TL;DR(30秒で結論)
- 短期退職手当等とは、勤続年数5年以下の人に支払われる退職手当等のことである(役員等を除く)。
- 令和4年(2022年)1月1日以後に支払うべき退職手当等から適用される。
- 退職所得控除を引いた残額のうち、300万円を超える部分には2分の1課税が使えない。
- 300万円以下の部分は、これまでどおり2分の1を掛ける。
- 役員等で勤続年数5年以下の場合(特定役員退職手当等)は、300万円の枠もなく全額が退職所得になる。
- 退職所得控除額は、20年以下は40万円×勤続年数(最低80万円)、20年超は800万円+70万円×(勤続年数−20年)。
短期退職手当等とは(全体像)
退職金は、退職所得として他の所得と分けて課税される。計算は次の形である。
(収入金額 − 退職所得控除額)× 2分の1
この「2分の1」が退職金の税の軽さを支えている。ところが、短い期間だけ勤めて多額の退職金を受け取る形が問題になり、勤続年数5年以下の場合に制限が入った。
これが短期退職手当等である。令和4年1月1日以後に支払うべき退職手当等から適用される。
詳しく:300万円で線が引かれる
数字が2つ出てくるので、どこで線が引かれるかを押さえるのがこの論点の要である。
短期退職手当等のキホン
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象になる人 | 勤続年数5年以下(役員等以外) |
| 適用時期 | 令和4年1月1日以後に支払うべき退職手当等 |
| 300万円以下の部分 | 2分の1を掛ける(これまでどおり) |
| 300万円を超える部分 | 2分の1課税が使えない(そのまま退職所得になる) |
| 役員等で5年以下 | 特定役員退職手当等。300万円の枠もなく全額 |
| 退職所得控除(20年以下) | 40万円×勤続年数(最低80万円) |
| 退職所得控除(20年超) | 800万円+70万円×(勤続年数−20年) |
つまり、5年以下かどうかで入口が決まり、300万円を超えるかどうかで2分の1が使えるかが決まる。
わかりやすく言い換えると
要するに、「短く勤めて多くもらう形」に上限を付けた改正である。
勤続5年以下でも、退職所得控除を引いた残りが300万円までなら、これまでどおり2分の1になる。300万円を超えた部分だけが、2分の1なしで課税される。
役員等の場合はもっと厳しく、300万円の枠そのものがない。控除を引いた残りが、そのまま退職所得になる。
試験のツボ
- 対象は勤続年数5年以下(役員等以外)。
- 適用は令和4年1月1日以後に支払うべきもの。
- 300万円以下の部分は2分の1を掛ける。
- 300万円を超える部分は2分の1が使えない。
- 役員等で5年以下は、300万円の枠もなく全額が退職所得になる。
よくある間違い
- 5年以下なら全額2分の1が使えないと覚える。300万円までは使える。
- 役員等にも300万円の枠があると覚える。役員等には枠がない。
- 300万円を退職所得控除額だと取り違える。控除を引いた残額についての線である。
- 勤続年数の区切りを10年と覚える。5年以下である。
試験での出題パターン
オリジナル問題1(2分の1が使えない部分)
短期退職手当等の計算に関する記述のうち、正しいものはどれか。
- 控除後の残額のうち500万円を超える部分は2分の1が使えない
- 控除後の残額のうち300万円を超える部分は2分の1が使えない
- 控除後の残額のうち100万円を超える部分は2分の1が使えない
- 控除後の残額については金額を問わず2分の1が使えなくなる
解答は 2 である。
退職所得控除額を引いた残額のうち、300万円を超える部分について2分の1課税が使えないのである。
裏を返せば、300万円以下の部分はこれまでどおり2分の1である。全部が使えなくなるわけではないところが、この論点の急所である。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 500万円という線はない |
| 2 | ✓ | 300万円を超える部分が対象 |
| 3 | ✗ | 100万円という線はない |
| 4 | ✗ | 300万円以下は2分の1が使える |
オリジナル問題2(対象になる勤続年数)
短期退職手当等の対象となる勤続年数に関する記述のうち、正しいものはどれか。
- 勤続年数が10年以下である者に支払われる退職手当等が対象だ
- 勤続年数が20年以下である者に支払われる退職手当等が対象だ
- 勤続年数が3年以下である者に支払われる退職手当等が対象となる
- 勤続年数が5年以下である者に支払われる退職手当等が対象となる
解答は 4 だよ。
対象は勤続年数5年以下だよ。役員等以外の人についての話だね。
20年という数字も退職所得の計算に出てくるけれど、そちらは退職所得控除額の計算の区切りだよ。20年以下は40万円×勤続年数、20年超は800万円+70万円×(勤続年数−20年)。別の場面の数字だから、混ぜないようにしよう。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 10年という区切りではない |
| 2 | ✗ | 20年は退職所得控除の区切り |
| 3 | ✗ | 3年という区切りではない |
| 4 | ✓ | 勤続年数5年以下が対象 |
オリジナル問題3(役員等の場合)
役員等で勤続年数5年以下の場合の扱いに関する記述のうち、正しいものはどれか。
- 役員等の場合も300万円までは2分の1を掛けることができる
- 役員等の場合は500万円までなら2分の1を掛けてよいとされる
- 役員等の場合は300万円の枠がなく全額が退職所得の金額になる
- 役員等の場合は退職所得控除額そのものが使えないとされている
解答は 3 だっ。
役員等で勤続年数5年以下の場合は特定役員退職手当等といって、300万円の枠がなく、退職所得控除を引いた残額がそのまま退職所得になるんだっ。
退職所得控除そのものは使えるから、選択肢4は誤りだよっ。使えないのは2分の1のほうなんだっ。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 役員等に300万円の枠はない |
| 2 | ✗ | 500万円という枠もない |
| 3 | ✓ | 枠がなく全額が退職所得 |
| 4 | ✗ | 退職所得控除は使える |
まとめ
押さえどころ
見る順番は2つである。まず勤続年数が5年以下か、次に控除後の残額が300万円を超えるか。超えた部分だけが2分の1なしになる。
そこに「役員等には300万円の枠がない」を足せば、この論点は形になる。適用は令和4年1月1日以後に支払うべきものからである。
次に学ぶ
退職所得は、退職所得の受給に関する申告書を出しているかどうかで源泉徴収の形が変わる。出していれば適正な税額が源泉徴収されて課税関係が終わり、出していないと収入金額の20.42%が源泉徴収される。計算の話とあわせて確認しておきたい。