社労士の実務クエスト

【社労士の実務】パートは社会保険に入る?──加入の判定を説明する

飲食店の経営者から、相談が届く。

「パートの方が数人います。社会保険に入れる必要があるのかどうか、判断がつきません。本人からは『扶養から外れたくない』と言われています。どこで線が引かれるのでしょうか。」

社労士の試験で「短時間労働者の適用」は、要件を1つずつ正確に問われる。覚えた要件が力になるのは、こうして一人ずつ、判定の順番どおりに当てられたときである。この記事では、判定の順序、それぞれの数字の根拠、そして雇用保険との違いまでを通しで整理する。

この記事は、学習アプリ「シカクエ」の実務クエストを読み物として再構成したもの。人物・事業所はすべて架空です。実際の加入の要否は、必ず年金事務所または健康保険組合にご確認ください。

まず結論:判定には順序がある

「パートだから入らない」という判定はできない。次の順で当てていく。

見るもの結果
1週の所定労働時間・月の所定労働日数が、通常の労働者の4分の3以上4分の3以上なら加入(そこで判定終了)
24分の3未満のとき、短時間労働者の除外要件に当たるか1つでも当たれば加入しない
3除外要件に当たらないとき、事業所が特定適用事業所特定適用事業所なら加入

この順序が大事だ。1番目で加入と決まる人については、2番目以降を見る必要がない。「週20時間」の話から入ると、4分の3以上働いている人を見落とす。

1番目:4分の3基準

健康保険法3条1項9号は、短時間労働者を次のように定義したうえで、その中から除外する者を定めている。

事業所に使用される者であって、その一週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される通常の労働者……の一週間の所定労働時間の四分の三未満である短時間労働者……又はその一月間の所定労働日数が同一の事業所に使用される通常の労働者の一月間の所定労働日数の四分の三未満である短時間労働者に該当し、かつ、イからハまでのいずれかの要件に該当するもの(健康保険法3条1項9号)

読み方を分解する。

  1. 時間が4分の3未満、または日数が4分の3未満(どちらかで短時間労働者になる)
  2. かつ、イ・ロ・ハのいずれかに当たる

この両方を満たす者が、被保険者となることができない者として9号に挙がっている。

裏返すと、時間も日数も4分の3以上であれば、9号に当たらない。つまりそのまま被保険者になる

週40時間の会社で、週30時間以上働いているパートは、この時点で加入が決まる。報酬額も事業所の規模も関係しない。ここを飛ばして「88,000円未満だから対象外」と判定すると、加入漏れになる。

厚生年金保険法12条5号にも、同じ構造の規定が置かれている。健康保険と厚生年金は、判定が連動する

2番目:除外要件イ・ロ・ハ

9号のイ・ロ・ハは、条文どおりには「これに当たると被保険者になれない」という書き方になっている。

条文の要件(当たると加入しない)裏返した加入の条件
一週間の所定労働時間が二十時間未満であること週20時間以上
報酬について……算定した額が、八万八千円未満であること月額88,000円以上
高等学校の生徒、大学の学生その他の厚生労働省令で定める者であること学生でないこと

ロの「報酬」からは、最低賃金法4条3項各号に掲げる賃金に相当するものとして省令で定めるものが除かれる(9号ロかっこ書)。賞与、時間外・休日・深夜の割増賃金、精皆勤手当、通勤手当、家族手当などは算入しないという趣旨で、基本的な賃金で判定することになる。

実務で外しやすいのが、このかっこ書だ。通勤手当を含めて88,000円を超えるかどうかで判定してはいけない。残業代も入れない。所定内の賃金で計算する。

ハについても「学生は一律に対象外」ではない。条文は「その他の厚生労働省令で定める者」としており、省令で範囲が定められている。夜間学部や通信制の学生などの扱いは省令で決まるので、学生であることだけで即断しない。

3番目:特定適用事業所かどうか

ここが事業所の規模による分かれ目になる。健康保険法の附則に定めがある。

当分の間、特定適用事業所以外の適用事業所……に使用される……特定四分の三未満短時間労働者については、同項の規定にかかわらず、健康保険の被保険者としない。(健康保険法附則46条1項)

その特定適用事業所の定義も、同じ条にある。

この条において特定適用事業所とは、事業主が同一である一又は二以上の適用事業所であって、当該一又は二以上の適用事業所に使用される特定労働者の総数が常時五十人を超えるものの各適用事業所をいう。(健康保険法附則46条12項)

事業所4分の3未満で除外要件に当たらない人の扱い
特定適用事業所(特定労働者の総数が常時50人超)被保険者になる
特定適用事業所以外附則46条1項により被保険者としない

条文の文言は「常時五十人を超える」だ。ちょうど50人では超えていないため、51人以上が特定適用事業所になる。

数え方にも注意が要る。事業所ごとではなく、事業主が同一である一または二以上の適用事業所の合計で数える(附則46条12項)。店舗が複数ある会社では、全店舗の合計になる。

特定適用事業所以外でも、加入する道はある。附則46条5項・6項は、事業主が一定の同意を得て、保険者等に申出をすることで、短時間労働者について1項の適用を受けない旨(=加入する旨)を選べる仕組みを定めている。任意特定適用事業所と呼ばれる形だ。

また、特定適用事業所に該当しなくなった場合でも、既に加入している人については1項が適用されない(附則46条2項本文)。人数が減ったら自動的に外れる、という制度ではない

そもそも被保険者にならない人

3条1項には、9号以外にも除外事由が並んでいる。判定の前提として押さえておく。

対象ただし書
2号イ日々雇い入れられる者1月を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く
2号ロ2月以内の期間を定めて使用される者であって、当該定めた期間を超えて使用されることが見込まれないもの定めた期間を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く
4号季節的業務に使用される者継続して4月を超えて使用されるべき場合を除く
5号臨時的事業の事業所に使用される者継続して6月を超えて使用されるべき場合を除く

2号ロの書き方に注目する。「当該定めた期間を超えて使用されることが見込まれない」ものが除外の対象だ。裏返すと、2か月以内の契約でも、更新して2か月を超えることが見込まれるなら、当初から被保険者になる

「まず2か月の契約にして、社会保険は3か月目から」という運用は、この号に当てて確認する必要がある。見込みで判断するという条文になっている。

つまずきやすいのは「雇用保険とは基準が違う」

相談では、社会保険と雇用保険がまとめて聞かれることが多い。基準が別なので、分けて判定する

健康保険・厚生年金雇用保険
時間の基準4分の3以上、または週20時間以上(短時間労働者)週の所定労働時間が20時間以上
賃金の基準月額88,000円以上(短時間労働者の場合)なし
事業所の規模特定適用事業所かどうかで変わる関係しない
学生省令で定める者は対象外原則として対象外(昼間学生)

雇用保険には賃金の基準も事業所規模の基準もない。だから「社会保険には入らないが、雇用保険には入る」という人が出る。相談では両方を並べて答えると、後の手続き漏れを防げる。

「扶養から外れたくない」への答え方

本人の希望と、法律上の判定は別のものになる。要件を満たせば被保険者になるのであって、選べるものではない。

そのうえで、渡せる情報がある。

  1. 判定の線がどこにあるかを数字で示す。週20時間、月額88,000円、4分の3。
  2. 所定労働時間を調整すれば線の手前に収まることを伝える。ただし本人の収入も減る。
  3. 加入した場合に得られるものを伝える。傷病手当金、出産手当金、将来の老齢厚生年金、障害厚生年金。保険料の負担だけでなく、給付の側も並べる
  4. 保険料は労使折半であることを伝える。

ここで気をつけたいのは、要件を満たすのに加入させない、という選択肢を示さないことだ。それは法律違反になる。示せるのは働き方そのものを変えるかどうかで、それは本人が決めることになる。

相談の場では「入らずに済む方法はありますか」と聞かれる。答えは「加入しない働き方はありますが、要件を満たしながら加入しない方法はありません」になる。

判定の手順——この順番で回す

  1. 通常の労働者の週所定労働時間と月所定労働日数を確定する。判定の分母になる。
  2. 各人の週所定労働時間・月所定労働日数を並べる。4分の3以上なら、そこで加入が決まる。
  3. 4分の3未満の人について、週20時間以上かを見る(3条1項9号イ)。
  4. 報酬月額を計算する。賞与、割増賃金、精皆勤手当、通勤手当、家族手当などを除いて88,000円以上か(同号ロ)。
  5. 学生かどうかを確認する(同号ハ)。省令の範囲で判断する。
  6. 事業主が同一の全事業所の特定労働者数を数える。常時50人を超えるか(附則46条12項)。
  7. 雇用保険を別に判定する。週20時間以上か。
  8. 該当者に説明し、資格取得届を提出する

プロならこう説明する

順にご説明します。判定には決まった順番がありますので、そのとおりに見ていきましょう。

まずいちばん最初に見るのは、通常の社員の方と比べた働く量です。週の所定労働時間か、月の所定労働日数のどちらかが、通常の社員の方の4分の3以上でしたら、その時点で加入が決まります。この場合、お給料の額も、お店の規模も関係ありません。

御社は正社員の方が週40時間ということですので、週30時間以上のパートの方は、この時点で加入となります。まずこの方がいらっしゃるかどうかをご確認ください。

4分の3に満たない方については、次に3つの条件を見ます。週の所定労働時間が20時間以上であること。お給料が月額8万8千円以上であること。そして学生でないこと。この3つすべてに当てはまる方が、次の段階に進みます。

お給料の8万8千円には、賞与や残業代、通勤手当は含めません。所定の勤務に対するお給料で計算します。ここは間違えやすいところですので、計算はこちらでいたします。

そして最後が、お店の規模です。事業主が同じお店の合計で、常時50人を超える場合に、この方々が加入となります。御社は全店舗合わせて何名でしょうか。50人以下でしたら、この段階の方は加入しない扱いになります。

ご本人の「扶養から外れたくない」というお気持ちについてです。正直に申し上げますと、要件を満たした場合、入る入らないを選ぶことはできません。法律で決まる形になっています。

ただ、お伝えできることはあります。働く時間を調整すれば、線の手前に収まります。ただしその分、お給料も減ります。どちらがご本人にとってよいかは、手取りの試算をお出ししたうえでご判断いただくのがよいと思います。

それから、加入されると受け取れるものも増えます。病気で長く休まれたときの傷病手当金、出産のときの出産手当金、将来の年金の上乗せ。保険料はご負担いただきますが、会社と折半です。この点もあわせてご本人にお伝えください。

最後に1つ。雇用保険は別の基準です。週20時間以上であれば、お給料の額やお店の規模に関係なく加入となります。社会保険には入らないけれど雇用保険には入る、という方が出ますので、こちらも一覧にしてお持ちします。

よくある質問と、その答え方

「2か月の契約なら加入しなくてよいですか」
条文をそのまま読む。3条1項2号ロが除外しているのは、2月以内の期間を定めて使用される者であって「当該定めた期間を超えて使用されることが見込まれないもの」だ。更新して2か月を超えることが見込まれるなら、当初から被保険者になる。「まず2か月契約にして3か月目から加入」という運用は、この見込みの部分に当てて確認する必要がある。

「人数が50人以下に減ったら、加入していた人は外れますか」
自動では外れない。健康保険法附則46条2項本文は、特定適用事業所に該当しなくなった適用事業所に使用される特定4分の3未満短時間労働者については、1項の規定は適用しないとしている。つまり被保険者のままになる。ただし同項ただし書に、一定の同意を得て申出をする道が定められている。「人数が減った=資格喪失」ではないので、手続きの要否を確認してから答える。

「所定労働時間は20時間未満だが、毎月残業で25時間になっています」
条文が見ているのは所定労働時間だ(3条1項9号イ)。実労働時間ではない。ただし所定と実態が常態的に乖離している場合、実態で判断されることがある。「契約書は19時間だが実際は毎月25時間」という状態を続けるのは、判定の前提を崩すことになる。実態に合わせて契約を見直すところから助言する場面になる。

説明で外したくないポイント

  1. 判定は順序どおりに:まず4分の3基準(3条1項9号)。
  2. 4分の3以上なら報酬も規模も関係なく加入
  3. イ・ロ・ハは「当たると加入しない」書き方:裏返して読む。
  4. 88,000円に賞与・残業代・通勤手当は算入しない(9号ロかっこ書)。
  5. 特定適用事業所は「常時50人を超える」:事業主が同一の全事業所の合計(附則46条12項)。
  6. 2か月以内の契約は「超えて使用される見込み」で判断(3条1項2号ロ)。
  7. 雇用保険は別基準:賃金要件も規模要件もない。

根拠条文のまとめ

条文見出しこの記事で使った内容
健康保険法3条1項2号定義日々雇い入れられる者は1月超、2月以内の期間を定めて使用される者は定めた期間を超えて使用される見込みで判断
健康保険法3条1項4号・5号同上季節的業務は4月超、臨時的事業は6月超
健康保険法3条1項9号同上4分の3未満の短時間労働者で、イ(週20時間未満)ロ(報酬88,000円未満)ハ(学生等)のいずれかに当たる者
健康保険法附則46条1項特定適用事業所以外では、特定4分の3未満短時間労働者を被保険者としない
健康保険法附則46条2項特定適用事業所に該当しなくなっても1項は適用しない(ただし書に申出の道)
健康保険法附則46条5項・6項同意を得た申出による任意の適用
健康保険法附則46条12項特定適用事業所とは、事業主が同一の適用事業所の特定労働者の総数が常時50人を超えるもの
厚生年金保険法12条5号適用除外健康保険法3条1項9号と同じ構造の規定
条文の記述は執筆時点のもの。適用の範囲は改正が続いている分野のため、実務では必ず年金事務所または健康保険組合にご確認ください。

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