FP3級の実務クエスト

【FP3級の実務】年金は何歳から?──「10年」と「40年」は別の話だと伝える

老後が気になり始めたお客様から、こんな相談が届く。

「そろそろ老後のことが気になってきました。年金はふつう何歳から受け取れるのですか? 受け取るには加入や納付の期間の条件があると聞きました。どれくらい必要でしょうか? 受け取り始める年齢を早めたり遅らせたりできるとも聞きましたが、金額はどう変わりますか? やさしい言葉で教えてください。」

FPの実務で、老齢年金の基本をやさしく伝える場面は多い。ここで力になるのは、「受け取れるかどうか」と「いくら受け取れるか」を分けて話せたときだ。この2つは条件が別で、出てくる数字も違う。混ざると話が通じなくなる。この記事では、その分け方から整理する。

この記事は、学習アプリ「シカクエ」の実務クエスト「老齢年金のはじめの一歩を伝える」を読み物として再構成したもの。人物・相談はすべて架空です。金額は毎年度改定されるため、実際のご案内では日本年金機構の最新の資料やねんきんネットでご確認ください。

まず結論:「10年」と「40年」は別の話

何を決めるか期間条文
受給資格期間受け取れるかどうか10年国民年金法26条ただし書
年金額の計算いくら受け取れるか40年(480月)同法27条ただし書

老齢基礎年金は、保険料納付済期間又は保険料免除期間……を有する者が六十五歳に達したときに、その者に支給する。ただし、その者の保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が十年に満たないときは、この限りでない。(国民年金法26条)

お客様がおっしゃった「加入や納付の期間の条件」は、このただし書の10年のことである。

ここでいちばん伝えたいのは、10年は「受け取れるかどうか」の線であって、金額の話ではないということだ。

10年で受け取れる額は、40年納めた場合の4分の1ほどになる。「10年で足りる」ではない

この2つが混ざると、「10年払えばいいんですね」という受け取り方になってしまう。最初に分けておくのが、この相談の要点である。

厚生年金のほうも同じで、42条が「六十五歳以上であること」「保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が十年以上であること」の2つを挙げている。10年の線は共通である。

年齢は65歳から

26条も厚年法42条も65歳としている。これが原則である。

早めることも遅らせることもできるが、それは65歳という基準があってのことである。「何歳から?」への答えは、まず65歳とはっきり言う。

早めた場合は1か月あたり一定の率で減り、その率は生涯続く。遅らせた場合は1か月あたり一定の率で増える。率は政令で定められていて改定されうるので、数字は日本年金機構の資料で確認する

やさしく伝えるなら「早くもらうと1回あたりが少なくなり、遅くもらうと多くなります。どちらが得かは、何歳まで受け取るかによります」という形になる。

「どちらが得か」を断定しない。何歳まで生きるかは誰にも分からないからだ。そこは正直に言うほうが、かえって信頼される。

金額を決めるのは「40年のうち何か月納めたか」

老齢基礎年金の額は、七十八万九百円に改定率……を乗じて得た額……とする。ただし、保険料納付済期間の月数が四百八十に満たない者に支給する場合は、当該額に、次の各号に掲げる月数を合算した月数(四百八十を限度とする。)を四百八十で除して得た数を乗じて得た額とする。(国民年金法27条)

480月=40年である。40年きっちり納めた人が満額で、それに満たなければ月数の割合で減る

本文の78万900円は、条文に書かれた基準の額である。実際の額は改定率を掛けた金額になるので、年度ごとに変わる

だからお客様に金額を伝えるときは、この数字を言わない「毎年度改定されます」と伝えて、ねんきんネットで実額を見ていただく

やさしく伝えるなら「40年間納めると満額で、足りない分は月数の割合で減ります」という形になる。割合の考え方は改定されないので、こちらを渡すほうが長く役に立つ。

免除と未納は、まったく違う

27条ただし書の各号が、免除の種類ごとに違う割合を定めている。

ここがこの相談でいちばん役に立つところである。

免除を受けた期間は、年金額に反映される。全額免除でも2分の1として数えられる。「払っていないから、ゼロ」ではない

一方、未納の期間は、26条の10年にも入らず、27条の月数にも入らないどちらにも効かない

免除と未納の違いは、条文の中でこれだけはっきりしている。保険料を納めるのが難しい方には、「未納のままにせず、免除の申請をご検討ください」と伝える意味がここにある。

これはお説教ではなく、制度の説明である。「同じ払えない状態でも、扱いが違います」という事実を渡す。

学生納付特例は、どちらに入るか

老齢基礎年金は、保険料納付済期間又は保険料免除期間(第九十条の三第一項の規定により納付することを要しないものとされた保険料に係るものを除く。)を有する者が……(国民年金法26条)

八 保険料全額免除期間(第九十条の三第一項の規定により納付することを要しないものとされた保険料に係るものを除く。)の月数……の二分の一に相当する月数(同法27条1項8号)

90条の3が学生納付特例の規定である。この特例による期間について、同じかっこ書が2か所に置かれている

27条1項8号のかっこ書で除かれているので、年金額の計算には入らない

一方、26条のただし書のほう「保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が十年」としており、こちらにかっこ書はない。10年の判定には入る

つまり学生納付特例の期間は、受け取れるかどうかには効くが、金額には効かない

お子さんが学生でいらっしゃるご家庭の相談では、この点をお伝えする。追納という仕組みもあるので、金額を増やしたいなら日本年金機構で相談していただく

「10年」と「40年」を分けて説明していると、この話がそのまま乗る。分けていないと説明できない。

2階建てであること

誰が入るか受け取るもの
1階日本に住む20歳以上60歳未満の方老齢基礎年金(国年法26条)
2階会社員・公務員など老齢厚生年金(厚年法42条)

やさしく伝えるなら「全員に共通の1階と、勤めていた方に乗る2階があります」という形になる。

ご自身がどちらかを知っていただくのが第一歩である。会社員として働いた期間があれば2階がある自営業だけなら1階のみである。

厚生年金に入っていた期間は、1階のほうにも数えられる。「厚生年金だけ払っていて、国民年金は払っていない」という状態にはならない。ここは誤解が多いので、聞かれたら説明する。

2階の額は働いていたときの報酬と期間で決まる。1階のように月数だけでは決まらないので、ねんきんネットで見ていただくのが確実である。

やさしく伝えるための言い換え

専門の言い方やさしい言い方
受給資格期間受け取れるかどうかの線
保険料納付済期間納めた月
保険料免除期間申請して免除された月
老齢基礎年金全員に共通の1階部分
老齢厚生年金勤めていた方に乗る2階部分
繰上げ・繰下げ受け取り始める年齢を早める・遅らせる

言い換えるときの原則は「短くしない」ことである。短い専門語を、長いふつうの言葉にほどく

そして一度は正式な名前も言う。お客様が後で調べたり、年金事務所で聞いたりするときに必要になるからだ。「受け取れるかどうかの線——これを受給資格期間といいます」という順序がよい。

案内の順番——この順で伝える

  1. 65歳からと答える(国年法26条、厚年法42条1号)。
  2. 2つの条件を分けると予告する。受け取れるかと、いくらか。
  3. 10年を説明する(同法26条ただし書)。受け取れるかどうかの線。
  4. 10年では満額にならないことを添える。
  5. 40年(480月)を説明する(同法27条ただし書)。
  6. 免除は反映されることを伝える(同項各号)。未納との違い。
  7. 学生納付特例があれば、10年には入るが金額には入らないことを伝える。
  8. 2階建てを説明する。ご自身がどちらか。
  9. 早める・遅らせるを説明する。どちらが得かは断定しない。
  10. ねんきんネットで実額を見ていただく。金額は毎年度変わる。

プロならこう説明する

ご質問が3つありましたので、順にお答えします。ただ、その前に1つだけ分けておきたいことがあります。

「受け取れるかどうか」の条件と、「いくら受け取れるか」の条件は、別のものです。出てくる数字も違います。ここが混ざると分かりにくくなりますので、分けてお話しします。

まず何歳からか65歳からです。これが基本の年齢です。

次に受け取れるかどうかの条件保険料を納めた月と、申請して免除された月を合わせて、10年分あるかどうかです。これを「受給資格期間」といいます。

ここで大事なことをお伝えします。10年は「受け取れるかどうか」の線であって、金額の話ではありません。

10年ちょうどですと、受け取れる額は満額の4分の1ほどになります。「10年払えば大丈夫」という意味ではないので、ここははっきり申し上げておきます。

ではいくらになるか。こちらは40年が基準です。40年きっちり納めた方が満額で、足りない分は月数の割合で減ります。

ここで、知っておいていただきたいことがあります。免除を受けた期間は、金額にも反映されます。

法律に、免除の種類ごとの割合が書かれていまして、全額免除の期間でも2分の1として数えられます。

一方で未納の期間は、10年にも入りませんし、金額の計算にも入りません。どちらにも効きません。

同じ「払えない」でも、申請して免除を受けるのと、そのままにするのとでは、扱いがまったく違います。もしお心当たりがありましたら、お住まいの市区町村か年金事務所でご相談ください。

お子さんが学生でいらっしゃる場合の「学生納付特例」も、少し違う扱いです。10年の判定には入りますが、金額の計算には入りません。あとから納める仕組みもありますので、そちらは年金事務所でお聞きください。

3つめのご質問、早めたり遅らせたりについてです。

早く受け取り始めると、1回あたりの金額は少なくなります。そしてその率は一生続きます。反対に遅らせると多くなります。

「どちらが得ですか」とよく聞かれるのですが、これは私には申し上げられません。何歳まで受け取るかによって変わりますし、それは誰にも分からないためです。

ただ、お決めになるための材料はお出しできます。いま受け取り始めた場合と、遅らせた場合の金額、それから他に受け取っていらっしゃる年金がないかどうか。ご一緒に整理しましょう。

最後に、ご自身の金額についてです。金額は毎年度改定されますので、私の記憶ではなく「ねんきんネット」でご確認いただくのがいちばん確実です。

お手続きの方法はご説明できますので、よろしければご一緒に見てみましょう。ご自分の数字をご覧になると、話が具体的になります。

よくある質問と、その答え方

「10年払えば大丈夫なんですよね」
受け取れるようになる、という意味では正しい。ただし金額の話とは別である。国民年金法26条ただし書の10年は受け取れるかどうかの線で、金額を決めるのは27条ただし書の480月(40年)である。10年ちょうどなら、受け取れる額は満額の4分の1ほどになる。この2つを最初に分けて話すと、誤解が生まれない。

「免除してもらった期間は、払っていないのと同じですよね」
違う。国民年金法27条1項の各号が、免除の種類ごとの割合を定めている。全額免除でも2分の1として年金額に反映される(同項8号)。一方未納の期間は、26条の10年にも入らず、27条の月数にも入らないどちらにも効かない同じ「払えない」でも、申請して免除を受けるかどうかで扱いがまったく違う

「学生のとき納付特例を使いました。年金は減りますか」
金額には反映されない。国民年金法27条1項8号のかっこ書が「第九十条の三第一項の規定により納付することを要しないものとされた保険料に係るものを除く」としているためだ。ただし26条ただし書の10年の判定には入る——こちらにはこのかっこ書がない。受け取れるかどうかには効くが、金額には効かない。追納の仕組みもあるので、増やしたい場合は年金事務所で相談していただく。

「繰上げと繰下げ、どちらが得ですか」
断定できない。何歳まで受け取るかによって変わり、それは誰にも分からないからだ。伝えられるのは「早めると1回あたりが減り、その率は生涯続く」「遅らせると増える」という仕組みと、いま受け取り始めた場合と遅らせた場合の実際の金額である。率は政令で定められ改定されうるので、数字は日本年金機構の資料で確認する

案内で外したくないポイント

  1. 原則は65歳(国年法26条、厚年法42条1号)。
  2. 「10年」は受け取れるかどうかの線(同法26条ただし書)。
  3. 「40年(480月)」が金額の基準(同法27条ただし書)。
  4. この2つを最初に分ける。混ぜると「10年で足りる」になる。
  5. 免除は年金額に反映される。全額免除でも2分の1(同条1項8号)。
  6. 未納はどちらにも効かない。免除との違いをはっきり伝える。
  7. 学生納付特例は10年に入るが、金額には入らない(同号かっこ書)。
  8. 2階建て。厚生年金の期間は1階にも数えられる。
  9. どちらが得かは断定しない。材料を渡す。
  10. 金額はねんきんネットで。毎年度改定される。

根拠条文のまとめ

条文見出しこの記事で使った内容
国民年金法26条支給要件65歳。ただし書で10年。学生納付特例のかっこ書
国民年金法27条年金額ただし書で480月を基準とした按分。1項各号で免除の種類ごとの割合
国民年金法27条1項8号同上全額免除は2分の1。かっこ書で学生納付特例を除く
国民年金法90条の3学生納付特例。保険料全額免除期間に算入することができる
厚生年金保険法42条受給権者1号 65歳以上/2号 合算して10年以上
条文の記述は執筆時点のもの。年金額は毎年度改定され、繰上げ・繰下げの率は政令で定められています。実際のご案内では日本年金機構の最新の資料・ねんきんネット・年金事務所でご確認ください。

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架空の実務場面をもとにした学習用の解説記事です。実在の会社・物件・取引ではありません。制度は改正されることがあるため、受験年度の最新情報もあわせてご確認ください。