社労士の実務クエスト

【社労士の実務】失業給付はいつから・何日分?──基本手当の要件を説明する

退職する従業員から、失業給付について質問が届く。

「来月で会社を辞めます。失業保険がもらえると聞いたのですが、辞めてすぐ振り込まれるのでしょうか。いくらぐらい、何日分もらえるのかも知りたいです。自己都合の退職だと、しばらくもらえないという話も聞きました。」

社労士の試験で「基本手当」は、要件と日数を正確に問われる。覚えた仕組みが力になるのは、こうして離職する本人に、時期と金額の見通しを渡せたときである。この記事では、受給資格、待期と給付制限、日数の決まり方、そして受給期間の壁までを通しで整理する。

この記事は、学習アプリ「シカクエ」の実務クエストを読み物として再構成したもの。人物・事業所はすべて架空です。実際の支給の可否と金額は、必ず居住地のハローワークでご確認ください。

まず結論:辞めてすぐには振り込まれない

基本手当が実際に振り込まれるまでには、条文上いくつかの段階がある。

段階条文
1離職し、公共職業安定所に出頭して求職の申込みをする15条2項
2待期7日が経過する21条
3(自己都合等の場合)給付制限期間が経過する33条1項
4失業の認定を受ける15条1項・3項
5認定された日について支給される15条1項

まず1番目が要る。離職しただけでは何も始まらない。求職の申込みをした日が起点になる。

「失業」とは何か

条文の定義から確認する。

この法律において「失業」とは、被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあることをいう。(雇用保険法4条3項)

3つの要素がある。離職していること働く意思と能力があること、そして就職できていないことだ。

ここから、対象にならない場合が読める。すぐに働く意思がない(しばらく休む、学業に専念する)、働く能力がない(病気で就労できない)という状態は、条文の「失業」にあたらない。

「退職したから当然もらえる」という理解のまま手続きに行くと、窓口で受給できないと言われることがある。離職の前に、この定義を伝えておくのが親切になる。

受給資格——12箇月か、6箇月か

基本手当は、被保険者が失業した場合において、離職の日以前二年間(……)に、次条の規定による被保険者期間が通算して十二箇月以上であつたときに、……支給する。(雇用保険法13条1項)

原則は離職前2年間に被保険者期間が通算12箇月以上だ。ただし読み替えがある。

特定理由離職者及び第二十三条第二項各号のいずれかに該当する者……に対する前項の規定の適用については、同項中「二年間」とあるのは「一年間」と、……「十二箇月」とあるのは「六箇月」とする。(雇用保険法13条2項)

区分算定対象期間必要な被保険者期間
原則(自己都合の退職など)離職前2年間通算12箇月以上
特定受給資格者(23条2項各号)
特定理由離職者(13条3項)
離職前1年間通算6箇月以上

23条2項が定める特定受給資格者は、倒産事業の縮小・廃止に伴う離職(1号)、解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由によるものを除く)その他省令で定める理由による離職(2号)だ。

13条3項の特定理由離職者は、期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ更新がないこと(更新を希望したにもかかわらず合意が成立しなかった場合に限る)その他のやむを得ない理由により離職した者として省令で定める者をいう。

実務でここが効くのは、勤続1年未満で辞める人だ。自己都合なら12箇月に届かず受給資格がないが、契約期間の満了で更新がなかった場合は6箇月で足りる可能性がある。離職理由の区分が、受給できるかどうかを分ける

だから離職票の離職理由欄は、事業主にとっても本人にとっても重い。実態どおりに記載することが、後の争いを防ぐ。

待期7日は、全員にある

基本手当は、受給資格者が当該基本手当の受給資格に係る離職後最初に公共職業安定所に求職の申込みをした日以後において、失業している日(疾病又は負傷のため職業に就くことができない日を含む。)が通算して七日に満たない間は、支給しない。(雇用保険法21条)

2つ押さえる。

  1. 起点は求職の申込みをした日以後。離職日ではない。手続きが遅れると、待期の開始も遅れる
  2. 通算して7日。連続を要件にしていない。

この7日は、離職理由を問わず全員に適用される。会社都合でも自己都合でも同じだ。

給付制限は「1箇月以上3箇月以内」

被保険者が自己の責めに帰すべき重大な理由によつて解雇され、又は正当な理由がなく自己の都合によつて退職した場合には、第二十一条の規定による期間の満了後一箇月以上三箇月以内の間で公共職業安定所長の定める期間は、基本手当を支給しない。(雇用保険法33条1項本文)

条文が定めているのはだ。「1箇月以上3箇月以内の間で公共職業安定所長の定める期間」となっている。具体的な期間は行政の運用で決まるため、「何か月です」と言い切らず、「条文上は1か月から3か月の幅で、実際の期間はハローワークで決まります」と渡すのが正確になる。

順番も条文から読める。待期7日が満了した後に給付制限期間が始まる。待期と給付制限は並行しない。

ただし書に例外がある。公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受ける受給資格者については、その受ける期間と受け終わった日後の期間に限り、給付制限が適用されない(33条1項1号)。訓練を受けることで制限が外れるという設計になっている。

33条3項にも大事な定めがある。給付制限期間に一定の日数と所定給付日数を加えた期間が1年を超えるときは、受給期間がその超える期間だけ延長される。給付制限があるために受給しきれなくなる、という事態への手当てになっている。

受給期間は原則1年

基本手当は、……次の各号に掲げる受給資格者の区分に応じ、当該各号に定める期間……内の失業している日について、第二十二条第一項に規定する所定給付日数に相当する日数分を限度として支給する。
一 ……離職の日(以下この款において「基準日」という。)の翌日から起算して一年(雇用保険法20条1項1号)

ここが実務で最も効く。受給期間は離職日の翌日から1年で、この1年を過ぎると、所定給付日数が残っていても受けられなくなる。

区分受給期間
原則基準日の翌日から1年
就職困難者で算定基礎期間1年以上(22条2項1号に該当)1年に60日を加えた期間
特定受給資格者のうち23条1項2号イに該当する者1年に30日を加えた期間

延長の仕組みもある。この期間内に妊娠、出産、育児その他省令で定める理由により引き続き30日以上職業に就くことができない者が、公共職業安定所長に申し出た場合、その日数が加算される。ただし加算後の期間が4年を超えるときは4年が上限になる(20条1項柱書かっこ書)。

給付制限がある人ほど、この1年が近くなる。待期7日、給付制限、所定給付日数を足すと、1年に迫ることがある。「まだ先だから」と手続きを後回しにすると、日数を使い切れない。離職したら早めに手続きをする理由は、ここにある。

所定給付日数——2つの表がある

一般の受給資格者(22条1項)

算定基礎期間所定給付日数
20年以上150日
10年以上20年未満120日
10年未満90日

年齢は関係しない。勤続年数だけで決まる。

特定受給資格者(23条1項)

こちらは年齢と算定基礎期間の組み合わせで決まる。

基準日の年齢1年以上5年未満5年以上10年未満10年以上20年未満20年以上
60歳以上65歳未満150日180日210日240日
45歳以上60歳未満180日240日270日330日
35歳以上45歳未満150日180日240日270日
30歳以上35歳未満120日180日210日240日
30歳未満120日180日(10年以上)

30歳未満の欄は、条文が算定基礎期間5年以上から定めている(23条1項5号。同項柱書で、5号に掲げる特定受給資格者は算定基礎期間5年以上のものに限られる)。

就職が困難な者については別の定めがあり、算定基礎期間1年以上で45歳以上65歳未満は360日、45歳未満は300日、算定基礎期間1年未満は150日となる(22条2項)。

2つの表を比べると差が大きい。勤続22年・年齢50歳の人は、自己都合なら150日、会社都合なら330日になる。同じ勤続年数でも、離職理由で2倍以上違うことがある。

だから離職票の離職理由は、本人にとって金額そのものだ。事業主が安易に「一身上の都合」としないことが、この差を正しく反映させる第一歩になる。

金額は賃金日額の50%〜80%

基本手当の日額は、賃金日額に百分の五十(……一定の額未満の賃金日額については百分の八十、……一定の範囲の賃金日額については百分の八十から百分の五十までの範囲で、賃金日額の逓増に応じ、逓減するように厚生労働省令で定める率)を乗じて得た金額とする。(雇用保険法16条1項)

賃金日額が低いほど率が高くなる逓減の仕組みになっている。離職日に60歳以上65歳未満である受給資格者については、「百分の五十」が「百分の四十五」に読み替えられる(16条2項)。

条文には具体的な金額の区切りが書かれているが、これらは18条の規定により変更されることが同条のかっこ書に明記されている。毎年度改定されるため、金額の目安は、その年度の数字をハローワークで確認する。記事や資料の数字をそのまま伝えない。

失業の認定は4週に1回

失業の認定は、求職の申込みを受けた公共職業安定所において、受給資格者が離職後最初に出頭した日から起算して四週間に一回ずつ直前の二十八日の各日について行うものとする。(雇用保険法15条3項本文)

基本手当が支給されるのは失業の認定を受けた日についてだ(15条1項かっこ書)。認定日に出頭しないと、その分は支給されない

出頭できない場合の例外も条文にある。疾病または負傷のために出頭できず、その期間が継続して15日未満であるとき、公共職業安定所の紹介に応じて求人者に面接するために出頭できなかったときなどは、証明書の提出によって認定を受けられる(15条4項1号・2号)。15日以上になると別の給付(傷病手当)の話になるので、日数で切り分ける。

案内の手順——退職前にこの順で伝える

  1. 離職理由の区分を確認する。特定受給資格者・特定理由離職者に当たるか。受給資格の要件と日数が変わる。
  2. 被保険者期間を数える。2年で12箇月か、1年で6箇月か。
  3. 受給期間の終わりを日付で出す。離職日の翌日から1年。カレンダーに印をつける。
  4. 手続きの時期を伝える。求職の申込みが起点になるので、離職票が届いたらすぐ行く。
  5. 待期7日と給付制限を説明する。給付制限は条文上1箇月以上3箇月以内の幅。
  6. 所定給付日数を確認する。年齢と算定基礎期間で表を引く。
  7. 認定日の間隔を伝える。4週に1回、出頭が必要。
  8. 金額はその年度の数字で確認するよう伝える。毎年度改定される。

プロならこう説明する

ご退職の件、順にご説明します。まず、いちばん大事な点からお伝えします。

お辞めになっただけでは始まりません。ハローワークへ行って求職のお申込みをされた日が、すべての起点になります。離職票が届きましたら、なるべく早く手続きにいらしてください。

次に時期です。お申込みの日から、7日間の待期があります。これは辞め方に関係なく全員にあります。そのうえで、ご自身のご都合での退職の場合は、さらに給付制限の期間があります。法律では「1か月以上3か月以内でハローワークが定める期間」と書かれていますので、具体的な期間は窓口でご確認ください。

日数についてもお伝えします。ご自身のご都合での退職ですと、勤続年数だけで決まります。10年未満で90日、10年以上20年未満で120日、20年以上で150日です。会社の都合による退職の場合は、年齢も加えた別の表になり、日数が大きく増えます。

金額は、賃金日額の5割から8割です。もともとのお給料が低い方ほど割合が高くなる仕組みになっています。金額の区切りは毎年度変わりますので、具体的な数字は窓口でご確認ください。

そして、お忘れいただきたくない点があります。受給できる期間は、離職日の翌日から1年です。この1年を過ぎますと、日数が残っていても受けられなくなります。

ご自身のご都合での退職ですと、7日の待期と給付制限で数か月が過ぎます。そこから所定の日数を受けきるには、この1年がそれほど余裕のある期間ではありません。手続きを後回しにされないよう、この点だけは強くお伝えしておきます。

それから、認定日についてです。手続き後は4週間に1回、ハローワークへ出頭して失業の認定を受けていただきます。この認定を受けた日について支給されますので、認定日は必ずお守りください。

最後に、制度の前提を1つ。雇用保険でいう「失業」とは、働く意思と能力がありながら就職できていない状態を指します。しばらくお休みになるご予定でしたら、その期間は対象になりません。その場合は、受給期間を延ばす手続きがありますので、ご予定を伺ってからご案内します。

よくある質問と、その答え方

「病気でしばらく働けません。もらえませんか」
雇用保険の「失業」は労働の意思及び能力を有することを要件にしている(4条3項)。働けない状態では基本手当を受けられない。ただし20条1項柱書のかっこ書に、妊娠、出産、育児その他省令で定める理由により引き続き30日以上職業に就くことができない場合の受給期間の延長が定められている。「もらえません」で終わらせず、延長の申出を案内する場面になる。加算後の期間は最長4年まで。

「給付制限中に職業訓練を受けたら、どうなりますか」
33条1項ただし書1号が、公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受ける受給資格者について、その受ける期間と受け終わった日後の期間に限り給付制限を適用しないと定めている。訓練を受けることで制限が外れるという設計だ。訓練の受講には別の要件と選考があるため、「制限を外すために受ける」ではなく「再就職に必要なら選択肢になる」という渡し方をする。

「認定日に行けなかったらどうなりますか」
基本手当は失業の認定を受けた日について支給される(15条1項)。認定を受けられなければ、その分は支給されない。ただし15条4項に例外があり、疾病または負傷のために出頭できず、その期間が継続して15日未満であるとき、公共職業安定所の紹介に応じて求人者に面接するため出頭できなかったときなどは、理由を記載した証明書の提出により認定を受けられる。行けないと分かった時点でハローワークへ連絡するのが実務になる。

説明で外したくないポイント

  1. 起点は求職の申込み:離職しただけでは始まらない(15条2項・21条)。
  2. 受給資格は2年で12箇月/特定なら1年で6箇月(13条1項・2項)。
  3. 待期7日は全員:通算7日で、連続は要件でない(21条)。
  4. 給付制限は条文上1箇月以上3箇月以内の幅:期間はハローワークが定める(33条1項)。
  5. 所定給付日数は離職理由で大きく変わる(22条1項・23条1項)。
  6. 受給期間は離職日の翌日から1年:残日数があっても打ち切られる(20条1項)。
  7. 認定は4週に1回、出頭が必要(15条3項)。

根拠条文のまとめ

条文見出しこの記事で使った内容
雇用保険法4条3項定義失業とは、離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず職業に就くことができない状態
雇用保険法13条1項基本手当の受給資格離職前2年間に被保険者期間が通算12箇月以上
雇用保険法13条2項・3項同上特定受給資格者・特定理由離職者は1年間・6箇月に読み替え。特定理由離職者の定義
雇用保険法15条1項・2項・3項・4項失業の認定認定を受けた日について支給。求職の申込み。4週間に1回、直前の28日の各日。出頭できない場合の例外
雇用保険法16条1項・2項基本手当の日額賃金日額の50%〜80%。逓減。60歳以上65歳未満は45%に読み替え
雇用保険法20条1項支給の期間及び日数基準日の翌日から1年。就職困難者は+60日、23条1項2号イ該当者は+30日。30日以上就職できない場合の延長は最長4年
雇用保険法21条待期求職の申込みをした日以後、失業している日が通算7日に満たない間は支給しない
雇用保険法22条1項・2項所定給付日数算定基礎期間20年以上150日/10年以上20年未満120日/10年未満90日。就職困難者は別枠
雇用保険法23条1項・2項特定受給資格者の所定給付日数(年齢と算定基礎期間の組合せ)と、特定受給資格者の定義
雇用保険法33条1項・3項給付制限は待期満了後1箇月以上3箇月以内で公共職業安定所長が定める期間。公共職業訓練等の例外。受給期間の延長
条文の記述は執筆時点のもの。賃金日額の区切りは毎年度改定され、給付制限の具体的な期間も運用によります。実務では必ず居住地のハローワークでご確認ください。

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架空の実務場面をもとにした学習用の解説記事です。実在の会社・物件・取引ではありません。制度は改正されることがあるため、受験年度の最新情報もあわせてご確認ください。