【FP3級の実務】ふるさと納税って結局トクなの?──お金の流れを時間順に並べる
家計の見直しをしている相談者から、こんな相談が届く。
「ふるさと納税がお得だと聞くのですが、寄附をするのに、なぜ得になるのかがわかりません。やったほうがいいのでしょうか。」
FPの実務は、しくみを一度で腑に落としてもらいたい。ここで力になるのは「トクかどうか」に直接答えることではなく、お金の流れを時間順に並べて渡せたときだ。分かりにくさの正体は、出ていくのが先で、戻るのが後という順番にある。この記事では、その順番から整理する。
まず結論:「納税」ではなく「寄附」である
名前が「ふるさと納税」なので、税金を納める先を選ぶ制度に見える。実際は自治体への寄附である。
ここを最初にそろえておかないと、その後の説明が全部ずれる。「まず寄附としてお金が出ていきます」から始める。
そして出ていった分が、後から税の控除という形で戻ってくる。この順番が、分かりにくさの正体である。
| 時期 | 何が起きるか |
|---|---|
| ①寄附したとき | お金が出ていく。返礼品と受領証明書が届く |
| ②手続き | 確定申告、またはワンストップの申請 |
| ③翌年 | 所得税が戻り、住民税が減る |
③が翌年である点が大事だ。すぐには戻らない。
しかも住民税のほうは「戻ってくる」のではなく「減る」。お金が振り込まれるわけではないので、実感しにくい。
相談者に「翌年の住民税が減る形なので、通知書で確認してください」と伝えておくと、後で「本当に戻ったのか」と不安にならない。
「2,000円」は戻らない
居住者が、各年において、特定寄附金を支出した場合において、第一号に掲げる金額が第二号に掲げる金額を超えるときは、その超える金額を、……控除する。
二 二千円(所得税法78条1項)
控除の対象になるのは2,000円を超える部分である。2,000円分は戻らない。
だから「実質2,000円の負担」という言い方になる。タダではない。
相談者の「なぜ得になるのか」への答えは、ここにある。2,000円を払って、返礼品を受け取っているという形である。
やさしく伝えるなら「2,000円を負担して、その分の返礼品をいただく制度です」という言い方になる。これなら誤解が生まれない。
手続きをしないと、戻らない
ここがいちばん伝えたいところである。寄附しただけでは、税は減らない。
方法は2つある。確定申告と、ワンストップの申請である。
前項の規定による申告特例通知書の送付の求め……は、……申告特例の求めを行う都道府県知事等の数が五以下であると見込まれる場合に限り、行うことができる。(地方税法附則7条2項)
ワンストップが使えるのはもともと確定申告をしない方で、申請先が5つの自治体までである。
数えるのは寄附の回数ではなく、自治体の数である。条文が「都道府県知事等の数」としている。同じ自治体に3回寄附しても1つと数える。
そして受領証明書は必ず保管していただく。ワンストップの申請をされた場合でも、である。
理由は、あとから確定申告をすると、ワンストップの申請がなかったことになるからだ(地方税法附則7条6項2号)。医療費控除などで申告される場合が、これに当たる。
そのときは寄附の分も確定申告に含めることになるので、受領証明書が必要になる。
「証明書は捨てないでください」——これだけは必ず伝える。ここを落とすと、控除が受けられないまま終わる。
上限を超えると、自己負担が増える
いくらでも控除されるわけではない。上限がある。
上限は年収で決まっているのではなく、住民税の額で決まっている。だから同じ年収でも、扶養の人数や他の控除で変わる。
とくに住宅ローン控除や医療費控除を使っていらっしゃると、住民税が減っているぶん上限も下がる。
だから目安表の数字をそのままお伝えしない。「ご自身の条件で試算しましょう」と伝えて、総務省のサイトや各ポータルの試算を一緒に開く。
上限を超えた分は単なる寄附になる。それが悪いわけではない——応援したい自治体に寄附するのは、それ自体が目的になり得る。ただし「実質2,000円」ではなくなることは伝える。
返礼品にも、税の扱いがある
一時所得とは、……営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう。
3 ……一時所得の特別控除額は、五十万円(同項に規定する残額が五十万円に満たない場合には、当該残額)とする。(所得税法34条1項・3項)
返礼品は寄附に対して受け取るもので、労務の対価でも資産の譲渡の対価でもない。だから一時所得として扱われる。
ただし3項に特別控除額50万円がある。しかも22条2項2号により、一時所得は合計額の2分の1が総所得金額に入る。
だからふつうの範囲であれば、税がかかることは少ない。不安にさせる話ではない。
伝えるべきなのは「他に一時所得がある年は注意」ということである。生命保険の満期金や懸賞の賞金なども一時所得なので、合わせて50万円を超えると計算に入ってくる。
相談では「今年、保険の満期金を受け取られる予定はありませんか」と一言伺う。知らないと、確定申告のときに慌てる。
FP3級の相談で、ここまで伝えられると「そこまで教えてもらえるとは思わなかった」という反応になりやすい。難しい話ではなく、聞けば分かる話である。
「やったほうがいいか」への答え方
相談者は「やったほうがいいのでしょうか」とお尋ねになっている。ここは断定しない。
お伝えするのは向いている場合と、そうでない場合である。
- 上限の範囲で行えば、2,000円の負担で返礼品を受け取れる——これは事実として言える
- 手続きをする手間がある——申請書を出す、証明書を保管する
- お金が出ていくのが先で、戻るのは翌年——手元の資金に余裕が要る
- そもそも納めている住民税が少ない方は、上限も小さい
とくに4つめは大事である。収入が少ない年や、他の控除が大きい年は、上限が小さくなる。「みんながやっているから」で判断しないようにお伝えする。
そして手元の資金である。先に出ていくので、家計に余裕がないときに無理をしない。「来年でもできます」と言えることが、FPの役割である。
やさしく伝えるための言い換え
| 専門の言い方 | やさしい言い方 |
|---|---|
| 寄附金税額控除 | 翌年の住民税が減る |
| 特例控除額 | 上乗せで減る分 |
| ワンストップ特例 | 確定申告をしないで済む手続き |
| 受領証明書 | 寄附したことの証明書 |
| 一時所得 | 臨時に入ったものにかかる所得の区分 |
| 控除上限額 | 2,000円の負担で済む範囲 |
「控除上限額」を「2,000円の負担で済む範囲」と言い換えると、超えたときに何が起きるかまで一緒に伝わる。
言い換えるときはその言葉が何のためにあるかまで含めてほどく。用語の直訳では伝わらない。
案内の順番——この順で伝える
- 「納税」ではなく「寄附」と最初に伝える。
- お金の流れを時間順に並べる。出るのが先、戻るのは翌年。
- 2,000円は戻らない(所法78条1項2号)。
- 手続きをしないと戻らない。方法は2つ。
- ワンストップは5自治体まで(地方税法附則7条2項)。回数ではない。
- 受領証明書は必ず保管(同条6項2号)。
- 上限は住民税の額で決まる。試算を一緒に開く。
- 返礼品は一時所得(所法34条)。50万円の特別控除がある。
- 他に一時所得がないかを伺う。保険の満期金など。
- やるかどうかはご本人が決める。手元の資金に無理がないか。
プロならこう説明する
「なぜ得になるのか分からない」というのは、とても自然なご質問だと思います。名前が分かりにくいからです。
「ふるさと納税」という名前ですが、税金を納める制度ではなく、自治体への寄附です。ここをそろえてから、お金の流れを順にご説明します。
1つめ。まずお金が出ていきます。寄附ですので、その分をお支払いになります。そのときに返礼品と寄附したことの証明書が届きます。
2つめ。手続きをします。確定申告か、確定申告をしないで済む手続き(ワンストップ)のどちらかです。
3つめ。翌年、税が減ります。所得税は戻ってきますが、住民税のほうは「戻る」のではなく「減る」形です。
ここが分かりにくいところで、お金が振り込まれるわけではありません。翌年の住民税の通知書で、減っているのをご確認いただく形になります。
そして2,000円は戻りません。法律に、2,000円を超える部分を控除すると書かれています。
ですので、「2,000円を負担して、その分の返礼品をいただく制度」とお考えいただくのが、いちばん近いと思います。タダではありません。
ここで、いちばん大事なことをお伝えします。
手続きをしないと、税は減りません。寄附しただけでは何も起きません。
確定申告をされない方でしたら、寄附先が5つの自治体までなら、簡単な申請書を出すだけで済みます。数えるのは回数ではなく自治体の数ですので、同じところに3回寄附されても1つです。
そして証明書は必ず取っておいてください。これだけはお願いします。
理由がありまして、あとから確定申告をされますと、簡単なほうの申請はなかったことになります。医療費控除などで申告される場合です。そのときは寄附の分も一緒に申告しますので、証明書が要ります。
次に、上限についてです。いくらでも控除されるわけではありません。
この上限は年収ではなく、お納めになっている住民税の額で決まります。ですので、ご家族の人数や、他に使っていらっしゃる控除で変わります。
住宅ローン控除をお使いでしたら、住民税がすでに減っていますので、上限も下がります。目安の表ではなく、ご自身の条件で試算しましょう。ご一緒にやってみます。
もう1つ、お伝えしておきたいことがあります。返礼品には、税の扱いがあります。
返礼品は一時所得という区分に入ります。ただし50万円の特別控除があって、しかも合計の半分が対象になる仕組みですので、ふつうにお使いになる範囲では、税がかかることはまずありません。
お伝えするのは、他に臨時の収入がある年はご注意くださいということです。生命保険の満期金や懸賞の賞金も同じ区分ですので、合わせて50万円を超えると計算に入ってきます。
今年、保険の満期金を受け取られるご予定はありませんか。
最後に、やったほうがいいかというご質問についてです。
これは私からは申し上げません。お決めになるための材料をお出しします。
上限の範囲で行えば、2,000円のご負担で返礼品を受け取れます。これは事実です。一方で手続きの手間がありますし、お金が出ていくのが先で、戻るのは翌年です。
ですので手元の資金に余裕があるときになさるのがよいと思います。今年でなくても、来年でもできます。「みんながやっているから」でお決めにならなくて大丈夫です。
よくある質問と、その答え方
「税金を納める先を選べる制度ですよね」
名前は「納税」だが、制度としては自治体への寄附である。まずお金が出ていき、後から税の控除という形で戻る。この順番が分かりにくさの正体なので、時間順に並べて渡す。とくに住民税は「戻る」のではなく「翌年の分が減る」ので、通知書で確認していただくようお伝えする。
「タダで返礼品がもらえるのですよね」
2,000円は戻らない。所得税法78条1項は「第一号に掲げる金額が第二号に掲げる金額を超えるときは、その超える金額を……控除する」とし、2号を「二千円」としている。「2,000円を負担して、その分の返礼品をいただく制度」という言い方が、いちばん誤解が生まれない。
「寄附すれば自動的に税が安くなりますよね」
手続きが要る。確定申告か、ワンストップの申請かのどちらかである。ワンストップはもともと確定申告をしない方が対象で、地方税法附則7条2項により「申告特例の求めを行う都道府県知事等の数が五以下」——回数ではなく自治体の数で5つまでである。そしてあとから確定申告をすると、ワンストップの申請はなかったことになる(同条6項2号)ので、受領証明書は必ず保管していただく。
「返礼品に税金はかかりませんよね」
区分としては一時所得になる(所得税法34条1項)。ただし同条3項に50万円の特別控除があり、22条2項2号により合計額の2分の1が総所得金額に入る仕組みなので、ふつうの範囲であれば税がかかることは少ない。伝えるべきは「他に一時所得がある年は注意」という点で、生命保険の満期金や懸賞の賞金も同じ区分に入る。
案内で外したくないポイント
- 「納税」ではなく「寄附」。ここを最初にそろえる。
- 出るのが先、戻るのは翌年。住民税は「減る」形。
- 2,000円は戻らない(所法78条1項2号)。
- 手続きをしないと戻らない。
- ワンストップは5自治体まで。回数ではない(地方税法附則7条2項)。
- 受領証明書は必ず保管。確定申告するとワンストップは無効(同条6項2号)。
- 上限は住民税の額で決まる。年収ではない。試算を一緒に開く。
- 上限を超えた分は単なる寄附。悪いことではないが、実質2,000円ではなくなる。
- 返礼品は一時所得。50万円の特別控除と2分の1の仕組みがある(所法34条、22条2項2号)。
- やるかどうかは断定しない。手元の資金に無理がないかを一緒に見る。
根拠条文のまとめ
| 条文 | 見出し | この記事で使った内容 |
|---|---|---|
| 所得税法78条1項 | 寄附金控除 | 2,000円を超える部分を所得から控除 |
| 所得税法34条1項・3項 | 一時所得 | 一時の所得で対価としての性質を有しないもの。特別控除額50万円 |
| 所得税法22条2項2号 | 課税標準 | 一時所得の金額の合計額の2分の1に相当する金額 |
| 地方税法附則7条2項 | 申告の特例 | 申請先は5団体以下であると見込まれる場合に限る |
| 地方税法附則7条6項2号 | 同上 | 申告書を提出したときは、いずれもなかったものとみなす |