社労士の実務クエスト

【社労士の実務】家族の介護で休みたいと言われたら?──介護休業の要件を説明する

人事担当者から、相談が届く。

「社員から、親の介護で休みたいと言われました。育児休業のような制度が介護にもあると聞いたのですが、どのくらい休めるのでしょうか。会社として断ることはできますか。給料はどうなりますか。」

社労士の試験で「介護休業」は、日数と回数が正確に問われる。覚えた内容が力になるのは、こうして担当者に、休める範囲と会社にできる調整を条文で示せたときである。この記事では、対象の定義、日数と回数、申出の期限、給付金、そして育児休業との違いまでを通しで整理する。

この記事は、学習アプリ「シカクエ」の実務クエストを読み物として再構成したもの。人物・事業所はすべて架空です。改正の多い分野のため、実際の運用は最新の条文と通達でご確認ください。

まず結論:申出を拒むことはできない

事業主は、労働者からの介護休業申出があったときは、当該介護休業申出を拒むことができない。(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律12条1項)

育児休業と同じ書き方だ(6条1項)。会社の都合で断ることはできない

調整できることも、育児休業と同じ形で2つある。

できること根拠
1労使協定で一定の労働者を対象から外しておく12条2項(6条1項ただし書の準用)
2申出が2週間前を切っている場合に、開始予定日を指定する12条3項

事業主は、労働者からの介護休業申出があった場合において、当該介護休業申出に係る介護休業開始予定日とされた日が当該介護休業申出があった日の翌日から起算して二週間を経過する日……前の日であるときは、……当該介護休業開始予定日とされた日から当該二週間経過日までの間のいずれかの日を当該介護休業開始予定日として指定することができる。(育児介護休業法12条3項)

育児休業は1か月だが、介護休業は2週間だ(6条3項と12条3項の対比)。介護は突然始まることが多いため、短く設定されている。

ここも「拒める」わけではない。指定できるのは2週間経過日までで、それを超えて後ろへずらすことはできない

誰の介護が対象になるか

対象家族 配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。……)、父母及び子(これらの者に準ずる者として厚生労働省令で定めるものを含む。)並びに配偶者の父母をいう。(育児介護休業法2条4号)

対象家族備考
配偶者事実婚を含む
父母省令で定める準ずる者を含む
同上
配偶者の父母いわゆる義父母

同居や扶養は要件になっていない。条文が挙げているのは続柄だけだ。「別居しているから対象外」という判断はできない。

状態についても定義がある。

要介護状態 負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、厚生労働省令で定める期間にわたり常時介護を必要とする状態をいう。(育児介護休業法2条3号)

介護保険の要介護認定を受けていることは要件になっていない。省令で定める期間にわたり常時介護を必要とする状態かどうかで判断される。「認定がないから取れない」と即答しない

日数と回数——通算93日、3回まで

前項の規定にかかわらず、介護休業をしたことがある労働者は、当該介護休業に係る対象家族が次の各号のいずれかに該当する場合には、当該対象家族については、同項の規定による申出をすることができない。
一 当該対象家族について三回の介護休業をした場合
二 当該対象家族について介護休業をした日数……が九十三日に達している場合(育児介護休業法11条2項)

上限
回数3回まで
日数通算93日まで

「対象家族について」と書かれている点が要点だ。93日と3回は、対象家族1人ごとに数える。父と母の両方を介護する場合、それぞれについて93日・3回の枠がある。

逆に、同じ親について93日を使い切ったら、その親についてはもう申し出られない。「合計93日」でも「一人につき生涯93日」でもなく、「対象家族ごとに通算93日」という数え方になる。

3回に分けられるのは、介護の実情に合わせた設計だ。入院の付添い、退院後の体制づくり、施設への入所手続きといった山場ごとに使うという想定になっている。相談ではこの使い方を伝えると、本人が計画を立てやすい。

有期雇用の労働者については、11条1項ただし書に要件がある。介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6月を経過する日までに、その労働契約が満了することが明らかでない者に限り申し出ることができる。「有期だから取れない」ではなく、契約の満了時期で判断する

申出でやること

第一項の規定による申出……は、厚生労働省令で定めるところにより、介護休業申出に係る対象家族が要介護状態にあることを明らかにし、かつ、その期間中は当該対象家族に係る介護休業をすることとする一の期間について、その初日……及び末日……とする日を明らかにして、しなければならない。(育児介護休業法11条3項)

本人がすることは3つある。要介護状態にあることを明らかにすること開始予定日を示すこと終了予定日を示すことだ。

会社側は、申出書の様式にこの3点が書ける欄を用意しておく。様式がないと、口頭のやり取りだけで進んで後から日数の数え方でもめる。

介護休業給付金は67%

雇用保険法61条の4の本則は、給付率を百分の四十と定めている(同条4項)。ただし暫定措置がある。

介護休業を開始した被保険者に対する第六十一条の四第四項の規定の適用については、当分の間、同項中「百分の四十」とあるのは、「百分の六十七」とする。(雇用保険法附則12条)

本則(61条の4第4項)40%
当分の間(附則12条)67%

受給資格は育児休業給付金と同じ構造で、介護休業を開始した日前2年間にみなし被保険者期間が通算して12箇月以上であったときに支給される(61条の4第1項)。

支給の対象も条文で区切られている。同一の対象家族について、介護休業を開始した日から終了した日までの日数を合算して93日に達した日後の介護休業は対象から外れる。休業できる日数と、給付が出る日数がそろっている形になる。

賃金が支払われた場合の調整も、育児休業給付金と同じ構造だ。支払われた賃金の額に給付金の額を加えた額が、休業開始時賃金日額に支給日数を乗じて得た額の80%以上であるときは、その80%相当額から賃金の額を差し引いた額が給付金になる。賃金だけで80%以上になるときは支給されない(61条の4第5項)。

休職中の賃金を定めるときは、この調整を前提にする。善意で支払うと、かえって本人の手取りが増えないことがある

介護休業だけではない

93日という枠は、長期の介護には足りない。介護休業は「介護をするための休み」ではなく「介護の体制を整えるための休み」という位置づけになっている。だから他の制度と組み合わせて使う。

制度内容
介護休業対象家族1人につき通算93日、3回まで
介護休暇1年度に5日(対象家族が2人以上なら10日)まで。時間単位で取得できる
所定外労働の制限請求により、所定労働時間を超える労働をさせられない
時間外労働の制限請求により、一定の時間を超える時間外労働をさせられない
深夜業の制限請求により、深夜業をさせられない
所定労働時間の短縮等の措置事業主が講ずべき措置

相談を受けたときは、介護休業だけを案内しない。93日を使い切った後にどう続けるかまで含めて渡すのが、この場面の役割になる。

育児休業との違いを整理する

育児休業介護休業
申出の拒否できない(6条1項)できない(12条1項)
申出の期限1か月前(6条3項)2週間前(12条3項)
期間原則1歳まで(延長あり)対象家族1人につき通算93日
回数1歳までに2回+出生時育児休業2回3回
給付率180日まで67%、以降50%67%(附則12条)
枠の単位子ごと対象家族ごと

対応の手順——この順番で進める

  1. 対象家族に当たるかを確認する。配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母(2条4号)。同居・扶養は要件でない
  2. 要介護状態かを確認する介護保険の認定は要件ではない(2条3号)。
  3. 労使協定の有無を確認する。除外の定めがなければ、勤続1年未満でも取得できる(12条2項)。
  4. 有期雇用なら契約の満了時期を確認する(11条1項ただし書)。
  5. その対象家族についての取得実績を確認する。既に何日、何回使っているか(11条2項)。
  6. 申出日と開始予定日の間隔を確認する。2週間を切っているなら指定ができる(12条3項)。
  7. 給付金の受給資格を確認する。開始日前2年間にみなし被保険者期間が通算12箇月以上か。
  8. 休業中の賃金の扱いを決める。80%の調整を前提にする。
  9. 93日の後の制度を一緒に設計する。介護休暇、所定外労働の制限、短時間勤務。

プロならこう説明する

順にご説明します。まず、会社としてお断りすることはできません。育児休業と同じく、法律に「拒むことができない」と定められています。

ただし2つ、できることがあります。1つは、お申出が2週間を切っている場合に、開始日を後ろへずらすことです。ただしずらせるのは2週間経過する日までです。もう1つは、あらかじめ労使協定を結んでいる場合に、勤続1年未満の方などを対象外とすることです。御社では協定を結んでいらっしゃいますか。

次に、休める長さです。対象となるご家族お一人につき、通算93日まで。3回に分けてお取りいただけます。

この「お一人につき」という点が大事です。お父さまとお母さまの両方を介護される場合、それぞれに93日の枠があります。合計で93日ではありません。

対象になるご家族の範囲もお伝えします。配偶者、ご両親、お子さま、配偶者のご両親です。配偶者には事実婚の方も含まれます。同居や扶養は条件になっていませんので、別居のご両親でも対象です。

それから、よくある誤解を1つ。介護保険の要介護認定を受けていることは条件ではありません。法律が定めているのは、常時介護を必要とする状態かどうかです。認定がまだでも、お取りいただける場合があります。

お給料についてです。休業中のお給料は法律上の支払義務がありませんが、雇用保険から介護休業給付金が出ます。おおむね賃金日額の67%です。

ここで会社側にご注意いただきたい点があります。休業中にお給料をお支払いになると、給付金が減額されます。合わせて80%を超える部分が調整され、お給料だけで80%以上になると給付金は出ません。制度の設計を先に確認しましょう。

最後に、いちばんお伝えしたいことがあります。93日というのは、介護そのものをするための期間としては足りません。この制度は、介護をご自身で続けるためではなく、介護の体制を整えるための休みと位置づけられています。

ですので、93日をどう使うかを、ご本人と先に相談されることをお勧めします。ケアマネジャーとの面談、施設の見学、手続き。山場ごとに3回に分けてお使いいただくという組み立てが、制度の趣旨に合っています。

そのうえで、93日の後をどうするかもご一緒に設計しましょう。介護休暇が年に5日(ご家族が2人以上なら10日)、時間単位でお取りいただけます。ほかに、所定外労働・時間外労働・深夜業の制限や、短時間勤務などの措置もあります。長く働き続けていただくには、こちらの組み合わせのほうが効きます。

よくある質問と、その答え方

「要介護認定がまだ出ていません」
要件になっていない。育児介護休業法2条3号の要介護状態は、負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、省令で定める期間にわたり常時介護を必要とする状態と定義されている。介護保険法の要介護認定とは別の判断だ。「認定が出てから」と案内すると、必要な時期に休めなくなる。状態を確認する書類の出し方を一緒に整えるのが実務になる。

「93日を使い切った後は、もう何もありませんか」
介護休業は使えないが、他の制度は残る。介護休暇(1年度に5日、対象家族が2人以上なら10日、時間単位で取得可)、所定外労働の制限時間外労働の制限深夜業の制限所定労働時間の短縮等の措置だ。「休業は終わりましたが、働き方を変える制度が続きます」という渡し方をする。離職を防ぐことが制度全体の目的だと押さえておく。

「同じ親について、去年60日使いました。今年また休めますか」
休める。11条2項2号が定めているのはその対象家族について介護休業をした日数が93日に達している場合だ。60日であれば残り33日ある。ただし1号の3回の制限も同時に働くので、既に何回使ったかも確認する。日数と回数の両方を見ないと答えられない質問になる。対象家族ごとの取得実績を台帳で持つことが、この確認を早くする。

説明で外したくないポイント

  1. 申出は拒めない(12条1項)。
  2. 申出の期限は2週間:育児休業の1か月と違う(12条3項)。
  3. 93日・3回は対象家族ごと(11条2項)。
  4. 対象家族に同居・扶養の要件はない。配偶者は事実婚を含む(2条4号)。
  5. 要介護認定は要件ではない(2条3号)。
  6. 給付率は本則40%、当分の間67%(雇用保険法61条の4第4項、附則12条)。
  7. 賃金を払うと80%の調整が働く(61条の4第5項)。
  8. 93日は体制を整えるための期間:他の制度と組み合わせて設計する。

根拠条文のまとめ

条文見出しこの記事で使った内容
育児介護休業法2条3号定義要介護状態は、省令で定める期間にわたり常時介護を必要とする状態
育児介護休業法2条4号同上対象家族は配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母
育児介護休業法11条1項介護休業の申出申出により介護休業ができる。有期は開始予定日から93日経過日から6月経過日までに契約満了が明らかでない者に限る
育児介護休業法11条2項同上対象家族について3回の介護休業をした場合、または93日に達している場合は申し出られない
育児介護休業法11条3項同上要介護状態にあることを明らかにし、開始予定日と終了予定日を示して申し出る
育児介護休業法12条1項介護休業申出があった場合における事業主の義務等拒むことができない
育児介護休業法12条2項同上6条1項ただし書等を準用(労使協定による除外)
育児介護休業法12条3項同上2週間を切る申出は、その経過日までの日を開始予定日として指定できる
雇用保険法61条の4第1項介護休業給付金開始日前2年間にみなし被保険者期間が通算12箇月以上。93日に達した日後の介護休業は対象外
雇用保険法61条の4第4項同上本則の給付率は40%
雇用保険法61条の4第5項同上賃金が支払われた場合の80%調整
雇用保険法附則12条介護休業給付金に関する暫定措置当分の間「百分の四十」を「百分の六十七」と読み替える
条文の記述は執筆時点のもの。育児介護休業法は改正が続いている分野のため、実際の運用では最新の条文と厚生労働省の通達をご確認ください。

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