【ITパスポートの実務】週次の進捗報告──読み手が知りたいのは「進み具合」ではない
開発チームの担当から、週次の進捗報告の書き方について相談が届く。
「新しい会員証システムを作るプロジェクトで、週に一度、関係者へ進捗を共有することになりました。ただ、どこまで進んでいて何が遅れているのか、うまく整理して書けなくて。遅れも隠さず、でも責める感じにはしたくないんです。今週分の報告文をどう組み立てたらよいでしょうか」
ITパスポートの知識がここで力になるのは、読み手が何を知りたいのかを先に決めたときだ。進捗報告は「どこまで進んだか」を書くものだと思われている。関係者が知りたいのは、そこではない。この記事では、そこから整理する。
まず結論:知りたいのは「予定日が動くか」
| 書きがちなこと | 関係者が知りたいこと |
|---|---|
| 全体の80%が完了 | 予定日は動くのか、動かないのか |
| 今週やった作業の一覧 | 自分の仕事に、いつ影響が来るか |
| 順調です/がんばっています | 今週、何を決めればよいか |
関係者はそれぞれ自分の予定を持っている。いつ何を用意すればよいかを知りたくて、報告を開く。
だから進み具合そのものは、目的ではない。そこから「自分の予定が動くか」を読み取ろうとしている。
報告の側がそこを書かないと、読み手は数字から推測することになる。推測は、たいてい外れる。
だから進捗率の代わりに、予定日の状態を書く。これが週次報告の中心である。
「80%完了」が、ほとんど何も伝えていない理由
進捗率は書きやすく、読みやすい。それでも情報として弱い。
理由は残りの20%に何が入っているか分からないことである。
作業の数で数えているのか、時間で見積もっているのかも、読み手には分からない。難しいところを最後に残していれば、残り20%に半分の時間がかかることもある。
そして先週も80%だったとき、止まっているのか、細かく進んでいるのかが読み取れない。
代わりに書くのは3つである。
- 終わったもの——これはもう動かない、と言える部分
- いま動いているもの——いつ終わる見込みか
- まだ手を付けていないもの——いつ始める予定か
工程の名前で書くと、読み手は自分に関わるところだけを探せる。数字1つでは、探しようがない。
遅れは、人ではなく工程に付ける
「責める感じにしたくない」という相談は、書き方でほぼ解決する。
遅れを、人の名前と一緒に書かない。工程の状態として書く。
「◯◯さんの作業が遅れています」ではなく「画面の設計が、予定より1週間遅れています」とする。
そして原因は書く。書かないと、読み手が原因を想像する。想像は、たいてい人に向かう。
原因も工程の言葉で書ける。「確認をお願いしていた項目の回答が、今週になった」——これは事実の記述であって、誰かの落ち度の指摘ではない。
事実を正確に書くほうが、かえって責める感じが消える。曖昧に書くと、かえって「何かあったらしい」という空気になる。
取り戻さないなら、取り戻さないと書く
ここがいちばん信用に関わるところである。
遅れを書いたあと、「来週で挽回します」と添えたくなる。そう書くと、その週は収まる。
ところが挽回できなかった場合、次の週にもっと言いにくくなる。2週分をまとめて説明することになる。
だから取り戻せる見込みがないなら、そう書く。
- 取り戻す——どうやって取り戻すかも書く(作業の順番を変える、など)
- 取り戻さない——その先の予定が何日ずれるかを書く
- まだ分からない——いつ分かるかを書く
3つ目が使えると報告が楽になる。「分からない」は、書いてよい。いつ分かるかを添えれば、それは情報になる。
そして遅れは、早く出すほど軽い。1週目に出せば手が打てるが、3週目に出ると打てる手が減っている。
だから報告する側が責められる形にすると、遅れは最後に出る。受け取る側の反応が、報告の速さを決めている。
決めてほしいことを、載せる
週次報告が読まれなくなるのは、たいてい読むだけの文書になっているときである。
読み手にすることが無いと、優先順位が下がる。
だから「今週、決めていただきたいこと」を1つの節にする。
ここに書くのは期日つきのものである。「いつまでに返事がないと、どこが動かなくなるか」まで書く。
これは催促ではない。読み手にとっても、いつ返せばよいかが分かるほうが楽である。
そしてこの節があると、遅れの原因が減る。回答待ちで止まる、がいちばん多い遅れの形だからである。
報告文の例
会員証システム 週次報告(第◯週)
予定日について
全体の予定日は、変わりません。
ただし画面の設計が1週間遅れています。この分は、次の工程の順番を入れ替えて吸収する見込みです。
工程ごとの状態
工程 状態 備考 要件の整理 完了 — 画面の設計 進行中 予定より1週間遅れ/来週中に完了見込み 作成 進行中 予定どおり 試験 未着手 ◯月◯日開始予定(変更なし) 移行 未着手 ◯月◯日開始予定(変更なし) 遅れについて
画面の設計が1週間遅れています。確認をお願いしていた項目の回答が今週になったためで、作業そのものは止まっていません。
取り戻し方:作成の一部を先に進めており、試験の開始日には影響しない見込みです。
もし来週中に設計が終わらなかった場合は、試験の開始が数日ずれます。その場合は来週の報告でお知らせします。
今週、決めていただきたいこと
- 会員証に載せる項目の最終確認(◯月◯日まで)
この日を過ぎると、印刷の手配が翌週に回ります。- 試験に参加いただく方のご指名(◯月◯日まで)
お一人でも構いません。日程の調整に入ります。来週の予定
- 画面の設計を完了
- 作成の続き
- 試験の準備(手順の作成)
お願い
気になる点があれば、この報告への返信で構いませんのでお知らせください。早い段階でうかがえると、打てる手が多く残ります。
予定日を、いちばん上に置いた。読み手が最初に知りたいことである。
工程の表に「備考」を付けた。状態だけでは、いつ動くかが分からない。
遅れは工程名で書き、原因も工程の言葉にした。人の名前が1つも出てこない。
取り戻せなかった場合も先に書いた。次の週に言いにくくならない。
決めてほしいことに、期日と、過ぎた場合を添えた。催促ではなく、判断の材料になる。
最後の「早い段階でうかがえると、打てる手が多く残ります」は、読み手にも早く言ってほしいという意味である。速さを求めるなら、こちらも同じ姿勢だと示す。
作り方の手順
- 読み手が何を知りたいかを決める。進み具合ではない。
- 予定日の状態を、いちばん上に置く。
- 進捗率をやめる。残りに何が入っているか分からない。
- 工程の名前で書く。読み手が自分の関わりを探せる。
- 終わった/動いている/未着手の3つに分ける。
- 遅れは工程に付ける。人の名前と一緒に書かない。
- 原因は書く。書かないと想像され、想像は人に向かう。
- 取り戻す/取り戻さない/まだ分からないを明示する。
- 決めてほしいことを節にする。期日と、過ぎた場合を添える。
- 早く言ってほしいと書く。こちらも早く出す姿勢を示す。
この場面で効いているITパスポートの知識
- 工程——要件・設計・作成・試験・移行に分けると、状態を書ける
- 進捗管理——率ではなく、完了したものと予定日で見る
- ステークホルダー——関係者はそれぞれ自分の予定を持っている
- 課題の早期共有——早く出すほど、打てる手が多い
知識そのものより、読み手の目的から報告の形を決められることが、この場面で効いている。
報告で外したくないポイント
- 知りたいのは予定日が動くか。進み具合ではない。
- 予定日をいちばん上に置く。
- 進捗率は情報が薄い。残りの中身が分からない。
- 工程の名前で書く。自分の関わりを探せる。
- 遅れは工程に付ける。人に付けない。
- 原因は書く。曖昧にすると、かえって空気が悪くなる。
- 取り戻さないなら、そう書く。挽回すると書いて挽回しない形を避ける。
- 「まだ分からない」は書いてよい。いつ分かるかを添える。
- 決めてほしいことを載せる。読むだけの文書にしない。
- 遅れは早いほど軽い。受け取る側の反応が、速さを決める。