線形代数(行列)とは(全体像)
行列は、数を「m行n列」の表のかたちに並べたもの。たとえば3つの数を縦に並べたり、数字を格子状にびっしり置いたりして、多くの数を1つのかたまりとして扱う。
なぜ便利かというと、たくさんの数の計算を一度にまとめてできるから。AI(ニューラルネット)のたくさんの重み、3Dゲームの座標変換などは、行列の計算でいっぺんに処理している。
押さえるのは、行列ならではの2つのクセ。
- かけ算は順番が大事 … ふつうの数と違って、AB と BA は一般に別もの。
- 割り算(逆行列)には条件がある … どんな行列でも逆が作れるわけではない。
詳しく:かけ算の順番と逆行列だけ覚えれば戦える
ここが記事の心臓部。まずは行列の演算。
行列の基本演算
| 演算 | ルール |
|---|---|
| 足し算・引き算 | 同じ形(同じ行数・列数)どうしだけ |
| かけ算(積) | 左の列数と右の行数が一致するときだけできる |
| かけ算の順番 | AB と BA は一般に別もの(順番が大事) |
いちばん大事なのが、かけ算の順番。ふつうの数なら3×5=5×3だが、行列ではAB≠BAが普通。順番を入れ替えると答えが変わる(そもそも計算できないこともある)。ここが試験の狙い目だ。
次に、割り算にあたる逆行列。
逆行列が作れる条件
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 逆行列とは | かけると単位行列(1にあたるもの)になる相棒 |
| 作れる条件 | 行列式が0でないときだけ作れる |
| 行列式が0なら | 逆行列は作れない |
逆行列は、数でいう「逆数(割り算)」にあたるもの。ただし、どんな行列でも作れるわけではない。「行列式」という値が0でないときだけ逆行列が存在する。行列式が0だと逆行列はない——ここが頻出ポイントだ。
このほか、`Av=λv`を満たす特別な値(固有値)とベクトル(固有ベクトル)があり、AIの主成分分析などで使われる、と押さえておけばいい。
わかりやすく言い換えると
要するに、行列は「数を並べた表をひとかたまりで計算する道具」だ。
①かけ算の順番 … 「服を着てから出かける」と「出かけてから服を着る」が違うように、AB と BA は別の操作。順番が結果を変える。
②逆行列 … 「もとに戻す操作」。でも、つぶれて情報が消えた変換(行列式が0)は、もとに戻せない。だから逆行列が作れない、というわけだ。
つまり、行列は「順番に敏感」で「つねに逆戻りできるわけではない」——この2点が数のかけ算との大きな違いだ。
試験のツボ
🔴 一番出る:かけ算は順番が大事(AB≠BA)
①行列のかけ算は順番を入れ替えると結果が変わる
②ふつうの数(3×5=5×3)とはここが違う
🔴 次に出る:逆行列が作れる条件
①逆行列はかけると単位行列になる相棒
②行列式が0でないときだけ作れる(0なら作れない)
🟡 押さえると安定:応用と固有値
①AI(ニューラルネット)・3D変換・データ解析で使う
②Av=λvの固有値・固有ベクトルは主成分分析などで使う
よくある間違い
①「行列のかけ算は順番を変えても同じ(AB=BA)」→ ✗ 行列では一般にAB≠BA。順番で結果が変わる。
②「どんな行列にも逆行列がある」→ ✗ 行列式が0でない(正則な)行列だけ。0なら逆行列はない。
③「行列は1つの数のことで、表の形ではない」→ ✗ 行列は数を縦横の表に並べたもの。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(かけ算の順番)
行列のかけ算(積)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 行列のかけ算はふつうの数と同じで、ABとBAはつねに等しい結果になる
- 行列のかけ算は足し算と同じ手順で、要素ごとにそのまま掛け合わせればよい
- 行列のかけ算は順番で結果が変わり、ABとBAは一般に別ものになる
- 行列のかけ算はどんな形の行列どうしでも、制限なくつねに計算できる
解答は 3 だぜ。
行列のかけ算は順番で結果が変わり、ABとBAは一般に別ものだ。ふつうの数(3×5=5×3)と違って、順番に敏感なのが行列のクセだな。
選択肢1は「つねに等しい」が誤り。選択肢2は「要素ごとにそのまま掛ける」が誤り(積のルールは別)。選択肢4は「制限なく計算できる」が誤りで、形が合わないとかけられないぜ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | AB≠BAが一般 |
| 2 | ✗ | 要素ごとの掛け算ではない |
| 3 | ✓ | 順番で結果が変わる |
| 4 | ✗ | 形が合わないと計算できない |
オリジナル問題2(逆行列の条件)
逆行列に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 逆行列は行列式が0でない行列にだけ存在し、0のときは作ることができない
- 逆行列はどんな行列にも必ず存在し、行列式の値とは無関係に作れるものだ
- 逆行列は行列式がちょうど0のときにだけ作ることができる行列のことである
- 逆行列は足し算をもとに戻す操作で、かけ算とはまったく関係がないものだ
解答は 1 だぜ。
逆行列は行列式が0でないときだけ作れる。行列式が0だと逆行列は存在しない。逆行列はかけると単位行列(1にあたるもの)になる相棒だ。
選択肢2は「どんな行列にも必ず存在」が誤り。選択肢3は「行列式が0のとき作れる」が逆。選択肢4は「足し算をもとに戻す」が誤りで、逆行列はかけ算に関わるぜ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 行列式が0でないときだけ存在 |
| 2 | ✗ | どんな行列にもあるわけではない |
| 3 | ✗ | 0のときは作れない |
| 4 | ✗ | かけ算に関わる操作 |
オリジナル問題3(応用)
行列の応用に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 行列は数学の理論だけのもので、コンピュータの実務で使われることはない
- 行列は文章を圧縮する専用の道具で、数値の計算には用いられないものである
- 行列は1つの数しか入らないため、複数のデータをまとめて扱うことはできない
- 行列はAIの計算や3Dグラフィックスの座標変換など、実務で広く使われる
解答は 4 だぜ。
行列はAIの計算(ニューラルネット)や3Dグラフィックスの座標変換など、実務で広く使われている。たくさんの数をまとめて計算できるのが強みだ。
選択肢1は「実務で使われない」が誤り。選択肢2は「文章圧縮専用」が誤り。選択肢3は「1つの数しか入らない」が誤りで、行列は多くの数をまとめて扱えるぜ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 実務で広く使われる |
| 2 | ✗ | 文章圧縮専用ではない |
| 3 | ✗ | 多くの数をまとめて扱える |
| 4 | ✓ | AI・3D変換などで活躍 |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 かけ算の順番 = 行列ではAB≠BAが一般。順番で結果が変わる。
- 🔴 逆行列の条件 = 行列式が0でないときだけ作れる(0なら作れない)。
- 🟡 応用 = AI・3Dグラフィックス・データ解析。固有値・固有ベクトルは主成分分析などで使う。
次に学ぶ
- 微分積分基礎 ── 行列とともにAIを支える数学。最適化(微分)と行列(データのまとめ)の両輪で機械学習が動く。
- ベクトルの基礎 ── 行列とセットで使う「向きと大きさを持つ量」。3D変換やデータ表現の土台になる。
執筆: SikakuQuest編集部