【FP3級の実務】普通預金と定期預金、どっち?──「引き出しやすさ」との交換だと伝える
貯金を始めたお客様から、こんな相談が届く。
「少しずつお金が貯まってきたので、銀行に預けようと思っています。でも『普通預金』と『定期預金』があって、どちらにすればいいのか分かりません。金利という言葉も、正直よく分かっていません。初心者にも分かるように教えてください。」
FPの実務で、預貯金の基本をやさしく伝える場面は多い。ここで力になるのは、どちらがよいかを答えることではなく「金利の差は、引き出しやすさとの交換です」と伝えられたときだ。この関係が分かると、お客様がご自身の事情で選べるようになる。この記事では、その考え方から整理する。
まず結論:差は「引き出しやすさ」との交換
| 引き出しやすさ | 金利 | |
|---|---|---|
| 普通預金 | いつでも引き出せる | 低い |
| 定期預金 | 預ける期間を決める | 普通預金より高い |
この2つはどちらが優れているという関係ではない。交換の関係である。
引き出しやすさを手放すと、金利が上がる。逆にいつでも引き出せる自由を持つと、金利は低くなる。
だから選び方は「そのお金をいつ使うか」で決まる。金利の高さで決めない。
お客様に伝えるなら「近いうちに使うかもしれないお金は普通預金、しばらく動かさないお金は定期預金」という形になる。
そして全部を定期預金にしない。急に必要になったときのために、動かせるお金を手元に残しておくほうが、結果として困らない。
金利は「1年あたりの割合」で表示されている
お客様は「金利という言葉もよく分かっていない」とおっしゃっている。ここは丁寧に説明する。
金利は、預けた金額に対して1年でどれだけ増えるかの割合である。表示されているのは、原則として1年あたりの割合だ。
だから半年しか預けなければ、およそ半分になる。「金利0.2%」と書いてあっても、3か月だけ預ければその4分の1である。
ここを説明しないと「思ったより増えなかった」となる。表示は年あたり、と最初に伝える。
そして利息にも税がかかる。ここも先に伝えておく。
居住者……が……国内において支払を受けるべき……利子等……については、……他の所得と区分し、その支払を受けるべき金額に対し百分の十五の税率を適用して所得税を課する。(租税特別措置法3条1項)
預貯金の利息は他の所得と区分して課税される。所得税15%に加えて復興特別所得税と住民税がかかり、合わせておよそ20%である。
しかもあらかじめ差し引かれて振り込まれるので、確定申告は要らない。「気づかないうちに引かれている」形になる。
お客様に伝えるなら「利息には2割ほど税がかかっていて、引かれた後の金額が入ります」という形になる。
不安にさせる話ではない。「表示されている金利より、手元に残る分は少し少なくなります」という事実として伝える。
預金保険が守る範囲がある
支払対象一般預金等に係る保険金の額は、前項の元本の額(その額が同一人について二以上あるときは、その合計額)が政令で定める金額(以下「保険基準額」という。)を超えるときは、保険基準額及び保険基準額に対応する元本に係る利息等の額を合算した額とする。(預金保険法54条2項)
金融機関が破綻した場合に、預金者を守る仕組みがある。
ただし無制限ではない。元本が「保険基準額」を超えるときは、その額とそれに対応する利息までになる。
金額は政令で定められているので、改定されうる。数字を覚えて答えず、預金保険機構や金融機関の情報で確認する。
そして「同一人について二以上あるときは、その合計額」とある。同じ金融機関に複数の口座を持っていても、合計して数える。口座を分けても増えない。
これは相談で誤解されやすい。「口座を分ければ守られる額が増える」わけではない。金融機関を分ければ別に数えられるという点と、区別してお伝えする。
全額が守られる預金もある
決済用預金……に係る保険金の額は、……その発生した日において現にその者が当該金融機関に対して有する支払対象決済用預金に係る債権……のうち元本の額(その額が同一人について二以上あるときは、その合計額)に相当する金額とする。(預金保険法54条の2第1項)
次に掲げる要件のすべてに該当する預金……(以下「決済用預金」という。)……
一 その契約又は取引慣行に基づき……政令で定める取引に用いることができるものであること。
二 その預金者がその払戻しをいつでも請求することができるものであること。
三 利息が付されていないものであること。(預金保険法51条の2第1項)
54条の2は元本の額に相当する金額としており、保険基準額のような上限を置いていない。全額が対象になる。
その代わり、51条の2第1項が3つの要件を定めている。とくに3号「利息が付されていない」が要点である。
つまり利息を受け取らない代わりに、全額が守られるという設計になっている。ここでも交換の関係である。
この記事の柱は「金利と引き出しやすさの交換」だったが、預金保険にも同じ形の交換がある。2つを並べると、制度の考え方が見えてくる。
お客様に伝えるなら「利息が付かない代わりに全額が守られる預金もあります。まとまったお金を一時的に置くときの選択肢です」という形になる。
ただし取扱いは金融機関によるので、使えるかどうかは窓口で確認していただく。
やさしく伝えるための言い換え
| 専門の言い方 | やさしい言い方 |
|---|---|
| 金利 | 1年でどれだけ増えるかの割合 |
| 年利 | 1年あたりで表示された割合 |
| 源泉分離課税 | あらかじめ引かれて振り込まれること |
| 預金保険制度 | 金融機関が破綻したときに預金を守る仕組み |
| 保険基準額 | 守られる元本の上限 |
| 決済用預金 | 利息が付かない代わりに全額が守られる預金 |
「金利」は、知っているつもりでも「何に対する割合か」が曖昧なまま使われていることが多い。「預けた金額に対して、1年で」まで含めて言う。
そして「年」を落とさない。「金利0.2%」ではなく「1年で0.2%」と言えば、期間が短ければ少なくなることまで伝わる。
案内の順番——この順で伝える
- そのお金をいつ使うかを伺う。ここで決まる。
- 金利の差は引き出しやすさとの交換と伝える。
- 金利は1年あたりと伝える。期間が短ければ少なくなる。
- 利息に税がかかる(措置法3条1項)。引かれた後が振り込まれる。
- 全部を定期にしない。動かせるお金を残す。
- 預金保険で守られる範囲がある(預金保険法54条2項)。
- 口座を分けても合計で数える(同項)。
- 金融機関を分けるのは別と区別して伝える。
- 全額が守られる預金もある(同法54条の2、51条の2第1項)。
- 金額と取扱いは確認していただく。政令と金融機関による。
プロならこう説明する
まず、金利という言葉からご説明します。
金利は、預けた金額に対して1年でどれだけ増えるかの割合です。銀行に表示されているのは1年あたりの割合です。
ですので半年しか預けなければ、およそ半分になります。「年」がついていることを覚えておいてください。
それと、利息には税金がかかります。およそ2割で、あらかじめ引かれた金額が振り込まれます。確定申告は要りません。
驚かせるお話ではなく、表示されている金利より手元に残る分は少し少なくなる、ということです。
そのうえで、普通預金と定期預金の違いです。
この2つはどちらが優れているという関係ではありません。交換です。
普通預金はいつでも引き出せますが、金利は低い。定期預金は預ける期間を決める代わりに、金利が高い。引き出しやすさを手放すと、その分が金利になって返ってくる、という関係です。
ですので、選び方は「そのお金をいつ使うか」で決まります。金利の高さでお決めにならないほうがよいと思います。
近いうちに使うかもしれないお金は普通預金、しばらく動かさないお金は定期預金。これが基本の形です。
1つ、お伝えしておきたいことがあります。全部を定期預金になさらないほうがよいと思います。
急に必要になることは、どうしてもあります。動かせるお金を手元に残しておくほうが、結果として困らずに済みます。
もう1つ、知っておいていただきたい仕組みがあります。預金保険です。
万一、金融機関が破綻したときに預金を守る仕組みがあります。ただし守られる元本には上限があります。
ここで誤解されやすいのですが、同じ金融機関で口座を分けても、合計して数えられます。法律に「同一人について二以上あるときは、その合計額」と書かれています。口座を分ければ増える、ということはありません。
金融機関を分けた場合は、それぞれで数えられます。ここは区別して覚えておいてください。
それと、全額が守られる預金もあります。利息が付かない代わりに、上限なく守られるという形のものです。
法律に3つの条件が書かれていまして、決済に使えること・いつでも引き出せること・利息が付かないことです。ここでも交換の関係になっています。
まとまったお金を一時的に置く場合の選択肢になります。ただしお取り扱いは金融機関によりますので、窓口でご確認ください。
上限の金額も政令で決まっていて改定されますので、私の記憶ではなく預金保険機構や金融機関の情報でご確認いただくのが確実です。
では、まずそのお金をいつごろお使いになりそうかを教えてください。そこから一緒に決めましょう。
よくある質問と、その答え方
「金利が高いほうがいいですよね」
交換の関係である。定期預金の金利が高いのは預ける期間を決める代わりで、普通預金の金利が低いのはいつでも引き出せる自由がある代わりである。だから選び方は「そのお金をいつ使うか」で決まる。全部を定期にしない——急に必要になったときのために動かせるお金を残しておくほうが、結果として困らない。
「金利0.2%なら、預ければ0.2%増えますよね」
1年あたりの割合である。半年なら、およそ半分になる。さらに利息には税がかかる——租税特別措置法3条1項は利子等を「他の所得と区分し……百分の十五の税率を適用して所得税を課する」としており、これに復興特別所得税と住民税が加わっておよそ2割になる。あらかじめ引かれて振り込まれるので、確定申告は要らない。
「口座を分ければ、守られる額が増えますよね」
同じ金融機関では増えない。預金保険法54条2項は「その額が同一人について二以上あるときは、その合計額」としており、合計して数える。ただし金融機関を分ければ、それぞれで数えられる。この2つは区別して伝える。なお守られる金額は「政令で定める金額」なので改定されうる——数字を覚えて答えず、預金保険機構や金融機関の情報で確認する。
「全額守られる預金があると聞きました」
ある。預金保険法54条の2第1項は決済用預金について「元本の額……に相当する金額」とし、上限を置いていない。その代わり同法51条の2第1項が3要件を定めており、決済に用いることができること・払戻しをいつでも請求することができること・利息が付されていないことである。利息を受け取らない代わりに全額が守られる——ここでも交換の関係になっている。取扱いは金融機関によるので窓口で確認していただく。
案内で外したくないポイント
- 金利の差は引き出しやすさとの交換。優劣ではない。
- 選び方は「いつ使うか」。金利の高さで決めない。
- 全部を定期にしない。動かせるお金を残す。
- 金利は1年あたり。期間が短ければ少なくなる。
- 利息にはおよそ2割の税(措置法3条1項ほか)。引かれた後が振り込まれる。
- 預金保険には上限がある(預金保険法54条2項)。金額は政令。
- 同じ金融機関では合計して数える(同項)。口座を分けても増えない。
- 金融機関を分ければ別に数えられる。区別して伝える。
- 決済用預金は全額が対象(同法54条の2第1項)。
- その3要件のひとつが「利息が付されていない」(同法51条の2第1項3号)。ここも交換。
根拠条文のまとめ
| 条文 | 見出し | この記事で使った内容 |
|---|---|---|
| 租税特別措置法3条1項 | 利子所得の分離課税等 | 利子等は他の所得と区分し、百分の十五の税率で所得税を課する |
| 預金保険法54条2項 | 一般預金等に係る保険金の額等 | 元本が保険基準額(政令で定める金額)を超えるときの取扱い。同一人で二以上あるときは合計額 |
| 預金保険法54条の2第1項 | 決済用預金に係る保険金の額 | 元本の額に相当する金額(上限を置いていない) |
| 預金保険法51条の2第1項 | 決済用預金に係る保険料の額 | 決済用預金の3要件(決済に用いることができる/いつでも払戻しを請求できる/利息が付されていない) |