FP2級の実務クエスト

【FPの実務】住宅ローン控除で税金が戻る?──「壊れやすい要件」から確認する

マイホームを買ったお客様から、こんな相談が届く。

「住宅ローンを組んで家を買いました。住宅ローン控除で税金が戻ると聞きましたが、仕組みと手続きを教えてください。」

FPの実務で、住宅ローン控除の説明はよく扱う。力になるのは、控除額を計算してみせることよりも「あとで要件から外れる場面」を先に伝えられたときだ。この控除は、入居してからの行動で使えなくなることがある。この記事では、仕組みと、壊れやすい要件を条文から整理する。

この記事は、学習アプリ「シカクエ」の実務クエスト「住宅ローン控除の要点を整理する」を読み物として再構成したもの。人物・相談はすべて架空です。この控除は期限を区切って設けられている特例で、借入限度額・控除率・控除期間・入居の期限はいずれも改正で変わります。金額は書いていませんので、実際のご提案では国税庁の最新の資料と、その年の条文でご確認ください。

まず結論:計算式は単純で、要件が多い

前項に規定する住宅借入金等特別税額控除額は、その年十二月三十一日における住宅借入金等の金額の合計額(当該合計額が借入限度額を超える場合には、当該借入限度額)に控除率を乗じて計算した金額(当該金額に百円未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)とする。(租税特別措置法41条2項)

要素中身
計算式年末残高(借入限度額が上限)× 控除率
基準日その年12月31日
性質税額控除。所得からではなく税額から引く

式そのものは単純である。複雑なのは、借入限度額と控除率が住宅の種類と入居した年で細かく分かれているところで、そこは改正のたびに動く。

だから金額の話はその年の資料で確認する。FPが押さえるのは式の形要件である。

基準日が12月31日である点は、実務でそのまま効く。12月に繰上げ返済をすると、その年の控除額が減る年をまたいで1月に返済すれば、その年の年末残高は変わらない。相談で繰上げ返済の話が出たら、まずこの点をお伝えする。

そして税額控除である。所得控除と違って納める税額から直接引くので効果が大きい。反面、納めている税額を超えては引けない。所得税から引ききれない分の扱いは、後で述べる。

壊れやすい要件——あとで外れることがある3つ

①償還期間10年以上

一 当該住宅の取得等に要する資金に充てるために……借り入れた借入金……のうち、契約において償還期間が十年以上の割賦償還の方法により返済することとされているもの(租税特別措置法41条1項1号)

この要件が、繰上げ返済で問題になる

まとまった繰上げ返済で完済までの期間が短くなると、当初の借入れから完済までが10年に満たなくなることがある。そうなるとその後の年は控除を受けられなくなるという取扱いがされている。

「繰上げ返済したいのですが」というご相談は、必ずこの点とセットで答える。利息を減らす効果と、控除を失う影響を並べて比べていただく。

2号・3号・4号も同じく賦払期間が十年以上を求めている。勤務先からの借入れ(4号)も対象になり得るが、同じ期間の要件がかかる。

②取得等から6月以内に居住

……これらの家屋を……その者の居住の用に供した場合(これらの家屋をその新築の日若しくはその取得の日又はその増改築等の日から六月以内にその者の居住の用に供した場合に限る。)(租税特別措置法41条1項)

かっこ書に「六月以内に……限る」と書かれている。

引き渡しを受けてからリフォームや転勤の都合で入居が遅れると、ここで外れる。取得から入居までが空きそうなご相談では、先に日付を確認する。

そして本文は「引き続きその居住の用に供している年に限る」ともしている。途中で転勤などにより住まなくなった年は、その年の控除がない。単身赴任や再入居の扱いには別の規定があるので、そうしたご事情がある方には税務署で確認していただくようお伝えする。

③その年の合計所得金額が2,000万円以下

……その者のその年分の所得税に係るその年の……合計所得金額が二千万円以下である年については、その年分の所得税の額から、住宅借入金等特別税額控除額を控除する。(租税特別措置法41条1項)

この要件は「年について」判定される。入居した年に満たしていればよい、ではない

だからある年だけ所得が増えると、その年だけ控除が受けられない。翌年に戻れば、また受けられる。

相談で効くのは、不動産の売却益や退職金、まとまった一時所得がある年である。「その年は控除が止まるかもしれません」と前もって伝えておく

なお、金額の基準は改正で動く。2,000万円という数字も、その年の条文で確認する

所得税から引ききれないとき

道府県は、……所得割の納税義務者が前年分の所得税につき租税特別措置法第四十一条又は第四十一条の二の二の規定の適用を受けた場合……には、第一号に掲げる金額から第二号に掲げる金額を控除した金額……の五分の二(当該納税義務者が指定都市の区域内に住所を有する場合には、五分の一)に相当する金額……を、……所得割の額から控除するものとする。この場合において、当該控除額が……課税総所得金額……の百分の二(……指定都市の区域内に住所を有する場合には、百分の一)に相当する金額(当該金額が三万九千円(……指定都市の区域内……一万九千五百円を超える場合には、三万九千円……)を超えるときは、当該控除額は、当該控除限度額に相当する金額とする。(地方税法附則5条の4第1項)

所得税から引ききれなかった分は、住民税から引ける。ただし住民税側には上限がある

条文は道府県民税について課税総所得金額等の百分の二、かつ3万9千円を上限としている。市町村民税側にも同趣旨の規定があり、合わせて課税総所得金額等の5%・9万7,500円が上限という形になる。指定都市では内訳が入れ替わるが、合計は同じである。

ここが実務で効く。借入額が大きくても、納めている税額が小さければ、控除しきれない「限度額いっぱい借りれば控除も最大」ではない

ご相談では源泉徴収票で所得税額と住民税額を確認してから、実際に受けられる額を見積もる。借入額から逆算しない

なお本条も「令和二十年度までの各年度分」「居住年が平成二十一年から令和七年までの各年である場合に限る」と期間を区切っている。期限つきの規定である。

手続き——初年度と2年目以降で違う

……この項の規定の適用を受けようとする旨、その年の……合計所得金額……の見積額その他財務省令で定める事項を記載した申告書をその給与等の支払者を経由して……所轄税務署長に提出したときは、その年のその給与等に対する……年末調整で控除する。
2 前項に規定する申告書は、同項の給与等の支払者からその年最後に給与等の支払を受ける日の前日までに、……証明書その他の書類を添付して、提出しなければならないものとし、同日においてその者のその年の合計所得金額の見積額が二千万円……を超えるときは提出することができない。(租税特別措置法41条の2の2第1項・2項の要旨)

手続き
入居した年確定申告。給与所得者でも必要
2年目以降給与所得者は年末調整で受けられる(41条の2の2)

2項の「その年最後に給与等の支払を受ける日の前日までに」が期限である。年末調整の書類を出すときに、証明書を添付する

この証明書は税務署から交付されるもので、なくすと再交付の手続きが要る初年度の確定申告が終わったら、届いた書類の保管をお伝えしておくと、翌年以降の相談が減る。

そして2項は合計所得金額の見積額が2,000万円を超えるときは提出することができないとしている。その年だけ所得が増える見込みの方は、年末調整では受けられない。この場合は確定申告で対応することになる。

期限のある特例であること

41条1項は、対象となる住宅を「平成十九年一月一日から令和七年十二月三十一日までの間にその者の居住の用に供した場合」としている。

この控除は、期限を区切って設けられている特例である。入居の期限だけでなく、借入限度額・控除率・控除期間も、住宅の種類と入居年の区分ごとに条文へ細かく書き込まれている。

だから「今こういう内容だから」を前提にした説明をしない。お客様に伝えるのは式の形(年末残高×控除率)と、要件の種類である。この2つは改正されても残る

具体的な金額や期限は、国税庁のタックスアンサーとその年の条文で確認する。ご相談の場で一緒に開くのがいちばん確実である。

相談の進め方——この順番で確認する

  1. いつ引き渡しを受け、いつ入居されたかを確認する。6月以内か(41条1項かっこ書)。
  2. ローンの契約内容を確認する。償還期間が10年以上か(同項1号)。
  3. その年の所得の見込みを確認する。合計所得金額の基準を超えないか(同項本文)。
  4. 住宅の種類を確認する。借入限度額と控除期間の区分が変わる(同条3項)。
  5. 源泉徴収票で税額を確認する。所得税額と住民税額。
  6. 受けられる額を見積もる。住民税側の上限も踏まえて(地方税法附則5条の4)。
  7. 初年度は確定申告とお伝えする。
  8. 2年目以降の証明書の保管をお伝えする(措置法41条の2の2)。
  9. 繰上げ返済の予定を伺う。10年の要件と、12月31日という基準日。
  10. 転勤の可能性を伺う。住まなくなった年の扱い。

プロならこう説明する

住宅ローン控除は、その年の12月31日のローン残高に、決められた率を掛けた額を、納める所得税から直接差し引く仕組みです。

所得から引くのではなく、税額から引きます。ですので効果は大きいのですが、納めている税額を超えては引けません。

所得税から引ききれない分は、住民税からも引けます。ただし住民税側には上限が決まっていますので、借入額が大きければ大きいほど得、という形にはなりません。

ですので、まず源泉徴収票を拝見させてください。実際にいくら受けられるかは、お納めになっている税額から見積もります。

そのうえで、あとから受けられなくなる場面を3つお伝えします。ここが今日いちばん大事なところです。

1つめ。繰上げ返済です。この控除は返済期間が10年以上のローンが対象と法律で決まっています。まとまった繰上げ返済で、当初の借入れから完済までが10年に満たなくなりますと、その後は控除を受けられなくなります。

繰上げ返済をお考えのときは、利息が減る効果と、控除が受けられなくなる影響を並べて比べましょう。ご一緒に計算いたします。

それともう1点。残高を見るのは12月31日時点です。12月に繰上げ返済をされますと、その年の控除額がその分減ります。年が明けてからにされると、その年の控除は満額のままです。

2つめ。入居の時期です。法律に「取得の日から6月以内に居住の用に供した場合に限る」と書かれています。リフォームやご転勤で入居が遅れそうな場合は、先に日付を確認させてください。

3つめ。その年の所得です。合計所得金額が基準を超える年は、その年だけ控除が受けられません。翌年に戻れば、また受けられます。

不動産をお売りになる、退職金を受け取られる、といった年は所得が大きくなります。そういうご予定があれば、前もって教えてください。

手続きについてです。入居された年は確定申告が必要です。会社員の方でも、初年度はご自身で申告していただきます。

2年目からは年末調整で受けられます。そのときに税務署から届く証明書を添付します。この書類は大切に保管してください。なくしますと再交付の手続きが必要になります。

最後に1つ、お伝えしておきます。この控除は期限を区切って設けられている特例です。借入の限度額も、率も、期間も、住宅の種類と入居された年によって細かく分かれていて、改正のたびに変わります。

ですので、金額は私の記憶ではなく、国税庁の最新の資料でご一緒に確認させてください。仕組みと要件のほうは、改正されても変わりませんので、そちらを押さえていただければ大丈夫です。

よくある質問と、その答え方

「繰上げ返済したほうが得ですよね」
比べてから決める。租税特別措置法41条1項1号は対象となる借入金を「契約において償還期間が十年以上の割賦償還の方法により返済することとされているもの」としている。繰上げ返済で当初の借入れから完済までが10年に満たなくなると、その後は控除を受けられなくなる取扱いになる。利息が減る効果と、控除を失う影響を並べて比べる。あわせて、控除額の基準日はその年12月31日(同条2項)なので、12月の返済はその年の控除額を減らす

「入居した年に条件を満たしていれば、あとは大丈夫ですよね」
毎年判定される要件がある。41条1項は「その者のその年分の所得税に係るその年の……合計所得金額が二千万円以下である年については」としており、年ごとに判定する。ある年だけ所得が増えれば、その年だけ控除が受けられない。翌年戻れば、また受けられる。さらに同項は「引き続きその居住の用に供している年に限る」ともしている。

「限度額いっぱい借りれば、控除も最大になりますよね」
納めている税額を超えては引けない。住宅ローン控除は税額控除なので、所得税額が上限になる。引ききれない分は住民税から引けるが、地方税法附則5条の4第1項は課税総所得金額等の百分の二・3万9千円(道府県民税側)という上限を定めており、市町村民税側とあわせて上限がある。借入額からではなく、源泉徴収票の税額から見積もる

「2年目も確定申告が必要ですか」
給与所得者なら不要になる。租税特別措置法41条の2の2が、申告書を給与等の支払者を経由して提出すれば年末調整で控除できるとしている。提出期限は同条2項の「その年最後に給与等の支払を受ける日の前日まで」で、税務署から交付された証明書を添付する。ただし同項は合計所得金額の見積額が2,000万円を超えるときは提出することができないとしているので、その年だけ所得が大きい方は確定申告で対応する。

説明で外したくないポイント

  1. 式は「年末残高(限度額が上限)× 控除率」(措置法41条2項)。基準日は12月31日。
  2. 税額控除。納めている税額を超えては引けない。
  3. 償還期間10年以上(同条1項1号)。繰上げ返済で外れることがある。
  4. 取得等から6月以内に居住(同項かっこ書)。
  5. 引き続き居住している年に限る(同項)。
  6. 合計所得金額の要件は年ごとに判定(同項)。
  7. 引ききれない分は住民税から。ただし上限あり(地方税法附則5条の4第1項)。
  8. 初年度は確定申告、2年目以降は年末調整(措置法41条の2の2)。証明書の保管を伝える。
  9. 年末調整は合計所得金額の見積額が2,000万円超だと使えない(同条2項)。
  10. 期限を区切った特例。金額・率・期間は改正で動く。国税庁の最新資料で確認する。

根拠条文のまとめ

条文見出しこの記事で使った内容
租税特別措置法41条1項住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除入居の期限/6月以内の居住/引き続き居住/合計所得金額の要件
租税特別措置法41条1項1号〜4号同上償還期間・賦払期間が10年以上の借入金・債務
租税特別措置法41条2項同上その年12月31日の残高(借入限度額が上限)に控除率を乗じる
租税特別措置法41条3項同上借入限度額は区分に応じて定められる
租税特別措置法41条の2の2第1項年末調整に係る特別控除申告書を給与等の支払者を経由して提出すれば年末調整で控除
租税特別措置法41条の2の2第2項同上その年最後の給与の支払日の前日まで。証明書の添付。見積額2,000万円超は提出不可
地方税法附則5条の4第1項個人の道府県民税及び市町村民税の住宅借入金等特別税額控除所得税から引ききれない分の住民税からの控除と、その上限
条文の記述は執筆時点のもの。この控除は期限を区切って設けられている特例で、入居の期限・借入限度額・控除率・控除期間はいずれも改正で変わります。実際のご提案では国税庁の最新の資料と、その年の条文でご確認ください。

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