【行政書士の実務】農地転用の申請、どう進める?──5条許可の手順と壁を説明する
倉庫を建てたいという会社から、相談が届く。
「地主さんから畑を買って、倉庫を建てたいと考えています。農地転用の許可が要ると聞きました。申請してから許可が下りるまで、どのくらいかかるものでしょうか。工事の日程を組みたいのですが。」
行政書士の実務で、農地転用の申請は日程の読みが問われる。力になるのは、こうして「申請から許可まで」ではなく「その前にすることがある」を示せたときである。この記事では、申請の経路、審査で見られること、先に片づける課題、そして日程の組み方までを通しで整理する。
まず結論:申請の前に、確認することが3つある
相談者は「申請してから許可まで」を聞いているが、申請にたどり着けるかどうかが先に決まる。
| 順 | 確認すること | 結果 |
|---|---|---|
| 1 | 市街化区域内か | 市街化区域なら届出で足りる(農地法5条1項6号) |
| 2 | 農用地区域内か | 農用地区域内なら原則として許可できない(4条6項1号イ)。除外が先になる |
| 3 | 農地の区分 | 良好な営農条件を備えている農地なら、原則として許可できない(同号ロ) |
2番目に当たると、日程が数か月から1年以上変わる。「申請から何か月」という質問に、いきなり答えない。
まず対象地がどの区分にあるかを農業委員会で確認する。ここが決まって初めて、日程が読める。
申請は農業委員会を経由する
農地を農地以外のものにするため……これらの土地について第三条第一項本文に掲げる権利を設定し、又は移転する場合には、当事者が都道府県知事等の許可を受けなければならない。(農地法5条1項本文)
5条3項が4条2項から5項までを準用しているので、手続きは4条の規定による。
前項の許可を受けようとする者は、……申請書を、農業委員会を経由して、都道府県知事等に提出しなければならない。
3 農業委員会は、前項の規定により申請書の提出があつたときは、農林水産省令で定める期間内に、当該申請書に意見を付して、都道府県知事等に送付しなければならない。(農地法4条2項・3項、5条3項により準用)
ここが日程の読みに効く。申請書は農業委員会に出すが、許可を出すのは都道府県知事等だ。2つの機関を経由する。
そして農業委員会は意見を付して送付する。この意見は、多くの市町村で月1回の総会で決まる。締切を1日過ぎると、次の総会まで1か月ずれることになる。
だから相談では「その市町村の締切日はいつか」を先に確認する。逆算して書類を揃えるのが実務の中心になる。
30アールを超えると、もう1段増える
農業委員会は、前項の規定により意見を述べようとするとき(同項の申請書が同一の事業の目的に供するため三十アールを超える農地を農地以外のものにする行為に係るものであるときに限る。)は、あらかじめ、……都道府県機構……の意見を聴かなければならない。ただし、同法第四十二条第一項の規定による都道府県知事の指定がされていない場合は、この限りでない。(農地法4条4項、5条3項により準用)
| 面積 | 手続き |
|---|---|
| 30アール以下 | 農業委員会が意見を付して送付 |
| 30アールを超える | 農業委員会はあらかじめ都道府県機構の意見を聴く |
条文は「同一の事業の目的に供するため」としている。1筆ごとではなく、その事業のために転用する農地の合計で見る。複数の筆を分けて申請すれば30アール以下、という組み立てにはならない。
5項では、4項の場合のほか、農業委員会が必要と認めるときも都道府県機構の意見を聴くことができるとされている。30アール以下でも意見を聴かれることがある。
審査で見られること
4条6項(5条2項も同じ構造)が、許可できない場合を並べている。実務で説明の中心になるのは次の2つだ。
立地基準——農地の区分
| 号 | 農地 | 扱い |
|---|---|---|
| 1号イ | 農用地区域内にある農地 | 原則として許可できない |
| 1号ロ | 集団的に存在する農地その他の良好な営農条件を備えている農地として政令で定めるもの | 原則として許可できない |
| 2号 | 1号イ・ロ以外の農地 | 周辺の他の土地で目的を達成できるときは許可できない |
1号ロにはかっこ書がある。市街化調整区域内にある政令で定める農地以外の農地については、市街地の区域内または市街地化の傾向が著しい区域内にある農地、それに近接する区域その他市街地化が見込まれる区域内にある農地を除くとされている。街に近い農地は、良好な営農条件の枠から外れるという設計だ。
一般基準——確実性と支障
| 号 | 許可できない場合 |
|---|---|
| 3号 | 資力及び信用が認められない、妨げとなる権利を有する者の同意を得ていないその他省令で定める事由により、申請に係る農地の全てを当該用途に供することが確実と認められない場合 |
| 4号 | 土砂の流出又は崩壊その他の災害を発生させるおそれ、農業用用排水施設の機能への支障、その他周辺の農地に係る営農条件に支障を生ずるおそれがある場合 |
| 5号 | 農地の利用の集積に支障を及ぼすおそれがある場合その他政令で定める場合 |
| 6号 | 一時的な利用のための転用で、その後に耕作の目的に供されることが確実と認められないとき |
3号が実務で最も重い。「確実と認められない場合」は許可できないという書き方になっている。
だから申請では確実性を示す資料を揃える。事業計画書、資金の裏づけ(残高証明や融資の証明)、建物の配置図、工事の日程。「建てるつもりです」では足りない。
そして妨げとなる権利を有する者の同意も条文に挙がっている。その農地に賃借権や抵当権が設定されていれば、その者の同意が要る。登記事項証明書を先に取る。
4号の農業用用排水施設の機能も落とせない。用水路や排水路との関係を、図面で示す。周辺の農家からの同意を求められることもある。
農用地区域内だった場合
2番目の確認で農用地区域内だと分かったら、除外の手続きが先になる。
前項の規定による農業振興地域整備計画の変更のうち、農用地等以外の用途に供することを目的として農用地区域内の土地を農用地区域から除外するために行う農用地区域の変更は、次に掲げる要件の全てを満たす場合に限り、することができる。
一 ……農用地区域以外の区域内の土地をもつて代えることが困難であると認められること。
二 当該変更により、農用地区域内における地域計画の達成に支障を及ぼすおそれがないと認められること。
三 ……農用地の集団化、農作業の効率化その他土地の農業上の効率的かつ総合的な利用に支障を及ぼすおそれがないと認められること。
四 ……効率的かつ安定的な農業経営を営む者に対する農用地の利用の集積に支障を及ぼすおそれがないと認められること。
五 ……第三条第三号の施設の有する機能に支障を及ぼすおそれがないと認められること。
六 ……農業に関する公共投資により得られる効用の確保を図る観点から政令で定める基準に適合していること。(農業振興地域の整備に関する法律13条2項)
「次に掲げる要件の全てを満たす場合に限り」だ。6つすべてを満たす必要がある。
1号がとくに重い。農用地区域以外の土地をもって代えることが困難であることを示す。「他に候補地がないこと」を説明することになる。「ここが安かったから」では通らない。
6号のかっこ書も見る。農業に関する公共投資を受けた土地には、追加の基準がかかる。圃場整備をした土地は、一定の期間が経過していないと除外できないという運用につながる。
そして手続きの重さがある。除外は農業振興地域整備計画の変更なので、市町村の計画の見直しに乗せることになる。受付が年に1回か2回という市町村が多い。ここに当たると、日程が年単位で変わる。
許可の後にもかかる条件
第一項の許可は、申請に係る農地を農地以外のものにする行為が完了するまでの間において当該行為の実施状況について農業委員会を経由して都道府県知事等に報告することその他の必要な条件を付けてしなければならない。(農地法4条7項、5条3項により準用)
「付けてしなければならない」だ。条件が付くことが前提になっている。
だから許可が下りたら終わりではない。工事の進捗を報告する義務が続く。相談の段階で、この報告まで含めて段取りを伝える。
違反した場合の処分もある。都道府県知事等は、4条1項・5条1項に違反した者やその一般承継人に対し、許可の取消し、条件の変更、工事その他の行為の停止、相当の期限を定めた原状回復その他の是正措置を命ずることができる(51条1項)。
日程の組み方——この順番で確認する
- 登記簿と現況を照らす。農地法の「農地」は耕作の目的に供される土地という現況で判断される(2条1項)。
- 市街化区域かを確認する。市街化区域なら届出で足りる(5条1項6号)。ここで終わる可能性がある。
- 農用地区域かを農業委員会で確認する。該当すれば除外が先(農振法13条2項)。受付の回数を確認する。
- 農地の区分を確認する(4条6項1号ロ)。
- 面積を合計する。同一の事業の目的に供するため30アールを超えるか(4条4項)。
- 農業委員会の締切日と総会の日を確認する。ここから逆算する。
- 確実性の資料を揃える。事業計画、資金の裏づけ、配置図、工事日程(4条6項3号)。
- 権利者の同意を取る。登記事項証明書で確認した権利者から(同号)。
- 排水の計画を作る(同項4号)。
- 申請する。農業委員会を経由(4条2項)。
- 許可後の報告の段取りを決める(4条7項)。
プロならこう説明する
日程のご質問にお答えする前に、先に確認させていただきたいことが3つあります。ここで日程が大きく変わります。
1つめは、その畑が市街化区域の中にあるかどうかです。市街化区域でしたら、許可ではなく届出で足ります。手続きはずっと軽くなります。
2つめが、農用地区域という区域に入っていないかです。ここがいちばん重要です。
農用地区域内の農地は、法律上、原則として転用の許可が出ません。転用するには、その前に農用地区域から外す手続きが要ります。
この手続きは、市町村の農業振興地域整備計画という計画の変更にあたりまして、受付が年に1回か2回という市町村が多いです。ここに当たりますと、日程は月単位ではなく年単位になります。
3つめが、農地の区分です。まとまった良好な農地は、これも原則として許可が出ません。
ですので、まず農業委員会でこの3つを確認するところから始めさせてください。ここが分かって初めて、日程をお出しできます。
そのうえで、申請の流れをご説明します。申請書は農業委員会に出しますが、許可を出すのは知事です。農業委員会が意見を付けて知事に送る、という流れになります。
この農業委員会の意見が、多くの市町村で月1回の総会で決まります。締切を1日過ぎると、次の総会まで1か月ずれます。まず締切日を確認して、そこから逆算しましょう。
面積についても確認させてください。同じ事業のために転用する農地が合計30アールを超えますと、農業委員会が都道府県の機構の意見を聴く手続きが加わり、その分お時間がかかります。筆を分けて申請しても、合計で見られます。
ご準備いただく資料についてもお伝えします。法律には、資力や信用が認められないなど、その土地の全部を予定の用途に使うことが確実と認められない場合は許可できないと書かれています。
ですので、倉庫の配置図、工事の日程、資金の裏づけをご用意ください。「建てるつもりです」というご説明だけでは通りません。
あわせて、その畑に賃借権や抵当権が付いていないかも確認します。付いている場合、その方の同意が必要になります。登記を先に取り寄せます。
最後に、許可が出た後のこともお伝えしておきます。許可には条件が付きます。法律上、条件を付けて許可しなければならないとされています。工事が終わるまでの間、進み具合を報告していただく形になります。許可が出たら終わり、ではありません。
まず農業委員会へ、区域の確認に行ってまいります。数日いただければ、日程の目安をお出しできます。
よくある質問と、その答え方
「筆を分けて申請すれば30アール以下になりますか」
ならない。農地法4条4項は「同一の事業の目的に供するため三十アールを超える農地を農地以外のものにする行為」としている。1筆ごとではなく、その事業のために転用する農地の合計で判断される。分けて申請しても、同一の事業であれば合計で見られる。「分ければ手続きが軽くなる」という組み立てにはならない。
「農用地区域から外すのに、どのくらいかかりますか」
市町村による。除外は農業振興地域整備計画の変更にあたるため(農振法13条2項)、市町村が計画の見直しを行う時期に合わせることになる。受付が年1回か2回の市町村が多い。しかも同項は6つの要件のすべてを満たす場合に限りとしており、外せるとは限らない。期間だけでなく、外せるかどうかから確認する。
「許可が出たら、あとは工事するだけですか」
そうではない。農地法4条7項(5条3項で準用)は、行為が完了するまでの間において当該行為の実施状況について農業委員会を経由して都道府県知事等に報告することその他の必要な条件を「付けてしなければならない」としている。条件が付くことが前提の書き方だ。報告の時期と方法を、許可証を受け取った時点で確認する。
説明で外したくないポイント
- 申請の前に3つ確認する:市街化区域か、農用地区域か、農地の区分。
- 市街化区域内なら届出で足りる(5条1項6号)。
- 申請は農業委員会を経由し、許可は知事等(4条2項・3項)。総会の締切から逆算する。
- 30アール超は都道府県機構の意見:合計で見る(4条4項)。
- 確実と認められない場合は許可できない:資力・信用・権利者の同意(4条6項3号)。
- 農用地区域内なら除外が先:6要件すべてを満たす場合に限る(農振法13条2項)。
- 許可には条件が付く:完了までの報告義務(4条7項)。
根拠条文のまとめ
| 条文 | 見出し | この記事で使った内容 |
|---|---|---|
| 農地法2条1項 | 定義 | 農地とは耕作の目的に供される土地 |
| 農地法4条2項・3項 | 農地の転用の制限 | 申請書は農業委員会を経由して都道府県知事等へ。農業委員会は意見を付して送付する |
| 農地法4条4項・5項 | 同上 | 同一の事業の目的に供するため30アールを超えるときは都道府県機構の意見を聴く。必要があるときも聴くことができる |
| 農地法4条6項 | 同上 | 1号(農用地区域内・良好な営農条件)/2号(他の土地で目的を達成できるとき)/3号(確実と認められない場合)/4号(災害・用排水施設等への支障)/6号(一時転用後の耕作の確実性) |
| 農地法4条7項 | 同上 | 完了までの実施状況の報告その他の条件を付けてしなければならない |
| 農地法5条1項 | 転用のための権利移動の制限 | 転用目的の権利設定・移転は都道府県知事等の許可。6号で市街化区域内の届出 |
| 農地法5条3項 | 同上 | 3条6項・4条2項〜5項・7項を準用 |
| 農地法51条1項 | 違反転用に対する処分 | 許可の取消し・工事停止・原状回復等の措置命令 |
| 農振法13条2項 | 農業振興地域整備計画の変更 | 農用地区域からの除外は6つの要件の全てを満たす場合に限る |