SNSで誹謗中傷されたらどうする?理解する3つの軸
SNS名誉毀損対応の話は、3つの軸で整理できます。
- 民事・刑事の二重構造: 民法709条の損害賠償と刑法230条の名誉毀損罪が並行
- 発信者情報開示: プロバイダ責任制限法、2022年改正で1段階手続化
- 削除請求: SNS事業者への削除依頼、人格権侵害として裁判所に仮処分も可
ここがポイント。SNS名誉毀損は『民事による被害回復+刑事による制裁+削除による拡大防止』の三層対応ということ。被害者は目的に応じて手段を組み合わせます。
それから、2022年改正で被害者救済が大きく前進したという事実。それまで匿名相手の特定に半年〜1年かかっていた手続が、改正後は数か月で完結するようになりました。
なぜそう言えるのか、3つの軸を順番に見ていきます。
名誉毀損は罪になる?賠償は?——民事・刑事(民法709条・刑法230条)
民事の名誉毀損(民法709条・710条)
民法709条の 不法行為 として、被害者は 損害賠償請求 が可能。710条は名誉毀損による 精神的損害(慰謝料) を明示。
民事の名誉毀損の主な要件
刑事の名誉毀損罪(刑法230条)
刑法230条1項は 名誉毀損罪 を 3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金 と規定。親告罪(232条)で告訴がないと起訴不可。
| 罪名 | 条文 | 内容 | 罰則 |
|---|---|---|---|
| 名誉毀損罪 | 230条 | 公然と事実を摘示し名誉を毀損 | 3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金 |
| 侮辱罪 | 231条 | 事実摘示なしで公然と侮辱 | 1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金(2022年改正で重罰化) |
| 信用毀損罪 | 233条 | 虚偽の風説で人の信用を毀損 | 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
| 業務妨害罪 | 233条後段 | 虚偽の風説等で業務を妨害 | 同上 |
公益目的の例外(刑法230条の2)
名誉毀損罪は 公共の利害に関する事実 で 公益目的 で 真実証明 ができれば不処罰(230条の2)——報道機関等の批判的言論を保護する規定。
トリビア:プロバイダ責任制限法は2022年改正で発信者情報開示が1段階手続化、2022年10月施行
プロバイダ責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)は 2001年公布・2002年施行——インターネット上の権利侵害への対応として誕生しました。2022年4月公布・2022年10月施行の改正 で、発信者情報開示請求が 1段階の発信者情報開示命令 に整理。改正前は 仮処分(IP特定)→訴訟(発信者特定) の2段階で 半年〜1年 要していたのが、改正後は 1段階で数か月 に短縮されました。ログ保存期間(一般3か月) との戦いだった被害者救済が大幅に効率化されたのが画期的です。
匿名の相手を特定できる?——発信者情報開示請求(プロバイダ責任制限法)
旧制度(〜2022年9月)
改正前は 2段階 の手続で発信者を特定する必要がありました。
旧2段階手続
新制度(2022年10月以降)
2022年改正で新設された 発信者情報開示命令(5条)により、1段階で発信者を特定できる仕組みに。
- 発信者情報開示命令: 裁判所が発信者情報の開示を命じる新制度
- コンテンツプロバイダ+アクセスプロバイダの並行手続: 双方を一括処理
- ログ保存命令: 通信ログを保存させる仮処分も併用可
- 海外プロバイダ対応: 国際送達が必要な場合の対応も整備
開示される発信者情報
開示対象の発信者情報
開示要件(5条)
開示請求が認められるには、以下の要件を満たす必要があります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 権利侵害の明白性 | 名誉毀損等の権利侵害が明白であること |
| 正当な理由 | 損害賠償請求等の権利行使に必要であること |
| 発信者の被告適格 | 発信者を特定して訴訟提起できる状態 |
私たちが取材したインターネット紛争専門の弁護士の話では、「2022年改正で被害者救済の現実性が急速に高まった——以前は『時間とお金で諦める』ケースが多かったが、今は本格的に対応できる」とのこと。
いくら請求できる?投稿は消せる?——損害賠償の相場と削除請求
損害賠償の相場
- 慰謝料: 10万〜100万円程度(個人間の場合)
- 業務上の損害: 売上減少分の損害賠償(事業者の場合)
- 弁護士費用: 損害賠償の10%程度を加算可能
- 悪質ケース: 100万〜500万円以上もありうる
慰謝料額を左右する要素
慰謝料の判断要素
削除請求の3つのルート
1. SNS事業者への削除依頼
各 SNS の 通報フォーム から削除依頼。利用規約違反として迅速に対応されることが多い。
2. プロバイダ責任制限法に基づく削除請求
権利侵害が明白な場合、プロバイダ責任制限法に基づく削除依頼書 を SNS 事業者に送付。応じない場合は仮処分。
3. 裁判所の仮処分(人格権侵害)
人格権侵害として 削除仮処分 を裁判所に申立て。緊急性があれば数週間で削除命令が出ることも。
検索結果削除(忘れられる権利)
検索エンジンの検索結果からの削除も可能(最決平成29年1月31日——いわゆる「忘れられる権利」関連の判例)。プライバシー侵害の程度と公益性のバランスで判断。
実務家の視点から言えば、SNS名誉毀損対応は『発信者情報開示で特定→損害賠償+削除請求+場合により刑事告訴』 という4段階で対応するのが基本パターンです。
- SNS名誉毀損対応の核心は 民事/刑事・発信者情報開示・削除請求 の3軸
- 民事の名誉毀損(民法709条・710条): 損害賠償・慰謝料
- 公然性・事実摘示・社会的評価低下 の3要件
- 刑事の名誉毀損罪(刑法230条): 3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金
- 名誉毀損罪は 親告罪(232条)、告訴がないと起訴不可
- 侮辱罪(231条)は2022年改正で重罰化(1年以下の懲役・禁錮または30万円以下)
- 信用毀損・業務妨害罪(233条)も SNS 投稿で成立しうる
- 公益目的の真実証明 で不処罰(230条の2)——報道機関等の批判的言論保護
- 2022年10月施行のプロ責法改正 で発信者情報開示が 1段階手続化
- 改正前: 仮処分→訴訟の2段階、半年〜1年、ログ消失リスク
- 改正後: 発信者情報開示命令(5条)、数か月で完結
- 開示対象: 氏名・住所・メール・IPアドレス・タイムスタンプ・電話番号等
- 開示要件: 権利侵害の明白性・正当な理由・発信者の被告適格
- 慰謝料相場: 個人間10万〜100万円、悪質ケースは100万〜500万円以上
- 弁護士費用は損害賠償の 10%程度 を加算可能
- 削除請求の3ルート: SNS事業者依頼・プロ責法削除依頼・裁判所仮処分
- 検索結果削除(忘れられる権利)も最決平成29年で判例化
- 4段階対応: 発信者特定→損害賠償→削除→刑事告訴(必要時)
理解度チェック
ここまでの内容、どれくらい身についたかチェックしてみよう。
名誉毀損の民事・刑事について、正しい説明はどれか。
- 名誉毀損は刑事のみで処罰され民事の損害賠償請求はできない扱い
- 名誉毀損は民事のみで対応可能で刑事罰の対象にならない原則扱い
- 民事は民法709条の損害賠償、刑事は230条で3年以下の懲役等
- 名誉毀損罪は非親告罪で告訴なしでも起訴可能となる仕組み扱い
解答は 3 である。
名誉毀損は 民事・刑事の二重構造 で対応可能: ①民事——民法709条の不法行為として 損害賠償請求、710条は精神的損害(慰謝料)を明示。要件は 公然性・事実摘示・社会的評価の低下・故意過失。②刑事——刑法230条の名誉毀損罪として 3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金。親告罪(232条)で告訴がないと起訴不可。侮辱罪(231条)は2022年改正で重罰化、1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金。公益目的の真実証明 で不処罰の例外あり(230条の2)——報道機関等の批判的言論保護のための規定。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ 誤り | 民事も可 |
| 2 | ✗ 誤り | 刑事も可 |
| 3 | ✓ 正解 | 二重構造の正しい仕組み |
| 4 | ✗ 誤り | 親告罪 |
民事+刑事の二重構造——これが名誉毀損対応の核心なのである。
2022年改正の発信者情報開示について、正しい説明はどれか。
- 改正前から1段階で発信者を特定できる仕組みがあった原則扱い
- 改正で従来の2段階から発信者情報開示命令の1段階に短縮
- 改正後も発信者情報開示の手続は1年以上要する仕組みの扱い
- 改正で発信者情報の開示請求は完全に不可能となった原則扱い
解答は 2 である。
プロバイダ責任制限法 2022年4月公布・10月施行の改正 で、発信者情報開示請求が 1段階の発信者情報開示命令(5条)に整理された。改正前は 2段階手続: ①仮処分でコンテンツプロバイダから IP アドレス開示 ②訴訟でアクセスプロバイダから契約者情報開示——半年〜1年 要し、ログ保存期間(一般3か月) との戦いだった。改正後は 裁判所が発信者情報の開示を一括命令、コンテンツ+アクセスプロバイダの並行手続が可能に。数か月で完結 する被害者救済の大きな前進。ログ保存命令(仮処分)も併用可、海外プロバイダ対応 も整備。被害者の費用負担も大幅軽減。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ 誤り | 改正前は2段階 |
| 2 | ✓ 正解 | 改正の正しい仕組み |
| 3 | ✗ 誤り | 数か月に短縮 |
| 4 | ✗ 誤り | 開示は可能 |
1段階の開示命令——これが2022年改正の核心なのである。
削除請求と慰謝料について、正しい説明はどれか。
- 削除請求は SNS事業者・プロ責法・裁判所仮処分の3ルート
- 削除請求は裁判所の仮処分のみが法的に認められる仕組みの扱い
- 名誉毀損の慰謝料は最低1,000万円が相場として定まる原則扱い
- 弁護士費用は損害賠償額に加算できない仕組みとなる原則扱い
解答は 1 である。
削除請求は 3つのルート で対応可: ①SNS事業者への削除依頼——各 SNS の通報フォームから、利用規約違反として迅速対応されることが多い。②プロバイダ責任制限法に基づく削除請求——権利侵害が明白な場合の削除依頼書送付、応じない場合は仮処分。③裁判所の削除仮処分——人格権侵害として申立て、緊急性あれば数週間で命令。慰謝料相場 は個人間で 10万〜100万円程度、悪質ケースは 100万〜500万円以上。判断要素は 投稿の悪質性・拡散範囲・被害者の社会的地位・被害の程度・期間。弁護士費用は損害賠償の10%程度 を加算可能(民事訴訟実務の標準)。最決平成29年1月31日 で検索結果削除(忘れられる権利関連)も判例化。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ 正解 | 3ルートの正しい仕組み |
| 2 | ✗ 誤り | 3ルートあり |
| 3 | ✗ 誤り | 10万〜100万円 |
| 4 | ✗ 誤り | 10%加算可 |
3ルートの削除請求——これが拡大防止の核心なのである。
おわりに
SNS名誉毀損対応は、知っているか知らないかで被害回復の現実性が大きく変わる典型例です。今日見た3つの基本——民事/刑事の二重構造・発信者情報開示・削除請求——を覚えておけば、SNSトラブルに直面した時の対応軸が手に入ります。
自分の権利を知るというのは、誰かに任せきりにするのではなく、自分で判断できる材料を持つこと。法律はそのための道具です。
SNS名誉毀損対応は、民法・刑法・プロバイダ責任制限法・実務が交錯する分野。インターネット紛争専門弁護士・違法・有害情報相談センター・誹謗中傷ホットライン・法務省人権擁護局・警察・法テラス——相談先や活用のサポートは意外と多くあります。気になることがあれば、まず話を聞いてもらうところから始めるのがおすすめです。
法律の論点はパターン化しやすい分野。スキマ時間で1問ずつ感触を掴みたい方は、シカクエのアプリも選択肢のひとつです。
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