行政書士の実務クエスト

【行政書士の実務】在留資格を変えるには?──変更許可の要件と落とし穴を説明する

留学生を採用したいという会社から、相談が届く。

「大学を卒業する留学生を、来年4月から正社員として採用したいと考えています。在留資格を変える手続きが必要だと聞きました。何をいつまでにすればよいのでしょうか。今のうちからアルバイトで来てもらうことはできますか。」

行政書士の実務で、在留資格の手続きは専門性の高い分野だ。力になるのは、こうして「変更が許可される仕組み」と「許可の後に続く義務」を分けて示せたときである。この記事では、変更許可の要件、資格外活動、取消しの事由、そして届出までを通しで整理する。

この記事は、学習アプリ「シカクエ」の実務クエストを読み物として再構成したもの。人物・案件はすべて架空です。申請取次には届出が必要です。実際の申請は出入国在留管理庁でご確認ください。

まず結論:変更は「許可を受けられる」だけ

在留資格を有する外国人は、その者の有する在留資格……の変更……を受けることができる
2 前項の規定により在留資格の変更を受けようとする外国人は、法務省令で定める手続により、法務大臣に対し在留資格の変更を申請しなければならない。ただし、永住者の在留資格への変更を希望する場合は、第二十二条第一項の定めるところによらなければならない
3 前項の申請があつた場合には、法務大臣は、当該外国人が提出した文書により在留資格の変更を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り、これを許可することができる。ただし、短期滞在の在留資格をもつて在留する者の申請については、やむを得ない特別の事情に基づくものでなければ許可しないものとする。(出入国管理及び難民認定法20条)

3項の言葉づかいを正確に読む。「相当の理由があるときに限り」「許可することができる」だ。要件を満たせば必ず許可される、という書き方になっていない

だから相談者に「要件を満たしているので大丈夫です」とは言えない。「許可の可能性を高める材料を揃える」という形で進める。断定しないことが、この分野の基本になる。

また「当該外国人が提出した文書により」とある。審査は提出書類でされる。口頭の説明で補えるものではないので、書類の作り込みが仕事の中身になる。

2項ただし書と3項ただし書も押さえる。永住者への変更は22条1項の永住許可の手続きによるので、20条の変更申請では扱えない。短期滞在からの変更は、やむを得ない特別の事情が必要で、事実上ほとんど認められない。

「今のうちにアルバイト」への答え

別表第一の上欄の在留資格をもつて在留する者は、次項の許可を受けて行う場合を除き、次の各号に掲げる区分に応じ当該各号に掲げる活動を行つてはならない。……
2 出入国在留管理庁長官は、……当該在留資格に応じ同表の下欄に掲げる活動の遂行を阻害しない範囲内で当該活動に属しない収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行うことを希望する旨の申請があつた場合において、相当と認めるときは、これを許可することができる。この場合において、出入国在留管理庁長官は、当該許可に必要な条件を付することができる。(入管法19条1項・2項)

いわゆる資格外活動許可だ。留学の在留資格のまま働くには、この許可が要る。

内容
原則在留資格に応じた活動以外の、収入を伴う事業や報酬を受ける活動はできない(19条1項)
例外資格外活動の許可を受ければできる(19条2項)
条件本来の活動の遂行を阻害しない範囲内で。許可に条件を付けられる(同項)
取消し条件に違反した場合等は許可を取り消すことができる(19条3項)

相談者の「今のうちからアルバイトで」は、その留学生が既に資格外活動許可を受けているかを確認するところから始まる。多くの留学生は在留カードの裏面などに許可の記載があるので、実物を確認する

時間の上限も条件として付されている。会社側が上限を超えて働かせると、本人の在留に影響する。「本人が働きたいと言っている」では済まない。雇う側が管理するという理解を持ってもらう。

許可の後に続く義務

14日以内の届出

中長期在留者であつて、次の各号に掲げる在留資格をもつて本邦に在留する者は、当該各号に掲げる在留資格の区分に応じ、当該各号に定める事由が生じたときは、当該事由が生じた日から十四日以内に、法務省令で定める手続により、出入国在留管理庁長官に対し、その旨及び法務省令で定める事項を届け出なければならない。(入管法19条の16柱書)

在留資格届け出る事由
1号教授、経営・管理、法律・会計業務、医療、教育、企業内転勤、技能実習、留学、研修ほか活動を行う機関の名称・所在地の変更消滅離脱移籍
2号研究、技術・人文知識・国際業務、介護、興行、技能、特定技能ほか契約の相手方の機関の名称・所在地の変更消滅契約の終了新たな契約の締結
3号家族滞在、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等(いずれも配偶者としての身分に係るもの)配偶者との離婚または死別

1号と2号で届け出る事由の書き方が違う。1号は機関からの離脱・移籍、2号は契約の終了・新たな契約の締結だ。

採用する留学生は、卒業して「技術・人文知識・国際業務」に変わると2号に移る。入社時と退職時の両方で、本人に届出義務があることになる。

期限は14日以内と短い。入社の案内に、この届出を入れておくと本人が忘れない。会社が代わりに出すものではないが、知らせておくことはできる

取消しの事由

22条の4が、在留資格を取り消すことができる場合を並べている。実務で意識するのは次の4つだ。

事由期間
5号その在留資格に応じた活動を行っておらず、かつ、他の活動を行い又は行おうとして在留していること(正当な理由がある場合を除く)
6号その在留資格に応じた活動を継続して3月以上行わないで在留していること(正当な理由がある場合を除く)3か月
7号日本人の配偶者等・永住者の配偶者等の在留資格の者が、配偶者としての活動を継続して6月以上行わないで在留していること(正当な理由がある場合を除く)6か月
8号・9号新たに中長期在留者となった者が90日以内に住居地の届出をしないこと/届け出た住居地から退去して90日以内に新住居地の届出をしないこと(正当な理由がある場合を除く)90日

6号が実務で効く。退職して次の就職先が決まらないまま3か月が過ぎると、取消しの対象になり得る。ただし条文は正当な理由がある場合を除くとしているので、就職活動を続けている事情などがあれば別に判断される。

いずれの号にも「正当な理由がある場合を除く」が付いている。期間が過ぎたら自動的に取り消される、という条文ではない「取り消される」と脅すのではなく、「事情を説明できる状態にしておく」と伝える

許可されたときに交付されるもの

20条4項は、許可の際の措置を3つに分けている。

場合交付・記載されるもの
1号引き続き、または新たに中長期在留者に該当することとなるとき在留カードの交付
2号1号以外で、旅券を所持しているとき旅券への新たな在留資格・在留期間の記載
3号1号以外で、旅券を所持していないとき在留資格証明書の交付または記載

留学から就労系への変更は、通常1号にあたる。新しい在留カードが交付されるので、会社は入社前に実物を確認する

準備の手順——この順番で進める

  1. 本人の現在の在留資格と在留期限を確認する。在留カードの実物で。
  2. 変更後の在留資格を特定する。職務内容から、どの在留資格に当たるかを検討する。
  3. 職務内容と学歴・経歴の関連を整理するここが審査の中心になる。
  4. 会社側の資料を揃える。登記事項証明書、決算書類、事業内容の説明。
  5. 雇用契約書または内定通知書を用意する。職務内容と報酬が分かる形で。
  6. 申請の時期を決める在留期限に余裕をもって。卒業前から受け付ける取扱いがあるので、出入国在留管理局に確認する。
  7. 資格外活動が必要なら、許可の有無を確認する(19条2項)。時間の上限を会社が管理する
  8. 許可されたら在留カードを確認する(20条4項1号)。
  9. 入社後の届出を本人に案内する。14日以内(19条の16)。
  10. 退職時の届出も伝えておく。同じく14日以内。

プロならこう説明する

順にご説明します。まず、いちばん大事な点からお伝えします。

在留資格の変更は、申請すれば必ず認められるものではありません。法律には「変更を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り、許可することができる」と書かれています。

ですので私からも「大丈夫です」とは申し上げられません。許可の可能性を高める材料を、書類で揃えるという仕事になります。

審査は提出した書類で行われます。口頭でご説明を補うことができませんので、書類の作り込みがそのまま結果に効きます。

いちばん見られるのは、その方が大学で学ばれたことと、御社でお願いする仕事の内容がつながっているかです。どのような業務をお任せになるご予定でしょうか。ここを具体的にお聞きしてから、書類を組み立てます。

次に、時期のお話です。在留期限に余裕をもって申請します。卒業を控えた方については、卒業前から受け付けていただける取扱いがありますので、管轄の出入国在留管理局に確認いたします。

ご質問の「今のうちからアルバイトで」についてお答えします。留学の在留資格のまま働いていただくには、資格外活動の許可が必要です。その方が既にお持ちかどうかを、在留カードの実物で確認させてください。

1点、会社としてお気をつけいただきたいことがあります。この許可には働ける時間の上限が条件として付いています。上限を超えて働かせますと、ご本人の在留に影響が出ます。ご本人が「働きたい」とおっしゃっても、会社側で時間を管理していただく必要があります。

許可が出た後についてもお伝えします。ご本人には、入社された日から14日以内に、出入国在留管理庁へ届け出る義務があります。会社が代わりに出すものではありませんが、入社のご案内に入れておいていただくと、ご本人が忘れずに済みます。

退職されるときも同じく14日以内です。こちらもあわせてお伝えください。

最後に、知っておいていただきたいことがあります。その在留資格に応じた活動を、続けて3か月以上行わないでいると、在留資格が取り消される対象になり得ます。

ただし法律には「正当な理由がある場合を除く」と書かれていますので、次のお仕事を探していらっしゃるといった事情があれば、別に判断されます。自動的に取り消されるわけではありません。

もし途中でご退職ということになりましたら、早めにご相談ください。ご本人にとっても御社にとっても、対応の余地があるうちに動くほうが良い結果になります。

よくある質問と、その答え方

「短期滞在で来てもらって、そのまま就労に変えられますか」
ほぼできない。20条3項ただし書が短期滞在の在留資格をもつて在留する者の申請については、やむを得ない特別の事情に基づくものでなければ許可しないと定めている。「許可しないものとする」という強い書き方だ。通常は、いったん出国して在留資格認定証明書の交付を受け、査証を取得して入国する流れになる。「短期滞在で呼んでから」という段取りを組まない

「永住者に変えたいのですが、同じ申請でできますか」
できない。20条2項ただし書が永住者の在留資格への変更を希望する場合は、第二十二条第一項の定めるところによらなければならないとしている。永住許可は別の条文・別の手続きだ。要件も審査の重さも違うので、変更申請のついでに、という進め方にはならない

「住所が変わったときも14日以内ですか」
住居地の届出は別の枠組みになる。22条の4第8号・9号は90日以内に住居地の届出をしないことを取消事由として挙げている。一方、19条の16の14日以内は所属機関等に関する届出だ。期間も届出の内容も違うので混ぜない。住居地の届出は市区町村を通じて行う形になるため、引越しの手続きの中で済むことを伝える

説明で外したくないポイント

  1. 「相当の理由があるときに限り、許可することができる」:断定しない(20条3項)。
  2. 審査は提出した文書による:書類の作り込みが仕事の中身(同項)。
  3. 短期滞在からの変更は「やむを得ない特別の事情」(20条3項ただし書)。
  4. 永住者への変更は22条1項による(20条2項ただし書)。
  5. 資格外活動は許可制で、条件が付く:会社が時間を管理する(19条2項)。
  6. 所属機関等の届出は14日以内(19条の16)。入社時と退職時の両方。
  7. 3か月・6か月・90日で取消事由が動く。ただしいずれも「正当な理由がある場合を除く」(22条の4)。

根拠条文のまとめ

条文見出しこの記事で使った内容
入管法19条1項活動の範囲在留資格に応じた活動以外の、収入を伴う事業や報酬を受ける活動の禁止
入管法19条2項・3項同上資格外活動の許可。本来の活動の遂行を阻害しない範囲内。条件を付せる。条件違反等で取消しができる
入管法19条の16所属機関等に関する届出事由が生じた日から14日以内。1号は機関からの離脱・移籍、2号は契約の終了・新たな契約の締結、3号は配偶者との離婚・死別
入管法20条1項・2項在留資格の変更変更を受けることができる。永住者への変更は22条1項による
入管法20条3項同上提出した文書により相当の理由があるときに限り許可できる。短期滞在からはやむを得ない特別の事情が必要
入管法20条4項同上中長期在留者には在留カード、旅券所持者には旅券への記載、非所持者には在留資格証明書
入管法22条の4在留資格の取消し5号(活動を行わず他の活動)、6号(継続3月以上)、7号(配偶者としての活動を継続6月以上行わない)、8号・9号(住居地の届出を90日以内にしない)。いずれも正当な理由がある場合を除く
条文の記述は執筆時点のもの。在留資格の要件や必要書類は改正・運用の変更があるため、実務では出入国在留管理庁の最新の案内でご確認ください。

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