【行政書士の実務】飲食店を開くには?──営業許可と届出の分かれ目を説明する
飲食店を開こうとしている方から、相談が届く。
「小さなカフェを開きたいと思っています。保健所の許可が要ると聞きましたが、何をどう準備すればよいのでしょうか。物件はこれから探すところです。焼き菓子も店頭で売りたいと考えています。」
行政書士の実務で、飲食店の営業許可は相談の多い分野だ。力になるのは、こうして「物件を決める前に確認すること」を示せたときである。この記事では、許可と届出の分かれ目、施設基準がどこで決まるか、欠格事由、そして物件選びの順番までを通しで整理する。
まず結論:許可が要る業種と、届出で足りる業種がある
前条に規定する営業を営もうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。(食品衛生法55条1項)
「前条に規定する営業」は54条にある。
都道府県は、公衆衛生に与える影響が著しい営業(食鳥処理の事業を除く。)であつて、政令で定めるものの施設につき、厚生労働省令で定める基準を参酌して、条例で、公衆衛生の見地から必要な基準を定めなければならない。(食品衛生法54条)
その政令が業種を指定している。
法第五十四条の規定により都道府県が施設についての基準を定めるべき営業は、次のとおりとする。
一 飲食店営業
二 調理の機能を有する自動販売機……により食品を調理し、調理された食品を販売する営業
三 食肉販売業(食肉を専ら容器包装に入れられた状態で仕入れ、そのままの状態で販売する営業を除く。)……(食品衛生法施行令35条)
一方、これに当たらない営業は届出になる。
営業(第五十四条に規定する営業、公衆衛生に与える影響が少ない営業で政令で定めるもの及び食鳥処理の事業を除く。)を営もうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、その営業所の名称及び所在地その他厚生労働省令で定める事項を都道府県知事に届け出なければならない。(食品衛生法57条1項)
| 手続き | 根拠 | |
|---|---|---|
| 令35条が指定する業種(飲食店営業など) | 許可 | 法55条1項 |
| それ以外の営業(公衆衛生への影響が少ないものとして政令で定めるものを除く) | 届出 | 法57条1項 |
相談者の「焼き菓子も店頭で売りたい」に対しては、1つの店舗で複数の営業に当たることがあると伝える。店内で提供するのは飲食店営業だが、製造した菓子を包装して販売する形は別の業種にあたる可能性がある。
どこで線が引かれるかは、設備を分けるか、どういう形で売るかで変わる。物件を決める前に、営業の形を具体的にして保健所へ相談するのが確実になる。
施設基準は条例で決まる
54条をもう一度読む。都道府県が、厚生労働省令で定める基準を参酌して、条例で定めるという構造だ。
ここが実務でいちばん重要になる。施設の基準は、全国一律ではない。国の省令は参酌すべき基準であって、実際に適用されるのはその都道府県の条例だ。
だから「一般的にはこうです」という説明で物件を決めない。手洗い設備の位置、シンクの数、客席と調理場の区画。管轄の保健所の基準で確認する。
とくに他県で開業した経験がある方の相談では、前の県の基準で考えていることがある。県が変われば基準が変わると先に伝える。
許可の判断も条文にある。
前項の場合において、都道府県知事は、その営業の施設が前条の規定による基準に合うと認めるときは、許可をしなければならない。(食品衛生法55条2項本文)
「許可をしなければならない」だ。基準に合っていれば、許可される。裁量で断られる仕組みではない。相談者に見通しを渡せる点になる。
許可を与えないことができる3つの場合
ただし、同条に規定する営業を営もうとする者が次の各号のいずれかに該当するときは、同項の許可を与えないことができる。
一 この法律又はこの法律に基づく処分に違反して刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して二年を経過しない者
二 第五十九条から第六十一条までの規定により許可を取り消され、その取消しの日から起算して二年を経過しない者
三 法人であつて、その業務を行う役員のうちに前二号のいずれかに該当する者があるもの(食品衛生法55条2項ただし書)
| 号 | 内容 | 期間 |
|---|---|---|
| 1号 | 食品衛生法違反で刑に処せられた | 執行終了等から2年 |
| 2号 | 許可を取り消された | 取消しの日から2年 |
| 3号 | 法人の役員に1号・2号該当者がいる | — |
3号は法人で申請する場合、役員全員を確認することを意味する。申請者本人だけを見て終わらない。
なお条文は「与えないことができる」で、絶対的な欠格ではない。2項本文の「許可をしなければならない」との対比で読む。
有効期間は5年を下らない
都道府県知事は、第一項の許可に五年を下らない有効期間その他の必要な条件を付けることができる。(食品衛生法55条3項)
「5年を下らない」だ。5年以上という意味で、5年ちょうどとは限らない。実際の期間は許可証に記載されるので、そこで確認する。
更新を忘れると営業できなくなるので、許可を取った時点で期限をカレンダーに置くところまで案内する。
営業を譲り受けたときは承継できる
前条第一項の許可を受けた者……が当該営業を譲渡し、又は許可営業者について相続、合併若しくは分割……があつたときは、当該営業を譲り受けた者又は相続人……、合併後存続する法人若しくは合併により設立された法人若しくは分割により当該営業を承継した法人は、許可営業者の地位を承継する。
2 前項の規定により許可営業者の地位を承継した者は、遅滞なく、その事実を証する書面を添えて、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。(食品衛生法56条)
居抜きで店舗を引き継ぐ場合に効く条文だ。営業の譲渡であれば、許可を取り直さずに地位を承継できる。
ただし「営業を譲渡し」であって、物件だけを借り換える場合は当たらない。前の店が撤退した後の空き店舗に入るのは、営業の譲渡ではない。新規で許可を取ることになる。
相談では「居抜きだから許可も引き継げますか」と聞かれる。営業そのものを譲り受ける契約になっているかを確認してから答える。
承継した場合も遅滞なく届け出る義務がある(56条2項)。手続きが不要になるわけではない。
届出営業についても、56条が準用される(57条2項)。
衛生管理の義務
厚生労働大臣は、営業……の施設の衛生的な管理その他公衆衛生上必要な措置……について、厚生労働省令で、次に掲げる事項に関する基準を定めるものとする。
一 施設の内外の清潔保持、ねずみ及び昆虫の駆除その他一般的な衛生管理に関すること。
二 食品衛生上の危害の発生を防止するために特に重要な工程を管理するための取組(小規模な営業者……その他の政令で定める営業者にあつては、その取り扱う食品の特性に応じた取組)に関すること。
2 営業者は、前項の規定により定められた基準に従い、……公衆衛生上必要な措置を定め、これを遵守しなければならない。(食品衛生法51条1項・2項)
2号が危害要因の管理に基づく衛生管理を求めている部分だ。ここに小規模な営業者等への配慮がかっこ書で置かれている。
その範囲は政令にある。
法第五十一条第一項第二号の政令で定める営業者は、次のとおりとする。
……二 飲食店営業(食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業をいう。)……を行う者その他の食品を調理する営業者であつて厚生労働省令で定めるもの……(食品衛生法施行令34条の2)
飲食店営業は、この「取り扱う食品の特性に応じた取組」の側に位置づけられている。大規模な工場と同じ管理を求められるわけではないが、衛生管理の計画を作って守る義務はある(51条2項)。「小さい店だから何もしなくてよい」ではないと伝える。
都道府県知事等は、この基準に反しない限り、条例で必要な規定を定めることができる(51条3項)。ここでも地域差が出る。
申請書に書くこと
省令が申請書の記載事項を定めている(食品衛生法施行規則67条)。
| 号 | 記載事項 |
|---|---|
| 1号 | 申請者の氏名・生年月日・住所(法人は名称・所在地・代表者の氏名) |
| 2号 | 施設の所在地および名称、屋号または商号 |
| 3号 | 申請する営業の種類、形態および主として取り扱う食品または添加物に関する情報 |
| 4号 | 食品衛生管理者または食品衛生責任者の氏名、資格の種類および受講した講習会 |
| 5号 | 施設の構造及び設備を示す図面ほか |
4号があるので、申請の時点で食品衛生責任者が決まっていないと出せない。資格の種類か、受講した講習会を書く欄がある。
調理師や栄養士などの資格があればそれで足りるが、なければ講習会を受けることになる。講習会は毎日開かれているものではないので、開業日から逆算して早めに予約する。ここで開業が遅れる相談は多い。
5号の図面も、物件を決めてからでないと作れない。物件の契約→図面→事前相談→申請→検査→許可という順序になるため、契約前に保健所へ図面案を持ち込むのが安全になる。
準備の手順——この順番で進める
- 営業の形を具体的にする。店内飲食だけか、持ち帰りや製造販売もあるか。業種が複数にまたがるかを確認する。
- 管轄の保健所を確認し、施設基準を取り寄せる。条例で決まるので都道府県ごとに違う(法54条)。
- 食品衛生責任者を決める。資格がなければ講習会を予約する(規則67条4号)。
- 物件を探す。契約する前に、間取り図を持って保健所へ事前相談する。
- 欠格事由を確認する。法人なら役員全員(法55条2項ただし書3号)。
- 図面を作る(規則67条5号)。
- 申請する。工事の完了前に出せる取扱いがあるので、保健所に確認する。
- 施設検査を受ける。基準に合っていれば許可される(法55条2項本文)。
- 許可証の有効期間を確認する。5年を下らない期間(法55条3項)。更新の時期を控える。
- 衛生管理の計画を作る(法51条2項)。
プロならこう説明する
順にご説明します。いちばん大事なことを先に申し上げます。物件をご契約になる前に、保健所へご相談ください。
理由は2つあります。1つは、施設の基準が都道府県の条例で決まっているためです。手洗いの設備をどこに置くか、シンクをいくつ設けるか、調理場と客席をどう区切るか。これらは全国一律ではありません。
もう1つは、基準に合わない物件を契約してしまうと、工事で直すことになるためです。改装費が想定を大きく超えることがあります。間取り図を持って事前にご相談いただければ、その場で分かります。
手続きの見通しもお伝えします。施設が基準に合っていれば、許可は出ます。法律に「基準に合うと認めるときは、許可をしなければならない」と書かれています。役所の裁量で断られる仕組みではありません。
ですので、準備の中心は施設づくりになります。
あわせて、早めに動いていただきたいことが1つあります。食品衛生責任者です。申請書にお名前と資格を書く欄がありますので、決まっていないと申請できません。
調理師や栄養士の資格をお持ちでしたらそれで足ります。お持ちでなければ講習会を受けていただきます。講習会は毎日開かれているわけではありませんので、開業のご予定から逆算して、早めにお申し込みください。ここで開業が遅れるご相談が多くあります。
焼き菓子の販売についてもお答えします。店内でお出しするのと、包装してお売りになるのとで、営業の種類が変わることがあります。1つのお店で複数の業種にまたがる形です。
どこで線が引かれるかは、設備をどう分けるか、どういう形でお売りになるかで変わります。お考えの形を具体的にしてから、保健所へ一緒に確認しにまいりましょう。
許可が出た後についても、2つお伝えします。
1つは有効期間です。法律では「5年を下らない期間」とされていて、実際の期間は許可証に書かれます。更新をお忘れになると営業できなくなりますので、許可証を受け取られた時点で、期限を控えておいてください。
もう1つが衛生管理です。営業者には、決められた基準に従って衛生管理の内容を定め、それを守る義務があります。飲食店についてはお取り扱いになる食品の特性に応じた取組でよいことになっていて、大きな工場と同じことを求められるわけではありません。ただ、何もしなくてよいわけでもありません。様式をご用意しますので、一緒に作りましょう。
よくある質問と、その答え方
「居抜きなので、前の店の許可を引き継げますか」
営業を譲り受けたのであれば、56条1項により許可営業者の地位を承継できる。ただし条文は「当該営業を譲渡し」としているので、物件だけを借り換える場合は当たらない。前の店が撤退した後に入るなら、営業の譲渡ではないので新規の許可になる。契約書が営業譲渡になっているかを確認してから答える。承継の場合も遅滞なく届け出る必要がある(56条2項)。
「他県で店をやっていたので、基準は分かっています」
確認が要る。54条は都道府県が、厚生労働省令で定める基準を参酌して、条例で定めると規定している。国の省令は参酌すべき基準であって、適用されるのは条例だ。県が変われば基準が変わる。前の県の感覚で物件を決めると、改装が必要になることがある。「経験があるからこそ、今回の条例で確認しましょう」という形で伝える。
「法人で申請します。私に前科はありません」
本人だけでは足りない。55条2項ただし書3号が法人であつて、その業務を行う役員のうちに前二号のいずれかに該当する者があるものを挙げている。役員全員について確認することになる。1号・2号はいずれも2年の期間が定められているので、該当する役員がいる場合はいつ2年が経過するかを計算する。役員構成を変えるという選択肢もある。
説明で外したくないポイント
- 許可が要る業種は令35条が指定:それ以外は届出(法55条1項、57条1項)。
- 施設基準は条例で決まる:全国一律ではない(法54条)。
- 基準に合えば「許可をしなければならない」(法55条2項本文)。
- 欠格は2年。法人は役員全員を確認(法55条2項ただし書)。
- 有効期間は5年を下らない:許可証で確認する(法55条3項)。
- 営業の譲渡なら地位を承継できる:物件だけの借り換えは別(法56条)。
- 食品衛生責任者は申請書の記載事項:講習会の予約を早めに(規則67条4号)。
- 物件契約の前に保健所へ事前相談。
根拠条文のまとめ
| 条文 | 見出し | この記事で使った内容 |
|---|---|---|
| 食品衛生法51条 | — | 一般的な衛生管理と、重要な工程の管理。小規模な営業者等は取り扱う食品の特性に応じた取組。営業者は措置を定めて遵守する |
| 食品衛生法54条 | — | 都道府県は、政令で定める営業の施設につき、省令の基準を参酌して条例で基準を定める |
| 食品衛生法55条1項 | — | 都道府県知事の許可を受けなければならない |
| 食品衛生法55条2項 | — | 基準に合うと認めるときは許可をしなければならない。ただし1号〜3号に該当するときは許可を与えないことができる |
| 食品衛生法55条3項 | — | 5年を下らない有効期間その他の条件を付けることができる |
| 食品衛生法56条 | — | 営業の譲渡・相続・合併・分割による地位の承継。遅滞なく届け出る |
| 食品衛生法57条 | — | 54条に規定する営業等を除く営業は、あらかじめ届け出る。56条を準用 |
| 食品衛生法施行令34条の2 | 小規模な営業者等 | 飲食店営業その他の食品を調理する営業者を含む |
| 食品衛生法施行令35条 | 営業の指定 | 飲食店営業、調理機能を有する自動販売機による営業、食肉販売業ほか |
| 食品衛生法施行規則67条 | — | 申請書の記載事項。食品衛生管理者または食品衛生責任者の氏名・資格の種類・受講した講習会、施設の図面ほか |