【FPの実務】投資信託のリスクって?──法律が「説明の程度」まで決めている
投資を始めたいお客様から、こんな相談が届く。
「投資信託を始めてみたいのですが、元本保証がないと聞いて不安です。どんなリスクがあるのか、初心者にも分かるように教えてください。」
FPの実務で、リスクの説明は最初の大事な一歩である。ここで力になるのは、リスクの種類を並べることよりも「どこまで、どう説明すべきか」の基準を持って話せたときだ。実はその基準は法律に書かれている。この記事では、条文が定めている説明のかたちから整理する。
まず結論:法律は「説明の程度」まで決めている
前項の説明は、顧客の知識、経験、財産の状況及び当該金融商品の販売に係る契約を締結する目的に照らして、当該顧客に理解されるために必要な方法及び程度によるものでなければならない。(金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律4条2項)
この1項が、実務の基準そのものである。
「当該顧客に理解されるために必要な方法及び程度」——つまり説明したかどうかではなく、その方に理解される形だったかで測られる。
そして基準は相手ごとに変わる。条文が挙げているのは知識、経験、財産の状況、契約を締結する目的の4つである。同じ資料を同じように読み上げても、相手によっては足りないことになる。
今回の相談者は「初心者にも分かるように」とおっしゃっている。その一言で、求められる程度が示されている。専門用語をそのまま使わない、という判断はここから出る。
この義務は金融商品販売業者等にかかるものである。相談だけを受けるFPが直接の名宛人になるとは限らない。ただし、説明の基準としてこれ以上のものはない。販売に関わらない場面でも、この程度を自分の基準にするのがよい。
説明すべきことは、条文が号で分けている
金融商品販売業者等は、……次に掲げる事項(……「重要事項」という。)について説明をしなければならない。
一 当該金融商品の販売について金利、通貨の価格、金融商品市場における相場その他の指標に係る変動を直接の原因として元本欠損が生ずるおそれがあるときは、次に掲げる事項
イ 元本欠損が生ずるおそれがある旨/ロ 当該指標/ハ ロの指標に係る変動を直接の原因として元本欠損が生ずるおそれを生じさせる当該金融商品の販売に係る取引の仕組みのうちの重要な部分
三 当該金融商品の販売について当該金融商品の販売を行う者その他の者の業務又は財産の状況の変化を直接の原因として元本欠損が生ずるおそれがあるときは、次に掲げる事項
イ 元本欠損が生ずるおそれがある旨/ロ 当該者/ハ ……取引の仕組みのうちの重要な部分(金融サービス提供法4条1項)
1号と3号が、そのままリスクの分け方になっている。
1号は「指標の変動」によるもの。条文が例として金利、通貨の価格、相場を挙げている。実務でいう金利変動・為替変動・価格変動がここに当たる。
3号は「業務又は財産の状況の変化」によるもの。実務でいう信用(発行体の状況)がここに当たる。
そしてイ・ロ・ハの3点セットが、説明の型になっている。おそれがある旨を言い、何が動くと影響するのかを示し、その仕組みの重要な部分を伝える。
「値下がりすることがあります」だけでは、イしか言っていない。何によって動くのか(ロ)と、なぜそれで動くのか(ハ)まで伝えて、初めて型が揃う。この3点を意識すると、説明の抜けがなくなる。
主なリスクを、条文の分け方に沿って
| 実務での呼び名 | 何が動くと(ロ) | なぜ影響するか(ハ) | 条文 |
|---|---|---|---|
| 価格変動 | 株式などの相場 | 組み入れている資産の値段が動くと、基準価額が動く | 4条1項1号 |
| 金利変動 | 金利 | 金利が上がると、既に発行された債券の価格は下がる | 同号 |
| 為替変動 | 通貨の価格 | 外貨建ての資産は、円に直すときの相場で金額が変わる | 同号 |
| 信用 | 発行体の業務又は財産の状況 | 債券などの発行体の状況が変われば、その価値が変わる | 同項3号 |
この表の形で伝えると、3点セットが自然に揃う。
これに加えて、条文には出てこないが実務で伝えるものがある。換金のしやすさと、投資先の国や地域の事情である。目論見書にはこれらも記載されているので、目論見書の「投資リスク」の欄を一緒に開くのが確実である。
FPが記憶で並べるより、その商品の目論見書に書かれているものを一緒に読むほうが正確で、しかもお客様がご自身で次の商品を見るときの力になる。
言ってはいけないことが、条文に書かれている
金融商品販売業者等は、……顧客に対し、当該金融商品の販売に係る事項について、不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤認させるおそれのあることを告げる行為(……「断定的判断の提供等」という。)を行ってはならない。(金融サービス提供法5条)
禁じられているのは2つある。断定的判断を提供することと、確実であると誤認させるおそれのあることを告げることである。
2つめが広い。「確実です」と言わなくても、確実だと誤解させる言い方なら当たる。
だから「長期で持てば増えます」「この商品なら大丈夫です」「過去はずっと右肩上がりです」といった言い方は避ける。過去の実績を語ること自体は事実の説明だが、それが将来の約束のように聞こえる文脈で使わない。
言い換えの型を持っておくとよい。「増えます」ではなく「増えることも減ることもあります」。「大丈夫です」ではなく「この点は押さえられています」。「過去はこうでした」の後には必ず「先のことは分かりません」を付ける。
金融商品販売業者等は、顧客に対し第四条の規定により重要事項について説明をしなければならない場合において当該重要事項について説明をしなかったとき、又は前条の規定に違反して断定的判断の提供等を行ったときは、これによって生じた当該顧客の損害を賠償する責めに任ずる。(同法6条)
顧客が前条の規定により損害の賠償を請求する場合には、元本欠損額は、……当該顧客に生じた損害の額と推定する。(同法7条1項)
7条の「推定する」が重い。元本欠損額がそのまま損害額と推定されるので、顧客が損害額を立証する必要がない。
この構造を知っておくと、説明を尽くすことが自分を守ることでもあると分かる。記録を残す——何をどう説明し、どの資料をお渡ししたか——という実務が、ここから出てくる。
ただしこれは恐れのためではない。説明を尽くした結果、お客様が納得して選ばれることが目的であって、記録はその副産物である。
「リスク」という言葉をどう伝えるか
日常の言葉では「危険」と受け取られやすいが、投資の話では結果のブレ幅を指す。上にも下にも振れる幅のことである。
だから「リスクが大きい」は「損しやすい」ではなく「振れ幅が大きい」という意味になる。ここを最初に共有しておかないと、その後の説明が全部ずれる。
伝え方の例としては「予想から上下にどれくらいずれるか、の幅です」という言い方がある。幅が小さいものは、大きく増えることも少ない——この対応関係まで伝えると、お客様がご自身で選べる形になる。
そのうえで「危険」と言い換えない。言い換えると、5条の誤認させるおそれとは逆向きに、過度に不安にさせることになる。どちらの方向にも、正確でない言い方はしない。
付き合い方——断定せずに伝える
リスクとの付き合い方として語られるものがいくつかある。投資先を分ける、時期を分ける、期間を長くとるといったことである。
ただしこれらを「こうすれば大丈夫」という形で伝えない。5条が禁じているのは、まさにその言い方だからだ。
正確に言うなら「値動きの異なるものを組み合わせると、全体の振れ幅は小さくなりやすい」である。「損しない」ではない。
時期を分けることについても「買う時期を分けると、1回の値段に結果が左右されにくくなる」という言い方になる。「必ず有利になる」ではない。
そしていちばん大事なことを伝える。いつ使う予定のお金かを先に決めることである。使う時期が決まっていれば、そのときの相場に左右される度合いが読める。近く使う予定のお金と、当面使わないお金では、選ぶものが変わる。
FPが決めるのは、商品ではなく「決め方」である。お客様がご自身で選べる材料を渡すところまでが仕事になる。
相談の進め方——この順番で確認する
- ご経験を伺う。説明の程度は相手によって変わる(金融サービス提供法4条2項)。
- 目的を伺う。条文も「契約を締結する目的」を基準に挙げている(同項)。
- いつ使うお金かを伺う。ここで選び方が変わる。
- 「リスク」の意味を共有する。危険ではなく振れ幅。
- 3点セットで説明する:おそれがある旨・何が動くと・なぜ影響するか(同条1項1号・3号)。
- 目論見書を一緒に開く。記憶で並べない。
- 断定しない言い方を使う(同法5条)。
- 付き合い方は「なりやすい」で伝える。「大丈夫」にしない。
- ご本人に選んでいただく。材料を渡すところまでが役割。
- 説明した内容を記録に残す(同法6条・7条)。
プロならこう説明する
ご不安は自然なことだと思います。まず「リスク」という言葉の意味から、そろえさせてください。
日常では「危険」という意味で使いますが、投資のお話では結果の振れ幅を指します。上にも下にも、どれくらいぶれるかということです。
ですので「リスクが大きい」は「損しやすい」ではなく「振れ幅が大きい」という意味になります。振れ幅が小さいものは、大きく増えることも少ない——この関係もセットになっています。
そのうえで、何が動くと影響するのかをご説明します。法律に、説明すべきことが決められていますので、それに沿ってお伝えします。
大きく2つに分かれます。
1つめが相場や金利、為替が動くことによる影響です。組み入れている株式や債券の値段が動けば、投資信託の値段も動きます。金利が上がりますと、すでに発行されている債券の値段は下がります。外貨で運用しているものは、円に直すときの為替で金額が変わります。
2つめが発行している会社などの状況が変わることによる影響です。債券であれば、発行している先の状況が変われば、その価値が変わります。
そしてこの商品について具体的に何が書かれているかは、目論見書の「投資リスク」の欄にあります。ご一緒に開いて読みましょう。
私が記憶でお話しするより確実ですし、次に別の商品をご覧になるときも、同じ欄を見ればよいとお分かりいただけると思います。
付き合い方についても触れておきます。ただ、ここは言い方に気をつけてお伝えします。
値動きの異なるものを組み合わせると、全体の振れ幅は小さくなりやすいと言われています。買う時期を分けると、1回の値段に結果が左右されにくくなります。
ただし、「こうすれば損をしません」とは申し上げられません。法律で、確実だと誤解させるような言い方が禁じられていますし、実際に確実なことではないためです。
いちばん大事なのは、そのお金をいつ使うご予定かだと思っています。
近く使うご予定のあるお金と、当面使わないお金とでは、選ばれるものが変わります。まずそこを決めていただけますか。
商品を選ぶのはお客様です。私は選ぶための材料をお出しする役割だと思っています。分からない点は、その場でいくつでも聞いてください。お分かりいただけるまでご説明するのが、私の側の務めです。
よくある質問と、その答え方
「リスクが大きいと、損しやすいということですよね」
少し違う。投資の話での「リスク」は結果の振れ幅を指す。上にも下にも振れる幅である。だから「リスクが大きい」は「振れ幅が大きい」という意味で、振れ幅が小さいものは大きく増えることも少ないという対応関係がある。ここを最初に共有しないと、その後の説明がすべてずれる。「危険」と言い換えるのも正確ではない。
「長期で持てば増えるのですよね」
そう申し上げることはできない。金融サービス提供法5条は「不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤認させるおそれのあることを告げる行為」を禁じている。「確実です」と言わなくても、確実だと誤解させる言い方なら当たる。正確に言うなら「値動きの異なるものを組み合わせると、全体の振れ幅は小さくなりやすい」といった形になる。過去の実績を伝えること自体は事実の説明だが、将来の約束のように聞こえる文脈では使わない。
「値下がりすることがある、と言えば十分ですよね」
条文はもう2つ求めている。金融サービス提供法4条1項1号は、イ 元本欠損が生ずるおそれがある旨に加えて、ロ 当該指標とハ その指標の変動でおそれを生じさせる取引の仕組みのうちの重要な部分を挙げている。「何によって動くのか」と「なぜそれで動くのか」まで伝えて型が揃う。3号(発行体の状況の変化)も同じ3点セットである。
「資料をお渡ししたので、説明は済んでいますよね」
条文は程度まで定めている。金融サービス提供法4条2項は、説明が「顧客の知識、経験、財産の状況及び……契約を締結する目的に照らして、当該顧客に理解されるために必要な方法及び程度によるもの」でなければならないとしている。説明したかどうかではなく、その方に理解される形だったかで測られる。しかも6条により説明をしなかったときは損害賠償の責任を負い、7条は元本欠損額を損害額と推定するとしている。
説明で外したくないポイント
- 「リスク」は結果の振れ幅。最初に意味をそろえる。
- 説明の程度は相手によって変わる(金融サービス提供法4条2項)。
- 測られるのは「理解されたか」。資料を渡しただけでは足りない。
- 説明は3点セット:おそれがある旨・何が動くと・なぜ影響するか(同条1項)。
- 条文の分け方は「指標の変動」と「業務又は財産の状況の変化」(同項1号・3号)。
- 断定的判断の提供は禁止。確実だと誤認させるおそれのある言い方も(同法5条)。
- 付き合い方は「なりやすい」で伝える。「大丈夫」にしない。
- 目論見書を一緒に開く。記憶で並べない。
- いつ使うお金かを先に決める。ここで選び方が変わる。
- 説明をしないと損害賠償、元本欠損額が損害額と推定される(同法6条・7条)。記録を残す。
根拠条文のまとめ
| 条文 | 見出し | この記事で使った内容 |
|---|---|---|
| 金融サービス提供法4条1項1号 | 金融商品販売業者等の説明義務 | 金利・通貨の価格・相場その他の指標の変動による元本欠損。イロハの3点 |
| 金融サービス提供法4条1項3号 | 同上 | 販売を行う者その他の者の業務又は財産の状況の変化による元本欠損 |
| 金融サービス提供法4条2項 | 同上 | 顧客の知識・経験・財産の状況・目的に照らして理解されるために必要な方法及び程度 |
| 金融サービス提供法5条 | 断定的判断の提供等の禁止 | 断定的判断の提供、確実であると誤認させるおそれのあることを告げる行為の禁止 |
| 金融サービス提供法6条 | 損害賠償責任 | 説明をしなかったとき、断定的判断の提供等を行ったときの賠償責任 |
| 金融サービス提供法7条1項 | 損害の額の推定 | 元本欠損額を損害の額と推定する |