【FP3級の実務】定期・終身・養老の違いは?──2つの軸の組み合わせで説明する
生命保険を検討するお客様から、こんな相談が届く。
「生命保険に入ろうと調べたら、『定期保険』『終身保険』『養老保険』と種類がいくつもあって、違いがよく分かりません。保険料が安いのがいいのか、一生続くのがいいのか、貯金みたいに使えるのがいいのか…。専門用語をあまり使わずに教えてもらえませんか?」
FPの実務で、保険の種類をやさしく伝える場面は多い。ここで力になるのは、3つを別々に説明することではなく「2つの軸の組み合わせです」と示せたときだ。3つを覚えるのではなく、2つ答えれば決まる形にすると、お客様が自分で整理できるようになる。この記事では、その軸から整理する。
まず結論:2つの軸で決まる
| 満期にお金が出ない | 満期にお金が出る | |
|---|---|---|
| 保障が一定期間 | 定期保険 | 養老保険 |
| 保障が一生涯 | 終身保険 | (満期がないので該当なし) |
軸は2つである。保障がいつまで続くかと、満期のときにお金が出るか。
この2つに答えれば、3つのうちどれかに決まる。3つを別々に覚える必要はない。
終身保険に満期がないのは、一生涯だから終わりの時点がないためである。表の右下が空くのは、当然の帰結だ。
お客様に伝えるときは「2つだけ答えていただければ決まります」と言う。選ぶ側に主導権が移る。
保険料が違う理由も、この軸で説明できる
お客様は「保険料が安いのがいいのか」とおっしゃっている。なぜ違うのかを先に説明する。
定期保険が比較的安いのは、期間が区切られていて、満期にお金が出ないからである。払ったお金は、その期間の保障のために使われる。
養老保険が比較的高いのは、満期に支払うお金を、あらかじめ用意しておく必要があるからである。保障の部分と、貯める部分の両方がある。
終身保険はその中間のような位置にある。いつか必ず支払うことになるので、その分を積み上げていく形になる。
やさしく伝えるなら「保険料の違いは、後で戻ってくる分が入っているかどうかです」という言い方になる。
そして「安い=損」でも「高い=得」でもない。用途が違うだけである。ここを言わないと、値段だけで選ばれてしまう。
どれも同じ「生命保険契約」である
生命保険契約 保険契約のうち、保険者が人の生存又は死亡に関し一定の保険給付を行うことを約するもの(傷害疾病定額保険契約に該当するものを除く。)をいう。(保険法2条8号)
定義に「生存又は死亡に関し」とある。死亡だけではない。
だから満期まで生きていたらお金が出る養老保険も、生命保険契約である。「生命保険=亡くなったときのもの」ではない。
お客様の「貯金みたいに使えるのがいいのか」というご質問は、ここに触れている。条文の段階で、生存に対する給付が入っていると説明できる。
ただし貯金とは違う。途中でやめると、払った額より少なくなることがある。「貯金みたい」という言葉には、この一言を添える。
告知は「聞かれたことに答える」義務である
保険契約者又は被保険者になる者は、生命保険契約の締結に際し、……危険に関する重要な事項のうち保険者になる者が告知を求めたもの……について、事実の告知をしなければならない。(保険法37条)
「保険者になる者が告知を求めたもの」とある。聞かれたことに、事実を答える義務である。
だから自分から思いつく限りを申告する義務ではない。告知書に書かれている質問に、正確に答える——これが条文の求めていることである。
お客様に伝えるなら「聞かれたことに、ありのままお答えください」という形になる。「何を言えばいいのか分からない」という不安への答えになる。
逆に言えば聞かれたことには正確に答える必要がある。ここは省略しない。
告知に問題があっても、解除できない場合がある
保険者は、保険契約者又は被保険者が、告知事項について、故意又は重大な過失により事実の告知をせず、又は不実の告知をしたときは、生命保険契約を解除することができる。
2 保険者は、前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、生命保険契約を解除することができない。
一 ……保険者が前項の事実を知り、又は過失によつて知らなかつたとき。
二 保険媒介者が、保険契約者又は被保険者が前項の事実の告知をすることを妨げたとき。
三 保険媒介者が、……告知をせず、又は不実の告知をすることを勧めたとき。
4 第一項の規定による解除権は、保険者が……解除の原因があることを知つた時から一箇月間行使しないときは、消滅する。生命保険契約の締結の時から五年を経過したときも、同様とする。(保険法55条)
1項は「故意又は重大な過失」を要件にしている。うっかりした思い違いのすべてが解除につながるわけではない。
2項が解除できない場合を並べている。とくに2号と3号は保険媒介者(募集人など)が原因の場合である。「言わなくていいですよ」と言われて従った場合が、これに当たりうる。
4項には期間の制限がある。知った時から1箇月、契約から5年で解除権が消滅する。
これらを伝える意味は、お客様を安心させるためではない。正確に答えていただくためである。
「告知を間違えたら全部だめになる」と思い込むと、かえって書けなくなることがある。制度には手当てがあると知ったうえで、正確に答えていただくのがよい。
そして「これは書かなくていいですよ」とFPが言わない。3項により、媒介者の行為がなかったとしても告知しなかったと認められる場合には、2号3号は適用されない。安易な助言は、お客様を守らない。
選び方は「何のために」から
種類から入ると、どれがよいか決められない。先に決めるのは「何のために」である。
| 目的 | 考え方 |
|---|---|
| 子どもが独立するまでの備え | 期間が区切られているものが合いやすい |
| 葬儀費用など、いつか必ず要るもの | 一生涯続くものが合いやすい |
| 時期の決まった資金を用意したい | 満期にお金が出るものが候補になる |
この対応関係は2つの軸から自然に出てくる。商品を覚える必要がない。
そして1つに決めなくてよい。目的が複数あれば、組み合わせるという形もある。
ただしFPが「これがおすすめです」と言わない。目的を整理して、対応する形をお見せするところまでが役割である。決めるのはご本人である。
そして必要な保障額を先に出す。種類を決める前に、いくら必要かを出しておくと、話が具体的になる。
やさしく伝えるための言い換え
| 専門の言い方 | やさしい言い方 |
|---|---|
| 保険期間 | 保障が続く期間 |
| 満期保険金 | 満期まで無事だったときに出るお金 |
| 解約返戻金 | 途中でやめたときに戻るお金 |
| 告知 | 聞かれたことに事実を答えること |
| 被保険者 | 保障の対象になる方 |
| 保険金受取人 | お金を受け取る方 |
「解約返戻金」は必ずほどく。「途中でやめたときに戻るお金」と言えば、払った額より少ないことがあるという話につなげやすい。
そして「被保険者」と「保険金受取人」は必ず区別して説明する。この2つを取り違えたまま契約されると、後で困る。音が似ていないので、区別しやすい言い換えを用意しておく。
案内の順番——この順で伝える
- 何のために備えたいかを伺う。種類より先に。
- 必要な保障額を出す。公的な保障を引いたうえで。
- 2つの軸を示す。保障の期間と、満期にお金が出るか。
- 3つが組み合わせで決まると伝える。
- 保険料が違う理由を説明する。後で戻る分の有無。
- 「安い=損」ではないと添える。用途が違う。
- 途中でやめると減ることがあると伝える(貯金とは違う)。
- 告知は聞かれたことに答えると伝える(保険法37条)。
- 正確に答えていただく。安易に「書かなくていい」と言わない。
- 決めるのはご本人。組み合わせてもよい。
プロならこう説明する
種類が3つあると難しく見えますが、実は2つのことを決めれば、どれかに決まります。その2つからご説明します。
1つめ。保障をいつまで続けたいか。一定の期間だけか、一生涯か。
2つめ。満期のときにお金が出る形にしたいか。
この2つの組み合わせです。期間が区切られていて満期にお金が出ないものが「定期保険」、期間が区切られていて満期にお金が出るものが「養老保険」、一生涯続くものが「終身保険」です。
終身保険に満期がないのは、一生涯なので終わりの時点がないからです。それだけのことです。
次に、保険料が違う理由です。ここを知っておかれると、選びやすくなります。
保険料の違いは、後で戻ってくる分が入っているかどうかです。
定期保険が比較的お安いのは、その期間の保障だけだからです。養老保険が比較的高いのは、満期にお支払いするお金をあらかじめ用意しておく必要があるからです。
ですので「安いから損」でも「高いから得」でもありません。用途が違うだけです。ここは大事なところですので、はっきり申し上げておきます。
「貯金みたいに使えるのがいいのか」というお話についてです。
法律上、生命保険は「人の生存又は死亡に関し」お金を支払う契約と定義されていまして、亡くなったときだけのものではありません。満期まで無事だったときに出るものも、同じ生命保険です。
ただし貯金とは違います。途中でおやめになると、払った額より少なくなることがあります。ここは必ずお伝えしておきます。
それから、お申し込みのときの「告知」についてもお話しします。
「何を言えばいいのか分からない」とご心配になる方が多いのですが、法律は「保険会社が告知を求めたもの」について答えることを求めています。
つまり告知書に書かれている質問に、ありのままお答えいただければ大丈夫です。思いつく限りを申告する義務ではありません。
ただし聞かれたことには、正確にお答えください。ここは省略なさらないようにお願いします。
法律には、告知に問題があった場合でも保険会社が解除できない場合や、解除できる期間の制限も定められています。ですので「間違えたら全部だめになる」というものではありません。
ただ、これは「間違えても大丈夫」とお伝えするためではなく、正確にお答えいただくためにお伝えしています。「これは書かなくていいですよ」といったことは、私からは申し上げません。それはお客様を守らないからです。
最後に、選び方についてです。種類から入ると決められません。
まず何のために備えたいかを教えてください。お子さんが独立されるまでか、いつか必ず要るものか、時期の決まった資金か。
それが決まれば、2つの軸から自然に形が決まります。そして1つに決めなくても大丈夫です。目的が複数あれば、組み合わせるという形もあります。
私からは「これがおすすめです」とは申し上げません。目的を整理して、対応する形をお見せするところまでが私の役割です。お決めになるのはお客様です。
よくある質問と、その答え方
「3つの違いを覚えられません」
覚えなくてよい。2つの軸の組み合わせだからである。保障が一定期間か一生涯か、満期にお金が出るか出ないか——この2つに答えれば決まる。終身保険に満期がないのは一生涯なので終わりの時点がないから。3つを別々に覚えるのではなく、2つ答える形にすると、お客様が自分で整理できる。
「保険料が安いほうがいいですよね」
安い理由を先に説明する。保険料の違いは、後で戻ってくる分が入っているかどうかである。定期保険が比較的安いのはその期間の保障だけだから、養老保険が比較的高いのは満期に支払う分をあらかじめ用意するからである。「安い=損」でも「高い=得」でもなく、用途が違う。ここを言わないと、値段だけで選ばれてしまう。
「生命保険は、亡くなったときのものですよね」
それだけではない。保険法2条8号は生命保険契約を「人の生存又は死亡に関し一定の保険給付を行うことを約するもの」と定義している。「生存」も入っているので、満期まで生きていたらお金が出る養老保険も生命保険である。ただし貯金とは違い、途中でやめると払った額より少なくなることがある——「貯金みたい」という言葉には、この一言を添える。
「告知って、何を言えばいいのですか」
聞かれたことに答える。保険法37条は「保険者になる者が告知を求めたもの……について、事実の告知をしなければならない」としている。自分から思いつく限りを申告する義務ではない。告知書の質問に正確に答えればよい。なお55条2項は保険者が知っていた場合や、保険媒介者が告知を妨げた・勧めた場合は解除できないとし、4項は解除権に知った時から1箇月・契約から5年の制限を置いている。ただしこれは正確に答えていただくための情報であって、「書かなくていい」と助言する根拠にはならない。
案内で外したくないポイント
- 3つは2つの軸の組み合わせ。覚えるのではなく、2つ答える。
- 終身に満期がないのは一生涯だから。表の右下が空くのは当然。
- 保険料の違いは、後で戻る分の有無。
- 「安い=損」ではない。用途が違う。
- 生命保険は「生存又は死亡に関し」(保険法2条8号)。死亡だけではない。
- 貯金とは違う。途中でやめると減ることがある。
- 告知は聞かれたことに答える義務(同法37条)。
- 解除できない場合と期間制限がある(同法55条2項・4項)。
- 「書かなくていい」と助言しない(同条3項)。お客様を守らない。
- 目的から入る。決めるのはご本人。組み合わせてもよい。
根拠条文のまとめ
| 条文 | 見出し | この記事で使った内容 |
|---|---|---|
| 保険法2条1号・8号 | 定義 | 保険契約/生命保険契約は「人の生存又は死亡に関し」給付を行う契約 |
| 保険法2条4号ロ・5号 | 同上 | 被保険者(生死に関し給付を受けることとなる者)と保険金受取人の区別 |
| 保険法37条 | 告知義務 | 保険者になる者が告知を求めたものについて事実を告知する |
| 保険法55条1項 | 告知義務違反による解除 | 故意又は重大な過失によるとき |
| 保険法55条2項・3項 | 同上 | 解除できない場合(保険者が知っていた/保険媒介者が妨げた・勧めた)と、その適用除外 |
| 保険法55条4項 | 同上 | 知った時から1箇月/契約の時から5年で解除権が消滅 |