年金の繰下げ受給とは(全体像)
老齢年金は原則65歳から受け取るが、受け取りを後ろにずらす(繰下げる)と、1か月ごとに0.7%ずつ年金が増える。逆に早く受け取る(繰上げる)と、1か月ごとに0.4%ずつ減る。
ポイントは、繰下げの上限が70歳から75歳に拡大されたこと。75歳まで繰り下げると、増額の月数は120か月になり、0.7%×120=84%の増額になる。
ただし、受け取りを遅らせるぶん受け取り始めるのも遅くなるので、長生きしないと総額では追いつかない。だから「全員に有利」ではなく、人によって有利・不利が変わるのが大事なところ。
詳しく:増額率・損益分岐・判断を押さえる
ここが記事の心臓部。繰下げで問われるのは、増額率、損益分岐点、そして選び方の3点。
年金の繰下げ受給(75歳まで)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 繰下げの上限 | 70歳 → 75歳に拡大 |
| 増額率 | 1か月あたり0.7% |
| 最大の増額 | 75歳まで(120か月)で84%増 |
| 損益分岐点 | 受け取り始めから約12年(75歳開始ならおよそ87歳) |
まず増額率。1か月0.7%なので、繰り下げる月数が長いほど増える。75歳までの120か月で84%増が上限。
次に損益分岐点。年金が84%増えても、受け取り始めるのが10年遅い。受け取り始めてから約12年たつと、65歳から受け取った場合の総額に追いつき、それ以降は繰下げのほうが多くなる。75歳開始なら、おおむね87歳が分かれ目。
そして選び方。長生きの見込み(健康状態)、繰下げ中の生活費をまかなえる資産、年金以外の収入などを見て、繰り下げるかどうかを決める。
なお、増額率や上限は改正で動くことがあるので、受験する年度の最新の内容を確認しておくと安心材料になる。
わかりやすく言い換えると
むずかしく考えず、こうイメージするとラク。
要するに、繰下げは「待つほど毎月の年金が増えるが、もらい始めが遅くなる」しくみ。つまり、長生きするほど得、早く受け取りたいなら向かない。
損益分岐点は「もらい始めてから約12年で逆転」と覚える。だから健康やお金の事情しだいで、答えは人それぞれ変わる。
試験のツボ
🔴 一番出る:上限と増額率
①繰下げの上限が70歳から75歳に拡大
②1か月0.7%、75歳まで(120か月)で最大84%増
🔴 次に出る:損益分岐点
①受け取り始めから約12年で総額が追いつく
②75歳開始ならおおむね87歳が分かれ目
🟡 押さえると安定:選び方
全員に有利ではなく、健康・資産・他の収入を勘案して判断する。
よくある間違い
①「繰下げの上限は70歳まで」→ ✗ 70歳から75歳に拡大された。最大84%増まで可能。
②「繰下げは誰でも必ず得」→ ✗ 長生きしないと損益分岐点(約12年)に届かない。
③「1か月の増額率は0.4%」→ ✗ 0.4%は繰上げの減額率。繰下げの増額率は0.7%。
試験での出題パターン
実際の問題でたしかめてみよう。
オリジナル問題1(上限と増額率)
老齢年金の繰下げ受給に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 老齢年金の繰下げは最大70歳までで、1か月0.4%・最大で24%しか増額できないとされている
- 老齢年金の繰下げは何歳まででも可能で、繰り下げた分だけ無限に増やせるものとされている
- 老齢年金の繰下げは最大75歳まででき、1か月あたり0.7%・最大で84%まで増額になる
- 老齢年金の繰下げは最大75歳までだが、増額はなく受給開始が遅れるだけとされている
解答は 3 である。
繰下げの上限は75歳まで拡大され、増額率は1か月0.7%。75歳まで(120か月)繰り下げると、0.7%×120=84%の増額になる。
選択肢1の「70歳まで・0.4%・24%」は誤りで、0.4%は繰上げの減額率である。選択肢2の「無限に増やせる」も誤りで、上限は75歳。選択肢4の「増額なし」も誤りで、繰り下げると増える。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 0.4%・24%は繰上げの数字 |
| 2 | ✗ | 上限は75歳まで |
| 3 | ✓ | 75歳まで・1か月0.7%・最大84%増 |
| 4 | ✗ | 繰り下げると増額される |
オリジナル問題2(損益分岐点)
75歳まで繰り下げた場合の損益分岐点に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 75歳まで繰り下げると、受け取り始めてからわずか約3年で受給総額が追いつくとされている
- 75歳まで繰り下げても、繰り下げない場合に受給総額が追いつくことは決してないとされている
- 75歳まで繰り下げると、受け取り始めた初年度のうちに受給総額が追いつくとされている
- 75歳まで繰り下げると、受け取り始めてから約12年(およそ87歳)で受給総額が追いつく
解答は 4 である。
75歳まで繰り下げると、受け取り始めてから約12年(おおむね87歳)で、65歳から受け取った場合の総額に追いつく。それ以降は繰下げのほうが多くなる。
選択肢1の「約3年」、選択肢3の「初年度」は誤りで、追いつくまで約12年かかる。選択肢2の「決して追いつかない」も誤りで、長生きすれば追いつく。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✗ | 約3年では追いつかない |
| 2 | ✗ | 長生きすれば追いつく |
| 3 | ✗ | 初年度では追いつかない |
| 4 | ✓ | 約12年(およそ87歳)で追いつく |
オリジナル問題3(選び方)
繰下げ受給の選び方に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 繰下げが必ず得とは限らず、健康状態や資産、他の収入をよく勘案して判断するのが大切である
- 繰下げはどんな人でも必ず得になるので、本来は全員が75歳まで繰り下げるべきだとされている
- 繰下げの判断は受け取る人の性別だけで決まり、健康や資産は関係ないとされている
- 繰下げは早く亡くなるほど受給総額が増えるので、健康に不安がある人ほど有利だとされる
解答は 1 である。
繰下げは長生きするほど有利だが、全員に得とは限らない。健康状態、繰下げ中の生活を支える資産、年金以外の収入などを勘案して判断するのが大切である。
選択肢2の「全員が繰り下げるべき」は誤りで、人によって有利・不利が変わる。選択肢3の「性別だけで決まる」も誤り。選択肢4も誤りで、早く亡くなると繰下げは不利になる。
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ✓ | 健康・資産・他の収入を勘案して判断 |
| 2 | ✗ | 全員に得とは限らない |
| 3 | ✗ | 性別だけで決まるものではない |
| 4 | ✗ | 早く亡くなると繰下げは不利 |
まとめ
押さえどころ
- 🔴 上限と増額率 = 繰下げは75歳まで(70歳から拡大)。1か月0.7%・最大84%増。
- 🔴 損益分岐点 = 受け取り始めから約12年(75歳開始ならおよそ87歳)。最新の内容は受験年度で確認。
- 🟡 選び方 = 全員に有利ではない。健康・資産・他の収入を勘案して判断。
次に学ぶ
- 加給年金 ── 配偶者などがいるときの上乗せ。繰下げ中の扱いとあわせて押さえる。
- 個人年金 ── 公的年金に自分で上乗せするしくみ。受給戦略の選択肢が広がる。
- 年金分割 ── 離婚時に年金を分けるしくみ。老後の年金額を考えるときの関連論点。
執筆: SikakuQuest編集部