FP2級の実務クエスト

【FPの実務】地震保険は火災保険と何が違う?──定義の4つの要件から説明する

マイホームを買うお客様から、こんな相談が届く。

「家を買うので火災保険に入ります。地震保険は別に必要と聞きましたが、どういう関係なのか、どこまで補償されるのかよく分かりません。」

FPの実務で、火災保険と地震保険の関係の説明はよく扱う。ここで力になるのは、商品の説明ではなく「法律が地震保険をどう定義しているか」を渡せたときだ。定義そのものが、単独で入れない理由も、保険金額の決まり方も、支払われ方も説明している。この記事では、その定義から整理する。

この記事は、学習アプリ「シカクエ」の実務クエスト「火災保険と地震保険の関係を説明する」を読み物として再構成したもの。人物・相談はすべて架空です。保険金額の限度などは改正されることがあるため、実際のご提案では契約される保険会社の資料でご確認ください。

まず結論:定義が4つの要件でできている

この法律において「地震保険契約」とは、次に掲げる要件を備える損害保険契約(火災に係る共済契約を含む。以下同じ。)をいう。
一 居住の用に供する建物又は生活用動産のみを保険の目的とすること。
二 地震若しくは噴火又はこれらによる津波(以下「地震等」という。)を直接又は間接の原因とする火災、損壊、埋没又は流失による損害(政令で定めるものに限る。)を政令で定める金額によりてん補すること。
三 特定の損害保険契約に附帯して締結されること。
四 附帯される損害保険契約の保険金額の百分の三十以上百分の五十以下の額に相当する金額(その金額が政令で定める金額を超えるときは、当該政令で定める金額)を保険金額とすること。(地震保険に関する法律2条2項)

お客様の疑問は、この4つでほぼ答えられる。

「別に必要」なのは3号——特定の損害保険契約に附帯して締結されるから、単独では入れない。

「火災保険では出ない」のは2号——地震等を原因とする火災は、地震保険のほうで受け持つ形になっている。

「金額が選べない」のは4号——主契約の30%以上50%以下という幅の中で決める。

「対象が限られる」のは1号——居住の用に供する建物または生活用動産のみである。

商品ごとの説明ではなく法律の定義なので、どの会社の商品でもこの4つは共通するお客様が比較しやすくなるのは、ここを渡したときである。

1号——対象は「住まいと家財」だけ

「居住の用に供する建物又は生活用動産のみ」とある。「のみ」という限定に注意したい。

だから事業用の建物や、店舗の什器・商品は対象にならない。ご自宅の一部を店舗にされている場合は、どこまでが居住の用かという線引きが出てくる。

また自動車も対象外である。「家財に入っているはず」と思われていることがあるので、確認しておく。

持ち家か賃貸かでも変わる。賃貸にお住まいの方は建物を所有していないので、生活用動産(家財)のみを掛けることになる。「賃貸だから関係ない」ではないと伝えられる。

2号——火災保険と地震保険の境目

2号は「地震若しくは噴火又はこれらによる津波……を直接又は間接の原因とする火災、損壊、埋没又は流失による損害」としている。

ここに火災が入っている。だから地震で起きた火災は、火災保険ではなく地震保険の受け持ちになる

「直接又は間接の原因」という書き方も広い。地震で倒れたものから出火した場合も含まれる形になる。

ここがお客様がいちばん驚かれるところである。「火事は火災保険」と思っていらっしゃると、地震のときだけ違うという点が伝わらない。

ただし脅す言い方はしない「地震のときは受け持ちが変わる仕組みになっています」という事実として伝える。判断はご本人がなさる。

4号——金額は幅の中で決める

法第二条第二項第四号に規定する政令で定める金額は、居住用建物については五千万円、生活用動産については千万円とする。ただし、当該居住用建物又は生活用動産について既に締結されている地震保険契約がある場合には、これらの金額からそれぞれ当該既に締結されている地震保険契約の保険金額に相当する金額を控除した金額とする。(地震保険に関する法律施行令2条)

決まり内容
下限・上限の幅火災保険の保険金額の30%以上50%以下
金額の限度居住用建物5,000万円/生活用動産1,000万円
重複した場合すでにある地震保険契約の金額を控除する

幅があるので、30%にするか50%にするかは選べる。「全額は掛けられない」という点は、はっきりお伝えする。

これは制度の設計である。1条が目的を「地震等による被災者の生活の安定に寄与すること」としており、建て直しの全額を保険で賄う制度としては作られていない

だからお客様への説明は「足りない」ではなく「生活を立て直す間を支える仕組みです」という形になる。そのうえで、不足分をどうするかを一緒に考えるのがFPの仕事である。

令2条ただし書も実務で効く。同じ建物に別の地震保険契約があると、その分が限度から引かれる重ねて掛けても増えないので、契約の重複がないかを確認する。

支払は4つの区分——全額か、ゼロか、ではない

一 居住用建物の全損主要構造部の損害額が当該居住用建物の時価の百分の五十以上である損害又は焼失し若しくは流失した部分の床面積の……割合が百分の七十以上である損害をいう。) 保険金額の全額
二 大半損(……時価の百分の四十以上百分の五十未満……又は……百分の五十以上百分の七十未満……) 保険金額の百分の六十に相当する金額
三 小半損(……時価の百分の二十以上百分の四十未満……又は……百分の二十以上百分の五十未満……) 保険金額の百分の三十に相当する金額
四 一部損(……時価の百分の三以上百分の二十未満である損害をいう。) 保険金額の百分の五に相当する金額(地震保険に関する法律施行令1条1項)

区分支払われる割合
全損保険金額の全額
大半損60%
小半損30%
一部損5%

この4区分が、地震保険の支払いの形である。実際の修理費に応じて払われるのではなく、区分ごとに決まった割合で支払われる。

だから「修理費の見積もりを出せば、その分が出る」ではない。ここは誤解が多い。

区分の判定基準も条文にある。主要構造部の損害額が時価の何%か、または焼失・流失した床面積の割合が何%かである。見た目の被害ではなく、この2つの物差しで判定される

一部損の下限が時価の3%以上なので、それに満たない損害では支払われない。この点も先に伝えておく。

5号以下には生活用動産の区分もあり、全損は損害額が時価の80%以上とされている。建物と家財では判定の基準が違う

迅速に支払うための設計である。1条の目的「被災者の生活の安定に寄与する」と読み合わせると、細かく査定するより早く払うことを優先した作りだと分かる。

政府が再保険している

この法律は、保険会社等が負う地震保険責任を政府が再保険することにより、地震保険の普及を図り、もつて地震等による被災者の生活の安定に寄与することを目的とする。(地震保険に関する法律1条)

1条が制度の性格を示している。政府が再保険するという仕組みである。

だから保険料は各社共通になる。「どこで入っても同じですか」というご質問には、この構造で答えられる。

お客様にとっては会社選びで悩む必要がないということでもある。火災保険のほうを比較していただき、地震保険はそれに付けるという順序になる。

3条2項は、一回の地震等で支払われるべき保険金の合計額が政令で定める金額を超える場合に、政府が負担する仕組みを定めている。大きな地震でも支払いが続く設計になっている。

税の面——地震保険料控除

居住者が、各年において、自己若しくは自己と生計を一にする配偶者その他の親族の有する家屋で常時その居住の用に供するもの又はこれらの者の有する……資産を保険……の目的とし、かつ、地震若しくは噴火又はこれらによる津波を直接又は間接の原因とする火災、損壊、埋没又は流失による損害……をてん補する保険金……が支払われる損害保険契約等に係る地震等損害部分の保険料……を支払つた場合には、その年中に支払つた地震保険料の金額の合計額(……その金額が五万円を超える場合には五万円とする。)を、……控除する。(所得税法77条1項)

3つのことが読み取れる。

1つめ。対象は「常時その居住の用に供する」家屋である。別荘のように常時住んでいない家屋は対象にならない

2つめ。生計を一にする配偶者その他の親族の有する家屋も対象になる。名義がご本人でなくても、保険料を支払っていれば控除できる場合がある

3つめ。控除できるのは「地震等損害部分の保険料」である。火災保険の保険料は含まれない控除証明書に地震保険部分が分けて記載されているのは、このためだ。

上限は5万円である。所得から引く所得控除なので、実際に軽くなる額はその方の税率による「5万円戻る」ではないと伝える。

2項は損害保険契約等の範囲を定めており、農業協同組合の建物更生共済なども含まれる。「共済だから対象外」ではないので、確認する。

相談の進め方——この順番で確認する

  1. 持ち家か賃貸かを確認する。賃貸なら家財のみ(地震保険法2条2項1号)。
  2. 用途を確認する。事業用の部分がないか(同号「のみ」)。
  3. 火災保険の保険金額を確認する。ここから幅が決まる(同項4号)。
  4. 30%か50%かを一緒に考える。全額は掛けられない。
  5. 他に地震保険契約がないかを確認する(同法施行令2条ただし書)。
  6. 支払われ方を説明する。4区分の割合(同令1条1項)。
  7. 不足分をどうするかを一緒に考える。貯蓄、公的支援、他の備え。
  8. 控除証明書の保管をお伝えする(所法77条1項)。
  9. 共済に入っている場合も対象になるか確認する(同条2項)。
  10. 火災保険のほうを比較していただく。地震保険は各社共通。

プロならこう説明する

地震保険は、法律に定義が置かれています。その定義が4つの条件でできていて、ご質問への答えがそこに入っていますので、順にご説明します。

1つめ。対象は「住まいの建物」と「家財」だけです。法律に「のみ」と書かれています。事業用の建物や、お店の商品は対象になりません。お車も対象外です。

2つめ。補償するのは、地震・噴火・津波を原因とする損害です。ここに火災が入っています。

つまり地震で起きた火事は、火災保険ではなく地震保険のほうで受け持つ形になっています。「火事なら火災保険」と思われがちですが、地震のときは受け持ちが変わります。

3つめ。火災保険に付ける形でしか契約できません。これが「別に必要」と言われる理由です。地震保険だけを単独で契約することはできません。

4つめ。保険金額は、火災保険の30%から50%の範囲で決めます。金額の限度もあり、建物は5,000万円、家財は1,000万円までです。

ここははっきりお伝えしておきます。全額は掛けられません。

これは制度の設計です。法律の目的が「被災者の生活の安定に寄与すること」と書かれていて、建て直しの全額を保険で賄う制度としては作られていません。

ですので、生活を立て直す間を支える仕組みとお考えいただき、足りない部分をどうするかを、ご一緒に考えさせてください。

支払われ方についてもお伝えします。修理費に応じて払われるのではなく、損害の程度を4つの区分に当てはめて、決まった割合が支払われます。

全損なら全額、大半損なら6割、小半損なら3割、一部損なら5%です。区分は、建物の主要な構造部分の損害が時価の何%かで判定されます。

早くお支払いするための仕組みです。ただ、一部損に満たない小さな損害では支払われませんので、そこはお含みおきください。

それと、よくいただくご質問にお答えしておきます。「どこの会社で入っても同じですか」——はい、地震保険の部分は各社共通です。

法律で政府が再保険する仕組みになっているためです。ですので、火災保険のほうを比較していただいて、地震保険はそれに付ける、という順序で選ばれるとよいと思います。

最後に、税金の面です。地震保険料控除があります。

控除できるのは地震保険の部分の保険料だけで、火災保険の部分は含まれません。控除証明書に分けて書かれていますので、年末調整か確定申告のときにお使いください。

上限は5万円ですが、これは所得から差し引く形ですので、5万円が戻ってくるという意味ではありません。軽くなる額はその方の税率によります。

それから、共済に入っていらっしゃる場合も対象になることがありますので、証明書が届いたら捨てずに取っておいてください。

よくある質問と、その答え方

「地震で火事になったら、火災保険で出ますよね」
地震保険のほうで受け持つ。地震保険に関する法律2条2項2号は、地震保険契約を「地震若しくは噴火又はこれらによる津波……を直接又は間接の原因とする火災、損壊、埋没又は流失による損害」をてん補するものと定義している。火災がここに入っている。「直接又は間接の原因」という書き方なので、地震で倒れたものから出火した場合も含まれる形になる。事実として伝え、判断はご本人に委ねる。

「地震保険だけ入ることはできますか」
できない。同項3号が「特定の損害保険契約に附帯して締結されること」を要件としている。火災保険などに付ける形でしか契約できない。これが「別に必要」と言われる理由である。

「家の値段と同じ額を掛けられますよね」
掛けられない。同項4号は「附帯される損害保険契約の保険金額の百分の三十以上百分の五十以下」とし、施行令2条が居住用建物5,000万円・生活用動産1,000万円という限度を定めている。全額は掛けられない。法律1条の目的が「被災者の生活の安定に寄与すること」である以上、建て直しの全額を賄う制度として作られていない。不足分をどうするかを一緒に考える場面になる。

「修理の見積もりを出せば、その分が支払われますよね」
そうではない。施行令1条1項は損害を全損・大半損・小半損・一部損の4区分に分け、それぞれ保険金額の全額・60%・30%・5%を支払うと定めている。実費ではなく区分ごとの割合である。区分は主要構造部の損害額が時価の何%か、または焼失・流失した床面積の割合で判定される。一部損の下限は時価の3%で、それに満たない損害では支払われない。

「保険料は会社によって違いますよね」
地震保険の部分は各社共通である。地震保険に関する法律1条が「保険会社等が負う地震保険責任を政府が再保険することにより」としており、政府が再保険する制度だからだ。火災保険のほうを比較して、地震保険はそれに付けるという順序で選ぶとよい。

説明で外したくないポイント

  1. 定義は4つの要件(地震保険法2条2項)。この4つで疑問のほとんどに答えられる。
  2. 対象は居住用建物と生活用動産「のみ」(同項1号)。事業用・自動車は対象外。
  3. 地震等を原因とする火災は地震保険の受け持ち(同項2号)。
  4. 単独では契約できない(同項3号)。
  5. 保険金額は30%以上50%以下、限度は建物5,000万円・家財1,000万円(同項4号、令2条)。
  6. 重複契約があると限度から控除される(令2条ただし書)。
  7. 支払は4区分の割合:全額・60%・30%・5%(令1条1項)。実費ではない。
  8. 一部損の下限は時価の3%。それに満たないと支払われない。
  9. 政府が再保険しているので保険料は各社共通(同法1条)。
  10. 控除は地震保険部分のみ・上限5万円・所得控除(所法77条1項)。共済も対象になり得る(同条2項)。

根拠条文のまとめ

条文見出しこの記事で使った内容
地震保険に関する法律1条目的政府が再保険する。被災者の生活の安定に寄与する
地震保険に関する法律2条2項定義1号 対象は居住用建物・生活用動産のみ/2号 地震等を原因とする火災等/3号 附帯して締結/4号 30%以上50%以下
地震保険に関する法律3条政府の再保険一回の地震等で一定額を超える部分の負担
同法施行令1条1項塡補される損害及び金額全損・大半損・小半損・一部損の判定基準と支払割合
同法施行令2条保険金額の限度額居住用建物5,000万円・生活用動産1,000万円。ただし書で重複契約の控除
所得税法77条1項地震保険料控除常時居住の用に供する家屋。生計を一にする親族の資産も。地震等損害部分の保険料。上限5万円
所得税法77条2項同上損害保険契約等の範囲。共済に係る契約も含む
条文の記述は執筆時点のもの。保険金額の限度や控除の額は改正されることがあり、実際の補償内容は契約によって異なるため、ご検討の際は保険会社の資料と約款でご確認ください。この記事は特定の保険商品を勧めるものではありません。

勉強は、クエストになった。

資格の勉強を、冒険に変えるRPG学習アプリ

App Storeで見る
架空の実務場面をもとにした学習用の解説記事です。実在の会社・物件・取引ではありません。制度は改正されることがあるため、受験年度の最新情報もあわせてご確認ください。