【ITパスポートの実務】表計算の関数を説明する──紙と順番が逆になる、が最初のつまずき
雑貨店の事務担当から、表計算ソフトの使い方について相談が届く。
「日々の売上をマスに入力できるようにはなりました。でも、月の合計や一日あたりの平均をどう出すのか分からなくて。関数というものを使うと自動で計算できると聞いたのですが、はじめてなので手順から知りたいです。仲間にも説明できる形にしたいです」
ITパスポートの知識がここで力になるのは、はじめての人が実際に詰まる場所を先に押さえたときだ。関数の手順そのものは短い。それでも伝わらないのは、紙の計算と順番が逆になるところを飛ばすからである。この記事では、そこから整理する。
まず結論:詰まるのは、順番の逆転
| 紙の計算 | 表計算 | |
|---|---|---|
| 1番目 | 足す数字を見る | 答えを置く場所を決める |
| 2番目 | 計算する | どこを足すかを言う |
| 3番目 | 答えを書く場所を決める | 確定する |
紙では、答えを書く場所は最後である。計算してから、余白を見つけて書く。
表計算では、そこが最初になる。「どこに答えを出すか」を決めてからでないと、始まらない。
はじめての方がいちばん詰まるのがここである。足したい数字のほうを先にクリックしてしまう。
手順書に「①結果のマスを選ぶ」と書いてあっても、なぜ最初なのかが書いていないと、順番が頭に残らない。
だから説明では「紙と逆になります」を先に一言置く。これだけで、以下の手順が入る。
関数は「答え」ではなく「計算のしかた」
もう1つ、先に伝えておくと後が楽になることがある。
電卓で計算して、その数字を手で入れてもいい——最初はそう思うのが自然である。実際、答えは同じになる。
違うのはマスの中に何が入っているかである。手で入れた場合は答えそのものが入っている。関数を使った場合は「この範囲を足す」という計算のしかたが入っている。
だから元の数字を直すと、答えのほうが自動で変わる。計算のしかたが残っているので、もう一度計算し直されるのである。
ここが分かると「なぜわざわざ関数を使うのか」に答えが出る。売上は毎日足されていくので、直すたびに計算し直すのは大変だからである。
説明ではこの一言を、手順の前に置く。「便利だから使いましょう」より、納得して手が動く。
2つだけ覚える
| 関数 | 読み方 | 役割 |
|---|---|---|
| SUM | サム | 選んだ範囲の合計を出す |
| AVERAGE | アベレージ | 選んだ範囲の平均を出す |
関数はたくさんあるが、最初は2つでよい。相談で挙がっているのが、合計と平均だからである。
読み方を書いておくのは、はじめての方には効く。読めない言葉は、覚えにくいし、人に聞くこともできない。
そして使い方は2つとも同じである。名前が違うだけで、手順は変わらない——これを言っておくと、覚えることが実質1つになる。
間違えやすいところ
手順どおりにやっても、数が合わないことがある。原因はだいたい2つである。
①合計欄そのものを、範囲に入れてしまう
合計を出したマスのすぐ下や隣に、もう1つ合計を作ったときに起きる。合計を含めて合計している状態になる。
数がちょうど2倍近くになっていたら、これを疑う。
②範囲が、あとから増えた行を含んでいない
月の途中で行を足していくと、関数を入れたときの範囲のままになっていることがある。新しい行が合計に入らない。
これは気づきにくい。数は出ているし、見た目もおかしくないためである。
手当てとしては最初から、少し広めに範囲を取っておくと楽になる。空のマスは合計に影響しないので、下のほうまで含めておいて構わない。
説明にこの2つを添えておくと、詰まったときに自分で直せる。
説明文の例
合計と平均の出し方
先に、2つだけお伝えします
1つ目。紙の計算と、順番が逆になります。
紙では計算してから答えを書く場所を決めますが、表計算では答えを出す場所を、いちばん最初に決めます。足したい数字より先です。ここだけ、はじめは戸惑うところです。
2つ目。関数は「答え」ではなく「計算のしかた」を入れています。
電卓で計算して手で入れても、答えは同じです。違うのは、関数を使うと元の数字を直したときに、答えのほうが自動で変わることです。売上は毎日増えていくので、ここが効いてきます。
覚えるのは2つです
- SUM(サム)——選んだ範囲の合計を出します
- AVERAGE(アベレージ)——選んだ範囲の平均を出します
使い方は2つとも同じです。名前が違うだけなので、片方できればもう片方もできます。
手順
- 答えを出したいマスを選びます。(合計を出したい場所です)
- 「=SUM(」と入力します。
- 足したい範囲を、マウスでなぞって選びます。
- 確定します。(エンターキーを押します)
平均のときは、2番目を「=AVERAGE(」に変えるだけです。
数が合わないときは
ちょうど2倍くらいになっている場合——合計欄そのものを、範囲に含めてしまっているかもしれません。選んだ範囲に、別の合計が入っていないかご確認ください。
あとから足した行が、入っていない場合——関数を入れたときの範囲のままになっています。範囲を選び直すか、はじめから少し広めに(下の空いている行まで)取っておくと、そのまま増やしていけます。空のマスは合計に影響しません。
うまくいかないとき
間違えても元の数字は消えません。関数を入れたマスを消せば、元に戻ります。何度でも試していただけます。
分からないところがあれば、◯◯までお声がけください。
「先に、2つだけお伝えします」で始めた。手順より前に置くものがあると示している。
順番の逆転を1つ目に置いた。手順を読む前に知っていないと、意味がないためである。
読み方を書いた。読めないと、人に聞けない。
「使い方は2つとも同じ」と言った。覚えることが実質1つになる。
数が合わないときを症状から書いた。「2倍くらいになっている場合」——原因ではなく、見えているもので探せる。
最後に「元の数字は消えません」を置いた。試せるようにするのが、いちばん早い。
作り方の手順
- 詰まる場所を先に特定する。手順の長さではない。
- この案件では順番の逆転。答えの場所が最初に来る。
- それを手順より前に置く。
- なぜ関数なのかに答える。答えではなく計算のしかた。
- 覚える数を絞る。相談に出てきた2つだけ。
- 読み方を書く。読めないと人に聞けない。
- 「手順は同じ」と言う。覚えることが減る。
- 手順は番号で区切る。1つの番号に1つの動作。
- 間違えやすい2つを、症状から書く。
- 元に戻せると書く。試せるようにする。
この場面で効いているITパスポートの知識
- 関数——SUM は合計、AVERAGE は平均。範囲を指定して使う
- 再計算——元の値を直すと、結果が自動で計算し直される
- 範囲指定——含める範囲を誤ると、二重に数えたり、抜けたりする
- セル参照——マスの中に入っているのは、答えではなく計算のしかた
知識そのものより、はじめての人が詰まる場所を見つけて、そこを手順の前に置けることが、この場面で効いている。
説明で外したくないポイント
- 紙と順番が逆。答えの場所を最初に決める。
- それを手順より前に書く。あとに書くと間に合わない。
- 関数は計算のしかた。だから元を直すと答えが変わる。
- 電卓との違いで説明する。答えは同じ、残るものが違う。
- 覚えるのは2つ。相談に出てきたものだけ。
- 読み方を書く。読めない言葉は人に聞けない。
- 手順は2つとも同じ。実質1つになる。
- 2倍になったら、合計欄の二重計上を疑う。
- 広めに範囲を取ると、行が増えても大丈夫。
- 元に戻せると書く。試せることがいちばん早い。