時効の完成猶予・更新とは(全体像)
時効は、放っておけば一定期間で完成する。だが、途中で「権利を主張する動き」などがあれば、その進行に影響が出る。その影響を整理したのが、この制度だ。2020年改正で名前と仕組みが整理された。
- 完成猶予 … 一定の事由がある間(およびその後の一定期間)、時効の完成をストップする。時間切れを先に延ばすイメージ。
- 更新 … 一定の事由により、それまで進んだ時効がリセットされ、またゼロから数え直す。
旧制度との対応は、旧「中断」=新「更新」、旧「停止」=新「完成猶予」。試験では「中断」という古い用語に引っかけてくることがあるので注意する。
詳しく:事由ごとの効果をこの表で押さえる
ここが記事の心臓部。完成猶予・更新は、「用語の変更」と「事由ごとの効果(完成猶予か更新か)」が問われやすい。
主な事由と効果
| 事由 | 効果 | ポイント |
|---|---|---|
| 承認 | 更新(すぐにリセット) | 債務の承認で時効が振り出しに戻る |
| 裁判上の請求 | まず完成猶予、確定で更新 | 訴え提起で猶予、判決確定で更新 |
| 催告 | 完成猶予のみ(6か月) | 更新はしない |
| 協議を行う合意 | 完成猶予(最大1年など) | 2020年改正で新設 |
いちばん引っかかるのが催告。相手に「払ってください」と請求する催告は、完成猶予(6か月)だけで、更新はしない。「催告で時効が更新(リセット)される」と読むのは誤り。催告で6か月の猶予を得て、その間に裁判上の請求などをすれば、更新につなげられる。
一方、承認(相手が「借りているのは確かです」と認めること)は、すぐに更新(リセット)する。裁判上の請求は、まず完成猶予となり、判決が確定すれば更新する。
このように、事由によって「完成猶予だけ」「更新だけ」「両方」と効果が異なるのが、試験のポイントだ。
わかりやすく言い換えると
つまり、完成猶予は「時効の時計を一時停止する」、更新は「時計をゼロに巻き戻す」とイメージするとつかみやすい。
要するに、承認すれば時計はゼロに戻る(更新)。催告は時計を6か月止めるだけ(完成猶予)で、ゼロには戻さない。裁判上の請求は、止めて(猶予)、決着がつけば巻き戻す(更新)。
そして用語。昔の「中断」は今の「更新」、昔の「停止」は今の「完成猶予」。古い言葉で覚えていると引っかかるので、新しい言葉に置き換えておこう。
試験のツボ
🔴 一番出る:事由ごとの効果
①承認は更新(すぐにリセット)
②催告は完成猶予のみ(6か月)。更新はしない
🔴 次に出る:用語の変更
①旧「中断」=新「更新」
②旧「停止」=新「完成猶予」(「中断」という用語はもう使わない)
🟡 押さえると安定:意味の違い
①完成猶予=時効の完成を一時的に止める
②更新=時効をゼロから数え直す
よくある間違い
①「催告をすると、時効が更新(リセット)される」→ ✗ 催告は完成猶予のみ(6か月)。更新はしない。
②「時効の中断という用語が、今でも使われている」→ ✗ 2020年改正で「更新」に変わった。
③「承認をしても、時効は更新されない」→ ✗ 承認は更新(すぐにリセット)の事由。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(催告の効果)
催告の効果について、正しいものはどれか。
- 催告は完成猶予の効力をもつだけで(6か月)、それだけでは更新の効力はない
- 催告をすると、時効はただちに更新(リセット)されるものとされているのである
- 催告には、完成猶予の効力も更新の効力もいっさいないとされているのである
- 催告をすると、時効は当然に完成して権利が消えるものとされているのである
解答は 1 である。
催告は完成猶予の効力(6か月)をもつだけで、それだけでは更新の効力はないのだよ。その間に裁判上の請求などをすれば、更新につなげられる。
選択肢2「ただちに更新」、選択肢3「効力がいっさいない」、選択肢4「当然に完成して権利が消える」は、いずれも誤りであろう。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 完成猶予のみ(6か月)で正しい |
| 2 | ✗ | 催告だけでは更新しない |
| 3 | ✗ | 完成猶予の効力はある |
| 4 | ✗ | 催告で時効が完成するのではない |
オリジナル問題2(完成猶予と更新の意味)
完成猶予と更新の意味について、正しいものはどれか。
- 完成猶予は時効をゼロに戻すこと、更新は完成を一時的に止めることをいうものとされる
- 完成猶予は時効の完成を一時的に止めること、更新は時効を振り出しに戻すことをいう
- 完成猶予も更新も、どちらも時効を当然に完成させる事由だとされているのである
- 完成猶予も更新も、時効の進行にはまったく影響しないものとされているのである
解答は 2 である。
完成猶予は時効の完成を一時的に止めること、更新は時効を振り出しに戻すことをいうのだよ。
選択肢1は完成猶予と更新の意味が逆で誤り。選択肢3「どちらも時効を完成させる」、選択肢4「進行に影響しない」も誤りであろう。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 完成猶予と更新の意味が逆 |
| 2 | ✓ | 完成猶予=一時停止・更新=振り出しで正しい |
| 3 | ✗ | 時効を完成させる事由ではない |
| 4 | ✗ | 時効の進行に影響する |
オリジナル問題3(用語の変更)
2020年改正による用語の変更について、正しいものはどれか。
- 2020年改正で、完成猶予と更新という考え方は廃止されたものとされているのである
- 旧「中断」は「完成猶予」に、旧「停止」は「更新」に変わったとされているのである
- 「中断」という用語は、2020年改正後も変わらずそのまま使われ続けている
- 旧「中断」は「更新」に、旧「停止」は「完成猶予」に変わったものとされているのだ
解答は 4 である。
2020年改正で、旧「中断」は「更新」に、旧「停止」は「完成猶予」に変わったのだよ。
選択肢1「完成猶予と更新は廃止」、選択肢2は対応が逆、選択肢3「中断は今も使われる」は、いずれも誤りであろう。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 廃止ではなく再編された |
| 2 | ✗ | 対応が逆 |
| 3 | ✗ | 「中断」は使わなくなった |
| 4 | ✓ | 中断=更新・停止=完成猶予で正しい |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 事由ごとの効果 = 承認は更新、催告は完成猶予のみ(6か月)。裁判上の請求は猶予→確定で更新。
- 🔴 用語の変更 = 旧「中断」=更新/旧「停止」=完成猶予(「中断」はもう使わない)。
- 🟡 意味の違い = 完成猶予=完成を一時的に止める/更新=時効をゼロから数え直す。
次に学ぶ
- 消滅時効 ── 権利が消える時効。完成猶予・更新で進行を止める対象になる。
- 取得時効 ── 占有で権利を取得する時効。完成猶予・更新は取得時効にも関わる。
- 代理 ── 民法総則の基本制度。あわせて総則の全体像を整理できる。
執筆: SikakuQuest編集部