【FP3級の実務】節約しても貯まらない──「我慢の量」ではなく「回数」で考えると伝える
節約しても貯まらないお客様から、こんな相談が届く。
「毎月なんとなくお金が足りなくて、なかなか貯金ができません。食べたいものを我慢したりしているのですが、あまり効果を感じません。手取りは月18万ほど、家賃・通信・いくつかの月額サービスに入っています。どこから見直せばいいのか、初心者にも分かるように教えてください。」
FPの実務で、家計見直しの入口をやさしく伝える場面は多い。ここで力になるのは、節約の方法を教えることではなく「頑張り方が足りないのではありません」と先に言えたときだ。効果が出にくいのは、努力の量ではなく、効く場所が違うからである。この記事では、その考え方を整理する。
まず結論:分け方は「使わなくても出ていくか」
| 見分け方 | 例 | |
|---|---|---|
| 固定費 | 使わなくても出ていく | 家賃、通信、保険、月額のサービス、車の維持費 |
| 変動費 | 使った分だけ出ていく | 食費、日用品、交際費、趣味 |
分け方はこれだけである。「その月に何もしなくても、口座から出ていくか」で分かれる。
お客様は「食べたいものを我慢している」とおっしゃっている。これは変動費のほうである。
そして変動費の見直しは、毎月やり続けないと効果が続かない。気を抜くと戻る。だから「効果を感じない」という実感になりやすい。
ここは先にはっきり言う。「頑張り方が足りないのではありません。効く場所が違います」と。
固定費が効くのは「回数」が違うから
固定費と変動費の本当の違いは、金額の大きさではない。1回の見直しが、何回効くかである。
変動費は、その月だけ効く。翌月はまた、その月の分を我慢することになる。1回の努力が1回分である。
固定費は、1回の手続きで、その後ずっと効く。契約を1つ見直せば、翌月も、その次の月も、自動的に効く。
だから同じ月1,000円でも、意味がまったく違う。変動費の1,000円は毎月の努力が要るが、固定費の1,000円は一度きりの手続きで済む。
やさしく伝えるなら「我慢の量ではなく、回数で考えてください」という形になる。
そして1年分に直してお見せする。月1,000円は、年12,000円である。月単位だと小さく見えるものが、年で見ると判断しやすくなる。
見直す順番
- いま何にいくら払っているかを書き出す——見直しはここから。
- 使っていないものを止める——判断が要らない。いちばん先。
- 同じものを、安く持てないか——通信、保険、電気やガスの契約。
- 持ち方を変えられないか——車、住まい。効果は大きいが、生活が変わる。
- それでも足りなければ、変動費——ここが最後。
1が抜けている方が多い。お客様も「いくつかの月額サービスに入っています」とおっしゃっていて、正確な数を把握していらっしゃらない可能性がある。
まず全部を書き出す。引き落としの明細やアプリの契約一覧を一緒に見るだけで、忘れていたものが出てくることがよくある。
2は判断が要らないので最初に来る。使っていないものを止めるのに、我慢は必要ない。
3は同じものを安く持つ——生活の質が変わらないのが特徴である。ここがいちばん割がよい。
4は効果は大きいが、生活が変わる。だから後ろに置く。FPが勝手に「車を手放しましょう」と言わない。
5が最後である。変動費を最初に削らない——効果が続かないうえに、生活の楽しみから削ることになるからだ。
削らないほうがよいもの
固定費の中にも削ると困るものがある。「固定費だから全部見直す」ではない。
- 必要な保障——保険料は固定費だが、必要保障額を出さずに減らさない。多すぎる分を減らすのと、必要な分を削るのは別
- 健康に関わるもの——通院、必要な食事
- 仕事に必要なもの——通信や移動を削って収入が減れば、逆効果になる
- 人とのつながり——ここを削ると、暮らしが痩せる
見直しは、暮らしを小さくするためではない。同じ暮らしを、少ない支出で持てるようにするのが目的である。
だから「何を減らすか」より「何は減らさないか」を先に決めるのがよい。守るものが決まると、迷わずに済む。
浮いたお金の行き先を、先に決める
ここが見直しでいちばん抜けやすいところである。
浮いたお金は、行き先を決めておかないと、なくなる。口座に残っていれば、他のことに使われる。
だから見直しと同時に、行き先を決める。自動的に移る形にしておくと、意識しなくても貯まる。
お客様の目的は「貯金ができない」ことの解決である。支出を減らすところで終わると、目的に届かない。
そして先に貯める分をよけておくという順序もある。残った分で暮らす形にすると、我慢の意識を持たずに貯まることがある。
「余ったら貯める」は、たいてい余らない。——これは事実として伝えてよい。
数字の出し方
見直しの効果は1年分に直してお見せする。
月1,000円は年12,000円、月3,000円は年36,000円である。月単位だと「そのくらい」と思えるものが、年で見ると判断が変わる。
そして複数の見直しを合計する。1つずつは小さくても、合わせると大きい。
ただし効果を大きく見せない。実際に減る額だけを積む。「これだけ浮きます」と盛ると、翌月に合わなくなる。
そして手間もお伝えする。「これは30分で終わります」「これは書類が要ります」——効果と手間の両方が見えて、初めて選べる。
やさしく伝えるための言い換え
| 専門の言い方 | やさしい言い方 |
|---|---|
| 固定費 | 使わなくても出ていくお金 |
| 変動費 | 使った分だけ出ていくお金 |
| 家計の最適化 | 同じ暮らしを、少ない支出で持てるようにすること |
| 先取り貯蓄 | 先によけておいて、残りで暮らすこと |
| 可処分所得 | 税と社会保険料を引いた後の手取り |
「固定費」「変動費」は言葉としては短いが、どちらがどちらか覚えにくい。「使わなくても出ていくか」という見分け方のほうを渡すと、忘れない。
そして「節約」という言葉を、あまり使わないようにする。我慢の話に聞こえるからだ。「見直し」のほうが、実際にやることに近い。
案内の順番——この順で伝える
- 頑張り方の問題ではないと先に言う。
- 分け方を渡す。使わなくても出ていくか。
- 回数の違いを説明する。1回の見直しが何回効くか。
- 全部を書き出す。引き落としの明細を一緒に見る。
- 使っていないものから。判断が要らない。
- 同じものを安く。生活が変わらない。
- 減らさないものを決める。必要な保障、健康、仕事、つながり。
- 1年分に直す。効果と手間の両方を見せる。
- 浮いたお金の行き先を決める。自動的に移る形に。
- 変動費は最後。それでも足りなければ。
プロならこう説明する
まず、いちばんお伝えしたいことから申し上げます。
頑張り方が足りないのではありません。食べたいものを我慢していらっしゃるのに効果を感じないのは、効く場所が違うからです。
家計の支出は、2つに分かれます。分け方は簡単で、「その月に何もしなくても、口座から出ていくか」です。
出ていくものが固定費——家賃、通信、保険、月額のサービスなど。使った分だけ出ていくものが変動費——食費や日用品です。
お客様が我慢していらっしゃるのは変動費のほうです。
ここが大事なのですが、違いは金額の大きさではなく、1回の見直しが何回効くかです。
変動費の我慢は、その月だけ効きます。翌月はまた我慢が要ります。
固定費の見直しは、1回の手続きで、その後ずっと効きます。契約を1つ見直せば、翌月も、その次の月も、自動的に効きます。
ですので「我慢の量ではなく、回数で考えてください」とお伝えしています。
では、どこから見ていくか。順番があります。
1つめ。まず全部書き出しましょう。「いくつかの月額サービス」とおっしゃいましたが、正確にいくつあるかは把握されていますか。
引き落としの明細を一緒に見るだけで、忘れていたものが出てくることがよくあります。ここから始めさせてください。
2つめ。使っていないものを止めます。これは判断が要りません。我慢も必要ありません。いちばん先にやることです。
3つめ。同じものを、安く持てないかを見ます。通信、電気やガスの契約など。生活の質が変わらないのが、この段階のよいところです。
4つめ。持ち方そのものを変えられないか。お車や住まいです。効果は大きいのですが生活が変わりますので、後ろに置いています。私から「手放しましょう」とは申し上げません。
5つめが変動費です。ここが最後です。
それと、削らないほうがよいものもお伝えしておきます。
必要な保障、健康に関わるもの、お仕事に必要なもの、人とのつながり。ここは先に決めておきましょう。
とくに保険料は固定費ですが、必要な保障額を出さずに減らさないようにしてください。多すぎる分を減らすのと、必要な分を削るのは別のことです。
見直しは、暮らしを小さくするためではありません。同じ暮らしを、少ない支出で持てるようにすることです。ですので「何を減らすか」より先に「何は減らさないか」を決めましょう。
数字の出し方についてです。1年分に直してお見せします。月1,000円は年12,000円です。月単位だと小さく見えるものが、年で見ると判断しやすくなります。
ただし効果は盛りません。実際に減る分だけを積みます。手間もお伝えしますので、効果と手間の両方をご覧になって選んでください。
最後に、いちばん抜けやすいことをお伝えします。
浮いたお金の行き先を、先に決めてください。口座に残っていると、他のことに使われます。
お客様のご相談は「貯金ができない」ことでした。支出を減らすところで終わると、目的に届きません。
できれば自動的に移る形にしておきましょう。先に貯める分をよけて、残りで暮らすという順序にすると、我慢している感じがないまま貯まります。
「余ったら貯める」は、たいてい余りません。これは私が申し上げるまでもなく、多くの方が経験されていることだと思います。
よくある質問と、その答え方
「我慢しているのに、貯まりません」
頑張り方の問題ではない。我慢の対象になりやすい食費などは変動費で、その月だけ効く。翌月はまた我慢が要るので、効果が続かない。一方固定費は1回の手続きでその後ずっと効く。違いは金額の大きさではなく、1回の見直しが何回効くかである。「我慢の量ではなく、回数で考える」と伝える。
「どこから見直せばいいですか」
順番がある。①全部書き出す ②使っていないものを止める ③同じものを安く持てないか ④持ち方を変えられないか ⑤変動費。①が抜けている方が多く、引き落としの明細を一緒に見るだけで忘れていたものが出てくる。②は判断も我慢も要らないので最初。③は生活の質が変わらないのでいちばん割がよい。④は効果が大きいが生活が変わるので後ろに置き、FPが勝手に勧めない。
「固定費なら、全部見直したほうがいいですよね」
そうではない。必要な保障・健康に関わるもの・仕事に必要なもの・人とのつながりは、削ると困る。とくに保険料は必要保障額を出さずに減らさない——多すぎる分を減らすのと、必要な分を削るのは別である。見直しは暮らしを小さくするためではなく、同じ暮らしを少ない支出で持てるようにすること。だから「何を減らすか」より先に「何は減らさないか」を決める。
「見直せば、貯まりますよね」
行き先を決めないと、なくなる。浮いたお金が口座に残っていれば、他のことに使われる。だから見直しと同時に行き先を決め、自動的に移る形にする。先に貯める分をよけて、残りで暮らす順序にすると、我慢の意識を持たずに貯まることがある。「余ったら貯める」は、たいてい余らない。
案内で外したくないポイント
- 頑張り方の問題ではないと先に言う。
- 分け方は「使わなくても出ていくか」。
- 違いは回数。1回の見直しが何回効くか。
- まず全部書き出す。把握が抜けていることが多い。
- 使っていないものが最初。判断も我慢も要らない。
- 同じものを安く持つのが、いちばん割がよい。
- 持ち方を変える話は後ろに置く。勝手に勧めない。
- 減らさないものを先に決める。保険は必要保障額を出してから。
- 1年分に直す。効果は盛らず、手間も伝える。
- 浮いたお金の行き先を決める。「余ったら貯める」は余らない。