【基本情報の実務】分岐を言葉に書き起こす──並べて書くと「選ぶ」と読まれる
時計仕掛けの城の受付担当から、フローチャートの書き起こしについて相談が届く。
「入城料の判定を、こんなフローチャートにしました。『年齢が12歳未満なら無料、そうでなければ65歳以上なら半額、どちらでもなければ通常料金』。この流れを、後から見た人が誤解しないように言葉で書き起こしてほしいのです。順番に条件が判定される点が伝わるようにお願いします。」
相談の最後に、難しさがそのまま書かれている。「順番に条件が判定される点が伝わるように」——ここが、言葉にするといちばん落ちやすいところである。基本情報の知識がここで力になるのは、なぜ落ちるのかが分かったときだ。この記事では、そこから整理する。
まず結論:並べて書くと、順番が消える
| 書き方 | 読んだ人の受け取り方 |
|---|---|
| ・12歳未満は無料 ・65歳以上は半額 ・それ以外は通常料金 | 3つを見て、当てはまるものを選ぶ |
| まず12歳未満かを見る。 違った場合に、65歳以上かを見る。 | 上から順に見て、当たったところで決まる |
上の書き方は読みやすい。そして、順番の情報が消えている。
箇条書きは並んでいるものを表す形なので、読む側は「選ぶ」と受け取る。
下の書き方には「違った場合に」が入っている。この一言で、順番が残る。
書き起こしの仕事は内容を写すことではなく、順番を残すことである。内容だけなら、箇条書きのほうが読みやすい。
順番が効くのは、いつか
ここで「この仕様なら、順番はどちらでも同じでは」と思うところがある。
実際、12歳未満と65歳以上に、両方当てはまる人はいない。どちらから見ても結果は変わらない。
それでも順番を残して書く。理由は2つある。
①重なったときに、どちらが勝つかが決まっている
いまは重ならない。重ならないことと、順番が無いことは違う。順番があるから、重なったときも結果が1つに決まる。
②あとから条件が足されたとき、自動的に決まる
これが実務では大きい。たとえば「学生は半額」が足されたとする。
12歳未満の学生は、どうなるか。順番があれば、迷わない。先に12歳未満で当たるので、無料である。
並べて書いてあるとここで話し合いが始まる。そして、人によって答えが変わる。
だからいまは重ならなくても、順番を書いておく。あとで足す人のために書いているのである。
境界の言葉を、言い換えない
書き起こしでもう1つ落ちやすいのが、境界である。
- 12歳未満——12歳は含まない(11歳まで)
- 65歳以上——65歳を含む
読みやすくしようとして「12歳までは無料」と書くと、12歳が無料に変わる。言い換えた瞬間に、境界が動いている。
同じことが「65歳を超えたら半額」でも起きる。65歳ちょうどが、半額から外れる。
だから未満・以上・以下・超えるはそのまま使う。言い換えない。
そのうえで括弧で具体的な年齢を添えると、読みやすさも保てる。「12歳未満(11歳まで)」という形である。
言い換えるのではなく、足す。これなら境界は動かない。
最後の受け皿があるか
書き起こすときにあわせて点検できることがある。どの条件にも当たらない人が、出ないかである。
この仕様には「どちらでもなければ通常料金」がある。受け皿があるので、誰かが決まらないまま残ることはない。
これが無いと、どこにも当たらない人が出たときに、何も決まらない。
そしてそういう人が出るのは、たいてい条件が足されたあとである。足すときに、受け皿のほうは意識されない。
だから書き起こしの最後に「上のどれにも当てはまらない場合」という言い方で受け皿を書いておく。
「それ以外」より、こちらのほうが強い。受け皿だと分かる書き方になっている。
書き起こしの例
入城料の判定について
判定は、上から順に行います。当てはまった時点で料金が決まり、そこから先は見ません。
1つ目の判定
年齢が12歳未満かを見ます。(12歳は含みません。11歳までです)
- 当てはまる場合 → 無料。ここで決まりです。
- 当てはまらない場合 → 2つ目の判定へ進みます
2つ目の判定
年齢が65歳以上かを見ます。(65歳を含みます)
- 当てはまる場合 → 半額。ここで決まりです。
- 当てはまらない場合 → 次へ進みます
上のどれにも当てはまらない場合
通常料金です。
読むときの注意
この3つは「当てはまるものを選ぶ」形ではありません。上から順に見て、先に当たったところで決まります。
いまは12歳未満と65歳以上が両方当てはまる方はいませんが、条件を追加したときに、この順番が効いてきます。
たとえば「学生は半額」を追加した場合、12歳未満の学生は、先に1つ目で当たるので無料です。順番があるので、迷わずに決まります。
条件を追加される方へ
新しい条件はどこに入れるかで結果が変わります。入れる位置もあわせてお決めください。
また、「上のどれにも当てはまらない場合」は、必ず最後に残してください。ここが無いと、どこにも当たらない方の料金が決まらなくなります。
いちばん上に「上から順に」を置いた。読み始める前に渡す。
各判定に「ここで決まりです」を入れた。そこから先を見ないことが伝わる。
境界は括弧で足した。言い換えていない。
「上のどれにも当てはまらない場合」という見出しにした。受け皿であることが分かる。
最後の2つの節はいま読む人ではなく、あとで直す人に向けて書いている。書き起こしが残る文書なら、そこまで書く。
作り方の手順
- 箇条書きにしない。並べると、選ぶと読まれる。
- 「上から順に」を、いちばん上に置く。
- 各判定に「ここで決まり」を入れる。
- 「当てはまらない場合は次へ」も書く。
- 境界の言葉を、そのまま使う。
- 括弧で具体例を足す。言い換えない。
- 受け皿があるかを点検する。
- 「上のどれにも当てはまらない場合」と書く。
- 順番が効く理由を、例で書く。
- あとで直す人に向けた一節を残す。
この場面で効いている基本情報の知識
- 条件分岐——上から順に評価し、当たった時点で決まる
- 条件の重なり——重ならなくても、順番は結果を決めている
- 境界値——未満・以上を言い換えると、境界が動く
- 網羅性——どれにも当たらない場合の受け皿が要る
知識そのものより、順番という情報を、言葉の中に残せることが、この場面で効いている。
書き起こしで外したくないポイント
- 並べて書くと、順番が消える。
- 箇条書きは「選ぶ」と読まれる。
- 「上から順に」を先に置く。
- 「ここで決まり」を各判定に入れる。
- 重ならなくても、順番を書く。
- 順番は、条件が足されたときに効く。
- 未満・以上を言い換えない。境界が動く。
- 括弧で足す。言い換えるのではなく。
- 受け皿を最後に残す。
- あとで直す人に向けて書く。