【基本情報の実務】アクセス権──難しいのは付けることではなく、外すこと
共有フォルダを管理する担当者から、アクセス権の相談が届く。
「複数人で使う共有フォルダがあります。『編集できる人』と『読むだけの人』を分けたいのですが、権限の設定をどう考えればよいか整理してほしいです。誰でも全部いじれる状態は避けたいと思っています」
基本情報の知識がここで力になるのは、設定する瞬間ではなく、そのあとを見たときだ。編集できる人と読むだけの人に分けるのはその日のうちに終わる。難しいのは、それを保ち続けることである。この記事では、そこから整理する。
まず結論:人ではなく、役割に付ける
| 付け方 | 人が入れ替わったとき |
|---|---|
| 人に直接付ける | 1人ずつ設定し直す/前の人の分が残る |
| 役割に付けて、人を割り当てる | 割り当てを変えるだけ |
人数が少ないうちは人に直接付けるほうが早い。3人なら、3回設定すれば終わる。
崩れるのは入れ替わったときである。新しい人に付けるのは思い出すが、前の人から外すのは、誰も言ってこない。
役割に付けておくと「この人を、この役割から外す」で済む。外し忘れが起きにくい形になる。
そして役割の名前は、仕事の名前にする。「編集できる人」ではなく「記録係」のように、誰がそこに入るべきかが分かる名前にしておく。
権限は、放っておくと増え続ける
ここがこの仕事のいちばんの難所である。
付けるのは進む。本人が「見られません」と言ってくるからである。困っている人がいるので、すぐ動く。
外すのは進まない。権限が余っていても、誰も困らないからである。言ってくる人がいない。
だから権限は、片方向にだけ動く。放っておくと、全員が全部を触れる状態に近づいていく。
これは誰かが手を抜いた結果ではない。そういう仕組みになっている。
だから外す機会を、仕組みのほうに作る。
- 入るときの手順に、出るときの手順をくっつけておく
- 半年に一度、一覧を見る日を決める
2つ目は気づいた人がやる、にしない。日付を決める。気づく機会が無いのが、この問題の本体だからである。
絞りすぎると、外に出る
「誰でも全部いじれる状態は避けたい」——ここから厳しくするほど安全という向きに進みやすい。ある所を越えると、逆になる。
編集できる人を絞りすぎると、編集する必要がある人が、編集できない状態になる。
そのとき仕事は止まらない。別の道が使われる。
- 自分の手元にコピーを作って、そちらで直す
- 権限のある人に送って、代わりに入れてもらう
- 別の場所に、新しいフォルダを作る
1つ目と3つ目がいちばん困る。管理していない場所に、同じデータが出ていくためである。
共有フォルダの権限をどれだけ厳しくしても、外に出たコピーには効かない。
だから絞る強さは、仕事の形に合わせる。編集する必要がある人には、編集できるようにしておく。
守るために厳しくしたはずが、管理の外にデータを押し出している——この形は、実際によく起きる。
疑うためではない、と説明する
権限を分けると「信用されていない」と受け取る人が出る。とくにこれまで全員が全部触れていた場合に起きる。
ここは説明の言葉で、かなり変わる。
権限を分ける理由は悪意への備えではない。手が滑ったときに、届く範囲を小さくしておくことである。
間違えて消す、間違えて上書きする——これは誰にでも起きる。起きたときに、その人の担当の外まで消えないようにしておく。
この説明だと分けられた側も納得しやすい。自分を守る話でもあるからである。
「読むだけ」の人にとっても、間違えて壊す心配が無くなる——そう書ける。
そして必要になったら足せることを添える。固定されたと思われると、そこで不満が残る。
整理の例
共有フォルダのアクセス権について(ご提案)
1. 役割で分けます
お一人ずつ設定するのではなく、役割を決めて、そこに人を割り当てる形にします。
役割 できること 主にどなたか 記録係 読む・書く・直す 資料を作成・更新される方 閲覧 読む 参照されるだけの方 管理 読む・書く・権限を変える 1〜2名 人が入れ替わったときは、割り当てを変えるだけで済みます。お一人ずつ設定し直す必要がありません。
2. なぜ分けるのか(大事なところです)
どなたかを疑うためではありません。
理由は手が滑ったときに、届く範囲を小さくしておくことです。間違えて消す・間違えて上書きするのは誰にでも起きます。
「読むだけ」の設定は、その方が間違えて壊してしまう心配が無くなるということでもあります。
必要になりましたら、あとからでも役割を変えられます。固定ではありません。
3. 編集できる方は、絞りすぎません
編集が必要な方が編集できないと、手元にコピーを作って直すといったことが起きます。
そうなると管理していない場所に、同じ資料が出ていきます。共有フォルダの設定をどれだけ厳しくしても、外に出たコピーには効きません。
編集の必要がある方には、記録係をお願いします。
4. 外す手順を、先に決めます
権限は付けるほうは進みますが、外すほうは進みません。余っていても誰も困らないので、言ってくる方がいないためです。
ですので、次の2つを決めておきます。
- 異動・退職の連絡を受けたら、その場で割り当てを外す。入るときの手続きと、同じ紙に書いておきます。
- 半年に一度、割り当ての一覧を見る日を決める。◯月と◯月にします。
2つ目は「気づいた人がやる」にしません。気づく機会が無いことが、この問題そのものだからです。
5. お願い
設定後、必要なところが開けない場合はお知らせください。絞りすぎている可能性がありますので、すぐに調整します。
2番目に「疑うためではない」を置いた。役割表のすぐあとである。表を見た直後に、そう思う人が出る。
「読むだけ」を、その人の利点として書いた。制限を、守りとして言い直している。
3番目で絞りすぎないと明記した。厳しくすることが目的ではないと伝わる。
4番目に日付を入れた。「定期的に」では実行されない。
最後に開けなかったら言ってほしいと書いた。回避される前に、こちらへ来てもらうための一文である。
作り方の手順
- 人ではなく役割に付ける。
- 役割の名前を、仕事の名前にする。
- 分ける理由を、疑いの話にしない。
- 手が滑ったときの範囲で説明する。
- 制限を、その人の守りとしても書く。
- 絞りすぎない。回避されると外に出る。
- 外す手順を、入る手順とセットにする。
- 棚卸しの日付を決める。「定期的に」では動かない。
- 変えられると添える。固定だと思わせない。
- 開けなかったら言ってほしいと書く。
この場面で効いている基本情報の知識
- 役割ごとの権限管理——人ではなく役割に付け、人を割り当てる
- 必要最小限の権限——ただし、必要な人には与える
- 棚卸し——権限は放っておくと増え続ける
- 回避の発生——絞りすぎると、管理外にデータが出る
知識そのものより、設定する日ではなく、そのあと保てるかで考えられることが、この場面で効いている。
整理で外したくないポイント
- 人ではなく役割に付ける。入れ替わりで崩れない。
- 付けるのは進み、外すのは進まない。
- 権限は片方向に増える。手抜きではなく、仕組み。
- 外す機会を、仕組みに作る。
- 棚卸しは日付を決める。「気づいた人が」にしない。
- 絞りすぎると、回避される。
- 手元のコピーには、権限が効かない。
- 疑うためではないと説明する。
- 手が滑ったときの範囲という言い方をする。
- 開けなかったら言ってほしいと書いておく。