FP3級の実務クエスト

【FP3級の実務】窓口3割、残りは誰が払う?──割合が年齢で変わることから伝える

治療費が思ったより少なくて驚いたお客様から、こんな相談が届く。

「この前ケガをして病院にかかったのですが、思っていたより支払いが少なくて驚きました。窓口では『3割の負担でいいですよ』と言われました。残りのお金は誰が払っているのでしょう? 会社勤めの人と自分でお店をやっている人では入る制度が違うとも聞きました。初心者にも分かるように教えてください。」

FPの実務で、公的医療保険をやさしく伝える場面は多い。ここで力になるのは「3割は、全員の割合ではありません」と伝えられたときだ。条文を読むと、割合は年齢と所得で細かく分かれている。この記事では、その分かれ方から整理する。

この記事は、学習アプリ「シカクエ」の実務クエスト「公的医療保険のしくみを説明する」を読み物として再構成したもの。人物・相談はすべて架空です。負担の割合には所得による例外があり改正もされるため、実際のご案内では加入されている保険者の最新の資料でご確認ください。

まず結論:残りは「みんなで出し合ったお金」から

お客様のご質問「残りのお金は誰が払っているのか」への答えは、加入している医療保険の保険者である。

その原資は加入者が納めた保険料と、公費である。誰かが立て替えているのではなく、あらかじめみんなで出し合っている

やさしく伝えるなら「みなさんが毎月納めている保険料から、まとめて支払われています」という形になる。

そしてお客様ご自身も、その出し合う側にいらっしゃる給与から引かれている健康保険料が、それにあたると伝えると、制度が自分ごとになる。

「3割」は全員の割合ではない

……療養の給付を受ける者は、その給付を受ける際、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、……当該各号に定める割合を乗じて得た額を、一部負担金として、……支払わなければならない。
一 七十歳に達する日の属する月以前である場合 百分の三十
二 七十歳に達する日の属する月の翌月以後である場合(次号に掲げる場合を除く。) 百分の二十
三 七十歳に達する日の属する月の翌月以後である場合であつて、……報酬の額が政令で定める額以上であるとき 百分の三十(健康保険法74条1項)

いつ負担の割合
70歳に達する日の属する月以前3割
その翌月以後2割
ただし所得が一定以上のとき3割

70歳を境に2割に下がる。ただし所得が一定以上の方は3割のままである。

区切り方に注目したい。「七十歳に達する日の属する月以前」——誕生日ではなく、月単位である。70歳の誕生日を迎えた月まで3割で、翌月から2割になる。

この「その月」なのか「翌月」なのかは、条文を読まないと分からない。境目の月に受診された方から質問が出るところである。

3号の「政令で定める額以上」は改定されるので、数字を覚えて答えない「所得によって3割のままの方がいます」と伝えて、保険者で確認していただく。

子どもは、また別の割合がある

家族療養費の額は、……次のイからニまでに掲げる場合の区分に応じ、当該イからニまでに定める割合を乗じて得た額
イ 被扶養者が六歳に達する日以後の最初の三月三十一日の翌日以後であつて七十歳に達する日の属する月以前である場合 百分の七十
ロ 被扶養者が六歳に達する日以後の最初の三月三十一日以前である場合 百分の八十(健康保険法110条2項1号)

こちらは給付される割合で書かれているので、裏返すと自己負担になる。70%給付=3割負担80%給付=2割負担である。

ロが小学校に上がる前のお子さんである。2割になる。

区切りが「六歳に達する日以後の最初の三月三十一日」——年度末である。誕生日ではない

この年度末で区切るという書き方は、遺族年金の子の要件と同じ形をしている。制度をまたいで同じ考え方が使われているので、覚えておくと応用が利く。

なお子どもの医療費については、市区町村が独自に助成していることが多い。実際の窓口負担はさらに軽くなる、あるいは無料になることがある。これは法律ではなく自治体の制度なので、お住まいで確認していただく

75歳になると、制度そのものが変わる

次の各号のいずれかに該当する者は、後期高齢者医療広域連合が行う後期高齢者医療の被保険者とする。
一 ……七十五歳以上の者
二 ……六十五歳以上七十五歳未満の者であつて、……政令で定める程度の障害の状態にある旨の……認定を受けたもの(高齢者の医療の確保に関する法律50条)

75歳になると、それまでの健康保険や国民健康保険から移る割合が変わるのではなく、制度そのものが変わる

だから保険証が変わり、保険料の計算も変わる。ご家族に該当する方がいらっしゃる相談では、この切り替わりを伝える

2号も押さえたい。65歳以上75歳未満でも、一定の障害の状態にある旨の認定を受けた方は、こちらの制度に入る。75歳だけではない

負担の割合は同法67条が定めていて、所得に応じた区分になっている。こちらも数字は保険者や市区町村で確認していただく

入る制度は、働き方で決まる

働き方入る制度
会社員・公務員など健康保険(協会けんぽ、健康保険組合、共済組合など)
自営業・退職された方など国民健康保険
75歳以上など後期高齢者医療制度

お客様がおっしゃった「会社勤めの人と自分でお店をやっている人では違う」は、このことである。

ただし窓口で払う割合は同じである。健康保険でも国民健康保険でも、70歳未満は3割になる。

違うのは、保険料の計算のしかたと、受けられる給付の一部である。

とくに傷病手当金出産手当金は、健康保険にはあるが国民健康保険では任意とされていて、実際には行われていないことが多い。自営業の方の相談では、ここが効く

やさしく伝えるなら「窓口の割合は同じですが、働けない間の収入を支える給付は、会社員の方の制度にあります」という形になる。

そして健康保険には「被扶養者」という考え方がある。ご家族が一定の条件を満たせば、その方の分の保険料を別に納めずに給付を受けられる。国民健康保険には、この仕組みがない。世帯の人数で保険料が変わる形になる。

やさしく伝えるための言い換え

条文の言葉やさしい言い方
一部負担金窓口で払う分
療養の給付保険が使える診療
保険者加入している健康保険の運営元
被扶養者扶養に入っているご家族
家族療養費ご家族が受診したときの給付
七十歳に達する日の属する月70歳の誕生日を迎えた月

いちばん気をつけたいのが境目の言い方である。

「70歳から2割」と言ってしまうと、誕生日からと受け取られる。条文は「達する日の属する月の翌月以後」なので、「70歳のお誕生日を迎えた月の、翌月から」と言う。

子どもの区切りも同じで、「6歳から3割」ではなく「小学校に上がる年の年度末まで2割」と言う。

境目は、条文どおりに言う。ここを丸めると、その月に受診された方が困る。

案内の順番——この順で伝える

  1. 残りは保険料と公費からと答える。自分も出す側にいる。
  2. 3割は全員ではないと伝える(健保法74条1項)。
  3. 70歳の境目は「月」で見る(同項1号・2号)。
  4. 所得が一定以上なら3割のまま(同項3号)。数字は保険者で。
  5. 小学校前は2割(同法110条2項1号ロ)。区切りは年度末。
  6. 自治体の助成を確認していただく。法律とは別。
  7. 75歳で制度が変わる(高確法50条)。割合ではなく制度。
  8. 入る制度は働き方で決まる。窓口の割合は同じ。
  9. 違うのは保険料の計算と、給付の一部。傷病手当金など。
  10. 被扶養者の仕組みを伝える。国民健康保険にはない。

プロならこう説明する

ご質問にお答えします。残りの7割は、加入されている健康保険が支払っています。

その元になっているのは、みなさんが納めている保険料公費です。誰かが立て替えているのではなく、あらかじめみんなで出し合っているという形です。

お客様も、その出し合う側にいらっしゃいます。お給料から引かれている健康保険料が、それにあたります。

そのうえで、1つお伝えしたいことがあります。「3割」は、全員の割合ではありません。

法律には年齢と所得で分けて書かれています。70歳を境に2割に下がります。ただし所得が一定以上の方は3割のままです。

ここで、境目の言い方にご注意ください。「70歳の誕生日から」ではありません。法律は「70歳に達する日の属する月の翌月以後」としています。

つまりお誕生日を迎えた月までは3割で、その翌月から2割です。1か月ずれますので、ご家族が該当されるときはお気をつけください。

お子さんについても別の割合があります。小学校に上がる前は2割です。

こちらの区切りも誕生日ではありません。法律は「6歳に達する日以後の最初の3月31日」としていますので、年度末までです。

ただ、お子さんの医療費は市区町村が独自に助成していることが多く、実際にはさらに軽くなったり、かからなかったりします。これは法律ではなく自治体の制度ですので、お住まいでご確認ください。

それから、75歳になると制度そのものが変わります。割合が変わるのではなく、入る制度が変わり、保険証も変わります。ご両親の年齢が近づいてきましたら、そのときにあらためてご説明します。

最後に、会社勤めの方と自営業の方の違いについてです。

おっしゃるとおり、入る制度が違います。会社員の方は健康保険、自営業の方は国民健康保険です。

ただし窓口で払う割合は同じです。どちらでも70歳未満なら3割です。

違うのは、保険料の計算のしかたと、受けられる給付の一部です。

とくに大きいのが、病気で働けない間の収入を支える給付です。会社員の方の健康保険には傷病手当金がありますが、国民健康保険には、実際にはないことがほとんどです。

ですので自営業でいらっしゃる方は、働けなくなったときの備えを別に考える必要があります。ここは大きな違いですので、覚えておいてください。

もう1つ、健康保険には「扶養」という考え方があります。ご家族が条件を満たせば、その方の分の保険料を別に納めずに、給付を受けられます。

国民健康保険には、この仕組みがありません。世帯の人数で保険料が変わる形になります。ここも違いの1つです。

よくある質問と、その答え方

「残りの7割は、国が払っているのですよね」
支払っているのは加入している医療保険の保険者である。その原資は加入者が納めた保険料公費で、誰かが立て替えているのではなく、あらかじめみんなで出し合っているご本人も出す側にいる——給与から引かれている健康保険料がそれにあたる、と伝えると制度が自分ごとになる。

「窓口は3割ですよね」
年齢と所得で変わる。健康保険法74条1項は70歳に達する日の属する月以前は3割、その翌月以後は2割とし、3号で所得が一定以上のときは3割としている。さらに110条2項1号ロにより、小学校に上がる前の被扶養者は2割である。「3割」は全員の割合ではない

「70歳の誕生日から2割になりますよね」
翌月からになる。健康保険法74条1項1号は「七十歳に達する日の属する月以前」を3割とし、2号が「その翌月以後」を2割としている。誕生日を迎えた月までは3割である。境目は条文どおりに言う——丸めると、その月に受診した方が困る。子どもの区切りも同じで、「6歳から」ではなく「6歳に達する日以後の最初の3月31日まで」である。

「会社員でも自営業でも、同じですよね」
窓口の割合は同じだが、給付の一部が違う。とくに傷病手当金は健康保険にはあるが、国民健康保険では実際には行われていないことがほとんどである。自営業の方は、働けなくなったときの備えを別に考える必要がある。また健康保険には「被扶養者」の仕組みがあるが、国民健康保険にはなく、世帯の人数で保険料が変わる

案内で外したくないポイント

  1. 残りは保険料と公費から。自分も出す側にいる。
  2. 「3割」は全員の割合ではない(健保法74条1項)。
  3. 70歳の境目は「月」で見る。誕生日ではない(同項1号・2号)。
  4. 所得が一定以上なら3割のまま(同項3号)。数字は保険者で確認。
  5. 小学校前は2割。区切りは年度末(同法110条2項1号ロ)。
  6. 自治体の助成は別の制度。お住まいで確認していただく。
  7. 75歳で制度そのものが変わる(高確法50条1号)。
  8. 65歳以上でも障害の認定を受ければ移る(同条2号)。
  9. 窓口の割合は制度で変わらない。違うのは保険料と給付の一部。
  10. 傷病手当金と被扶養者の仕組みが、自営業の方には無い点を伝える。

根拠条文のまとめ

条文見出しこの記事で使った内容
健康保険法74条1項一部負担金1号 70歳到達月以前は3割/2号 翌月以後は2割/3号 所得が一定以上は3割
健康保険法110条2項1号家族療養費イ 70%給付/ロ 6歳到達年度末以前は80%給付/ハニ 70歳以後
高齢者の医療の確保に関する法律50条被保険者1号 75歳以上/2号 65歳以上75歳未満で障害の認定を受けた者
高齢者の医療の確保に関する法律67条一部負担金所得に応じた区分で割合が定められている
条文の記述は執筆時点のもの。負担の割合には所得による例外があり、金額の基準は政令で定められ改定されます。子どもの医療費助成は自治体ごとの制度です。実際のご案内では加入されている保険者やお住まいの市区町村でご確認ください。

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