【FP3級の実務】複利は雪だるま?──「何に利息がつくか」の違いだと伝える
積立を考えるお客様から、こんな相談が届く。
「将来のためにコツコツ積み立てようと思っています。本で『単利』と『複利』という言葉を見たのですが、違いがよく分かりません。『複利は雪だるまのように増える』と書いてあったのですが、どういう意味でしょうか?」
FPの実務で、単利と複利の違いをやさしく伝える場面は多い。ここで力になるのは「違いは、何に利息がつくかだけです」と一言で示せたときだ。この1点が分かると、雪だるまのたとえも、時間が効く理由も、自分で説明できるようになる。この記事では、そこから整理する。
まず結論:違いは「何に利息がつくか」だけ
| 何に利息がつくか | 増える額 | |
|---|---|---|
| 単利 | 最初に預けた元本だけ | 毎年同じ |
| 複利 | 元本+これまでについた利息 | 年々大きくなる |
違いはこれだけである。利率が同じでも、利息をどこに足すかで結果が変わる。
単利では、ついた利息は脇に置かれる。次の年も、利息がつくのは最初の元本だけである。だから毎年同じ額ずつ増える。
複利では、ついた利息が元本に足される。次の年は、その増えた金額に利息がつく。だから増える額そのものが年々大きくなる。
「雪だるま」というたとえは、ここを指している。転がすほど表面積が増えて、くっつく雪の量も増える——増えた分が、次に増える力になるという形である。
お客様に伝えるなら「利息を脇に置くか、元本に足すか。それだけの違いです」という言い方になる。難しい言葉を使わずに、本質を渡せる。
式で見ると、違いは1か所だけ
単利:元本 ×(1 + 利率 × 年数)
複利:元本 ×(1 + 利率)年数
違うのは年数の位置である。
単利では年数が掛け算の中にある。だから年数に比例して増える。
複利では年数が右肩にある。だから年数が増えるほど、増え方が急になる。
この式は、6つの係数の話ともつながっている。終価係数がまさに(1+利率)年数で、複利の式そのものである。
お客様に式を見せる必要はないが、FPが構造を分かっていると、説明がぶれない。
差を開くのは、利率よりも時間
複利の効果は利率と年数の両方で決まるが、効き方が違う。
利率は掛け算だが、年数は右肩に乗る。だから年数のほうが、後半で急に効いてくる。
言い換えると、最初の数年は単利とほとんど変わらない。差がはっきりしてくるのは、かなり先である。
ここは正直に伝えたい。「複利だから、すぐに大きく増える」わけではない。時間をかけたときに、差が出てくる仕組みである。
だから「早く始めたほうが有利」と言われる。ただしこれは「急いだほうがよい」という意味ではない。時間が味方になる仕組みだ、という事実である。
ご本人の家計に無理があるなら、来年からでよい。続けられることのほうが、始める時期より大事である。
「およそ何年で倍になるか」の目安
複利でおよそ倍になるまでの年数は、72を利率(%)で割ると、だいたいの見当がつく。
ただしこれは近似である。正確な値ではない。利率が高くなるほど、ずれも大きくなる。
だからお客様に伝えるときは「ざっくりした目安です」と必ず添える。計算の代わりにはならない。
使いどころは感覚をつかんでいただくためである。「この利率だと、倍になるのはずいぶん先ですね」という会話ができると、期待値が現実的になる。
正確な数字が要るときは、係数表や試算のページを使う。目安と計算を混ぜない。
同じ年利でも、回数で結果が違う
複利には「1年に何回、利息を元本に足すか」という違いもある。1年複利と半年複利などである。
足す回数が多いほど、結果はわずかに大きくなる。早く元本に足されれば、その分が次の利息を生むからだ。
ただし差は大きくない。回数の違いより、年数の違いのほうがはるかに効く。
お客様に伝えるときは「1年に何回利息がつくかでも少し変わりますが、大きいのは年数のほうです」と、重み付けまで含めて言う。細かい違いを強調して、本筋を見失わせない。
商品の説明を読むときに「年利」だけでなく「複利の回数」も書いてあることがある、と知っておいていただければ十分である。
同じ力が、借りる側にも働く
ここは必ず伝えたいところである。
複利は、増やす側だけの仕組みではない。借りたお金の利息にも、同じ形で働く。
返済が滞って利息が元本に組み入れられていくと、増え方が年々大きくなる。雪だるまは、こちら側でも転がる。
だから「複利はすごい」という話だけで終わらせない。同じ仕組みが両側にあると伝えるほうが、正確で役に立つ。
実務では借入がある方の相談で効く。「増やす前に、返すほうを見ましょう」という判断につながることがある。
ただし断定はしない。どちらを優先するかはご本人の状況によるので、両方を並べてお見せする。
実際には、そのままでは増えない
式のとおりに増えるわけではない。引かれるものがある。
- 税——預貯金の利息にも、運用で出た利益にも課税される
- 費用——購入時の手数料、保有中にかかる費用
利息や利益から引かれた分は、元本に足されない。つまり次の利息を生む力にもならない。
だから費用は、複利の効果を削る形で効いてくる。長い期間ほど、その差も積み上がる。
お客様に伝えるなら「計算どおりには増えません。税と費用が引かれた後の分が、次に働きます」という形になる。
これは断定できることである。利率は約束できないが、費用がかかることは先に分かっている。
やさしく伝えるための言い換え
| 専門の言い方 | やさしい言い方 |
|---|---|
| 単利 | 利息を脇に置く方式 |
| 複利 | 利息を元本に足していく方式 |
| 元本 | もとのお金 |
| 年利 | 1年あたりの割合 |
| 1年複利/半年複利 | 利息を元本に足す回数 |
| 複利効果 | 増えた分が、次に増える力になること |
「複利効果」という言葉は、そのまま言っても伝わらない。「増えた分が、次に増える力になること」とほどく。
そして「雪だるま」というたとえは、そのまま使ってよい。相談者ご自身がそう聞いてきていらっしゃるので、その言葉を受け取って、中身を説明するのが自然である。
たとえを否定しない。使われているたとえに、正確な中身を入れるのがFPの仕事になる。
案内の順番——この順で伝える
- 違いは「何に利息がつくか」だけと一言で示す。
- 雪だるまのたとえを受け取って、中身を説明する。
- 単利は毎年同じ、複利は年々大きくなる。
- 差が出るのは時間をかけたとき。最初の数年は変わらない。
- 「早く始めたほうが有利」の意味を正確に伝える。急がせない。
- 倍になる年数の目安は近似であると添える。
- 回数より年数が効く。重み付けまで伝える。
- 借りる側にも同じ力が働く。両側を見せる。
- 税と費用が引かれる。式どおりには増えない。
- 続けられることのほうが大事。始める時期より。
プロならこう説明する
「雪だるま」というたとえ、よくできていると思います。その中身をご説明しますね。
違いは1つだけです。利息を、どこに足すかです。
単利は、ついた利息を脇に置いておきます。次の年も、利息がつくのは最初のお金だけです。ですので毎年、同じ額ずつ増えます。
複利は、ついた利息をもとのお金に足します。次の年は、その増えた金額に利息がつきます。ですので増える額そのものが、年々大きくなります。
雪だるまが転がるほど大きくなって、くっつく雪の量も増えていく——増えた分が、次に増える力になるという形です。たとえは的確だと思います。
そのうえで、正直にお伝えしておきたいことがあります。
最初の数年は、単利とほとんど変わりません。差がはっきりしてくるのは、かなり先です。
「複利だから、すぐに大きく増える」わけではありません。時間をかけたときに差が出てくる仕組みです。
ですので「早く始めたほうが有利」と言われるのですが、これは「急いだほうがよい」という意味ではありません。時間が味方になる仕組みだ、という事実です。
ご家計に無理があるようでしたら、来年からで大丈夫です。始める時期より、続けられることのほうが大事だと思っています。
目安の話もしておきます。72を利率で割ると、およそ何年で倍になるかの見当がつきます。ただしざっくりした目安で、正確な数字ではありません。感覚をつかんでいただくためのものとお考えください。
それと、いちばんお伝えしたいことがあります。
この仕組みは、借りたお金にも同じように働きます。
返済が滞って利息が元本に組み入れられていくと、増え方が年々大きくなります。雪だるまは、こちら側でも転がります。
ですので、もしお借り入れがおありでしたら、増やすことより先に、そちらを見たほうがよい場合があります。どちらを優先されるかはご状況によりますので、両方を並べてお出しします。
最後に、計算どおりには増えないという点です。
利息や利益には税がかかりますし、商品によっては手数料や保有中の費用もかかります。
引かれた分は、もとのお金に足されません。ということは次の利息を生む力にもなりません。ですので費用は、この仕組みを削る形で効いてきます。
利率は約束できませんが、費用がかかることは先に分かっています。ここは確かなことですので、はっきりお伝えしておきます。
よくある質問と、その答え方
「複利だと、どれくらい早く増えるのですか」
最初の数年は単利とほとんど変わらない。式で見ると、単利は元本×(1+利率×年数)で年数が掛け算の中にあるが、複利は元本×(1+利率)年数で年数が右肩に乗る。右肩に乗る分が効いてくるのは後半である。「複利だからすぐ大きく増える」ではなく、時間をかけたときに差が出る仕組みと伝える。
「早く始めたほうが有利なんですよね」
時間が効く仕組みなのは事実だが、「急いだほうがよい」という意味ではない。家計に無理があるなら来年からでよい。始める時期より、続けられることのほうが大事である。無理をして途中でやめると、時間を味方にする前に終わってしまう。
「複利はすごい仕組みなんですね」
同じ力が借りる側にも働く。返済が滞って利息が元本に組み入れられていくと、増え方が年々大きくなる。雪だるまは両側で転がる。だから「複利はすごい」で終わらせず、両側を見せる。借入がある方の相談では「増やす前に、返すほうを見ましょう」という判断につながることがある——ただしどちらを優先するかはご本人の状況によるので、両方を並べる。
「計算どおりに増えるのですよね」
増えない。利息や利益には税がかかり、商品によっては手数料や保有中の費用もかかる。しかも引かれた分は元本に足されないので、次の利息を生む力にもならない。費用は、この仕組みを削る形で効いてくる。利率は約束できないが、費用がかかることは先に分かっている——ここは断定して伝えてよい数少ない部分である。
案内で外したくないポイント
- 違いは「何に利息がつくか」だけ。利息を脇に置くか、元本に足すか。
- 単利は毎年同じ額、複利は年々大きくなる。
- 式の違いは年数の位置。掛け算の中か、右肩か。
- 最初の数年はほとんど変わらない。正直に伝える。
- 「早く」は「急げ」ではない。続けられることのほうが大事。
- 倍になる年数の目安は近似。計算の代わりにしない。
- 回数より年数のほうが効く。重み付けまで伝える。
- 借りる側にも同じ力が働く。両側を見せる。
- 税と費用で、式どおりには増えない。引かれた分は次を生まない。
- たとえを否定せず、中身を入れる。「雪だるま」はそのまま使える。