【FPの実務】NISAってどんな制度?──非課税になるもの、ならないものから伝える
資産づくりを考えるお客様から、こんな相談が届く。
「投資の利益に税金がかからないNISAが良いと聞きました。どんな制度で、どう使えばいいのか教えてください。」
FPの実務で、NISAの説明はよく扱う。力になるのは、枠の数字を並べる前に「何が非課税になって、何がならないのか」を正確に渡せたときだ。この記事では、非課税の中身、枠の仕組み、枠が戻る条件、そして先に伝えておきたいことまでを通しで整理する。特定の商品は勧めない。
まず結論:非課税になるのは2つ
NISAの根拠は租税特別措置法にある。非課税の条文が2本に分かれている。
……非課税口座を開設している居住者……が、……非課税口座内上場株式等……の……譲渡……をした場合には、当該譲渡による事業所得、譲渡所得及び雑所得……については、所得税を課さない。(租税特別措置法37条の14第1項)
……非課税口座を開設している居住者……が支払を受けるべき非課税口座内上場株式等の……配当等……については、所得税を課さない。(同法9条の8)
| 非課税になるもの | 条文 |
|---|---|
| 売ったときの利益(譲渡所得等) | 措置法37条の14第1項 |
| 配当金・分配金(配当所得) | 措置法9条の8 |
条文が2本に分かれているのには意味がある。売却益と配当は、別の所得として課税されるものだからだ。NISAはその両方を非課税にしている。
お客様に「利益が非課税」とだけ伝えると、配当や分配金も含まれるのかが伝わらない。「売って出た利益と、保有中に受け取る配当や分配金の、両方です」と分けて言う。
ただし9条の8には条件がある。金融商品取引業者等が国内における支払の取扱者で政令で定めるものであるものに限るとされている。株式の配当を非課税で受け取るには、配当金の受け取り方の設定が要るという実務上の話が、ここから出てくる。
本来かかる税金は20.315%
「約20%」の中身も、条文で確かめておくと説明が正確になる。
| 税 | 率 | 条文 |
|---|---|---|
| 所得税 | 15% | 措置法37条の11第1項「百分の十五」 |
| 復興特別所得税 | 基準所得税額の2.1%(15%×2.1%=0.315%) | 復興財源確保法13条 |
| 住民税 | 5% | 地方税法附則35条の2の2第1項・5項 |
| 合計 20.315% | ||
住民税の条文は少し変わった書き方をしている。道府県民税が百分の二(指定都市の区域内に住所を有する場合には、百分の一)、市町村民税が百分の三(指定都市の区域内に住所を有する場合には、百分の四)である。
指定都市かどうかで内訳は変わるが、合計は5%で同じになる。お客様への説明では合計で伝えて差し支えない。
復興特別所得税は、令和19年分まで課されるとされている(復興財源確保法9条1項)。期限のある税である点も、聞かれたら答えられるようにしておく。
非課税の裏返し——損も無かったことになる
ここは先に伝えておきたいところである。
……非課税口座内上場株式等の譲渡による収入金額が当該非課税口座内上場株式等の……取得費及びその譲渡に要した費用の額の合計額……に満たない場合におけるその不足額は、所得税に関する法令の規定の適用については、ないものとみなす。(措置法37条の14第2項)
「ないものとみなす」である。NISA口座で出た損失は、税の計算上そもそも生じなかった扱いになる。
だから、課税口座で出た利益と相殺すること(損益通算)も、翌年以降へ繰り越すこともできない。課税口座なら使えるはずの手段が、NISA口座では使えない。
これは制度の欠陥ではなく、非課税という扱いの一貫した帰結である。利益に課税しないのだから、損失も計算に入れない。
お客様に伝えるときは、あとから知る形にしないのが大事だ。「利益が出れば非課税、損が出たときは税の計算には反映されません」と、はじめに両方を並べて言う。片方だけ伝えると、後で説明していなかったことになる。
2つの枠と、年間の上限
令和6年からの制度では、非課税口座の中に2つの勘定が置かれる。条文上の名前と、実務で使う呼び名が違う。
| 実務での呼び名 | 条文上の名前 | 年間の上限 |
|---|---|---|
| つみたて投資枠 | 特定累積投資勘定 | 120万円(措置法37条の14第5項6号イ) |
| 成長投資枠 | 特定非課税管理勘定 | 240万円(同号ハ) |
この2つを置く契約が特定非課税累積投資契約で、令和6年1月1日以後の期間に開設された口座が対象になる(同項1号ハ)。
口座を開ける人は、その年1月1日において18歳以上である者に限られる(同項1号かっこ書)。
1月1日時点で18歳かどうかで判定する。年の途中で18歳になった方は、その年ではなく翌年からになる。
ご家族の資産づくりの相談では、お子様の誕生日とあわせて確認すると、話が具体的になる。
生涯の限度は、二重に判定される
条文の書き方が、実務でそのまま効く。成長投資枠の受入れについて、こう書かれている。
……受入期間内に受け入れた上場株式等の取得対価の額の合計額が二百四十万円を超えないもの(上場株式等を当該口座に受け入れた場合において、次に掲げる場合に該当することとなるときにおける当該上場株式等を除く。)
(1)当該合計額及び特定非課税管理勘定基準額……の合計額が千二百万円を超える場合
(2)……当該口座に受け入れている……特定累積投資上場株式等の取得対価の額の合計額及び特定累積投資勘定基準額の合計額が千八百万円を超える場合(措置法37条の14第5項6号ハ)
| 判定 | 上限 | 対象 |
|---|---|---|
| 年間 | 120万円/240万円 | 各枠 |
| 生涯(成長投資枠のみ) | 1,200万円 | 成長投資枠 |
| 生涯(全体) | 1,800万円 | 2つの枠の合計 |
成長投資枠には3つの上限がかかる。年240万円、生涯1,200万円、そして全体1,800万円である。どれか1つでも超えると、その分は受け入れられない。
逆に、つみたて投資枠のほうには1,200万円の縛りがない。全体1,800万円まで、つみたて投資枠だけで使うこともできる。
「1,800万円のうち成長投資枠は1,200万円まで」という言い方は正確だが、「つみたて投資枠は1,800万円まで使える」と裏側から言うほうが、お客様には伝わりやすいことがある。
売った枠が戻る仕組み——「基準額」の読み方
「売れば枠が復活する」とよく言われる。その正体が基準額である。
特定累積投資勘定基準額(同年の前年十二月三十一日に当該居住者……が特定累積投資勘定及び特定非課税管理勘定に受け入れている上場株式等の購入の代価の額に相当する金額として政令で定める金額をいう。)(措置法37条の14第5項6号イ)
2つの言葉が、実務の答えをそのまま持っている。
1つめが「前年十二月三十一日に」。判定の基準日が前年の年末である。だから売った年のうちに枠が戻るわけではない。戻るのは翌年からになる。
2つめが「購入の代価の額に相当する金額」。買ったときの値段(取得価額)で数えるということだ。売った金額ではない。
ここが誤解されやすい。100万円で買ったものが150万円になって売れた場合、翌年に戻る枠は100万円である。150万円ではない。
反対に、値下がりして80万円で売った場合も、戻る枠は100万円になる。値動きに関係なく、買ったときの金額で戻る。
お客様に説明するときは「買った値段の分だけ、翌年から戻ります」という言い方が、条文に忠実で誤解も生みにくい。
贈与や相続で移したとき
次に掲げる事由により、……非課税口座内上場株式等の一部又は全部の払出し……があつた場合には、……その事由が生じた時に、その時における価額として政令で定める金額(……「払出し時の金額」という。)により……譲渡があつたものと……みなして、……所得税に関する法令の規定を適用する。
二 贈与又は相続若しくは遺贈(措置法37条の14第4項)
贈与や相続で移した場合、その時の価額で譲渡があったものとみなされる。そして受け取った人は、その払出し時の金額で取得したものとみなされる。
つまりNISAの非課税はそこで一度区切られ、受け取った人の取得価額はその時の時価になる。非課税のまま引き継がれるわけではない。
相続の相談とあわせてNISAの話が出たときは、この点を押さえておく。
説明の順番——この順で伝える
- 何が非課税になるか:売った利益と、配当・分配金の両方(措置法37条の14第1項・9条の8)。
- 本来いくらかかるか:20.315%。
- 損の扱い:損益通算も繰越しもできない(同37条の14第2項)。ここで先に伝える。
- 口座を開けるか:その年1月1日に18歳以上(同5項1号)。
- 2つの枠:年120万円と年240万円、併用できる(同5項6号イ・ハ)。
- 生涯の限度:全体1,800万円、うち成長投資枠は1,200万円まで(同号ハ)。
- 枠が戻る条件:買った値段の分だけ、翌年から(同号イの基準額)。
- 配当の受け取り方:非課税で受け取るための設定を確認(同9条の8)。
- その先:贈与・相続で移すときの扱い(同37条の14第4項)。
プロならこう伝える
NISAは、投資で得た利益にかかる税金がかからなくなる制度です。まず「何が非課税になるか」から整理させてください。
法律の条文が2つに分かれていまして、売ったときの利益と、持っている間に受け取る配当金や分配金の、両方が非課税になります。
本来かかる税金は20.315%です。所得税が15%、復興特別所得税が0.315%、住民税が5%という内訳になっています。
ここで、先にお伝えしておきたいことが1つあります。
非課税ということは、裏返すと、損が出たときも税の計算に入らないということです。法律には「ないものとみなす」と書かれています。
ですので、NISA口座で損が出ても、他の口座の利益と相殺したり、翌年以降に繰り越したりはできません。課税口座でしたらできる手続きが、NISAでは使えない形になっています。
後からお知りになるより、はじめにお伝えしておくほうがよいと思いますので、先に申し上げました。
そのうえで、枠のお話です。投資枠は2つあり、併用できます。
つみたて投資枠が年間120万円まで、成長投資枠が年間240万円までです。
生涯にわたって非課税で持てる金額は、合計1,800万円です。そのうち成長投資枠で使えるのは1,200万円までとなっています。
裏返して申し上げますと、つみたて投資枠だけでしたら1,800万円まで使えます。まとまった元手がなくても、こちらから始められます。
よくご質問いただくのが「売ったら枠は戻るのか」です。戻ります。ただし、戻り方に2つ決まりがあります。
1つめは時期です。法律は前年の12月31日時点で判定すると書いていますので、売った年のうちには戻らず、翌年からになります。
2つめは金額です。戻るのは買ったときの値段の分です。売れた金額ではありません。
たとえば100万円で買われたものが150万円になって売れたとしますと、翌年に戻る枠は100万円です。反対に80万円で売られた場合も、戻るのは100万円です。値動きに関わらず、買った値段で戻るとお考えください。
口座を開けるのは、その年の1月1日時点で18歳以上の方です。年の途中でお誕生日を迎えられた方は、翌年からになります。
それから、配当金を非課税で受け取るには受け取り方の設定が必要になります。ここは口座を開かれる金融機関でご確認ください。
どの商品にされるかは、お客様のお考えとご事情によります。私からは特定の商品はお勧めしません。制度の使い方について、ご一緒に整理させてください。
よくある質問と、その答え方
「損が出たら、他の口座の利益と相殺できますよね」
できない。措置法37条の14第2項は、NISA口座の譲渡による不足額を「ないものとみなす」としている。税の計算上、その損はそもそも生じなかった扱いになる。損益通算も、翌年以降への繰越しもできない。これは非課税という扱いの一貫した帰結である。利益に課税しない以上、損失も計算に入れない。後から伝えるのではなく、最初に両方を並べて伝える。
「売った金額の分だけ、枠が戻るのですよね」
戻るのは買ったときの金額である。措置法37条の14第5項6号イは基準額を「購入の代価の額に相当する金額」と定めている。100万円で買って150万円で売れても、戻る枠は100万円。80万円で売れた場合も100万円である。値動きは枠の戻り方に影響しない。
「今年売れば、今年また買えますよね」
その年には戻らない。同号イの基準額は「同年の前年十二月三十一日に」受け入れている金額で判定する。基準日が前年末なので、枠が戻るのは翌年からである。年内に買い直す前提で売却を計画すると、予定が合わなくなる。
「成長投資枠だけで1,800万円まで使えますか」
使えない。措置法37条の14第5項6号ハ(1)が、成長投資枠について1,200万円を超える場合は受け入れられないとしている。年240万円、生涯1,200万円、全体1,800万円の3つの上限が同時にかかる。一方、つみたて投資枠には1,200万円の縛りがないため、つみたて投資枠だけなら1,800万円まで使える。
伝え方で外したくないポイント
- 非課税になるのは2つ:売却益(37条の14第1項)と配当・分配金(9条の8)。
- 本来の税は20.315%:所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%。
- 損は「ないものとみなす」:損益通算も繰越しもできない(37条の14第2項)。最初に伝える。
- 18歳以上:その年1月1日で判定(同5項1号)。
- 年120万円と年240万円:併用できる(同5項6号イ・ハ)。
- 生涯1,800万円、うち成長投資枠1,200万円:成長投資枠には3つの上限(同号ハ)。
- つみたて投資枠は1,800万円まで使える:1,200万円の縛りは成長投資枠だけ。
- 枠は翌年から、買った値段で戻る:基準額は前年末・購入の代価(同号イ)。
- 贈与・相続の払出しは時価で譲渡とみなされる(同4項)。
- 特定の商品は勧めない:制度の使い方を一緒に整理する。
根拠条文のまとめ
| 条文 | 見出し | この記事で使った内容 |
|---|---|---|
| 措置法37条の14第1項 | 非課税口座内の少額上場株式等に係る譲渡所得等の非課税 | 非課税口座内上場株式等の譲渡に所得税を課さない |
| 措置法37条の14第2項 | 同上 | 譲渡による不足額は「ないものとみなす」 |
| 措置法37条の14第4項 | 同上 | 贈与・相続等の払出しは払出し時の金額で譲渡とみなす |
| 措置法37条の14第5項1号 | 同上(定義) | 非課税口座は1月1日に18歳以上の者。特定非課税累積投資契約は令和6年1月1日以後 |
| 措置法37条の14第5項6号イ | 同上(定義) | 特定累積投資勘定 年120万円。基準額=前年12月31日・購入の代価の額。全体1,800万円 |
| 措置法37条の14第5項6号ハ | 同上(定義) | 特定非課税管理勘定 年240万円。(1)1,200万円(2)1,800万円の二重判定 |
| 措置法9条の8 | 非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得の非課税 | 非課税口座内上場株式等の配当等に所得税を課さない |
| 措置法37条の11第1項 | 上場株式等に係る譲渡所得等の課税の特例 | 所得税は百分の十五 |
| 復興財源確保法9条1項・13条 | 課税の対象/個人に係る復興特別所得税の税率 | 令和19年分まで。基準所得税額の百分の二・一 |
| 地方税法附則35条の2の2第1項・5項 | 上場株式等に係る譲渡所得等に係る道府県民税及び市町村民税の課税の特例 | 道府県民税2%(指定都市1%)+市町村民税3%(指定都市4%)=5% |