【FP3級の実務】働けない状態が続いたら?──すべてが「初診日」で決まると伝える
病気の治療が長引いている相談者から、こんな相談が届く。
「傷病手当金が終わりに近づいてきました。まだ以前のようには働けそうにありません。このあと、収入が完全に途切れてしまうのでしょうか。」
FPの実務は、傷病手当金の次を用意しておく。ここで力になるのは、制度の名前を伝えることよりも「最初にお医者さんにかかったのはいつですか」と聞けたときだ。障害年金は、ほとんどすべてがこの日を起点に決まる。この記事では、その1点から整理する。
まず結論:起点は「初診日」ひとつ
障害基礎年金は、疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その疾病又は負傷……について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)において次の各号のいずれかに該当した者が、当該初診日から起算して一年六月を経過した日(その期間内にその傷病が治つた場合においては、その治つた日……とし、以下「障害認定日」という。)において、その傷病により……障害等級に該当する程度の障害の状態にあるときに、その者に支給する。
ただし、当該傷病に係る初診日の前日において、当該初診日の属する月の前々月までに被保険者期間があり、かつ、……三分の二に満たないときは、この限りでない。(国民年金法30条1項)
| 決まること | 初診日との関係 |
|---|---|
| どの年金の対象になるか | 初診日にどの制度に入っていたか |
| いつ判定するか | 初診日から1年6月を経過した日(障害認定日) |
| 納付の条件を満たすか | 初診日の前日において判定 |
1つの条文に初診日が3回出てくる。制度の入口も、判定の時期も、納付の条件も、すべてこの日を起点にしている。
だから相談で最初に伺うのは「その症状で、最初にお医者さんにかかったのはいつですか」である。
そして「初めて診療を受けた日」という書き方に注意したい。診断がついた日ではない。その症状で最初にかかった日である。
だから最初は別の科にかかっていたというような場合、そちらが初診日になることがある。「思い当たる最初の受診」まで遡って伺う。
ここはご本人の記憶だけでは決まらない。診察券やお薬手帳、健康保険の利用の記録が手がかりになる。年金事務所で相談していただくことになるが、手がかりを集めておくのはFPが助けられる部分である。
初診日に「どこにいたか」で、1階だけか2階もかが決まる
障害厚生年金は、……初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日……において被保険者であつた者が、当該初診日から起算して一年六月を経過した日……において、その傷病により……障害等級に該当する程度の障害の状態にある場合に、その障害の程度に応じて、その者に支給する。
2 障害等級は、障害の程度に応じて重度のものから一級、二級及び三級とし、各級の障害の状態は、政令で定める。(厚生年金保険法47条)
| 初診日にどこにいたか | 等級 | |
|---|---|---|
| 障害基礎年金(1階) | 国民年金の被保険者など | 1級・2級(国年法30条2項) |
| 障害厚生年金(2階) | 厚生年金の被保険者 | 1級・2級・3級(厚年法47条2項) |
厚年法47条1項が「初診日において被保険者であつた者」としている。初診日に会社員だったかどうかで2階の有無が決まる。
いま会社員かどうかではない。初診日にどうだったかである。すでに退職していても、初診日に在職していれば対象になる。
今回の相談者は傷病手当金を受けていらっしゃるので、初診日には健康保険の被保険者、つまり会社員でいらっしゃった可能性が高い。2階の対象になり得る。
そして等級の幅が違う。1階は1級と2級だけだが、2階には3級がある。
だから2階だけが出ることがある。「1階が出ないから何も出ない」ではない。ここは伝える価値がある。
50条は、2階の額を計算するときに被保険者期間の月数が300に満たないときは、これを300とするとしている。勤めた期間が短くても、額が極端に小さくはならない。
判定は「初診日から1年6月」の日
30条1項も厚年法47条1項も、初診日から起算して一年六月を経過した日を障害認定日としている。
今回の相談は傷病手当金が終わりに近づいているという場面である。傷病手当金は通算1年6か月なので、時期が重なりやすい。
ただし数え方が違う。傷病手当金は受け取った日を通算して1年6か月、障害認定日は初診日から1年6月である。同じ日にはならない。
かっこ書にも手当てがある。その期間内にその傷病が治つた場合においては、その治つた日(症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至つた日を含む)が障害認定日になる。1年6月を待たずに判定される場合がある。
だから相談では「初診日から1年6か月が、いつになりますか」を計算する。その日が来る前に、準備を始められる。
納付の条件は「初診日の前日」で見る
30条1項ただし書が「当該傷病に係る初診日の前日において」としている。
初診日の前日である。あとから納めても間に合わないという趣旨で、遺族年金と同じ形になっている。
そして「三分の二に満たないとき」が要件を満たさない場合なので、3分の2以上納めていれば満たす。
会社員でいらっしゃれば給与から天引きされているので、通常は問題にならない。ただし転職の合間や、自営業だった期間がある場合は確認する。
直近1年間に未納がなければよいとする経過措置も置かれているが、期限のある措置なのでこれが使えることを前提にした説明はしない。年金事務所で確認していただく。
20歳前の傷病には、別の道がある
疾病にかかり、又は負傷し、その初診日において二十歳未満であつた者が、障害認定日以後に二十歳に達したときは二十歳に達した日において、障害認定日が二十歳に達した日後であるときはその障害認定日において、障害等級に該当する程度の障害の状態にあるときは、その者に障害基礎年金を支給する。(国民年金法30条の4第1項)
初診日が20歳より前の場合の規定である。保険料を納めていない年齢なので、納付の条件を問わない形になっている。
ご家族に、若い頃からの病気や生まれつきの障害でお困りの方がいらっしゃる相談では、この道があることを伝える。
「保険料を納めていないから対象外」と思い込んでいらっしゃることがある。条文には別の規定がある。
年金にならない場合でも、一時金がある
障害手当金は、疾病にかかり、又は負傷し、その傷病に係る初診日において被保険者であつた者が、当該初診日から起算して五年を経過する日までの間におけるその傷病の治つた日において、その傷病により政令で定める程度の障害の状態にある場合に、その者に支給する。(厚生年金保険法55条1項)
こちらは一時金である。3級より軽い状態について用意されている。
条件が2つある。初診日に厚生年金の被保険者であったことと、初診日から5年を経過する日までの間に傷病が治ったことである。
「治つた日」が基準なので、治療が続いている間は対象にならない。ここは年金と逆の考え方になる。
2項により、納付の条件は障害厚生年金と同じである。
相談では「年金にならなくても、一時金の道があります」と伝えられる。選択肢が1つではないと分かるだけで、受け止め方が変わる。
やさしく伝えるための言い換え
| 条文の言葉 | やさしい言い方 |
|---|---|
| 初診日 | その症状で最初にお医者さんにかかった日 |
| 障害認定日 | 状態を判定する日(初診日から1年6か月後) |
| 被保険者であつた者 | そのとき加入していた方 |
| 障害等級に該当する程度の障害の状態 | 決められた基準に当てはまる状態 |
| 保険料納付要件 | 保険料を納めてきた状況 |
| 障害手当金 | 年金ではなく一時金で出るもの |
この分野では言葉の選び方に、とくに気をつけたい。
相談者はご自身の体調のことを話していらっしゃる。制度の説明が、状態の評価のように聞こえないようにする。
「重い・軽い」ではなく「決められた基準に当てはまるかどうか」と言う。判定するのは制度であって、FPでも本人でもない。
そして「もらえるかどうか」を、その場で断定しない。判定は年金事務所と医師の診断による。FPが渡せるのは「確かめに行く道すじ」である。
案内の順番——この順で伝える
- 初診日を伺う。すべてがここから決まる(国年法30条1項)。
- その日にどこにお勤めだったかを伺う(厚年法47条1項)。
- 初診日から1年6か月がいつかを計算する(同項、国年法30条1項)。
- 1階と2階の等級の違いを伝える。2階には3級がある(厚年法47条2項)。
- 納付の状況を確認していただく(国年法30条1項ただし書)。
- 手がかりを集める。診察券、お薬手帳、受診の記録。
- 年金事務所へ。判定は制度が行う。
- 一時金の道も伝える(厚年法55条)。
- 傷病手当金との時期を並べる。数え方が違う。
- その間の家計を一緒に見る。ここからがFPの仕事。
プロならこう説明する
収入が完全に途切れてしまうかというご心配ですが、次に確かめられる制度があります。障害年金です。
ただ、その前に1つだけ伺わせてください。いちばん大事な質問です。
その症状で、最初にお医者さんにかかったのはいつですか。
この日を「初診日」といいまして、障害年金は、ほとんどすべてがこの日を起点に決まります。
どの年金の対象になるかも、いつ判定するかも、保険料の条件を満たすかも、全部この日から見ます。
1つ、お気をつけいただきたいことがあります。診断がついた日ではありません。その症状で最初にかかった日です。
ですので、最初は別の科にかかっていたというような場合、そちらが初診日になることがあります。思い当たるいちばん最初の受診まで遡って教えてください。
ご記憶があいまいでも大丈夫です。診察券やお薬手帳、健康保険の利用の記録が手がかりになります。ご一緒に探しましょう。
次に伺います。その初診日の時点で、お勤めでいらっしゃいましたか。
傷病手当金を受けていらっしゃるということは、そのときは健康保険にお入りだったと思いますので、おそらく在職中ですね。
でしたら2階部分(障害厚生年金)も対象になり得ます。ここが大事なところで、いまお勤めかどうかではなく、初診日にどうだったかで決まります。
1階と2階では、対象になる状態の範囲が違います。
1階は1級と2級だけですが、2階には3級があります。ですので2階だけが出るということもあります。「1階が出ないから何も出ない」ではありません。
判定する日についてです。初診日から1年6か月を経過した日に、そのときの状態で判定されます。
お伺いした初診日から数えますと、◯年◯月ごろになりますね。その日が来る前から準備を始められます。
傷病手当金も1年6か月ですが、数え方が違います。傷病手当金は受け取った日を足していくのに対し、こちらは初診日から数えます。同じ日にはなりません。
保険料の条件も確認させてください。法律に「初診日の前日において」と書かれていまして、あとから納めても間に合わない仕組みです。お勤めでしたら天引きされていますので通常は問題ありませんが、転職の合間などがありましたら念のため見ておきましょう。
もう1つ、お伝えしておきます。年金の対象にならない場合でも、一時金の道があります。
ただしこちらは「治った日」が基準で、初診日から5年以内という条件があります。年金とは逆の考え方になります。
最後に、大事なことを申し上げます。状態が基準に当てはまるかどうかは、私には判定できません。これはお医者さんの診断と、年金事務所の審査で決まります。
ですので私は「もらえます」とも「もらえません」とも申し上げません。その代わり、確かめに行くための道すじをご一緒に作ります。
まず初診日の手がかりを集めて、年金事務所へ行きましょう。ご希望でしたら、聞いてくることのメモをお作りします。
そしてその間の家計を一緒に見ましょう。いつまでにいくら必要かが分かれば、そこだけ手を打てます。
よくある質問と、その答え方
「診断がついた日が初診日ですよね」
違う。国民年金法30条1項は「その疾病又は負傷……について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日」としている。その症状で最初にかかった日である。だから最初は別の科にかかっていたという場合、そちらが初診日になることがある。思い当たる最初の受診まで遡って伺う。診察券やお薬手帳、健康保険の利用の記録が手がかりになる。
「いまは退職しているので、厚生年金のほうは対象外ですよね」
初診日で見る。厚生年金保険法47条1項は「初診日において被保険者であつた者」としている。いま在職しているかどうかではない。初診日に会社員だったなら、その後に退職していても対象になり得る。傷病手当金を受けていた方なら、初診日には在職していた可能性が高い。
「1級や2級に当たらないと、何も出ませんよね」
2階には3級がある。国民年金法30条2項は障害等級を1級・2級としているが、厚生年金保険法47条2項は1級・2級・3級としている。2階だけが出ることがある。さらに同法55条には障害手当金という一時金があり、こちらは初診日から5年を経過する日までの間に傷病が治った日が基準になる。選択肢は1つではない。
「20歳前からの病気は、保険料を納めていないので対象外ですよね」
別の規定がある。国民年金法30条の4第1項は、初診日において20歳未満であった者について、20歳に達した日または障害認定日において障害等級に該当する状態にあるときは障害基礎年金を支給するとしている。保険料を納めていない年齢なので、納付の条件を問わない形になっている。「納めていないから対象外」と思い込まない。
案内で外したくないポイント
- すべてが初診日から決まる(国年法30条1項に3回出てくる)。
- 初診日は「初めて診療を受けた日」。診断がついた日ではない。
- 初診日にどこにいたかで、1階だけか2階もかが決まる(厚年法47条1項)。
- いま在職しているかどうかではない。
- 1階は1級・2級、2階は1〜3級(国年法30条2項、厚年法47条2項)。
- 障害認定日は初診日から1年6月。治った日が先ならその日。
- 傷病手当金とは数え方が違う。あちらは受け取った日の通算。
- 納付は「初診日の前日」で見る(国年法30条1項ただし書)。
- 20歳前の傷病には別の規定がある(同法30条の4)。
- 年金にならなくても一時金の道がある(厚年法55条)。判定は年金事務所と医師が行う。
根拠条文のまとめ
| 条文 | 見出し | この記事で使った内容 |
|---|---|---|
| 国民年金法30条1項 | 支給要件 | 初診日の定義/障害認定日(初診日から1年6月・治った日)/ただし書で納付要件(初診日の前日において) |
| 国民年金法30条2項 | 同上 | 障害等級は1級・2級 |
| 国民年金法30条の4第1項 | — | 初診日において20歳未満であった者への障害基礎年金 |
| 厚生年金保険法47条1項 | 障害厚生年金の受給権者 | 初診日において被保険者であつた者。障害認定日。ただし書で納付要件 |
| 厚生年金保険法47条2項 | 同上 | 障害等級は1級・2級・3級 |
| 厚生年金保険法50条 | 障害厚生年金の額 | 被保険者期間の月数が300に満たないときは300とする |
| 厚生年金保険法55条 | 障害手当金の受給権者 | 初診日から5年を経過する日までの間の治った日。2項で納付要件を準用 |