FP3級の実務クエスト

【FP3級の実務】介護保険で何が受けられる?──「払う年齢」と「使える年齢」は違う

親の介護を心配するお客様から、こんな相談が届く。

「親が少しずつ歳を重ねてきて、将来の介護が心配になってきました。給与から『介護保険料』が引かれていることは知っていますが、いざというときに何が受けられるのかを分かっていません。初心者にも分かるように教えてもらえますか?」

FPの実務で、公的介護保険をやさしく伝える場面は多い。ここで力になるのは、サービスの名前を並べることよりも「払う年齢」と「使える年齢」が違うと最初に伝えられたときだ。給与から引かれているのに使えない期間がある——その理由が分かると、制度の形が見えてくる。この記事では、そこから整理する。

この記事は、学習アプリ「シカクエ」の実務クエスト「公的介護保険のしくみを説明する」を読み物として再構成したもの。人物・相談はすべて架空です。負担の割合や支給限度額は改定され、市町村ごとに異なる部分もあるため、実際のご案内ではお住まいの市区町村や地域包括支援センターでご確認ください。

まず結論:払うのは40歳から、使えるのは原則65歳から

次の各号のいずれかに該当する者は、市町村……が行う介護保険の被保険者とする。
一 市町村の区域内に住所を有する六十五歳以上の者(以下「第一号被保険者」という。)
二 市町村の区域内に住所を有する四十歳以上六十五歳未満の医療保険加入者(以下「第二号被保険者」という。)(介護保険法9条)

被保険者は40歳からである。だから40歳になると給与から介護保険料が引かれ始める

ところが使えるようになるのは、原則として65歳からである。ここが分かりにくさの正体だ。

お客様は「引かれているのに、何が受けられるか分かっていない」とおっしゃっている。まさにこの期間にいらっしゃる

だから最初に「払う年齢と使える年齢が違います」と伝える。これだけで、もやもやの半分は晴れる

40歳から64歳の間は、原因が限られる

この法律において「要介護者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
一 要介護状態にある六十五歳以上の者
二 要介護状態にある四十歳以上六十五歳未満の者であって、その要介護状態の原因である身体上又は精神上の障害が加齢に伴つて生ずる心身の変化に起因する疾病であつて政令で定めるもの(以下「特定疾病」という。)によつて生じたものであるもの(介護保険法7条3項)

1号と2号を並べると、違いがはっきりする。

65歳以上の方は、原因を問わない。要介護状態にあれば対象になる。

一方40歳から64歳の方は、特定疾病によるものに限られる原因が問われる

特定疾病は「加齢に伴つて生ずる心身の変化に起因する疾病であつて政令で定めるもの」とされている。政令で列挙されているので、具体的な病名は政令や市町村の資料で確認する

ここは相談で誤解されやすい。「保険料を払っているのだから、事故でけがをしても使える」と思われることがある。40歳から64歳の間は、そうではない

やさしく伝えるなら「64歳までは、加齢によるとされる決められた病気が原因の場合に限られます」という形になる。

4項は要支援者についても同じ形で定めている。要介護より軽い段階にも制度がある。

申請しないと、始まらない

介護給付を受けようとする被保険者は、要介護者に該当すること及びその該当する要介護状態区分について、市町村の認定(以下「要介護認定」という。)を受けなければならない。
2 予防給付を受けようとする被保険者は、……市町村の認定(以下「要支援認定」という。)を受けなければならない。(介護保険法19条)

「受けなければならない」である。自動では始まらない

だから誰かが申請する必要がある。ご本人が難しい状態であれば、ご家族が申請することになる。

この記事の相談者にとって、ここがいちばん実用的な情報である。「そのときが来たら、まず市区町村に申請します」と知っているだけで、動き出しが早くなる。

そして認定には「区分」がある。19条1項が「その該当する要介護状態区分について」としているとおり、該当するかどうかだけでなく、どの段階かも判定される

この区分によって、後で述べる使える上限が変わる。認定は入口であり、同時に量も決める

相談では「お住まいの市区町村の窓口か、地域包括支援センターへ」と行き先を渡す。制度の名前より、行き先のほうが役に立つ

自己負担があり、上限がある

居宅介護サービス費の額は、……厚生労働大臣が定める基準により算定した費用の額……の百分の九十に相当する額(介護保険法41条4項1号)

「百分の九十」とあるので、原則として費用の9割が給付され、1割が自己負担になる。

ただし所得によって、この割合が変わる仕組みが別に置かれている。一律ではないので、割合の数字を断定しない

お客様には「原則は1割のご負担ですが、所得によって変わります。市区町村で確認しましょう」と伝える。

居宅要介護被保険者が居宅サービス等区分……ごとに月を単位として……受けた……費用の額の総額……の合計額は、居宅介護サービス費等区分支給限度基準額を基礎として……算定した額の百分の九十に相当する額を超えることができない。
2 前項の居宅介護サービス費等区分支給限度基準額は、……要介護状態区分に応じた標準的な利用の態様……を勘案して厚生労働大臣が定める額とする。
3 市町村は、前項の規定にかかわらず、条例で定めるところにより、……その額を超える額を、当該市町村における居宅介護サービス費等区分支給限度基準額とすることができる。(介護保険法43条)

3つのことが読み取れる。

1つめ。月を単位として上限がある使い放題ではない

2つめ。上限は要介護状態区分に応じて決まる認定の区分が、使える量を決めている

3つめ。金額は厚生労働大臣が定める改定されるので、数字を覚えて答えない

そして上限を超えた分がどうなるかを伝える。超えた部分は給付の対象外になるので、その分は全額の負担になる。

ここは民間の介護保険や貯蓄を考える場面につながる。「公的で足りない部分がどこか」が分かって初めて、備えの話ができる

3項も見落とせない。市町村は条例で、この額を超える額を定めることができるお住まいによって違うことがある「一般論ではなく、お住まいの市区町村で確認しましょう」と言える根拠になる。

やさしく伝えるための言い換え

条文の言葉やさしい言い方
第一号被保険者/第二号被保険者65歳以上の方/40歳から64歳の方
特定疾病加齢によるとされる、決められた病気
要介護認定市区町村に申請して受ける判定
要介護状態区分どの段階に当たるかの区分
区分支給限度基準額1か月に使える上限
予防給付要介護より軽い段階のサービス

この分野は用語が長い「居宅介護サービス費等区分支給限度基準額」のような言葉は、そのまま言っても伝わらない。

「1か月に使える上限」とほどく。その言葉が何のためにあるかまで含めて言い換える。

そして相談者が窓口で使う言葉だけは、正式に一度言う「要介護認定」は、市区町村で必ず出てくる言葉である。

案内の順番——この順で伝える

  1. 払う年齢と使える年齢が違うと最初に伝える(介護保険法9条)。
  2. 65歳以上は原因を問わない(同法7条3項1号)。
  3. 40〜64歳は特定疾病に限る(同項2号)。
  4. 申請と認定が要る(同法19条)。自動では始まらない。
  5. 行き先を渡す。市区町村の窓口、地域包括支援センター。
  6. 認定には区分がある。段階も判定される(同条1項)。
  7. 自己負担は原則1割、所得により変わる(同法41条4項)。
  8. 月ごとに上限がある(同法43条1項・2項)。区分で決まる。
  9. 超えた分は全額の負担。ここが備えを考える場面になる。
  10. 市町村で違うことがある(同条3項)。お住まいで確認していただく。

プロならこう説明する

「引かれているのに、何が受けられるか分からない」というのは、制度の作りから来る自然な疑問だと思います。まずそこからご説明します。

介護保険は、払う年齢と使える年齢が違います。

払うのは40歳からです。ですのでお給料から引かれています。使えるようになるのは、原則65歳からです。

この差があるので、「払っているのに実感がない」という状態になります。ここが分かるだけで、だいぶすっきりされると思います。

もう少し正確に申し上げます。40歳から64歳の間もまったく使えないわけではありません。ただし原因が限られます。

法律に、「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病」——決められた病気が原因の場合に限る、と書かれています。ですので事故でおけがをされた場合などは、この制度の対象にはなりません。

65歳を過ぎますと、原因は問われません。介護が必要な状態であれば対象になります。

次に、いちばん実用的なことをお伝えします。

この制度は、申請しないと始まりません。法律に「認定を受けなければならない」と書かれています。年齢が来たら自動的に、ということはありません。

ですので、そのときが来たら、お住まいの市区町村の窓口か、地域包括支援センターへご相談ください。ご本人が難しい状態でしたら、ご家族が申請できます。

この判定には段階があります。介護が必要かどうかだけでなく、どの段階に当たるかまで決まります。

そしてこの段階によって、1か月に使える上限が変わります。認定は入口であり、同時に使える量も決めている、という作りです。

費用のご負担についてです。原則は1割ですが、所得によって変わる仕組みになっていますので、正確なところは市区町村でご確認いただきます。

それと、使い放題ではありません。1か月に使える上限が決まっていて、それを超えた分は全額のご負担になります。

ここが、備えを考える場面になります。公的な制度でどこまで賄えて、どこから足りないか。それが分かってから、貯蓄や民間の保険を考えましょう。

最後に1つ。上限の額は、市区町村が条例で上乗せできることになっています。ですのでお住まいによって違うことがあります。

一般論ではなく、お住まいの市区町村でご確認いただくのがいちばん確実です。いまのうちに地域包括支援センターの場所だけ調べておかれると、いざというときに動きやすいと思います。

よくある質問と、その答え方

「40歳から払っているので、40歳から使えますよね」
原則は65歳からになる。介護保険法9条は被保険者を65歳以上(第一号)40歳以上65歳未満の医療保険加入者(第二号)に分けており、40歳から保険料を負担する。ただし7条3項は、40歳から64歳の方について特定疾病によって生じたものに限っている。「払う年齢」と「使える年齢」が違う——ここを最初に伝えると、もやもやの半分は晴れる。

「事故でけがをしても使えますよね」
年齢による。介護保険法7条3項1号は65歳以上の者について原因を問わないが、2号は40歳以上65歳未満の者について「加齢に伴つて生ずる心身の変化に起因する疾病であつて政令で定めるもの」によるものに限っている。40歳から64歳の間は、原因が問われる。具体的な病名は政令に列挙されているので、市区町村の資料で確認する。

「65歳になったら、自動的に受けられますよね」
申請が要る。介護保険法19条1項は「市町村の認定……を受けなければならない」としている。自動では始まらない。ご本人が難しい状態であればご家族が申請する。そして同項は「その該当する要介護状態区分について」ともしており、どの段階かまで判定される。この区分が、使える量を決める。

「1割負担なら、いくら使っても大丈夫ですよね」
上限がある。介護保険法43条1項は、月を単位として区分支給限度基準額を基礎として算定した額を超えることができないとしており、超えた分は給付の対象外になる。額は同条2項により厚生労働大臣が定めるので改定されるし、同条3項により市町村が条例で上乗せできるためお住まいで違うことがある。負担の割合も所得によって変わる。数字は市区町村で確認する

案内で外したくないポイント

  1. 払うのは40歳から、使えるのは原則65歳から(介護保険法9条)。
  2. 65歳以上は原因を問わない(同法7条3項1号)。
  3. 40〜64歳は特定疾病に限る(同項2号)。事故のけがは対象外。
  4. 要支援にも制度がある(同条4項)。
  5. 申請と認定が要る(同法19条)。自動では始まらない。
  6. 区分まで判定される。それが使える量を決める(同条1項)。
  7. 自己負担は原則1割、所得により変わる(同法41条4項)。断定しない。
  8. 月ごとに上限がある(同法43条1項・2項)。使い放題ではない。
  9. 超えた分は全額の負担。備えを考える場面はここ。
  10. 市町村が条例で上乗せできる(同条3項)。お住まいで確認する。

根拠条文のまとめ

条文見出しこの記事で使った内容
介護保険法7条3項・4項定義要介護者・要支援者。65歳以上は原因を問わず、40〜64歳は特定疾病に限る
介護保険法9条被保険者第一号(65歳以上)/第二号(40歳以上65歳未満の医療保険加入者)
介護保険法19条市町村の認定要介護認定・要支援認定を受けなければならない。区分についても認定
介護保険法41条4項居宅介護サービス費厚生労働大臣が定める基準により算定した費用の額の百分の九十
介護保険法43条1項・2項居宅介護サービス費等に係る支給限度額月を単位とした上限。要介護状態区分に応じ厚生労働大臣が定める額
介護保険法43条3項同上市町村は条例でその額を超える額を定めることができる
条文の記述は執筆時点のもの。特定疾病の範囲は政令で定められ、負担の割合や支給限度額は改定されるほか、市町村ごとに異なる部分もあります。実際のご案内ではお住まいの市区町村や地域包括支援センターでご確認ください。

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架空の実務場面をもとにした学習用の解説記事です。実在の会社・物件・取引ではありません。制度は改正されることがあるため、受験年度の最新情報もあわせてご確認ください。