【FP3級の実務】夫に万一のとき、いくら出る?──「誰に出るか」から確かめる
生命保険の見直しを考えている相談者から、こんな相談が届く。
「夫に万一のことがあったら、と考えると不安で、大きな保険に入るべきか迷っています。子どもは小学生が2人です。公的な年金だけでは、やはり足りないですよね。」
FPの実務は、保険の話をする前に公的年金を確認する。ここで力になるのは、金額を先に答えることではなく「そもそも誰に、どの年金が出るのか」を確かめられたときだ。遺族年金は出る人と出ない人が条文で分かれている。この記事では、その分かれ目から整理する。
まず結論:2階建てで、条件がそれぞれ違う
| 誰に出るか | 条文 | |
|---|---|---|
| 1階(遺族基礎年金) | 子のある配偶者、または子 | 国民年金法37条の2第1項 |
| 2階(遺族厚生年金) | 配偶者・子・父母・孫・祖父母(順位がある) | 厚生年金保険法59条 |
2階が出るのは、亡くなった方が会社員や公務員として厚生年金に入っていた場合である。自営業だけの方には2階がない。
だから最初に伺うのは「ご主人はお勤めですか」である。ここで話がまるごと変わる。
今回はお子さんが2人いらっしゃるので、ご主人が会社員なら1階と2階の両方が対象になる。
1階は「子がいること」が条件
遺族基礎年金を受けることができる配偶者又は子は、……死亡の当時その者によつて生計を維持し、かつ、次に掲げる要件に該当したものとする。
一 配偶者については、……次号に掲げる要件に該当する子と生計を同じくすること。
二 子については、十八歳に達する日以後の最初の三月三十一日までの間にあるか又は二十歳未満であつて障害等級に該当する障害の状態にあり、かつ、現に婚姻をしていないこと。(国民年金法37条の2第1項)
1号の書き方をよく読みたい。配偶者は「2号の要件に該当する子と生計を同じくすること」が条件になっている。
つまり子がいなければ、配偶者に1階は出ない。「配偶者だから出る」のではなく「子がいるから出る」という構造である。
そして2号が「十八歳に達する日以後の最初の三月三十一日まで」としている。誕生日ではなく年度末である。
ここがこの相談でいちばん大事になる。末のお子さんが18歳の年度末を過ぎると、1階は終わる。ずっと出続けるものではない。
小学生が2人でいらっしゃるなら、下のお子さんの年齢から、あと何年で1階が終わるかが計算できる。この「あと何年」を渡すのが、FPの仕事になる。
2項に手当てもある。死亡の当時胎児であつた子が生まれたときは、将来に向かって生計を維持していたものとみなされる。
2階は、妻には年齢の条件がない
遺族厚生年金を受けることができる遺族は、……配偶者、子、父母、孫又は祖父母……であつて、……その者によつて生計を維持したものとする。ただし、妻以外の者にあつては、次に掲げる要件に該当した場合に限るものとする。
一 夫、父母又は祖父母については、五十五歳以上であること。
二 子又は孫については、十八歳に達する日以後の最初の三月三十一日までの間にあるか、又は二十歳未満で障害等級の一級若しくは二級に該当する障害の状態にあり、かつ、現に婚姻をしていないこと。(厚生年金保険法59条1項)
ただし書が「妻以外の者にあつては」としている。妻には年齢の条件がない。
だから2階は、1階が終わったあとも続く。「子が大きくなったら全部なくなる」ではない。
この違いを伝えると、相談者の見え方が変わる。1階は期限つき、2階は土台という形である。
一方、夫が受け取る場合は55歳以上という条件がある。しかも65条の2により60歳になるまで支給が停止される(ただし夫が遺族基礎年金の受給権を持つときを除く)。妻が亡くなった場合は、扱いが違う。
共働きのご家庭なら、両方の場合を見ておくとよい。「夫に万一」だけを考えていると、片側しか見ていないことになる。
2階には、妻への加算がある
厚生年金保険法62条1項は、遺族厚生年金の受給権者である妻で、権利を取得した当時40歳以上65歳未満であった者、または40歳に達した当時、要件に該当する子と生計を同じくしていた者が65歳未満であるときに、加算を行うとしている。
この加算は1階が終わったあとの落ち込みを、ある程度埋める役割をしている。
だから1階が終わる時期とこの加算がある期間を、時系列で並べると分かりやすい。
相談者に渡すのは、金額の一覧ではなく、この時系列である。いつ、何が変わるか——それが分かれば、保険で埋めるべき期間が見える。
金額はねんきんネットや年金事務所で実額を出していただく。毎年度改定されるので、記憶で答えない。
前提として、納付の状況が問われる
ただし、第一号又は第二号に該当する場合にあつては、死亡した者につき、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までに被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の三分の二に満たないときは、この限りでない。(国民年金法37条ただし書。厚生年金保険法58条1項ただし書も同旨)
「死亡日の前日において」という限定がある。亡くなってから慌てて納めても間に合わないという趣旨である。
そして「三分の二に満たないとき」が要件を満たさない場合なので、3分の2以上納めていれば満たす。
会社員でいらっしゃれば給与から天引きされているので、通常は問題にならない。ただし転職の合間や、自営業だった期間がある場合は確認する価値がある。
ここはお説教にしない。「念のため、ねんきん定期便で納付の状況を見ておきましょう」という形で伝える。
なお、直近1年間に未納がなければよいとする経過措置も置かれているが、期限のある措置なので、これが使えることを前提にした説明はしない。適用の有無はその時点の条文と年金事務所で確認する。
やさしく伝えるための言い換え
| 条文の言葉 | やさしい言い方 |
|---|---|
| 遺族基礎年金 | お子さんがいる間に出る1階部分 |
| 遺族厚生年金 | お勤めだった方の家族に出る2階部分 |
| 生計を維持していた | その方の収入で暮らしていた |
| 18歳に達する日以後の最初の3月31日 | 18歳になった年の年度末(3月31日) |
| 保険料納付要件 | 保険料を納めてきた状況 |
| 受給権を取得する | 受け取れる権利ができる |
「18歳に達する日以後の最初の3月31日」は、そのまま言うと分かりにくい。「18歳になった年の年度末まで」とほどく。
そして「お誕生日ではなく、年度末です」と一言添える。ここを勘違いされると、終わる時期が1年ずれる。
案内の順番——この順で伝える
- ご主人はお勤めかを伺う。2階の有無が決まる(厚年法59条)。
- お子さんの年齢を伺う。とくに下のお子さん(国年法37条の2第1項2号)。
- 1階は子がいる間と伝える(同項1号)。年度末で終わる。
- あと何年かを計算してお見せする。
- 2階は妻に年齢の条件がないと伝える(厚年法59条1項ただし書)。
- 40歳以降の加算を伝える(同法62条1項)。
- 時系列で並べる。いつ、何が変わるか。
- 納付の状況を確認していただく(国年法37条ただし書)。
- ねんきんネットで実額を出していただく。
- 足りない期間と金額を出す。そこからが保険の話になる。
プロならこう説明する
保険のお話に入る前に、すでに備わっている分を確認させてください。そこが分からないと、いくら足せばよいかが決まりません。
まず伺います。ご主人はお勤めでいらっしゃいますか。……会社員でいらっしゃるのですね。でしたら1階と2階の両方が対象になります。
公的な遺族年金は2階建てになっていまして、それぞれ条件が違います。ここが分かりにくいところですので、順にご説明します。
1階は、お子さんがいらっしゃる間に出るものです。
法律の書き方が少し独特で、配偶者の方については「要件に該当する子と生計を同じくすること」となっています。つまり「配偶者だから出る」のではなく「お子さんがいるから出る」という作りです。
ですので、お子さんが条件から外れると、1階は終わります。
その条件が「18歳になった年の年度末まで」です。お誕生日ではなく、3月31日までですので、ここはお間違えのないように。
下のお子さんはおいくつでしょうか。……そうしますと、あと◯年で1階が終わるという計算になります。この「あと何年」が、いちばん大事な数字です。
次に2階です。こちらはご主人がお勤めだったことに対して出るもので、条件が違います。
奥さまには年齢の条件がありません。ですので、1階が終わったあとも2階は続きます。
「子どもが大きくなったら全部なくなる」とお考えの方が多いのですが、そうではありません。ここは押さえておいていただきたい部分です。
それと、奥さまが40歳から65歳になるまでの間、条件を満たせば加算があります。1階が終わったあとの落ち込みを、ある程度埋める仕組みです。
ですので、金額の一覧ではなく、時系列でお出しします。いつ、何が変わるか。それが見えれば、保険で埋めるべき期間が決まります。
金額は毎年度改定されますので、私の概算ではなくねんきんネットで実額を出していただけますか。金額が大きいので、置き方で結論が変わってしまいます。
もう1つ、確認させてください。保険料を納めてこられた状況です。
遺族年金には納付の条件がありまして、しかも法律に「死亡日の前日において」と書かれています。あとから納めても間に合わない仕組みです。
お勤めでいらっしゃれば給与から天引きされていますので、通常は問題ありません。ただ転職の合間や、自営業でいらっしゃった期間がありましたら、念のためねんきん定期便で見ておきましょう。
それから、逆の場合も一度考えておかれるとよいと思います。奥さまに万一のことがあった場合です。
ご主人が2階を受け取れるのは55歳以上で、しかも実際に受け取れるのは60歳からという決まりがあります(お子さんがいらっしゃる間は、この停止はありません)。片側だけ見ていると、こちらが抜けます。
ここまで整理できましたら、足りない期間と金額が出ます。保険のお話は、そこからです。「不安だから大きく」ではなく、足りない分だけを考えましょう。
よくある質問と、その答え方
「配偶者なので、遺族基礎年金は出ますよね」
子がいることが条件になる。国民年金法37条の2第1項1号は、配偶者について「次号に掲げる要件に該当する子と生計を同じくすること」を求めている。「配偶者だから出る」のではなく「子がいるから出る」という構造で、子が2号の要件から外れれば終わる。
「18歳の誕生日までですよね」
年度末までである。同項2号は「十八歳に達する日以後の最初の三月三十一日までの間にあるか」としている。誕生日ではなく3月31日で区切るので、早生まれか遅生まれかで実際の期間が変わる。ここを勘違いされると、終わる時期が1年ずれる。
「子どもが大きくなったら、年金は全部なくなりますよね」
1階は終わるが、2階は続く。厚生年金保険法59条1項ただし書は「妻以外の者にあつては」要件を課しており、妻には年齢の条件がない。さらに同法62条1項により、40歳以上65歳未満の妻には加算がある。1階は期限つき、2階は土台という形で伝えると分かりやすい。
「妻に万一のときも、同じように出ますよね」
条件が違う。厚生年金保険法59条1項1号は夫、父母又は祖父母について55歳以上であることとし、65条の2は60歳に達するまで支給を停止するとしている(ただし書で、夫が遺族基礎年金の受給権を有するときは停止しない)。「夫に万一」だけを考えていると、こちら側が抜ける。共働きのご家庭では両方を見ておく。
案内で外したくないポイント
- まず「お勤めか」を伺う。2階の有無が決まる。
- 1階は子がいることが条件(国年法37条の2第1項1号)。
- 子の要件は18歳到達年度末まで(同項2号)。誕生日ではない。
- 「あと何年で1階が終わるか」を計算して渡す。
- 2階は妻に年齢の条件がない(厚年法59条1項ただし書)。1階の後も続く。
- 40歳以上65歳未満の妻には加算(同法62条1項)。
- 夫が受け取る場合は55歳以上・支給は60歳から(同法59条1項1号、65条の2)。
- 納付の状況は「死亡日の前日において」(国年法37条ただし書)。
- 金額はねんきんネットで実額を。毎年度改定される。
- 時系列で渡す。いつ何が変わるかが分かれば、保険で埋める期間が決まる。
根拠条文のまとめ
| 条文 | 見出し | この記事で使った内容 |
|---|---|---|
| 国民年金法37条 | 支給要件 | ただし書で保険料納付要件(死亡日の前日において・3分の2) |
| 国民年金法37条の2第1項・2項 | 遺族の範囲 | 1号 配偶者は要件該当の子と生計を同じくすること/2号 18歳到達年度末まで等/2項 胎児 |
| 厚生年金保険法58条1項 | 受給権者 | ただし書で納付要件 |
| 厚生年金保険法59条1項 | 遺族 | ただし書「妻以外の者にあつては」/1号 夫・父母・祖父母は55歳以上/2号 子・孫 |
| 厚生年金保険法62条1項 | — | 40歳以上65歳未満の妻への加算 |
| 厚生年金保険法65条の2 | — | 夫・父母・祖父母は60歳まで支給停止。ただし書で夫が遺族基礎年金の受給権を有するとき |