【基本情報の実務】表を分ける──「これは何に付いている情報か」で1列ずつ見る
冒険者ギルドの受付担当から、管理表の作り方について相談が届く。
「依頼の管理表を1枚に作っていて、1行に依頼内容・依頼者名・依頼者の連絡先・担当冒険者名・担当のランクを全部入れています。同じ依頼者が何度も依頼すると、連絡先を毎回書くことになり、修正のたびに全部直すのが大変です。表の分け方を相談したいです」
相談の中に、分けるべき理由がそのまま書かれている。「連絡先を毎回書くことになる」——同じことが繰り返し書かれているのが、分けるサインである。基本情報の知識がここで力になるのは、どこで切るかを、迷わず決められたときだ。この記事では、その基準から整理する。
まず結論:1列ずつ「何に付いている情報か」を問う
| 列 | 何に付いている情報か |
|---|---|
| 依頼内容 | 依頼 |
| 依頼者名 | 依頼者 |
| 依頼者の連絡先 | 依頼者 |
| 担当冒険者名 | 冒険者 |
| 担当のランク | 冒険者 |
この問いを1列ずつ当てると3つのまとまりに分かれる。依頼・依頼者・冒険者である。
そしてまとまりが、そのまま表になる。
ここで大事なのは「連絡先は依頼に付いている情報ではない」ということである。依頼が10件あっても、連絡先は依頼者のもので、1つである。
依頼者のものを、依頼の表に書いているから、依頼の数だけ繰り返される。
だから繰り返しは、原因ではなく結果である。置き場所が違うことの、現れ方である。
本当の理由は、手間ではなく食い違い
相談では「修正のたびに全部直すのが大変」と書かれている。手間の話である。
分ける理由として、より大きいのはその先にある。
全部直そうとして、一部だけ直ることである。
連絡先が10か所に書いてあって、9か所だけ直したとする。1か所は古いまま残る。
このときどちらが正しいかは、表からは分からない。同じ依頼者に、2つの連絡先がある状態になる。
手間なら、時間をかければ済む。食い違いは、時間をかけても解けない。
分けておくと連絡先は1か所にしかないので、この状態が起こりようがない。
直すのが楽になるのは、おまけである。本当の値打ちは、食い違う場所を無くすことにある。
提案ではここを書く。手間の話だけだと、「そこまでしなくても」となる。
名前では、区別できない
分けると新しく必要になるものがある。どの依頼者かを指す方法である。
いままでは同じ行に書いてあったので、指す必要が無かった。分けた瞬間に、つなぐ手立てが要る。
ここで依頼者名で結ぶと、問題が出る。
- 同姓同名の依頼者がいると、混ざる
- 名前が変わったとき、つながりが切れる
- 書き間違い、表記ゆれで、別人になる
3つ目は実際にいちばん多い。空白の有無や、漢字の違いで、別人として扱われる。
だから依頼者に、番号を振る。依頼の表には、その番号を書く。
番号は意味を持たせないほうがよい。地区や種別を番号に埋め込むと、その人が引っ越したときに番号を変えることになる。番号が変わると、つながりが切れる。
番号は、ただの番号にしておく。意味は、列に書く。
分けすぎない
分ける基準が分かるともっと分けたくなる。そこで止まる基準も要る。
基準は一緒に変わるものは、一緒に置くである。
たとえば担当のランクは冒険者に付いているので、冒険者の表に入れる。ここまでは同じ考え方である。
ではランクの名前や、ランクごとの報酬率はどうか。これはランクに付いている情報なので、さらに分けられる。
分けるかどうかはそれが変わるかどうかで決める。
- ランクの区分が、たまに見直される——分けておくと、直すのが1か所で済む
- ずっと変わらない——分けても、つなぐ手間が増えるだけ
そして表が増えるほど、一覧を作るときにつなぐ数が増える。見るだけの運用が多いなら、そこも重さになる。
繰り返しが起きているかとそれが変わるか——両方が当てはまるときに分ける。片方だけなら、そのままでよいことが多い。
提案の例
依頼管理表の分け方(ご提案)
いまの表を、3つに分けます
列を1つずつ見て、「これは何に付いている情報か」で分けました。
表 入れる列 依頼 依頼番号、依頼内容、依頼者番号、担当冒険者番号、状態 依頼者 依頼者番号、氏名、連絡先 冒険者 冒険者番号、氏名、ランク 連絡先は、依頼者の情報です。依頼が10件あっても、連絡先は1つです。それを依頼の表に書いていたので、依頼の数だけ繰り返されていました。
いちばん大きな変化
直すのが楽になるのは、実はおまけです。
本当に変わるのは、食い違いが起きなくなることです。
いまは連絡先が10か所にあるので、9か所だけ直してしまうことが起こりえます。そうなると同じ依頼者に2つの連絡先がある状態になり、どちらが正しいかは表からは分かりません。
手間は時間をかければ済みますが、食い違いは時間をかけても解けません。
分けておくと連絡先は1か所にしかないので、この状態が起こりようがなくなります。
番号を振らせてください
表を分けると、どの依頼者かを指す方法が必要になります。
お名前では結べません。同姓同名の方がいると混ざりますし、書き間違いや表記のゆれでも別人として扱われてしまいます。
ですので依頼者と冒険者に、それぞれ番号を振ります。
この番号はただの通し番号にします。地区や種別を埋め込むと、その方の状況が変わったときに番号を変えることになり、つながりが切れてしまうためです。
いまはここまでにします
ランクの区分や報酬の決まりも、さらに別の表に分けられます。ただしいまは分けないことをご提案します。
分けるかどうかはそれが変わるかどうかで決めます。ランクの区分が見直されることが増えてきましたら、そのときに分けましょう。
表が増えるほど、一覧を作るときにつなぐ手間が増えます。必要になってからで間に合います。
移し替えについて
いまの表から3つに移すとき、同じ依頼者が別人として登録されていないかの確認が要ります。表記のゆれがあると、そこで分かれてしまいます。
この確認は、こちらで一覧をお出しします。同じ方かどうかの判断だけ、お願いできますでしょうか。
分け方の基準を、先に書いた。結果の表だけ渡すと、次に列が増えたときに判断できない。
「直すのが楽になるのはおまけ」と書いた。相談者が言った理由より、大きい理由があると示している。
番号の話を、独立させた。分けると新しく必要になるものなので、見落とされやすい。
「いまはここまで」を入れた。分けられることと、分けるべきことは違う。
最後に移し替えの確認を書いた。設計だけ渡すと、この作業が抜ける。そして判断は相手にしかできない。
作り方の手順
- 繰り返し書かれている列を探す。
- 1列ずつ「何に付いている情報か」を問う。
- まとまりを、そのまま表にする。
- 基準を先に書く。結果の表だけ渡さない。
- 手間ではなく、食い違いを理由にする。
- 一部だけ直る例を具体的に書く。
- 指す方法を用意する。
- 名前で結ばない。表記のゆれで別人になる。
- 番号に意味を持たせない。
- 分けすぎない。変わるものだけ分ける。
この場面で効いている基本情報の知識
- 表の分割——何に付いている情報かで切る
- 矛盾の防止——1か所にしかなければ、食い違わない
- 識別のための値——名前ではなく、意味を持たない番号で結ぶ
- 分けすぎ——つなぐ手間が増える。変わらないものは分けない
知識そのものより、繰り返しを「結果」として見て、置き場所の問題に戻せることが、この場面で効いている。
設計で外したくないポイント
- 繰り返しは、分けるサイン。
- 繰り返しは原因ではなく結果。置き場所が違う。
- 1列ずつ「何に付いているか」を問う。
- 本当の理由は、食い違いの防止。
- 手間は時間で済むが、食い違いは解けない。
- 分けると、指す方法が要る。
- 名前では結べない。表記のゆれで別人になる。
- 番号に意味を埋め込まない。変えることになる。
- 一緒に変わるものは、一緒に置く。
- 移し替えのときの確認まで、提案に含める。