金額の大小より、知らされていなかったことが信頼を壊す。
重要事項説明で読み上げる10項目
区分所有建物の売買では、宅地建物取引業法35条1項6号を受けて、国土交通省令・内閣府令が説明事項を定めている(宅地建物取引業法施行規則16条の2)。売買の場合は次の10項目が対象になる。
| 号 | 説明する内容 |
|---|---|
| 1号 | 建物を所有するための一棟の建物の敷地に関する権利の種類・内容 |
| 2号 | 共用部分に関する規約の定め(案を含む)があるときは、その内容 |
| 3号 | 専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約の定めがあるときは、その内容 |
| 4号 | 建物または敷地の一部を特定の者にのみ使用を許す旨の規約の定めがあるときは、その内容 |
| 5号 | 維持修繕の費用・通常の管理費用などを特定の者にのみ減免する規約の定めがあるときは、その内容 |
| 6号 | 計画的な維持修繕のための費用の積立てを行う旨の規約の定めがあるときは、その内容および既に積み立てられている額 |
| 7号 | 所有者が負担しなければならない通常の管理費用の額 |
| 8号 | 建物および敷地の管理が委託されているときは、委託を受けている者の氏名・住所 |
| 9号 | 管理者等が管理組合から委託を受けて管理事務を行うマンション管理業者である場合は、その旨 |
| 10号 | 維持修繕の実施状況が記録されているときは、その内容 |
賃貸の場合は範囲が変わり、3号(専有部分の利用制限の規約)と8号(管理の委託先)だけが対象になる(同条柱書)。売買と賃貸で読み上げる量が違うので、資料の集め方も変えることになる。
試験で「区分所有建物の重要事項説明」として覚えた項目は、そのまま現場で集める資料のリストになっている。6号の積立残高と10号の修繕履歴は、買主の判断を最も動かす2つだ。
調べ方の手順——この順番で集める
- 管理会社に重要事項調査報告書を依頼する。管理費・修繕積立金の月額、積立金の残高、滞納の有無、管理委託先が一度に分かる。有償のことが多いので、依頼のタイミングを早めに決める。
- 管理規約と使用細則を取り寄せる。ペットの可否、リフォームの制限、楽器の扱い、専用使用権の範囲。買主の暮らし方に直結する部分を先に読む。
- 長期修繕計画を確認する。次の大規模修繕がいつで、費用がいくらの想定か。積立金の残高と見比べると、一時金の可能性が読める。
- 総会の議事録を数年分読む。値上げの議論、工事の先送り、住民間のもめごと。数字に出ない事情はここに出る。
- 修繕の実施状況の記録を確認する(規則16条の2第10号)。過去に何をどこまでやってきたか。
- 滞納があれば、精算の方法を売主と決める。8条の承継があるため、引渡しまでに清算するのか、代金から差し引くのかを契約前に固める。
この6ステップを踏むと、買主に渡せる情報が「毎月これだけかかります」から「毎月これだけかかり、将来この時期にこの工事が来て、備えはこれだけあります」に変わる。同じ調査でも、渡せるものの質が変わる。
プロならこう説明する
分譲マンションならではの仕組みを、順にご案内します。
まず、お買いになるのはお部屋の中だけではありません。廊下やエントランス、外壁、エレベーターといった「共用部分」の持分も一緒にお持ちになります。この持分は、原則としてお部屋の床面積の割合で決まります。
そのうえで、毎月の費用は2種類に分かれます。「管理費」は、共用部分の清掃、設備の点検、管理員さんの人件費など、今月使うお金です。「修繕積立金」は、十数年ごとの外壁工事や給排水管の入替えなど、先のために貯めておくお金です。
お選びになるうえで見ていただきたいのは、毎月の額だけではなく、今いくら貯まっているかです。積立金の月額が低いマンションは、その分、修繕の時期に一時金をお願いされる可能性が高くなります。毎月の支払いが軽いことと、長い目で見た負担が軽いことは、別のお話になります。
もう一点、お伝えしておきたいことがあります。前の所有者の方に管理費の滞納があった場合、法律上、その支払いはお部屋を取得された方にも請求できることになっています。ですので、ご契約の前に滞納の有無を確認し、もしあれば清算の方法を売主さまと決めておきます。この調査は私どものほうで管理会社に依頼いたします。
管理規約も、ご契約の前にお読みいただきたい書類です。ペットを飼えるか、リフォームでどこまで手を入れられるか、といった暮らし方に直結する取り決めが書かれています。あわせて、長期修繕計画と総会の議事録もお持ちしますので、次にどの工事が控えているかも見ておきましょう。
よくある質問と、その答え方
「管理費は自分の判断で払わずに済ませられますか」
共用部分の負担は、規約に別段の定めがない限り持分に応じて負うと条文が定めている(19条)。エレベーターを使わない階に住んでいる、といった事情で当然に免れる仕組みにはなっていない。減免する規約の定めがあるかどうかは重要事項説明の対象なので(規則16条の2第5号)、まず規約を確認してから答える質問だ。
「駐車場やバルコニーは自分のものですか」
バルコニーや専用庭、駐車場は、共用部分などについて特定の者にのみ使用を許すという形(専用使用権)を取っていることが多い。所有ではなく、使う権利にとどまる。この規約の定めは重要事項説明の対象になっている(規則16条の2第4号)。使用料の有無、使える範囲、譲渡できるかどうかは規約と細則で決まるので、そこを読んでから答える。
「管理規約は後から変わりますか」
規約は集会の決議で設定・変更・廃止できる(31条1項)。建物や敷地、附属施設の管理・使用に関する区分所有者相互間の事項は、法律に定めるもののほか規約で定められる(30条1項)。つまり買った時点の規約が永久に続くわけではない。ただし変更が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすときは、その承諾が要る(31条1項後段)。「変わり得るが、勝手に不利益だけ押しつけられる仕組みではない」と伝えると通りやすい。
案内で外したくないポイント
- 買うのは住戸+共用部分の持分:持分は原則として専有部分の床面積の割合(14条1項)。
- 負担は持分に応じて:規約に別段の定めがない限り(19条)。
- 管理費と修繕積立金は時間軸が違う:今月使うお金と、先のために貯めるお金。
- 積立残高と修繕履歴を必ず見る:重要事項説明の6号と10号。
- 滞納は買主に請求され得る:特定承継人の責任(8条)。契約前に清算方法を決める。
- 規約は暮らしそのもの:ペット・リフォーム・専用使用権。読んでから契約する。
根拠条文のまとめ
| 条文 | 見出し | この記事で使った内容 |
|---|---|---|
| 区分所有法2条3項・4項 | 定義 | 専有部分と共用部分の定義 |
| 区分所有法4条 | 共用部分 | 構造上の共用部分と、規約で共用部分とする場合(登記が対抗要件) |
| 区分所有法7条 | 先取特権 | 共用部分等に関する債権について先取特権。共益費用の先取特権とみなす |
| 区分所有法8条 | 特定承継人の責任 | 7条1項の債権は特定承継人に対しても行使できる |
| 区分所有法14条 | 共用部分の持分の割合 | 持分は専有部分の床面積の割合。内側線で囲まれた水平投影面積。規約で別段の定め可 |
| 区分所有法19条 | 共用部分の負担及び利益収取 | 規約に別段の定めがない限り持分に応じて負担する |
| 区分所有法30条・31条 | 規約事項/規約の設定、変更及び廃止 | 規約で定められる事項と、集会の決議による変更。特別の影響には承諾が必要 |
| 宅地建物取引業法35条1項6号 | 重要事項の説明等 | 区分所有建物の説明事項を省令・府令に委任 |
| 宅地建物取引業法施行規則16条の2 | 法35条1項6号の定める事項 | 売買は1号〜10号、賃貸は3号・8号のみ |